3月27日付けの朝日新聞デジタルに、「『何も抵抗できない』、マンション第三者管理規約に注意 国も対策へ」と題した記事が掲載されていました。
本記事の要約は以下の通りです。
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◾️ 分譲マンションの「第三者管理」。住民の負担が減る一方、割高な修繕工事費などの問題が起きている。
◾️ 管理者(=理事長)業務を「プロ」の管理会社に任せる「第三者管理」では、管理規約にも注意を払う必要がある。
◾️ たとえば、広島のマンションでは昨年管理会社に任せる「第三者管理」に変えたが、改正された管理規約には、「管理者は、○○(管理会社名)もしくはその指名する者とする」と記載されている。◾️ 規約の条文を変更するには、総会で組合員数と議決権総数の各4分の3以上の同意が必要になる。 そのため、このマンションの区分所有者は、規約から会社名を抜くことなどを提案したが、反対多数でそのままになったと言う。◾️ 規約の記述によっては、住民が管理会社を変えようとしても、難しい仕組みになっていることを国も問題視し、対策に乗り出すことになった。
◾️ 国交省が昨年2~3月に管理会社45社に実施した調査では、20%が管理規約に管理者として管理会社の社名を「記載している」と回答した。また、管理組合の口座の通帳と印鑑を「どちらも管理会社内で保管」と答えたのは76%だった。◾️ 国交省は「管理会社を変えたり、第三者管理をやめるのが難しくなり、囲い込みにつながる」と問題視し、昨年10月から第三者管理のガイドライン改訂に向けた有識者会議をスタートした。◾️ 今月下旬にまとめる予定の改訂案では、規約に管理者の固有名詞を記載しないことを促す。このほか、管理会社の解任については、総会によって解任できる規定を設けることを求める。◾️ 他にも、管理会社が修繕工事をグループ会社に割高に発注するなど、問題が相次いでいることを受けた対応策も盛り込む。◾️ さらに、不正や不当なもうけがないかをチェックする監事を管理組合に設置し、マンション管理士や弁護士など専門家から選ぶよう求める。修繕積立金をためる預金口座の印鑑などは監事が管理することを促す。◾️ただ、ガイドラインには強制力がない。有識者会議の座長は「ガイドラインの実効性を考慮し、問題が今後も大きくなれば、立法による制度導入もあり得る」と話す。
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マンション管理組合の運営形態は、区分所有者から理事長などの役員を選出し、組合運営を担い重要な業務を執行する「理事会方式」が一般的です。
ただ、区分所有者が賃貸事業で運用するためのワンルームなどの投資用マンションや、区分所有者が遠隔地に住むリゾートマンションなどの一部については、管理会社に管理者も委任する「第三者管理方式」を採用するケースもありました。(下図参照)
<出典:朝日新聞デジタル>
なぜかと言えば、管理組合に理事会を設置することも、区分所有者から理事長を選出することも区分所有法では義務ではないからです。
理事会を設置するか否かは管理組合の「裁量」であり、管理者の資格も法的には制限がないので、(管理会社を含めて)外部の人間を選出してもよいのです。
既存マンションで理事会方式がほとんどを占めているのは、国交省が理事会方式を前提とした「標準管理規約」を作成しており、デファクト・スタンダードとして新築マンションのほとんどで採用されているからにすぎません。
したがって、管理規約を改正すれば、あなたのマンションも理事会を廃止して、第三者管理方式に移行することが可能です。
ただ、国が管理会社を管理者に選任することについて消極的な姿勢を示してきたのは、管理組合の代表者と管理委託先が同じだと、いわば自己契約の状況になり、利益相反が生じるリスクが極めて高いためです。
さらに、本記事で紹介された事例のように、管理規約において特定の管理会社が管理者に指定されている場合、管理者を解任したり、他社に変更したくても、あるいは元の理事会方式に戻したくても、それぞれ管理規約の改正(特別決議)が必要になるため、スキームの変更自体が困難になります。(管理会社の変更なら普通決議で可能です。)
管理者に特定の業者を指名する規約の条項が管理組合の総意にもとづくものなら結構ですが、管理会社の「お手盛り」で誘導された結果、安易に了承してしまうと後悔することになります。
<参考記事>