マンション管理士|村上智史の「士魂商才」 

無関心な居住者が多いマンション管理組合に潜む様々な「リスク」を解消し、豊かなマンションライフを実現するための「見直し術」をマンション管理士:村上智史(株式会社マンション管理見直し本舗 代表)がご紹介します。

マンションの長期修繕計画に潜む巧妙な「トリック」

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先日、当社の「管理コスト適正化診断プログラム」をご契約いただいた都内の大規模マンション(築10年目)のケースをご紹介しましょう。

 

このプログラムでは、主に以下の2つの業務を行います。

1)維持管理費の適正化を目的として、管理委託費・マンション保険料・電気料金等の削減・見直し余地を査定し、それらの適正金額を算出のうえ報告すること。

 

2)長期修繕計画書をもとに、修繕積立金が将来不足するリスク、ならびに維持管理費の適正化による経済効果を定量的に試算すること。

 

このうち2)の業務の一環で、現状の長期修繕計画を精査してみたところ、これまで経験したことがない状況を把握することができました。

 

一般的に、分譲時の修繕積立金の水準が低いため、現状徴収している積立金を2〜3倍以上増額しないと将来の大規模修繕の際に資金不足が生じるリスクを抱えている管理組合がもっぱらです。

 

そして、そのマンションにとって修繕積立金がいかほど必要かをスクリーニングするための有効なデータとして、国交省の「修繕積立金ガイドライン」があります。

 

このガイドラインにしたがって、建物階数や延床面積に加えて、附設された機械式駐車場の型式・台数を加味して試算したところ、均等積立方式で必要とされる金額は専有面積1平方メートルあたり月額280円となりました。

 

しかしながら、このマンションの長期修繕計画(30年)で見込まれる修繕見込み額から逆算して同様に割りもどしてみたところ、月額150円にしかなりません。

 

つまり、国交省の「ガイドライン」に比べて約半分の水準ということです。

 

実際に徴収している修繕積立金の金額も現在月額150円のため、一見何の問題もなさそうです。

 

しかし、このマンションの長期修繕計画の詳細をさらに調べるため、各部位ごとの修繕周期を確認したところ、ある重要な事実に気づきました。

 

この30年間の長期修繕計画は「築6年目から築35年目」までのものですが、以下の修繕についてはすべて「築36年目」に実施する予定との記載がなされていたのです。

 

 ■建具・金物類の取替え     

 ■機械式駐車場の更新         

 ■給水管の取替え         

 ■排水管の取替え         

 ■ エレベーター設備更新費用    

 ■スプリンクラー設備の更新       

 ■電気設備の交換            

 ■排水処理槽取替え      

 ■ガス設備取替え  

        

そして驚いたことに、 これらの修繕見込額を合計してみると、国交省の「ガイドライン」との差異の理由についてもほぼ説明がつくことがわかりました。

 

この計画を作成した管理会社にどのような意図があるのかはわかりません。

 

しかし、現状の積立金の中に、将来明らかに必要となり、しかも高額に及ぶ設備更新費を含んでいないという前提条件を管理組合は認識しているのでしょうか?

 

長計は概ね5年周期で更新されることが多いのですが、次回計画を更新する際には、(修繕時期を41年目以降に再調整しない限り)この「築36年目問題」が露見するでしょう

 

その際に、現状の積立金では将来大幅に資金が不足することが明らかになるわけですが、管理会社はどのように説明するつもりなのか?・・謎です。

 

<参考記事>

 

yonaoshi-honpo.hatenablog.com

  

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