顧問先のマンションの理事会で、管理会社が今期の決算状況を説明しました。
このマンションの管理費会計では、収入科目の一つに「町内会費」があり、今期の予算として43,200円を計上していました。
実際には、毎月戸あたり@100円徴収を徴収し、36戸分で計3,600円を収入として計上していました。
ところが、月次会計収支で期末の3月でこれまでの徴収した金額だけマイナス計上して取り消し、年間の収入はゼロになっていました。(下図参照)
なぜこんな処理になったのか?
43,200円はどこへ「消えた」のか?
この「謎」をすぐに解くことができませんでした。
今年度は、「コロナ禍で活動休止したため町内会費を徴収しない」ことが決まったため支出がなくなり、剰余金が43,200円増えるはずでした。
そのため、管理会社が徴収した町内会費を区分所有者に返還することを提案し、理事会がこれを了承しました。
ただ、その精算を各区分所有者に対する振り込みで行うと多額の手数料がかかります。
なので、来期の管理費の一部と相殺する方法、つまり自動引き落としによる振替え額を町内会費の分だけ減らすことにしたのです。
実は、冒頭で説明した「消えた町内会費」の謎は、この精算方法が関係していました。
当初「収入」として計上していた町内会費が、決算では負債科目の「前受金」の一部として取り込まれていたのです。
これを詳しく解説しましょう。
管理会社は以下のような手順で会計処理(仕訳)していたと思われます。
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( 借方 ) / ( 貸方 )
(1)普通預金 43,200 / 町会費(収益)43,200 <1年間の累計>
その後、町内会から「今期は徴収しない」との連絡を受け、組合員に全額返金することを理事会で決議。
そのため、町内会費の計上科目を「収益」から「預かり金」に変更。
(2)町会費(収益) 43,200 / 預り金(返金用) 43,200
さらに、管理会社がこれを来期の管理費に充当するため「前受金」に科目を変更
(3)預り金(返金用) 43,200 / 前受金(来期分の管理費) 43,200
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要するに、(1)から(3)までの処理を一つにまとめると以下のようになります。
普通預金 43,200 / 前受金(来期分の管理費) 43,200
区分所有者に返金する予定のため、収入の代わりに「預かり金」として計上するのはわかりますが、決算では一切の説明もなく前受金(の一部)に計上してしまったので、理解できなかったわけです。
もちろん、簿記の知識のない一般組合員には何のことやらまったく分からないでしょう。
そのため、決算書には以下のような補足説明を加えることを理事会と管理会社に提案しました。
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今期の町内会費(年間43,200円:1世帯あたり1,200円)は町会より徴収しない旨の連絡を受けたため、収益には計上せず、来期の管理費の一部に充当することといたしました。
そのため、今期末時点では上記金額(43,200円)を「前受金」の一部として計上しております。
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今回の管理会社が行なった会計処理は、「間違い」ではありませんが、少々乱暴だったと思います。
町内会費の返還を管理費と相殺したのは、振込手数料の節約のための「便法」です。
なので、今期の決算時点では「預かり金」の計上で済ませていても何ら問題はありませんでした。
それを管理組合には一切の説明もなく、区分所有者が前払いする管理費の一部に町内会費を加えてしまったら理解することは至難の業です。
管理会社にはもっと丁寧な仕事をしてもらいたいと思います。
<参考記事>