先月末に、顧問先マンション(築19年)で機械式駐車場の平面化工事が竣工しました。
当マンションの駐車場は、3年前から経年劣化に伴う部品交換等の修繕工事の提案(総額約6百万円)を受けていました。
一方、駐車場の稼働率が近年低下傾向にあり、全32区画の半分以上(18台)の空き区画が発生していました。
居住者を対象にアンケートも実施しましたが、今後も利用者の増加は期待できないことがわかりました。
さらに、既存設備のメーカーの製品は、駆動用のシャフトが破断してパレットが落下する事故等が発生した事例があり、その耐久性に関するリスク情報を管理会社や保守業者から入手していました。
そのため、既設メーカーの設備を維持しながら修繕工事を実施するのは安全性だけでなく経済面のリスクも大きいと判断しました。
現状の稼働状況が改善する見込みが小さいことから、駐車場の区画を減らすことを基本方針にしたものの、その区画数の調整が重要な課題となりました。
と言うのも、当マンションの場合、敷地形状の制約から、下図のとおり駐車設備が4ヶ所に分散していました。
・Aブロック(パズル式:16台) ・Bブロック(パズル式:8台)
・Cブロック(ピット式:4台) ・Dブロック(ピット式:4台)
仮にすべてのブロックを平面化した場合、間口の狭いAブロックには3台分の平置き区画しか確保できないため、区画数が10台まで減ってしまい、現契約車両を収納しきれないことがわかりました。
そこで、Aブロックを新たにパズル式2段のタイプに改装して10台分の区画に減らす一方、他の3ブロックは、既存設備を撤去のうえ、新たに鋼製板敷込みによる平面化を行い、平置き駐車場(計7区画)に改装することにしました。
これによって新たな区画数が「17」になり、契約車両をすべて収容することができます。
ただ、既存設備の修繕費(約6百万円)の負担を免れる代わりに、設備更新を含めて平面化工事に約26百万円もの費用を要することから、これに難色を示す区分所有者が現れることが予想されました。
そのため、現設備(32台)を維持修繕する場合の今後30年間のライフサイクルコスト(LCC)を比較対象に、今回の提案プランと比較する資料を用意しました。
イニシャルコストの負担は大きいものの、駐車設備を3分の1に減らすことで今後30年間のトータルコストが従来の半分以下に抑えられ、経済的な負担を軽減できることを説明しました。
駐車設備の撤去・平面化は、「共用部の変更」に該当するため、特別決議事項となり、議案の承認に際して「組合員総数・議決権総数の各4分の3以上の賛成」が必要です。
そのため、理事会主催で事前に住民説明会を開催するなど丁寧に対応しながら駐車場問題の認知向上に努めた結果、2回目の総会で何とか可決されました。
工事は、第1期をAブロック、第2期をその他3ブロックと2期に分けて実施し、約2ヶ月の工事期間を経て、先頃無事完工しました。
なお、工事期間中は、契約車両の仮移動も必要になるため、外部の駐車場を事前に確保する必要があり、その駐車料金は管理組合が負担しました。
また、従前と駐車場の仕様が大きく変わるため、工事中に希望区画のアンケートを実施しつつ、希望が重複した区画の抽選も行いました。
その後、余った3つの区画について新規利用者を募集したところ、使い勝手が向上したためか、すべて埋まり、管理組合の収入も増加することになりました。
<参考記事>