マンション管理士|村上智史の「士魂商才」 

無関心な居住者が多いマンション管理組合に潜む様々な「リスク」を解消し、豊かなマンションライフを実現するための「見直し術」をマンション管理士:村上智史(株式会社マンション管理見直し本舗 代表)がご紹介します。

施工現場の写真付き!電気防食工法によるマンション給水管の延命対策工事

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昨年の11月と12月に、築20年超の顧問先マンション2件(都内76戸、神奈川県31戸)で電気防食工法によるマンション給水管の延命対策工事を実施しましたので、ご紹介します。

 

既存マンションに設置されている共用給水管の多くは、配管の内面に錆止めのコーティングが施された「硬質塩化ビニルライニング鋼管」を使用しています。

 

そのため、配管のほとんどの部分は耐食性に優れ、その耐用年数もかなり長いと考えられています。

 

ただ、配管の繋ぎ目となる継ぎ手部分にどうしても隙間が生じるため鉄が酸化し始め、その後徐々に錆(腐食)が進行し『赤水』や『漏水』を引き起こすリスクがあります。

 

そのため、マンションの長期修繕計画では、一般的に30年から40年の間で共用部の配管全体の更新が必要となると見込んでおり、概算費用(戸当たり30万円程度)を計上しています。

 

このような給水管の経年劣化に対する一般的な修繕方法としては、「更新(取替え)」と「更生」の2種類の方法があります。

 

配管自体の更新を行えば、その後長期間にわたって修繕が不要になるというメリットがあります。

 

ただし、上記の通り高額な費用がかかるうえ、躯体内に隠蔽されている配管を露出させるケースが多く、その結果、マンションの美観が損なわれるというデメリットがあります。

 

一方、更生工事は、既設配管内に発生した錆コブ等を研磨・洗浄したうえで特殊な樹脂を流し、内部をコーティングする方法(ライニング工法)です。

 

工期が短くコストも抑えられるのがメリットですが、やはり継ぎ手部分から再び腐食が始まることは避けられず、保証(延命)期間も10〜15年程度が一般的です。

 

また、配管内を削ることによって管の厚みが薄くなるため、更生工事の再実施は難しく、将来的に更新(取り替え)工事は避けられません。

 

今回実施した「電気防食工法」は、更新でも更生でもない、第三の方法となります。

 

電気防食工法とは、金属が腐食する原理を逆手に取って、鉄に反対方向の微弱な電流を流し続けることで、酸素と反応しない不活性領域(=酸化しない状態)を形成することで錆の発生を防止する方法です。

<下図参照 (図1)「腐食電流」の発生 (図2)「防食電流」の発生>

 

 

なお、この工法は、船底や橋脚の維持にも活用されている技術で、すでに100年以上の実績があります。また、第三者専門機関(一般財団法人建築保全センター)から「保全技術審査証明」も取得しています。

 

巷間では、他に「磁気処理工法」、「カルシウム防錆工法」といった延命対策も宣伝されていますが、信頼できる第三者の専門機関による審査証明を得た延命対策は他にありません。

 

具体的な施工作業の内容は以下の通りです。

①全戸を対象に「断水」平日2日間 日中の9時−17時
②配管を切断し、電極ユニット(アノード)と制御ユニットを設置。(下図参照)
③上記②と併せて配線の敷設工事を実施
④通水と通電の確認を行い、正常に作動しているかを確認

■ 設置工事費

 戸当たり6万円から10万円程度
(建物の階数や配管の系統によって変動します)

■ 導入効果の保証

 施工後の検査終了後10年間、製品及び効果保証が付帯します。

①製品保証
正常な使用状態において故障した場合は、部品代、修理工料とも無料で修理。

②効果保証
・ 給水管内部からの腐食などに起因する漏水の場合、原状復帰対応を実施。
・ 水道法の規定に基づき「鉄及びその化合物の水質基準値0.3mg/ 以下」を満たせない場合、給水管洗浄工事を含む基準値内確保のための対応を実施

 

昨年の12月に実施した、築28年の神奈川県のマンションでの施工現場の状況を以下ご紹介します。

 

【電極ユニット(アノード)設置前(上)と設置後(下)の給水管】

 

 

【制御ユニット設置後の状況】

赤色ランプの点灯で通電を確認できます。

 

 

ちなみに、パイプスペース内の配管を一部撤去した部分を撮影した下の画像(上側)には、水垢が付着していることが確認されましたが、塩ビでコーティングされており、発錆はありませんでした。

 

 

一方、防食加工した継手のねじ込み部分の画像(下側)には、発錆があることを確認できました。

 

この継手周りの腐食が進行すると、やがて錆コブに成長し、水流が悪化したり、赤水が発生します。そして、最終的には配管全体の交換が必要になってしまいます。

 

しかしながら、今回の電気防食工事によって、配管内でこれ以上の発錆が進行しなければ、給水管の交換を回避できる可能性もあると思われます。

 

ちなみに、この機器の設置に伴うランニングコストが以下の通り見込んでいます。

(ファミリー型タイプ50戸のマンションの場合)

■ 電気代の増加
電気防食装置1箇所につき年間50円程度。

10ヶ所でも年間500円とわずかな負担です。

■機器のメンテナンス費用
・制御ユニット   :約90万円(耐用年数30年)
・パッキン     :約50万円(耐用年数15年)
・リミッタ     :約 9万円(耐用年数20年)
・電極ユニット(アノード):耐用年数が長い(60年)ため、対象から除外。

 

なお、電気防食工法の詳細については、下の記事も併せて参考にしてください。

 

<参考記事>

aplug.ykkap.co.jp

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