マンション管理士|村上智史の「士魂商才」 

無関心な居住者が多いマンション管理組合に潜む様々な「リスク」を解消し、豊かなマンションライフを実現するための「見直し術」をマンション管理士:村上智史(株式会社マンション管理見直し本舗 代表)がご紹介します。

マンションの機械警備費の適正化が一筋縄ではいかない理由

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これまで多くのマンションで管理委託費の適正化のコンサルティングで成果を挙げてきましたが、機械警備費も例に漏れず割高なケースが多い項目の一つです。

 

まず、マンションの機械警備の基本的な仕組みを説明しましょう。

 

マンションの共用設備の不具合や住戸内で発生した火災・ガス漏れなどの事故は、管理室内に設置された監視盤で異常信号を常時受信しています。

機械警備を導入している場合、その異常信号が即時警備会社のコントロールセンターに移報され、受信から25分以内に警備員が現場に駆けつけて対応することになります。(下図参照)

 

 

この機械警備の費用ですが、マンションの規模や監視対象の箇所数によってかなり幅があり、安ければ月額1万円台ですが、高い場合は10万円前後にまで及びます。

 

一般の分譲マンションでは、管理会社が管理組合から管理員や清掃業務等を含めて一括で元請けしており、この機械警備については警備会社に再委託しています。

 

つまり、管理委託費全体でコミコミ価格として負担しているので、費用の相場観を持ち合わせていない管理組合にとってはそれが高いのか安いのか到底判断が付きかねるというのが実態です。

 

その機械警備費にメスを入れる際に留意すべき点をご紹介しましょう。

 

(1)同業他社に見積もりを依頼する

機械警備の場合、各マンションによって仕様や規模が異なるため、他の管理業務と異なり一定の「相場価格帯」で査定することが難しいという特性があります。

 

そのため、コスト適正化の常道として、同業他社から相見積もりを取得するのが必須条件となります。

 

その場合、現在の管理会社との「しがらみ」を考慮して、あえて見積もりを辞退する業者もいるため、事前にヒヤリングすることが大切です。

 

(2)必ず現地調査は見積もりの必須条件

冒頭でも述べたように、機械警備費の金額にはマンションの規模だけでなく、警備監視の対象となっている箇所数や内容によって変動します。

 

たとえば、事前に以下のようなチェックが必要です。

➀住戸内の監視は含まれるか?

住戸内の監視対象も非常通報のみという簡易仕様の場合もあれば、窓や玄関に防犯用センサーを設置して監視している場合もあります。

 

②集合インターホン機器と警備が一体化していないか?

警備会社によっては集合インターホンシステムとセットで機械警備を受託しているマンションもあります。

このような場合、既設のインターホンのままでは同業他社に変更することができません。

 

yonaoshi-honpo.hatenablog.com

そのため、必ず現地調査を行って、管理室に設置されている監視盤を見てどのような警報信号をカバーしているのかをチェックする必要があります。

 

(3)機械警備に付帯する業務が含まれないか確認する

マンションによっては、居住者からの電話等を受け付けるためのコールセンター業務も含んでいる場合や、現地の巡回点検を実施している場合があります。

 

ところが、管理組合との委託契約でチェックしてもそこまで仕様の詳細が記載されていないこともあるので、慎重に確認することが必要です。

 

ちなみに、

先般、顧問先のマンションでも、機械警備費の見直しを行ったところ、警備会社を変更して従前の半額以下にまで費用を削減することができました。

 

詳細は下記の記事をご参照ください。

 

aplug.ykkap.co.jp

このマンションでもっとも驚いたのは、機械警備費のうち管理組合の会計収支に費用計上されていたのが管理室の部分だけで残りの住戸全体の費用は簿外で処理していたことです。

 

管理費等と同様に、戸あたり月額1,375円徴収していたにもかかわらず、なぜか「預り金」で計上するだけで収益にも費用にも住戸分は一切計上されていませんでした。

 

そのため、うっかり適正化の対象から見落としてしまうところでした。

 

<参考記事>

yonaoshi-honpo.hatenablog.com

 

yonaoshi-honpo.hatenablog.com

yonaoshi-honpo.hatenablog.com

      f:id:youdonknowwhatyoulove:20180907095250g:plain

 

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【理事長のギモン】管理組合の決算で毎月徴収していた町内会費が「消えた」ワケ

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顧問先のマンションの理事会で、管理会社が今期の決算状況を説明しました。

 

このマンションの管理費会計では、収入科目の一つに「町内会費」があり、今期の予算として43,200円を計上していました。

 

実際には、毎月戸あたり@100円徴収を徴収し、36戸分で計3,600円を収入として計上していました。

 

ところが、月次会計収支で期末の3月でこれまでの徴収した金額だけマイナス計上して取り消し、年間の収入はゼロになっていました。(下図参照)

 

 

なぜこんな処理になったのか? 

43,200円はどこへ「消えた」のか?

この「謎」をすぐに解くことができませんでした。

 

今年度は、「コロナ禍で活動休止したため町内会費を徴収しない」ことが決まったため支出がなくなり、剰余金が43,200円増えるはずでした。

 

そのため、管理会社が徴収した町内会費を区分所有者に返還することを提案し、理事会がこれを了承しました。

 

ただ、その精算を各区分所有者に対する振り込みで行うと多額の手数料がかかります。

 

なので、来期の管理費の一部と相殺する方法、つまり自動引き落としによる振替え額を町内会費の分だけ減らすことにしたのです。

 

実は、冒頭で説明した「消えた町内会費」の謎は、この精算方法が関係していました。

 

当初「収入」として計上していた町内会費が、決算では負債科目の「前受金」の一部として取り込まれていたのです。

 

これを詳しく解説しましょう。

管理会社は以下のような手順で会計処理(仕訳)していたと思われます。

=======================

     ( 借方 ) / ( 貸方 )

(1)普通預金  43,200 / 町会費(収益)43,200 <1年間の累計> 

 

その後、町内会から「今期は徴収しない」との連絡を受け、組合員に全額返金することを理事会で決議。

 

そのため、町内会費の計上科目を「収益」から「預かり金」に変更。

 

(2)町会費(収益)  43,200 /  預り金(返金用) 43,200

 

さらに、管理会社がこれを来期の管理費に充当するため「前受金」に科目を変更

 

(3)預り金(返金用) 43,200 /  前受金(来期分の管理費) 43,200

==========

要するに、(1)から(3)までの処理を一つにまとめると以下のようになります。

 

普通預金  43,200 /  前受金(来期分の管理費) 43,200

 

区分所有者に返金する予定のため、収入の代わりに「預かり金」として計上するのはわかりますが、決算では一切の説明もなく前受金(の一部)に計上してしまったので、理解できなかったわけです。

 

もちろん、簿記の知識のない一般組合員には何のことやらまったく分からないでしょう。

 

そのため、決算書には以下のような補足説明を加えることを理事会と管理会社に提案しました。

・・・・・・・・・・・

 今期の町内会費(年間43,200円:1世帯あたり1,200円)は町会より徴収しない旨の連絡を受けたため、収益には計上せず、来期の管理費の一部に充当することといたしました。

 そのため、今期末時点では上記金額(43,200円)を「前受金」の一部として計上しております。

・・・・・・・・・・・

今回の管理会社が行なった会計処理は、「間違い」ではありませんが、少々乱暴だったと思います。

町内会費の返還を管理費と相殺したのは、振込手数料の節約のための「便法」です。

 

なので、今期の決算時点では「預かり金」の計上で済ませていても何ら問題はありませんでした。

 

それを管理組合には一切の説明もなく、区分所有者が前払いする管理費の一部に町内会費を加えてしまったら理解することは至難の業です。

 

管理会社にはもっと丁寧な仕事をしてもらいたいと思います。

 

<参考記事>

 

yonaoshi-honpo.hatenablog.com

 

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マンションの大規模修繕工事で外壁タイルの不具合が異常に多かった理由とは?

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顧問先のマンション(築16年目)では、今年の2月から第1回目の大規模修繕工事が始まりました。

 

ただ、3月に入って施工業者から外壁の下地補修のため不具合箇所を集計したところ、当初見込んでいた数よりもはるかに不具合の箇所が多いことが判明しました。

 

実は、着工の1年半前にこのマンションでは外壁の全面打診を実施しましたが、その際にすでに約2万枚もの浮きが見つかっていました。

 

そのため、今回の工事では3万枚の貼り替えを見込んでいたのですが、実際には4万枚を有に超えてしまったのです。

 

貼替え用のタイルは、通常1万枚単位で窯焼きによって製作します。

また、納期までに1ヶ月程度の時間がかかります。

 

施工業者からは、貼替え枚数の増加による作業費の増加に工期の延長分を加えると、合計で1千万円以上の費用が増えるとの見積もりが示されました。

 

その後、理事会と施工業者で協議した結果、なるべく費用増を抑えるべく以下の方針で進めることとしました。

1)不足分のタイルについては類似の既製品を購入し、なるべく目立たない場所に貼る。(これによって工期の延長を回避する。)

2)共用廊下と階段の長尺シートの貼り替えについては、現状それほど劣化していないこと、また足場が不要な箇所であることから今回の施工対象から除外する。

 

これによって、全体の費用増を6百万円程度に抑制することができ、臨時総会に議案を上程し無事承認が得られました。

 

それにしても、なぜこれほど多数のタイルが浮いてしまったのか?

 

この背景には、 施主(デベロッパー)による工期の短縮を含む経済合理性の追求志向があり、具体的には以下の2つの工法の採用が原因になったのではないかと推察されます。

 

1)タイル直貼り方式の増加

外壁タイルを貼る際には、下地のコンクリート全面にモルタルを塗るのが一般的です。

さらに、外壁タイルを張る際には、この下地が十分に乾いていることと、「目荒らし」(接着力を強化するために表面をわざと粗く加工する作業)することの2つが必要です。

ただ、下地のモルタルが乾くまでには一定の養生期間が必要になります。

そこへ接着材料の進歩や剥離対策用の工法の開発によって、躯体にタイルを直接貼るための有機系接着剤が普及し、2週間から1ヶ月の工期短縮が可能になり、徐々にコンクリートへの直貼り方式が採用されるようになったのです。

 

2)パネコートの使用

さらに、「塗装合板型枠(パネコート)」という型枠の表面にウレタン塗装がされた型枠材も用いられるようになりました。

これによってコンクリート表面の仕上がりが平滑になり、型枠の脱型もしやすく繰り返し使用することができるなど施工性も経済性も向上しました。

ただ、タイルの下地として考えた場合、表面が平滑になることで、タイルの接着強度が落ちてしまうという問題が出やすくなってしまいました。

そのため、確実な施工を行うには念入りな「目荒らし」が必要になるうえ、型枠剥離剤がコンクリートの表面に残っているとタイルの浮き剥離の原因になるため、しっかりした表面の清掃も不可欠です。

 

つまり、こうした目荒らしや清掃などの下地処理が不十分だったり雑なケースでは、将来タイルの浮きなどの不具合が起きやすくなる、というわけです。

 

ちなみに、冒頭に紹介した顧問先マンションは2006年の竣工です。

 

2005年から2006年にかけて分譲されたマンションは、2003年からのミニバブルで土地が高騰した時期に仕込んだ物件が多く、その後市場が沈静化して販売価格も当初目論んでいた相場よりも下がってしまったことから、分譲価格に仕入れのコストを転嫁できなくなっていたのです。

 

そのため、売主であるデベロッパーからのコスト削減要請が施工業者に向かい、経済効率性追求のための工期短縮の動きが過剰に働いた「しわ寄せ」が、上記のような外壁タイルの下地施工不良などが数多く発生する温床になったのではないでしょうか。

 

なお、マンションの外壁タイルのアフターサービス保証は2年と設定されているのが一般的ですが、引渡し後10年間の瑕疵担保期間を経過していても、調査によって新築時の施工に問題があることが確認された場合は分譲業者等に補修費用を負担してもらえる可能性があります。

 

管理組合の皆さんには、第1回大規模修繕工事を迎えるまでには、外壁タイルの状況を一度専門家にチェックしてもらうことをぜひお勧めします。

 

<参考記事>

 

yonaoshi-honpo.hatenablog.com

 

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マンション管理委託費の適正化には「管理仕様の見直し」も効果的!

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 顧問先のマンション(神奈川県所在 築26年目・55戸)では、昨秋からコンサルティングに着手しましたが、その後管理会社との交渉を経て主要コストの管理委託費や電気料金を適正化できる目処が立ったため、今月下旬の通常総会に議案を上程することになりました。

 この半年あまりの期間での成果をまとめると以下のようになります。

戸あたり平均に換算すると、ざっと年間47,000円弱の経済効果となります。

 

特に最も大きな比重を占める管理委託費は、現状と比べて29%のダウンとなりました。

 

管理業界も、昨今は人件費高騰によるコスト漸増の傾向は否めませんが、まだこんなに大幅なコスト削減ができる物件もあることを証明しました。

 

ただ、このマンションの場合、単純減額(仕様変更を伴わない時間単価の削減)だけではなく、「管理仕様の変更による適正化」の効果も含まれています。

 

以下ご紹介しましょう。

(1)管理員業務と日常清掃

  現状では、週2日・実質3h/日勤務 で、この規模のマンションとしてはかなり少なめの設定になっていました。

 一方で、管理員とは別に日常清掃を別のスタッフで週3日実施していました。

 この日常清掃を管理員が兼務するとともに、 週4日・実質4h/日の勤務体制に変更する提案をしたところ、現状とほぼ変わらない金額で賄えることになりました。

 

(2)給排水設備点検

  現状では、 年1回の頻度でポンプ点検のみならず、雨水排水桝およびトラップ枡の清掃を実施しています。

 過去に排水桝が溢れた事故が発生したためのようですが、年1回定期で行う必要性は小さいため、必要に応じて数年に一度スポットで実施することにしました。

 

(3)エレベーター設備点検    

 毎月(年12回)点検していますが、遠隔監視機能が標準装備されてため、有人点検は年4回に調整しました。

 

(4)外部枡調査

年1回の排水管の高圧洗浄の際に、外部の排水枡をファイバースコープで調査する仕様になっていましたが、こちらも必要に応じて数年に一度スポットで実施すればよいと判断し、定期業務から除外しました。

 

(5)建物設備点検
  現状では以下のような仕様になっていました。
平面駐車場点検業務 :年 1回(駐車設備撤去後に鋼製板で平面化した箇所)
・建物点検業務    :年 6回 
電気設備点検業務     :年12回

    電気設備や平面化した駐車場の点検はそもそも行う必要性が小さいのと、建物点検も2ヶ月毎に実施するのは過剰という印象でした。(電気設備を目視で確認しても劣化度合いがわかるものではないので・・・)

 そのため、「建物総合点検」として年2回実施することとし、その中に平面駐車場や電気設備の点検も含めることにしました。

 

(6)機械警備

 機械警備の場合、マンションの管理室にある監視盤で受信した各設備や住戸内の異常信号をコントロールセンターでキャッチして、25分以内に現場に駆け付け対応を行うのが一般的です。

 ところが、現行では警備員が毎日2回(不定期)現場に巡回点検に訪れることになっていました。

 一般の分譲マンションでは極めて稀なので委託契約書を確認して驚きましたが、こちらは理事会と相談した結果、特に必要ないので仕様から削除しました。

 

こうした管理仕様の見直しについては、一般の管理組合や理事会役員ではメスを入れづらいでしょう。

 

経験豊富なコンサルタントに相談されることをお勧めします。

 

<参考記事>

 

yonaoshi-honpo.hatenablog.com

 

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値上げは避けられる!?料率改定前のマンション保険の見直し方

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 今年の10月以降、マンション保険の料率が値上げになることはすでに本ブログでもお知らせしていますが、顧問先の管理組合でも今年に入って次々と更改しています。

 その実例を以下で紹介しましょう。

 

ケース1【神奈川県所在のマンション(築26年・55戸)の場合】

 現在の保険契約が今年5月初旬に満期を迎えるため、現在の代理店(管理会社と同じ系列)に見積もりを依頼したところ、いずれの保険会社を選んでも現状比で3割〜5割保険料が増加するとの説明を受けました


 そのため、当社が別の相乗り代理店から提案を受けたところ、保険会社の変更に加えて現契約に付帯する施設賠償責任保険や地震保険の減額ならびに(保険会社の)免責額の調整等によって保険料の負担を下げることが可能なことがわかりました。

 

 管理組合としては、管理費会計の収支が赤字に陥っており、管理委託費を含む維持管理コストの適正化に鋭意取り組んでいる最中でもあったため、必要な補償を維持しながら保険料の軽減につながるプランについて賛同が得られ、4月の臨時総会で無事承認されました。

        【マンション保険契約 新旧比較】

 

ケース2【山梨県所在のマンション(築29年・47戸)の場合】

 現在の保険契約が本年9月に満期を迎えるため、当社が紹介した相乗り代理店から損保各社の相見積もりでの提案を依頼したところ、保険会社の変更に加えて最大保険金額や(保険会社の)免責額の見直しによって保険料を大きく削減できることがわかりました。

 理事会にて審議した結果、コスト削減の成果を早期に実現すべく現契約を中途解約のうえ新たな保険契約を締結することを臨時総会で提案したところ、無事承認が得られました。

       【マンション保険契約 新旧比較】

 

ケース3【千葉県所在のマンション(築18年・51戸)の場合】

 当社の「管理コスト適正化診断」の結果、現状のマンション保険の契約内容を確認したところ、保険代理店から以下の指摘を受けました。

1)地域ハザートマップによると、当マンションが立地するエリアは高潮(3m以上)ならびに洪水(50㎝〜3m)による浸水リスク、また地震等に伴う液状化のリスク(中程度)があるにもかかわらず、水害に関する補償がまったく付保されていない。

 

2)鉄筋コンクリート造の場合、一般的に建物評価額(共用部)の5〜6割程度が適正な保険金額とされているところ、現状では3割の水準にとどまっており、万が一甚大な被害に遭った際に十分な補償が受けられないリスクがある。

 

 また、現在の契約は、来年3月に満期を迎える予定であるのに対し、今年10月以降、各社一斉に保険料率が1割程度増額改定される予定のため、その前に契約更改した方が有利であるとのアドバイスも受けました。

 そこで、大手損保5社から相見積もりを取得したところ、上記の見直しをしても保険会社の変更をした場合、支払い保険金額の適正化(増額)ならびに水災補償の追加付保を行っても現在の保険料の水準をほぼ維持できることがわかったため、現保険契約を中途解約し、新たな契約への更改を提案したところ、無事総会で承認が得られました。

 

       【マンション保険契約 新旧比較】


マンション保険見直しのポイントをまとめると、以下の通りになります。

【1】今年10月の改定を待たずに中途更改を検討する

たとえ現状よりも保険料の負担が増えることは避けられないとしても、保険料の改定前に更改した方が保険料の支払総額が相対的に安く済む可能性があります。

 
【2】複数の損保・保険代理店から見積もりを取る 
マンション保険の場合、ほとんどの場合管理会社が代理店を兼ねているのが実態です。

その場合、同業他社との競争原理も働きにくいため現状の補償条件の見直しはおろか、保険会社もずっと同じままで契約更改の提案をしてくるケースが多いのが実情です。

そのため、大手損保各社の「相乗り代理店」から相見積もりを取ることをお勧めします。 

 
【3】現状の補償条件が適正か事前に検証しておく
ほとんどの管理組合では、新築時点で設定された補償条件のままその後まったく見直しをされずに継続しているケースがもっぱらです。

ただ、改めて見直してみると、過剰な補償が付いていたり、本来付けるべき補償がない、保険金額の設定が過剰あるいは過小など見直し余地があるケースに遭遇することも少なくありません。


そのため、地域別ハザードマップを確認し、マンションの立地エリアが浸水、土砂災害、地震、津波といった災害リスクが高くないか事前にチェックしたうえで必要な補償を付保するようにしましょう。

 

見直しポイントに関する詳細は、先日執筆した下記の記事でも解説していますので、ご参考になれば幸いです。

 

aplug.ykkap.co.jp

<参考記事>

yonaoshi-honpo.hatenablog.com

 

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【受付中】マンション管理見直し本舗 オンラインセミナー(5月)開催のご案内

5月度の「マンション管理セミナー」についてご案内します。

 

新型ウィルス感染防止のため、今回も「オンライン形式」で開催します。

 

ネット接続環境があれば、首都圏以外にお住いの方も気軽に受講できます。

 

先着10名様のお申し込みを受け付けております。

 

どうぞお早目にお申し込みください。

【日時・会場】

令和 4年 5月  21日(土) 10:00~11:30

 

【参加料金】

 お一人様  2,000円(税込)

※ ただし、下記のいずれかの条件に該当する方は「無料」とさせていただきます。

初めて弊社セミナーに参加される方。

弊社に個別にご相談いただける方

 

【内 容】

「管理コストを3割削減するための見直し術」

これまで弊社のコンサルティングによってコスト削減を実現した事例(管理会社のリプレイスを含む6件)を紹介しながら、その費用項目ごとに効果的な見直しポイントを解説します。

 

【内 容】

■ ポイント1:管理人の勤務体制と業務内容
最も多く見られるのが、管理員の勤務時間が過剰なケースです。また、その業務範囲も物件の特性によって違いが見られます。

 

■ ポイント2:設備保守点検の契約形態と実施頻度(エレベーター、機械式駐車場など)
エレベーター、消防、機械式駐車場など各種共用設備の保守点検費用は管理組合側には相場観がないため、メスが入りにくいテーマです。

 

■ ポイント3:遠隔監視&緊急対応費用(ホームセキュリティを含む)
設備保守点検と同様に相場観が掴みづらい項目ですが、そのため割高になりがちです。

 

■ ポイント4:事務管理費など管理会社の経費
管理会社によって提示金額が異なりますが、物件の規模に応じたで適正な市場価格がわかります。

 

【講 師】 村上 智史(弊社代表取締役)

 

【お申込み方法】

セミナーお申込み専用ページからお申し込みください。(お名前、マンション名、メールアドレス、電話番号等をご記載ください。)

加までの流れや、オンライン会議の利用に慣れていない方向けの説明も上記ページにてご案内していますので、ご参照ください。

 

加までの流れや、オンライン会議の利用に慣れていない方向けの説明も上記ページにてご案内していますので、ご参照ください。

 

 

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「マンション管理認定計画制度」について管理組合が知っておきたいこと

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4/11付の「エコノミスト オンライン」に、「4月スタート「マンション管理計画認定制度」の六つの課題は?」と題した記事が掲載されていました。

 

<参考記事>

weekly-economist.mainichi.jp

本記事の要約は以下の通りです。

■ 改正マンション管理適正化法の施行を受け、今年4月からマンションの管理状況を地方自治体がチェックする「管理計画認定制度」がスタートした。

■ ただ、この制度を実際に機能させるには課題が多く見受けられ、以下6つの課題を指摘したい。

<課題 その1> 「情報難民の組合」への周知方法

 ほとんどの自治体はこの制度の根拠である「管理適正化推進計画」の作成や周知まで手が回っていないのが実情で、意識の高い区分所有者や管理会社のフロント担当者から通知されない限り、ほとんど制度自体の存在すら知らないだろう。

 特にすでに管理不全に陥っている「自主管理」タイプの管理組合には情報が届かない恐れがあり、「情報難民の管理組合」にどう周知するかが課題だ。

 <課題 その2> 組合予算の確保

 管理組合の運営は「予算準拠主義」のため、次期の予算案が総会で承認されなければいけない。認定を受ける費用は2万~4万円とされるが、いまだ明確でない。 

 <課題 その3> 長期修繕計画の見直しが必要

 国土交通省は昨年9月、長期修繕計画等および修繕積立金のガイドラインを改定した。既存マンションの計画期間は、これまで「25年以上」だったものが、「30年以上」に変更された。したがって、管理計画の認定を受けるには、計画期間を30年に延ばした長期修繕計画を作り直さなければならなくなる。

 また、本制度では計画の見直しの周期は5年間とされているが、国交省の調査でも回答した管理組合の3割以上が10年近く見直していないため、計画の更新作業も管理組合の負担としてのしかかってくる。

 <課題 その4> 「非認定マンション」へのフォローアップ 

 認定を申請しても「非認定」の結果が出た場合はどうするのかが不明である。地方自治体が「助言・指導・勧告を行う」とされるが、どんなフォローをしてくれるか管理適正化推進計画に明記される必要がある。

 <課題 その5> インセンティブの付与

 管理計画が認定された場合、住宅金融支援機構の長期固定住宅ローン「フラット35」や「マンション共用部分リフォーム融資」の金利が引き下げられることが決まったが、制度を普及させるには追加のインセンティブがほしい。

 例えば、防災用の備蓄品や土のうなどの贈呈、長期修繕計画の無償作成サポートなどが考えられる。自治体独自の助成や補助制度を組み合わせることで、マンションの資産価値はもとより、地域の価値や安全性の維持・向上にもつながるインセンティブが必要だ。

 <課題 その6> 乱立する類似制度の整理

 本制度以外にも、マンション管理業協会の「マンション管理適正評価制度」、日本マンション管理士会連合会の「マンション管理適正化診断サービス」、東京都による「優良マンション登録表示制度」などが乱立している。管理組合にとっては複数制度を整理して理解するのも容易ではなく、制度の統合・整理が必要。

 

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この制度について第一に知っておくべきことは、「管理計画の認定を受けるのは、義務ではなく権利」だということです。

 

管理組合が都道府県等の知事等に自らのマンションの管理計画を提出し、一定の基準(認定基準)を満たす場合に認定を受けることができる制度と記載されています。

 

したがって、上の要約に挙げられた<課題 その1>で指摘されているように、こうした情報に疎かったり、関心自体がない管理組合にはまったく周知されない可能性があります。

 

本制度の趣旨は、今後急増する老朽化マンションが管理不全に陥ることで建物の維持管理に支障が生じたり、地域住民に防災・防犯上を含む安全等のリスクが高まることを防ぐことです。

 

にもかかわらず、認定を受けることが義務ではないとすれば、結局一部の優良マンションだけがこれに参加するのにとどまり、本制度が本来ターゲットとしたい管理不全マンションやその予備軍が「蚊帳の外」に置かれることにならないか懸念されます。

 

そして、次に知っておくべきことは <課題 その2>にも関連しますが、認定の申請を行う際には、事前に総会決議が必要になる、ということです。

 

というのも、管理計画の認定手続きに際しては公財)マンション管理センターが提供する「認定手続支援システム」を利用する必要があり、その利用料が1万円かかる(当面の間は助成制度にもとづき実質無償となる予定)ためです。

なお、その手続きをマンション管理士に委託する場合には、別途その費用も必要です。

 

つまり、管理組合にとって何らかの支出が生じる以上、事前の総会決議が必要なわけです。

 

次に留意すべきは、 長期修繕計画の更新と修繕積立金の設定に関する結構重たい課題です。

 

認定されるためのチェック項目は、以下の6つです。

 

①  長期修繕計画が「長期修繕計画標準様式」に準拠して作成され、計画の内容及びこれに基づき算定された修繕積立金額について集会にて決議されている

 

② 長期修繕計画の作成又は見直しが(認定申請日から遡って)7年以内に実施されている

 

③ 計画期間が 30 年以上でかつ残存期間内に大規模修繕工事が2回以上含まれるように設定されている

 

④ 長期修繕計画において将来の一時的な修繕積立金の徴収を予定していないこと

 

⑤ 計画期間全体での修繕積立金の総額から算定された修繕積立金の平均額が著しく低額でないこと

⑥  長期修繕計画の計画期間の最終年度において借入金の残高がないこと

 

補足すると、①と②については、

長期修繕計画の作成(又は変更)を決議した総会議事録の写しの提出が必要です。

 

また、⑤については、

計画期間全体での修繕積立金の平均額が、国交省の「マンションの修繕積立金に関するガイドライ ン」に示された金額の目安を設定する際に参考とした事例の3分の2が包含される幅の下限値以上である必要があります。(下図参照)

 

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なお、ご自身のマンションの修繕積立金の平均額を算出する方法は、下記の過去ブログをご参照ください。

 

<参考記事>

yonaoshi-honpo.hatenablog.com

まとめると、長期修繕計画に関するチェック項目をクリアするには、以下3つの条件を満たす必要があります。

1)「標準書式」に準拠した長期修繕計画を少なくとも7年周期で更新すること。

2)長期修繕計画の更新について総会決議を得ること。

3)修繕積立金の平均額が「国のガイドライン」の下限値以上を維持すること

 

修繕積立金の徴収額が安く設定されがちな新築あるいは築浅のマンションでは、上記3)の条件を満たすのは厳しいと思われます。

 

いずれにしても、マンション管理組合が自力で認定を受けるための条件をクリアしたうえでこの申請手続きを完了させるのは至難の業でしょう。

 

その意味では、現段階ではこの制度が普及するには前途多難な状況と言えます。

 

<参考記事>

yonaoshi-honpo.hatenablog.com

yonaoshi-honpo.hatenablog.com

yonaoshi-honpo.hatenablog.com

yonaoshi-honpo.hatenablog.com

        f:id:youdonknowwhatyoulove:20180907095250g:plain

 

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