マンション管理士|村上智史の「士魂商才」 

無関心な居住者が多いマンション管理組合に潜む様々な「リスク」を解消し、豊かなマンションライフを実現するための「見直し術」をマンション管理士:村上智史(株式会社マンション管理見直し本舗 代表)がご紹介します。

マンション修繕積立金に「下限額」を設ける国交省の「本気度」はいかに!?

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2月22日付けのNHKニュースで「マンション修繕積立金の目安 毎月の徴収額に下限 国交省素案」と題した記事が掲載されていました。

 

www3.nhk.or.jp

その記事の要約は以下の通りです。

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▪️ 国土交通省の調査では、修繕積立金が不足しているマンションの割合が2018年度までの5年間でおよそ2倍に増えている。

▪️ その要因として、マンション開発業者が、新築時に販売しやすいよう、当初の徴収額を低く抑えるケースが多いためと指摘されている。

▪️ こうしたことを受けて、国土交通省による積立金の徴収額の目安に関する素案が明らかになった。

▪️  毎月の徴収額に「下限」を設け、当初から計画的な積み立てを求めるもので、この素案が、近く開かれる国土交通省の有識者会議で示される予定。

▪️ 具体的には、長期修繕計画にもとづいて必要となる積立金の総額を月額ベースに換算した「基準額」を定め、新築時でもその基準額の少なくとも6割以上を徴収するよう求めるとのこと。

▪️ 一方で、その後、築年数が経過するに従って、徴収額を引き上げる場合も基準額の1.1倍以内に収め、必要な資金を計画的に積み立てるよう求める方針。

▪️マンションの修繕費をめぐっては、資材価格の高騰で当初の想定より膨らむケースも増えていますが、国土交通省は、そうした場合も当初から計画的に積み立てれば対応しやすくなるとしている。

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この記事については、昨年10月にこのブログで紹介した記事のアップデート版と言えます。

<参考記事>

yonaoshi-honpo.hatenablog.com

上記ブログで取り上げた日経新聞の記事の要約は、以下のとおりです。

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■ 現在、多くのマンションで修繕のための積立金の増額幅が大きすぎて住民合意ができないトラブルが相次いでいる。

■ 国交省によると、長期修繕計画の当初から最終年までの増額幅は平均3.6倍。10倍を超える事例もあるという。

■ 国交省が2018年度に実施したマンション総合調査では、長期修繕計画に対して積立金が不足するマンションは34.8%にのぼり、前回調査(13年度)に比べて割合が倍増している。

■ また、老朽マンションほど修繕積立金などの滞納割合が高い。1969年以前に竣工したマンションのうち42.9%で滞納があった。計画通り集金できなければ、修繕工事の遅延などが相次ぐ恐れがある。

■ 国土交通省はマンションの修繕積立金を巡り、積み立て途中での過度な引き上げにつながらないよう目安を設け、管理組合に計画的な積み立てを促す

管理組合が長期修繕計画をつくる際に参考にする国交省の指針を改め、マンションの規模ごとに積立額の基準を示すガイドラインなどにも負担金の目安を盛り込む方針。

■ こうした問題を受け、国交省は積立金の引き上げ幅の目安を示す必要があると判断。上げ幅について管理組合の決議が成立した範囲などを調査し、妥当な水準を探る。

■ 国交省は有識者による作業部会を設置し、2024年夏までに対策をまとめる方針

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売主であるデベロッパーの裁量によって、マンションの新築時に修繕積立金が過度に低い水準で設定されているため、長期にわたって修繕積立金が増額改定されずに放置された場合、築20年前後には将来的に資金不足の見通しが明らかになるため、当初の3〜5倍も増額しなくてはならない事態に陥るのが一般的です。

 

そのため、途中で過度な引き上げ幅にならないよう、新築時から修繕積立金の設定額を一定以上に設定するよう指針(ガイドライン)を設けるとのことです。

 

<参考:国交省「今後のマンション政策のあり方に関する検討会資料」より抜粋>

 

 

 

 

その具体的な目安として、長期修繕計画(30年)で必要な修繕資金を毎月ベースに換算して求められる修繕積立金(つまり、均等積立方式にもとづく金額)の60%相当額にする、ということです。

 

仮に、あるマンションの長期修繕計画で必要とされる今後30年間の修繕資金を月ベースに割戻し、かつ専有面積で割った金額が@350円/㎡だったとします。

 

この@350円/㎡が「基準額」となります。

 

本記事によると、今回策定中の「ガイドライン」の方針としては、新築時から上記基準額の6割相当である@210円/㎡以上で修繕積立金を設定するよう求める、ということです。

 

ただ、長期修繕計画は5〜10年スパンで更新すべきとされていますが、法的な義務ではなく、計画の作成にも費用がかかるため、長年放置されている管理組合も少なくありません。

 

また、昨今のインフレ傾向から考えると、必要な修繕資金も右肩上がりに増えていくことが予想されます。

 

にもかかわらず、新築時の修繕積立金を「基準額の6割以上を下限とする」のは甘すぎると言わざるを得ません。

 

しかも、これはガイドラインであって法的な拘束力はありません

 

そもそも、新築時の修繕積立金の設定を低く設定することによってメリットがあるのは、売上を最大化したい開発業者か、あるいは早い時期にマンションの転売を目論んでいる投資家くらいです。

 

結局、国交省はデベロッパー業界に忖度しているだけなのではないかと思ってしまいます。

 

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