9月10日付けの朝日新聞デジタルに、「機械式駐車場、15%のマンションが平面化 メンテナンスが重荷に」と題した記事が掲載されていました。
本記事の要約は以下の通りです。
■ 2018年度の国土交通省による調査によると、約32%のマンションに機械式駐車場があるといわれる。
■ しかしながら、都市部を中心に車を持たないライフスタイルが広がったことや高齢化を背景に、空きが目立つようになり、維持管理に悩む管理組合も少なくない。
■ 大和ライフネクスト系のシンクタンクは、同社が管理を受託しているマンションのうち機械式駐車場が設置されていたのは2千件のうち、すでに機械式駐車場を撤去して跡地を平面化した物件が300弱(約15%)あるとのこと。
■ 機械式駐車場をすべて、もしくは一部を撤去した後、新たに設置した平置き駐車場の分を含め、駐車できる総台数の残存率を調べると、「70%以上80%未満」(26・8%)が最も多く、「80%以上90%未満」(23・8%)、「60%以上70%未満」(15・4%)の順だった。
■ 工事を実施した理由としては、「将来にわたって多額のメンテナンスコストや修繕費用を削減したい」「駐車場の利用者が少なく必要がなくなったため」といったものが目立つ。
■ 一方、工事に反対する住民の声ある。たとえば「中古で売りたいときに、駐車場の区画数が少ないのはマイナス評価にならないか」「平面化よりも前に、外部貸しなどやるべきことがある」など。
当社の顧問先マンションでも、すでに2件が平面化を実施しており、これから実施する予定のマンションも3件控えています。
顧問先で最初に平面化を実施したマンション(神奈川県・90戸 築25年目)では、全戸分の駐車場があり、そのほとんどが機械式(3段昇降横行式)で占められていました。
経年とともに稼働率が低下し、空き区画(すべて機械式)が全体の4割を占めるまで悪化してしまいます。
その一方で、築20年を過ぎる頃から設備の劣化が目立ち始め、部品の交換費用の負担も増加しました。
ちなみに、当時の長計修繕計画では、機械式駐車場の修繕費だけで約2億円もかかる見込みで、修繕費全体のおよそ2割を占めていました。
これに設備の保守点検費用の負担も加えてランニングコストを計算したところ、パレット1台あたりで年間@8万円弱の維持費がかかることがわかりました。
ただ、当時はまだ駐車設備の撤去・平面化というプランは目新しい頃だったため、一足跳びに事は進むわけでもなく、組合内では「空き区画を外部に貸したらどうか」とか、「既存の設備を使用中止にしてロックアウトしてはどうか」といった代替案も飛び交いました。
こうした代替案を含めて、それぞれのプランのメリット・デメリットを整理するとともに、駐車場の需要動向をリサーチするためのアンケートも実施し、今後も稼働状況が大きく改善することはなさそうなことを確認しながら検討を進めた結果、およそ3年越しで32台分のパレットの撤去と跡地の平面化を実施しました。
その結果、駐車場区画は、90台(平面式4台)→70台(うち平面式16台)に減りました。
ただ、その後もさらに駐車場の稼働台数が減ったため、ほどなく第二次平面化を検討することになりました。
その結果、前回からおよそ3年後に19台のパレットを撤去して区画数を58台(うち平面式23台)に減らしました。
現在の契約台数は50台のため、当面はこれで打ち止めでしょう。
結局のところ、2回にわたる平面化工事によって、今後30年間の機械式駐車場にかかるランニングコストを7千万円弱まで減らすことができました。
従前の見込み額が2億円だったので、何と3分の1に減らせたわけです。
ただ、冒頭の記事のように、このマンションでも総会に議案を上程した際には、少数ながら異論や反対の声もありました。
「全戸分の駐車場があることが資産価値にプラスになっているのではないか」との意見も見られました。
こうしたご意見にも書面で組合側の考えを回答しながら粘り強く対応し、なるべく多くの組合員に理解してもらうよう努めました。
と言うのも、駐車設備の撤去・平面化を実施する場合、管理規約上の「共用部の変更」に該当することから「特別決議」が必要になるため、組合員全体の4分の3以上の賛成が必要になるからです。
総会前にアンケートの実施や住民説明会の開催をしたり、都度理事会の検討状況を議事録で報告するなど地道な努力を重ねた結果、遊休設備を持ち続けるために修繕積立金の増額を余儀なくされる方が理不尽と考えた方が圧倒的多数を占めたため、平面化を実現することができました。
管理組合の地道な検討の積み重ねと内部のコンセンサスを得るための広報などの努力の結果、平面化プロジェクトの成功に至ったのです。
<参考記事>
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