3月4日付けの朝日新聞に、「マンション大規模修繕12年→18年周期 居住者負担減」という記事が掲載されていました。
本記事の要約は以下の通りです。
■ 大規模修繕は12年ごとが一般的だが、最長18年ごとで済む修繕サービスが普及し始めた。安全を保ちつつ回数を減らせれば、住民が負担する月々の修繕積立金の負担を軽くすることが可能という。
■ 不動産管理会社の東急コミュニティーはこのほど、仕様や工法などを工夫することで、最長18年に1回で済む修繕サービスを発表した。
■ マンションの建替えを判断する目安は、築60年。この間に行う大規模な修繕工事を4回から3回に減らせるという。
■ 新築だけでなく既存のマンションでも対応できる。まずは首都圏で管理するマンションで始め、全国に広げていく計画だ。
■ 「最長18年」のサービスは、同業の野村不動産パートナーズが先立つ2017年に始めている。首都圏の新築分譲では、その8~9割に採用している。
■ コンサルタントによると、周期を延ばすことは技術的にはそれ以前から可能だったが、「12年」を常識とする業界の慣習が根強く、採用がなかなか進まなかった。
■ しかし、大規模修繕の工事コストが14年ごろから跳ね上がった。積み立てられた修繕の費用が十分でない例も目立ち始め、対応策として「最長18年」への注目が集まるようになった。
■ コンサルタントによると、築60年までの複数の大規模修繕の総費用は14%ほど減らせるケースが多い。総戸数100戸のマンションに当てはめると、住民の修繕積立金の負担は60年間で1戸あたり220万~250万円程度の軽減になるという。■ ただ、修繕費用の削減はできるが、18年間ほったらかしで良いわけではなく、こまめなメンテナンスが資産価値の維持という点で重要だ。
冒頭の記事で話題にあがっている、「東急コミュニティー」のリリース記事を確認したところ、その要点は以下の3つでした。
■ マンション大規模改修工事の周期を12年から最大18年に延長できる新しい長期保証商品「CHOICE」を販売開始する。
■ 大規模改修工事で用いる仕様・工法等の工夫により、防水、塗装など建物の外装に関わる工事の保証期間を従来に比べ1.5倍~2倍に延長する。
■ 大規模改修工事の周期延長は適用条件を満たせば既存マンションにも適用が可能。今後、総合管理している首都圏の物件を対象に提案していく。
ただ残念なことに、肝心の「長期保証を可能にする仕様・工法」が何なのかが具体的に記載されていないため、何の説得力もなく、現段階では論評のしようもありません。
ただ、私に言わせれば、「大規模修繕工事の周期が12年」というのが「常識」というのは、もっぱら管理会社による管理組合への「刷り込み」によるものです。
たしかに、管理会社が作成する長期修繕計画を見ると、ほとんど全部と言ってよいほど、大規模修繕を12年周期で実施する想定になっています。
ただ、それはあくまでシミュレーション上の話にすぎません。
そもそも、長期修繕計画を作成する目的とは何なのでしょうか?
それはすなわち、
管理組合の長期的な資金需要を把握したうえで、毎月徴収すべき必要な修繕積立金を算出することにあります。
12年周期なら、30年間で大規模修繕を2回実施する計算になります。
つまり、マンションの立地条件や周辺環境、あるいは最初の施工の巧拙(手抜きの有無を含む)などによっても適切な周期は変わってきますが、大規模修繕は概ね12〜15年周期で行うものと考えておけばよいでしょう。
ちなみに・・・、
昔は10年周期で大規模修繕を実施する想定で長計が作られていました。
そうなると30年間で3回も多額の支出を迫られることになります。
これでは、ただでさえ低目に設定されている修繕積立金をどんどん値上げしないといけなくなるので、さすがに現実的な周期に補正されたものと思います。
さて、大規模修繕に関する管理組合に対する「刷り込み」は、もう一つあります。
それは、「すべての工事を一度に実施するのが合理的」という考え方です。
たしかに、足場(仮設)を必要とするような外壁補修、縦管などの塗装、バルコニーの防水工事については一括で実施するのがコスト効率が良いです。
ただ、廊下や階段の長尺シートの貼替え、屋上防水の改修工事については原則として足場は必要ないため、上記の工事と分離しても問題ありません。
つまり、重要なことは、事前に劣化診断を実施して各所における修繕の必要性をレベル別に分類し、大規模修繕の実施時期や対象範囲を適切に判断することなのです。
私の顧問先のマンション(築26年目)では、先月臨時総会が開催され、屋上防水の改修工事の実施が決議されました。
このマンションでは、第2回目の大規模修繕を検討すべく、昨年建物劣化診断を実施しました。
現在シート防水が施されている屋上部では、滞留水の跡、保護塗料の剥離、防水層の膨れが見られるほか、ジョイント部でのシートの剥離や一部雨水浸入も見受けられます。
その後の組合総会では、一部漏水が発生したこともあって、屋上防水の改修工事を優先して検討してほしいとの意見が挙がったことや、屋上防水工事の場合、上記の理由から大規模修繕工事とは切り離して実施できるため、屋上防水工事を先行して実施する方針に変更となりました。
その後、複数の業者から相見積もりを取得のうえ比較検討した結果、10年保証が一般的とされる屋上防水工事において、25年の長期保証が付帯する工法を採用することになり、4月に着工することが決まりました。
(その経緯や検討経過については、下の記事を参照ください。)
<参考記事>
上記の事例に見られるように、施工方法や使用する素材のイノベーションによって、これまでの常識とされていた修繕周期が一変することもあります。
管理組合のみなさんは、「業界のジョーシキ」に振り回されたり、騙されることのないよう注意してください。
<参考記事>
※ ブログ認知度向上にご協力いただければ嬉しいです (^▽^)/
↓ ↓