マンション管理士|村上智史の「士魂商才」 

無関心な居住者が多いマンション管理組合に潜む様々な「リスク」を解消し、豊かなマンションライフを実現するための「見直し術」をマンション管理士:村上智史(株式会社マンション管理見直し本舗 代表)がご紹介します。

「マンション管理認定計画制度」について管理組合が知っておきたいこと

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4/11付の「エコノミスト オンライン」に、「4月スタート「マンション管理計画認定制度」の六つの課題は?」と題した記事が掲載されていました。

 

<参考記事>

weekly-economist.mainichi.jp

本記事の要約は以下の通りです。

■ 改正マンション管理適正化法の施行を受け、今年4月からマンションの管理状況を地方自治体がチェックする「管理計画認定制度」がスタートした。

■ ただ、この制度を実際に機能させるには課題が多く見受けられ、以下6つの課題を指摘したい。

<課題 その1> 「情報難民の組合」への周知方法

 ほとんどの自治体はこの制度の根拠である「管理適正化推進計画」の作成や周知まで手が回っていないのが実情で、意識の高い区分所有者や管理会社のフロント担当者から通知されない限り、ほとんど制度自体の存在すら知らないだろう。

 特にすでに管理不全に陥っている「自主管理」タイプの管理組合には情報が届かない恐れがあり、「情報難民の管理組合」にどう周知するかが課題だ。

 <課題 その2> 組合予算の確保

 管理組合の運営は「予算準拠主義」のため、次期の予算案が総会で承認されなければいけない。認定を受ける費用は2万~4万円とされるが、いまだ明確でない。 

 <課題 その3> 長期修繕計画の見直しが必要

 国土交通省は昨年9月、長期修繕計画等および修繕積立金のガイドラインを改定した。既存マンションの計画期間は、これまで「25年以上」だったものが、「30年以上」に変更された。したがって、管理計画の認定を受けるには、計画期間を30年に延ばした長期修繕計画を作り直さなければならなくなる。

 また、本制度では計画の見直しの周期は5年間とされているが、国交省の調査でも回答した管理組合の3割以上が10年近く見直していないため、計画の更新作業も管理組合の負担としてのしかかってくる。

 <課題 その4> 「非認定マンション」へのフォローアップ 

 認定を申請しても「非認定」の結果が出た場合はどうするのかが不明である。地方自治体が「助言・指導・勧告を行う」とされるが、どんなフォローをしてくれるか管理適正化推進計画に明記される必要がある。

 <課題 その5> インセンティブの付与

 管理計画が認定された場合、住宅金融支援機構の長期固定住宅ローン「フラット35」や「マンション共用部分リフォーム融資」の金利が引き下げられることが決まったが、制度を普及させるには追加のインセンティブがほしい。

 例えば、防災用の備蓄品や土のうなどの贈呈、長期修繕計画の無償作成サポートなどが考えられる。自治体独自の助成や補助制度を組み合わせることで、マンションの資産価値はもとより、地域の価値や安全性の維持・向上にもつながるインセンティブが必要だ。

 <課題 その6> 乱立する類似制度の整理

 本制度以外にも、マンション管理業協会の「マンション管理適正評価制度」、日本マンション管理士会連合会の「マンション管理適正化診断サービス」、東京都による「優良マンション登録表示制度」などが乱立している。管理組合にとっては複数制度を整理して理解するのも容易ではなく、制度の統合・整理が必要。

 

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この制度について第一に知っておくべきことは、「管理計画の認定を受けるのは、義務ではなく権利」だということです。

 

管理組合が都道府県等の知事等に自らのマンションの管理計画を提出し、一定の基準(認定基準)を満たす場合に認定を受けることができる制度と記載されています。

 

したがって、上の要約に挙げられた<課題 その1>で指摘されているように、こうした情報に疎かったり、関心自体がない管理組合にはまったく周知されない可能性があります。

 

本制度の趣旨は、今後急増する老朽化マンションが管理不全に陥ることで建物の維持管理に支障が生じたり、地域住民に防災・防犯上を含む安全等のリスクが高まることを防ぐことです。

 

にもかかわらず、認定を受けることが義務ではないとすれば、結局一部の優良マンションだけがこれに参加するのにとどまり、本制度が本来ターゲットとしたい管理不全マンションやその予備軍が「蚊帳の外」に置かれることにならないか懸念されます。

 

そして、次に知っておくべきことは <課題 その2>にも関連しますが、認定の申請を行う際には、事前に総会決議が必要になる、ということです。

 

というのも、管理計画の認定手続きに際しては公財)マンション管理センターが提供する「認定手続支援システム」を利用する必要があり、その利用料が1万円かかる(当面の間は助成制度にもとづき実質無償となる予定)ためです。

なお、その手続きをマンション管理士に委託する場合には、別途その費用も必要です。

 

つまり、管理組合にとって何らかの支出が生じる以上、事前の総会決議が必要なわけです。

 

次に留意すべきは、 長期修繕計画の更新と修繕積立金の設定に関する結構重たい課題です。

 

認定されるためのチェック項目は、以下の6つです。

 

①  長期修繕計画が「長期修繕計画標準様式」に準拠して作成され、計画の内容及びこれに基づき算定された修繕積立金額について集会にて決議されている

 

② 長期修繕計画の作成又は見直しが(認定申請日から遡って)7年以内に実施されている

 

③ 計画期間が 30 年以上でかつ残存期間内に大規模修繕工事が2回以上含まれるように設定されている

 

④ 長期修繕計画において将来の一時的な修繕積立金の徴収を予定していないこと

 

⑤ 計画期間全体での修繕積立金の総額から算定された修繕積立金の平均額が著しく低額でないこと

⑥  長期修繕計画の計画期間の最終年度において借入金の残高がないこと

 

補足すると、①と②については、

長期修繕計画の作成(又は変更)を決議した総会議事録の写しの提出が必要です。

 

また、⑤については、

計画期間全体での修繕積立金の平均額が、国交省の「マンションの修繕積立金に関するガイドライ ン」に示された金額の目安を設定する際に参考とした事例の3分の2が包含される幅の下限値以上である必要があります。(下図参照)

 

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なお、ご自身のマンションの修繕積立金の平均額を算出する方法は、下記の過去ブログをご参照ください。

 

<参考記事>

yonaoshi-honpo.hatenablog.com

まとめると、長期修繕計画に関するチェック項目をクリアするには、以下3つの条件を満たす必要があります。

1)「標準書式」に準拠した長期修繕計画を少なくとも7年周期で更新すること。

2)長期修繕計画の更新について総会決議を得ること。

3)修繕積立金の平均額が「国のガイドライン」の下限値以上を維持すること

 

修繕積立金の徴収額が安く設定されがちな新築あるいは築浅のマンションでは、上記3)の条件を満たすのは厳しいと思われます。

 

いずれにしても、マンション管理組合が自力で認定を受けるための条件をクリアしたうえでこの申請手続きを完了させるのは至難の業でしょう。

 

その意味では、現段階ではこの制度が普及するには前途多難な状況と言えます。

 

<参考記事>

yonaoshi-honpo.hatenablog.com

yonaoshi-honpo.hatenablog.com

yonaoshi-honpo.hatenablog.com

yonaoshi-honpo.hatenablog.com

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