昨今、駐車場の空き区画の増加に悩んでいる管理組合が増えています。
私の顧問先でも、すでに2件のマンションで平面化を実施しており、現在別のマンションでも鋭意検討中です。
都内にある顧問先マンションでは、機械式駐車場9台のうち7台が長らく空き区画となっていたため、足掛け4年の検討期間を経て、今年に入ってようやく設備の撤去・平面化工事を実施しました。
<参考記事>
マンション内の駐車場については、「第2の管理費」として使用料金を徴収し、管理組合の重要な収益源として維持管理や修繕の費用に充てているのが一般的です。
そのため空き区画が増えると、まず「収入減」という問題に直面します。
また、マンションの場合、敷地面積の制約から立体式の駐車設備を導入するのが一般的です。
その場合、駐車場の稼働が低下しても、設備の保守点検費や修繕費は固定費として負担し続けなくてはなりません。
そこで、多くの管理組合では「収益の改善」と「コスト節約」の2種類の対策を検討し始めます。
すぐに思いつくのが「駐車場の外部貸し」ですが、実際にはそう容易ではありません。
その理由は3つあります。
一つは、利用者の募集をどのように行うのか?という問題です。
管理組合(理事会)が自ら行うのは困難なため、営業代行会社やサブリース会社に委託するのが現実的でしょう。
サブリース会社に一定の収益を保証してもらう契約もありますが、市場相場に比べると半額程度になってしまうことが少なくありません。
二つ目は、税金の問題です。
マンションの居住者以外に駐車場を貸し出す場合には「収益事業」と判定され、法人化していない管理組合でも「みなし法人課税」の対象になってしまいます。
ざっくり言うと、その賃貸収益に対して3割程度の税金を納めなくてはなりません。
また、その申告を税理士に委託すれば、その代行費用もかかります。
つまり、サブリース会社への委託や税金ならびにその申告費用の負担等を考えると、期待したほどの経済効果が得られにくいというわけです。
三つ目は、セキュリティの問題です。
居住者以外の外部の人間が敷地内に出入りすることになると、オートロックなどで守られているセキュリティに「穴」が生じるため、組合内の合意形成に時間がかかる可能性があります。
収益改善策で挫折すると、次に考えるのがコスト削減です。
駐車設備の撤去・平面化という選択は、初期コストが大きくかかるという点で「荒療治」と言えるでしょう。
ただ、既存設備を撤去した後は保守点検費や設備更新費の負担から解放されるというメリットがあります。
そういう意味では、「先憂後楽」の手法です。
駐車場の平面化には
・鋼製板敷込み工法
・埋め戻し工法
の2種類があります。
前者の場合、パレットをすべて撤去した後、ピット内に梁と柱を組み立て、その上に鋼製板を敷き込み、新たな平置き駐車場を形成するというものです。(下記画像参照)
後者については、駐車設備を撤去した跡のスペースを砕石で埋め戻し、アスファルト舗装で表面を仕上げる方法です。
ただ、埋め戻し工法の場合、ピット自体が砕石の重さに耐え切れるかどうかという問題があります。
また、マンション敷地の地質の状況(地盤の硬さ、水位)によっては、埋戻し後に地盤沈下や地下水の逆流を引き起こす事例も一部見られます。
そのため、鋼製板敷込み工法の方が、工事後に不具合が生じるリスクは小さいと思われます。
ただ、この選択についても以下のように留意すべき点があります。
(1)駐車場設備の撤去・平面化は「共用部分の変更」に該当するため、総会の特別決議事項となります。その場合、全区分所有者の4分の3以上の賛成が必要です。
平面化を実現したマンションでは、事前に今後の駐車場の利用ニーズを確認するためにアンケートを実施したり、総会で議案を上程する前に、これまでの検討経過から平面化の具体的なプランならびに経済効果の試算に関する説明会を開催するなど丁寧な運営を行うよう努めていました。
(2)マンションの所在する地域が駐車場の附置義務条例の対象に含まれていないか確認が必要です。
自治体によっては、駐車場の附置義務条例が制定されている場合があります。
附置義務条例は、過去に都心部等で駐車場不足が問題となったことで制定されたもので、大規模な商業施設やマンションを新設する際には、収容できる駐車台数を一定数設けることを義務付けています。
マンションが建つエリアによっては、この条例に該当する可能性があり、機械式駐車場の撤去によって収容できる駐車台数を減らすと、条例に違反するおそれがあります。その結果、場合によっては罰金等の行政罰が課されるリスクがあります。
ただ、車離れに伴う駐車場ニーズの低減傾向も見られることから、国土交通省でも附置義務条例の見直しが図られ、特例として平面化を認める動きが各自治体で見られます。
東京都では、附置義務で定められた駐車台数未満に緩和するための認定基準やそのための申請手続きの要件等を定めていますので、ご確認ください。
<参考記事>
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