マンション管理士|村上智史の「士魂商才」 

無関心な居住者が多いマンション管理組合に潜む様々な「リスク」を解消し、豊かなマンションライフを実現するための「見直し術」をマンション管理士:村上智史(株式会社マンション管理見直し本舗 代表)がご紹介します。

マンションの建替え・解体、いずれも「至難の業」のワケ

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5月10日付の朝日新聞に、「マンション解体、いばら道」という記事が掲載されていました。

digital.asahi.com

本記事を要約すると、以下のとおりです。

■ 新潟県湯沢町で、区分所有者全員合意にもとづき、老朽化したリゾートマンションが解体の後更地で売却され、管理組合が解散した。

■ 解体されたのは、築44年・30戸のマンションで、苗場のリゾートマンションの草分け的な存在だった。

■ しかし、バブル崩壊後に利用者が激減。その後、管理費や修繕積立金の滞納も相次ぎ、修繕もままならなくなった。

■ 廃虚になるのを避けようと、2014年に区分所有者の一人が動き、他の区分所有者を登記簿で調べ、アンケートを実施して意向を聞いた。

■ アンケート結果を集計した結果、マンションの利用希望者は皆無だったことから、解体の方針が決まり、建物を閉鎖した。

■ ただし、マンションを解体して更地を売却するには、所有者全員の合意が必要にもかかわらず、区分所有者のうち4名の連絡先が不明のため、探して合意を取り付ける必要があった。
■ 管理会社の部長は、周辺の「聞き込み」から始め、不明の所有者を突き止めた。解体に反対した所有者には、「このまま放置して何か事故が起きたら、責任を問われかねない」などと説得し、解体の合意が得られた。
■ その後17年の組合総会で全員合意による解体を決議。修繕積立金残高を使って解体し、昨年6月に更地となった。
■ 滞納管理費の一部を回収できたこともあり、追加負担なしで処分できたが、動き出してから5年がかかった。
■ 今回のケースで売却が実現した背景には、修繕積立金が使われずにたまっていたため、それを解体の資金を確保できたことがある。それでも5年の歳月と、関係者の膨大な手間を要した。マンションの「終活」がいかに困難かを示した事例である。

■ 国土交通省の統計では、分譲マンションの総戸数は17年末時点で約644万戸ある。20年後には、築40年超の老朽物件が約350万戸に増えると見込まれる。

■ 建替えには見切りをつけてマンションを解体しようとしても、そこには「所有者の合意」という高いハードルが待ち受ける。修繕積立金が十分にプールされていなければ、修繕も解体もできないまま、廃虚となって放置されるリスクが高まる。

■ 一部の専門家からは、「少子化が進む日本では今後、マンション解体を前提にすべきで、更地売却の場合でも『5分の4』の合意を原則とし、解体費用の積み立てを義務化すべき」との意見もある。

 

 マンションの建替えを決議するには、区分所有法で「総会決議で全所有者の5分の4以上の賛成が必要」とされています。

 

それでは、

建物解体⇒敷地売却には、なぜ所有者「全員」の賛成が必要か、ご存知ですか?

 

敷地売却は、区分所有法ではなく民法の条文にもとづくからです。

 

分譲マンション全体は、各区分所有者による「共有物」ですね。

 

民法では、共有物を処分する際には共有者全員の合意が必要です。

 

しかし、分譲マンションの管理・運営において常に全員合意を条件とするのはあまりにも非現実的です。

 

そのため、「民法の特別法」として区分所有法を定め、原則として過半数の合意で足りるようにしたわけです。

 

ただし、管理規約の改正や共用部の大きな変更などの重要案件は「特別決議事項」として全体の4分の3以上、そして建替えについては全体の5分の4以上の賛成を要すると別途定めました。

 

しかし、マンションを解体したら、おのずと区分所有権も消滅し、敷地の共有持分だけになってしまいます。

 

そのため敷地売却に際しては、民法の原則どおり「共有者全員の合意」が求められる、というわけです。

 

しかし、冒頭の新聞記事にも紹介されているように、老朽化マンションの建替え事例は極めてレアケースとなっています。

 

その最大の理由は、やはり建替え資金の問題です。

 

建替えを実現するには、既存建物の解体費、居住者の移転費用、仮移転中の家賃、新築建物の建設費を工面する必要があります。

 

幸運にも、もし既存建物に余剰容積があった場合には、「空中権」をデベロッパーに売却することで建替え資金をねん出するという「マジック」も活用できますが、通常は各人が1千万円単位の費用を負担しなくてはなりません。

 

当然ながら、区分所有者によって経済状況が異なるため、全体の8割の合意を取り付けるのは容易ではありません。

 

とは言え、老朽化した建物に永久に住み続けられるわけではありません。

 

資金的な問題で建替えが困難となれば、(建物解体費は何とか捻出したうえで)敷地の売却で組合を解散するプランも選択肢に入れたいところです。

 

ところが、敷地売却は、上記のとおり民法の定めで「全員の合意」が求められるため、さらにハードルが上がってしまいます。

 

その解決策として、さすがに耐震性が足りないマンションや、大規模に被災したマンションを対象とする「マンション敷地売却制度」(2014年)が施行され、全体の5分の4以上の合意があれば解体・売却できるようにはなりましたが、これでは「焼け石に水」です。

 

老朽化マンションの将来は完全に「袋小路」にはまり込んでしまっていると言えます。

 

今後少子高齢化が進む中、近い将来マンションでも所有者不明や相続放棄などの住戸が出現することは間違いないでしょう。

 

しかしながら、わが国では不動産登記も義務化されていないため、連絡が取れなくなった場合に本当の所有者を捜索するのはとても厄介な仕事です。

 

・管理組合の設立は法的義務だが、設立しなくとも罰則なし。

・区分所有者の管理は、登記制度が義務化されていないため非常に心許ない。

・管理者の選任、管理規約や長期修繕計画の作成は、管理組合にお任せ。

・計画的に修繕が実施されているかどうかも、管理組合にお任せ。

 

こうしたある意味「放置プレイ」の環境のもとにありながら、建替えや敷地売却を実現するハードルだけやけに高いのは、あまりにも性善説に偏っていて、著しく制度的なバランスを欠いているように思うのです。

 

<参考記事>

     

yonaoshi-honpo.hatenablog.com yonaoshi-honpo.hatenablog.com 

yonaoshi-honpo.hatenablog.com  

yonaoshi-honpo.hatenablog.com

  

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5年ぶりの「マンション総合調査」結果でギモンに思ったこと

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去る4月26日に、国交省より「平成30年度マンション総合調査」の結果が公表されていましたので、その内容についてご紹介します。 

 

 (1)アンケートデータの収集方法と対象

 

■ データ収集の手法:アンケート調査
■ 対象地域     : 全国
■ 調査実施期間   : 平成30年11月~12月
■ 収集データ数   : 4,200 管理組合  8,400 区分所有者

 

(2)サマリー


1)世帯主の年齢 
・「60 歳代」が 27.0%と最も多く、次いで「50 歳代」が 24.3%、「70 歳代」が 19.3%、「40 歳代」が 18.9%。

・30 歳代以下は減少する一方で、70 歳代以上は増加しており、着実に高齢化が進行している

 

2)賃貸住戸・空室戸数

・築年数の増加とともに賃貸住戸・空室数も増加

 

3)所在不明・連絡先不通の戸数割合(新規調査項目)
・昨今注目されている「所有者不明問題」に対応すべく創設?

「 20%超」( 2.2%)

 

4)永住意識
「永住するつもりである」: 62.8%

・永住志向の割合が着実に上昇している。


5)管理規約の改正状況
・改正したことがある: 88.5%

 

 

6)戸当たり管理費・修繕積立金
・戸当たりの管理費の平均 :月額 15,956 円(駐車場使用料等の充当額含む)
・駐車場使用料等からの充当額を除いた場合:月額10,862 円


・戸当たり修繕積立金の平均:月額12,268 円(駐車場使用料等の充当額を含む)
・駐車場使用料等からの充当額を除いた場合:月額 11,243 円

 

7) 管理事務の実施状況
「管理事務の全てをマンション管理業者に委託」: 74.1%
「分譲時に分譲業者が提示したマンション管理業者である」: 73.1%

 

8) マンション管理業者のサービスとして希望するもの(新規調査項目)
「専有住戸内で発生した水回り、鍵、電気などトラブルへの緊急対応」: 66.9%


9) 管理状況全般の満足度
「非常に満足」(24.9%)「やや満足」(37.9%)の合計で6割超

 <満足の理由> 

「マンション管理業者が良い」( 68.8%)、「管理員が良い」( 52.4%)

「管理組合役員が熱心」 ( 34.8%)

 

 <不満の理由>

「一部の居住者の協力が得られにくい」( 48.5%)

「マンション管理業者が良くない」(28.7%)

「管理組合役員が不慣れ」( 26.3%)

 

10) 現在の修繕積立金の積立方式(新規調査項目)
・均等積立方式( 41.4%)段階増額積立方式( 43.4%)

11) 修繕積立金の積立状況(新規調査項目)
現在の積立額が計画 に比べて不足:34.8%
不足がある割合が20%超のマンション:15.5%

 

12) 総会への出席状況
直近の通常総会への出席割合:82.1% (委任状及び議決権行使書提出者を含む)
実際の出席割合の平均   : 32.9% 

 

13) 役員報酬の支払い状況
「報酬は支払ってない」: 73.3% 「役員全員に報酬を支払う」: 23.1%
各役員一律の場合の報酬額平均:約 3,900 円/月。
一律でない場合の理事長の報酬平均額:約 9,500 円/月

 

14) 理事会の開催状況
「月に1回程度」:36.5%、次いで「2ヶ月に1回程度」が 25.4%。

15) 組合員名簿等の作成及び閲覧状況
「組合員名簿及び居住者名簿がある」: 77.3%

「いずれもない」: 6.6%

16) 大規模災害への対応状況
「定期的に防災訓練を実施」: 44.1%

 

17) 専門家の活用状況
「専門家を活用したことがある」: 41.8%
「建築士」(15.6%)「弁護士」( 15.2%)「マンション管理士」(13.0%)

 

18) 外部役員を選任する意向・理由(新規調査項目)
「外部役員の選任を検討又は必要となれば検討したい」28.3%

<理由>

「区分所有者の高齢化」( 37.6%)「役員のなり手不足」( 36.5%)

 

19) トラブルの発生状況
「居住者間の行為、マナー」( 55.9%):生活音、違法駐車

「建物の不具合」( 31.1%):水漏れ、雨漏り

「管理費等の滞納」( 23.9%):「3ヶ月以上の滞納住戸あり」 24.8%

 

20) 管理に関して取り組むべき課題
「防災対策」 33.6%、「長期修繕計画の作成又は見直し」 32.0%

「修繕積立金の積立金額の見直し」 28.9%

 

21)管理組合運営における将来への不安
「区分所有者の高齢化」( 53.1%)「居住者の高齢化」( 44.3%)

 

まず、アンケートのデータとしての有効性を確認しておきたいと思います。

 

現在の全国分譲マンションのストックは約644万戸(2017年末時点)です。

 

マンション管理業協会によると、登録会員である管理会社の受託戸数(約590万戸)は棟数ベースで約11万棟におよぶとのことですから、ストック総数に換算すると約12万棟になると推定できます。(下記サイトページ参照)

 

www.kanrikyo.or.jp

総数約12万棟に対して調査によって収集できた管理組合数は4,200ですから、団地管理組合の存在を考慮しても、せいぜい4〜5%程度の収集率にすぎないことになります。

 

そして、これはあくまで推定に過ぎませんが、

アンケートに回答している管理組合は役員の意識が高く、その結果優れた組合運営をしている可能性が高いと思われるということです。

 

その一端が伺えるのが、上記10)11)の修繕積立金に関する回答結果です。

 

「均等積立方式にもとづいて徴収」していると回答した割合が、なんと4割を超えています。

 

これまで多くの管理組合をコンサルティングしてきた実感からすると、ちょっと考えられないほどです。

 

実態としては、せいぜい全体の1割程度、どれだけ多くても2割未満でしょう。

 

さらに、「現在の積立額が長期修繕計画に比べて不足している」と回答した割合がたった3割強にすぎない点にも大きな違和感があります。(下記記事参照)

 

www.nikkei.com

つまり、本調査の結果は、マンション管理組合の上位数%を対象としたもので、これを管理組合全体の実態を反映していると考えるとミスリードしかねないということです。

 

とはいえ、

ご自身の管理組合を運営するための「指針」として参考するために活用されるならば問題はありませんし、むしろ有益です。

 

管理組合の抱える悩みや課題については、おおむね実態を反映していると思われるからです。

 

ただ、統計データのボリュームの有意性や回答者の偏りに関するリスクについては、十分ご留意ください。

 

<参考記事>

 

yonaoshi-honpo.hatenablog.com

 

yonaoshi-honpo.hatenablog.com  

yonaoshi-honpo.hatenablog.com 

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マンション共用設備更新の際は、相見積もりに「ひと工夫」を!


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築15年目を迎える顧問先のマンションで、「増圧給水ポンプユニット」の更新を検討することになりました。(画像は装置のイメージ)

 

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管理会社の点検報告によると、設備耐用年数(15年)を迎えており、各所に経年劣化や腐食が見られるということでした。

 

消耗部品の交換やユニット全体のオーバーホール(整備)を実施することも可能ですが、その後本体に重大な故障が生じた場合には、結局装置全体の交換が必要になるため修繕費が余計にかかってしまうリスクもあります。

 

また、給水装置については、居住者のライフラインを維持するために不可欠なため、故障してから交換するのではなく、予防保全的な観点から計画的に修繕することが望ましいです。

 

このポンプユニットのメーカーは、T社です。

そのため、同社の新製品での更新の提案と見積書が提示されました。

 

見積金額の妥当性を検討するため、他社から相見積もりを取得することになりました。

 

ただ、T社の製品を前提にしてしまうと、他社がT社から仕入れる際にその分金額が高くなってしまうため、他の経費で削減努力しても総額はほぼ変わらないことがわかりました。

 

そこで、T社以外のメーカーの製品に更新することも視野に入れることで競争原理を導入することを理事会に提案しました。

 

国内の主要なポンプメーカーには、業界で有名なE社やK社もあるため、今回はK社の製品で相見積もりを取得することにしました。

 

その結果、T社の見積金額に比べて10%強金額を下げることができました。

 

ポンプ装置一式は工事費込みでおよそ2百万円以上かかるので、たとえ1割でも節約効果としては小さくありません。

 

管理会社に見積もりを任せると、

ポンプ装置のメーカーの選択肢を広げてまで相見積もりを取るという発想はなかなか出てこないのではないでしょうか。

 

また、もしポンプ交換後の保守点検業務も受託できるチャンスが広がるとすれば、他メーカーの提案に対するモチベーションも高まり、見積金額の低減につながる可能性もあると思います。

 

多額の費用がかかる設備更新は、管理組合にとっては苦しいかもしれませんが、見積もりの取得に「ひと工夫」加えることで、その費用を節約することも可能です。

 

<参考記事>

  

yonaoshi-honpo.hatenablog.com  

yonaoshi-honpo.hatenablog.com
 

yonaoshi-honpo.hatenablog.com

 

yonaoshi-honpo.hatenablog.com

     
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マンションの管理規約と「住みやすさ」の関係

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4月19日付の「まぐまぐニュース!」に、「それで住みやすいか?マンション共用部分にモノ置くなと叫ぶ人々 」という記事が掲載されていました。

 

www.mag2.com

本記事の要約は以下の通りです。

■ まわりに迷惑にならないことまではダメ出しせず、ある程度は個人の事情や利便性を尊重し、これまで特に問題のなかったマンションがある。

■ しかし、ある時から、共用部分の番人のような住人が現われ、見回ってはダメ出しして、管理会社や理事会に厳しく取り締まるように迫るようなケースがある。

■ また、あるマンションでは、室内駐輪場に複数の空気入れが置かれていて、暗黙の了解で他の人もそれを使わせてもらっていた。 しかし、新たに就任した理事長が「共用部分に私物を置いているのはけしからん、すぐに撤去させるように」と管理会社に指示したという。

■ 別のマンションでは、ある住民が、共用部分に私物がないか巡回チェックしていて、少しでも見つけると理事会にクレームを入れる。

■ 「共用廊下やポーチは共用部分だから私物を置いてはいけない。避難通路でもあるから。」というのが原則なのは確か。でも、あまり厳しく取り締まると暮らしにくいと感じることも事実だ。

■ 子供を連れて自転車で買いものに行って帰ってきたが、子供と荷物があるため、自転車をラックにしまえず、しばらく駐輪場以外の場所に自転車を止めていた。それを他の住人に厳しく注意されたことで、その後買い物に行けなくなった…という話もある。

■ 皆が周りを気遣って、ルールを守りながらも、それぞれの事情があるのだからと、一時的なものや迷惑にならないことには、片眼をつぶっているというのが、暗黙のうちにバランスの取れた住み心地のいい状態をつくってきていたなら、それはいい「文化」である。

■ そうした「文化」に無関心な人が画一的に取り締まることでその「文化」を壊していくことは、マンションにとって決してプラスとは思えない。結局、重大な合意形成時に必要なのは、まわりに対する気配りや事情がある人に対する想像力であり、その「文化」が育っていることだからだ。

■ もちろん、最初から、ルールを守ることを徹底し、それによって資産価値を維持するというコンセプトを守り続ける…それもひとつの「文化」だ。

 

筆者が記事の中で主張している「文化」の部分は私にも理解できます。

 

管理規約や使用細則に記載されたとおり何でもキッチリと運営しようとすれば、人間関係がギスギスしたものになりかねません。

 

しかし、だからと言って、管理組合や理事会の立場としては、こうした明文化されたルールとは別の「暗黙の了解」や「不文律」の存在を公式に認めるわけにはいきません。

 

また、筆者が好むような「文化」を好むかどうかは、その個人の価値観の問題です。

 

筆者とは反対側の「文化」を好む人も少なからずいるはずで、彼らは「管理規約や使用細則を遵守すべき」と主張するに違いありません。

 

もし筆者が好むような「皆が周りやそれぞれの事情を気遣って、一時的なものや迷惑にならないことには片眼をつぶるような文化」を醸成したいなら、日頃の住民同士の近所付き合いや、町内会といったコミュニティ活動に力を入れるべきではないでしょうか。

 

マンションで企画するならば、住民間の懇親会や防災訓練、除草会などの活動をレクレーションとして実施することも有効でしょう。

 

実際、顧問先のマンションでは定期的にこうした活動を企画されているところもあります。

 

袖振り合うも多生の縁」という仏教由来の言葉があります。

 

「道で人と服の袖が触れ合うようなささいなできごとでも、それは偶然ではなく前世からの因縁だから大切にしなければならない」という意味です。

 

たまたま同じマンションで暮らしているだけであっても、住民同士はすでに「袖振り合う」関係となっているはずですが、昔のような井戸端会議や近所づきあいもすっかり影を潜め、こうした価値観が薄れつつあるのが現実です。

 

各人がどういう地域コミュニティにしたいのかを真剣に考えながら、地道に努力を継続することが求められるのだと思います。

 

<参考記事>

 

yonaoshi-honpo.hatenablog.com

 

  

yonaoshi-honpo.hatenablog.com

  

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管理組合財産の着服事件と「上っ面だけ」の反省文

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4月15日付けで国交省 関東地方整備局からマンション管理会社が行政処分(指示処分)を受けたとのリリースがなされました。

 

その内容は以下のとおりです。

■ 処分対象業者

 株式会社日鉄コミュニティ

■ 処分理由

 同社が受託している複数の管理組合において、元従業員が組合財産を不正に着服したため、組合に損害を与えたため。

■ 処分内容

1)本件違反行為の内容及ぶ処分内容に関する役職員への周知徹底

2)法令順守の社内徹底、ならびに社内研修教育の計画的かつ継続的な実施。

3)社内業務管理体制の整備

4)再発防止策の策定ならびに継続的な実施

5)上記のすべてに関する報告書の提出

 

ちなみに、今回処分された日鉄コミュニティの概要は以下のとおりです。

■ 親会社 

 新日鉄興和不動産

■ 従業員

 約1,000名

■ 受託件数

 732棟

■ その他

 平成26年に「興和不動産レジデンスサービス」を吸収合併

 

 日鉄コミュニティのサイトページにもお客様へのご報告とお詫びとして国交省の処分文書とほぼ同じ体裁の文書が掲載されていました。

 

ただ、そこには以下のような「至極当然の事柄」以外は何も書かれていません。

・被害に遭った管理組合への報告と謝罪、ならびに損失の補てんを行ったこと

・コンプライアンス強化と信頼回復に向け全社一丸で取り組むという意思表明

 

本気で再発防止に取り組もうとするなら、その原因を徹底的に分析することが何よりも重要です。

 

着服できた「環境」や「手口」が一体どのようなものか公開されておらず不明ですが、過去の事例から以下のような可能性が考えられます。

 

■ 管理現場で現金を取り扱える環境にあった。

■ 法令で禁じられて久しい「預金通帳と印鑑のダブル管理」が容認されていた。

■ 架空の修繕工事や物品購入など請求書をねつ造した。

 

このような状況と手口のいかんによって、講じるべき対策もおのずと変わってくるはずです。

 

そういった情報も考察もまったく外部には示されず、毎度似たり寄ったりのうわべだけの反省文の提出を繰り返していることがこの業界の最大の問題でしょう。

 

<参考記事>

 

yonaoshi-honpo.hatenablog.com

 

 

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マンション一括受電の導入は、建替えよりも「重大な事案」なのか?

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Business Jounalで、「マンション、電力契約めぐる居住者への“解約強制”で紛争多発…高圧一括受電の闇」という記事が掲載されていました。

 

biz-journal.jp

 本記事の要約は以下の通りです。

■ 3月5日、最高裁は、「管理組合総会で高圧一括受電導入を決議しても、居住者の電力の個別契約解約申し入れを義務付ける部分は効力を有しない」との判決を下した。

■ 居住者が総会決議に反して個別契約の解約に応じなくても、不法行為にならないことになる。

■ 訴訟の舞台となった札幌市のマンション(544戸)では、高圧一括受電に変更して電気代を下げるために、総会で高圧一括受電導入の特別決議(4分の3以上の賛成多数)をした。

■ その決議には、各戸に北海道電力との個別契約を解除し、高圧一括受電サービスを受ける新たな契約を結ぶことが織り込まれた管理規約の改正も含まれていた。

■ この決議に2名の区分所有者が反対して解約に応じなかったため、高圧一括受電の導入が実現できなくなった。そのため、管理組合の元理事が反対者の2名に対して損害賠償を請求していた。

■  最高裁判決は、総会決議をしても、その決議はマンションの専有部分には効力が及ばないため、決議に応じなくても不法行為とならないという判断を下した。

■ 高圧一括受電の既存マンションへの導入は、居住者全戸が導入に同意しなければならないことが導入のネックになっていた。そのため、導入に反対する居住者に対して、訴訟の可能性も示して圧力をかけ紛争に発展する事例も多数みられた。今回の最高裁判決は、こうした問題に終止符を打ったことになる。

■ 一方、今回の判決は高圧一括受電業界にとっては大打撃となるだろう。高圧一括受電業界では、大手のオリックス電力や長谷工の子会社、長谷工アネシスなどが事業から撤退するなど、大きな岐路に立っているが、今回の判決が影響を及ぼす可能性もある。

■ 電力自由化のなかで、地域電力会社から他社に変えるなど多彩な選択肢を探っている。高圧一括受電を導入した場合は、居住者は専有部分について電力会社を変更することができず、電力自由化の恩恵を受けることができない。

■ 今回の最高裁判決の趣旨が、全国のマンション管理組合と管理会社へ徹底されるためにも、国土交通省の指導的な役割が求められる。

 

 従来から、マンション内で高圧一括受電を導入する場合には、組合総会決議に加えて専有住戸に関する既存の受電契約について全戸分の解約同意書を提出することが (電気事業法にもとづいて)地域電力会社から求められていました。

 

そのため、一括受電の導入は「全組合員の同意取付け」が事実上の要件とされており、新築はともかく、既築のマンションではかなりハードルが高いのです。

 

その意味で、今回の最高裁判決の内容自体には画期的な印象はありませんが、導入時のハードルの高さをさらに揺るぎないものにしたとは言えるでしょう。

 

 

そもそも高圧一括受電の本質とは、「マンションの変圧器を誰が保有するのか」という問題にすぎません。

 

マンション内の共用部分ならびに各専有住戸の電気は、電力会社の送電線(高圧)から共用部の電気室にある変圧器を介して低圧に変換されることで供給されています。

 

地域電力会社が、マンション内にある「電気室」を無償で借りつつ、そこに変圧器を設置しているのが一般的(※注記参照)です。

<※注:大規模マンションの場合には、共用部は高圧受電しているため、変圧器を自ら保有・管理しているケースが多く見られます。>

 

そのため、変圧器の所有および管理権限は、地域電力会社にあります

 

言い換えると、高圧一括受電は、この変圧器の所有・管理の権限を一括受電業者(新電力)、もしくは管理組合に変更することです。

 

一括受電業者と契約する場合には、管理組合側に初期導入コストはかかりません。

 

これまで地域電力会社が無償で提供してきた変圧器、ならびに各住戸内の検針メーターやアンペアブレーカーを業者側が新たに提供してくれます。

 

一括受電が流行した当時の相場では、共用部の電力料金が従前に比べて約4割下がることが多かったと思います。

<ただし、料金削減のメリットをすべて共用部に集約して還元しており、専有部分の電力料金は従前と同じとすることが多い。>

 

一方、区分所有者にとって一括受電のデメリットあるいはリスクとは何でしょうか?

 

主に以下の4点が考えられます。

(1)専有住戸の受電については、個別に他の新電力と契約することができなくなる。

(2)電力料金の削減によるベネフィットは、管理組合が一括で享受する。

<ただし、管理費から支払われる支出が減るという意味では、組合員にも間接的なベネフィットはある>

(3)変圧器の点検のため、3年に1回全館停電を実施する必要がある。

(4)一括受電業者が倒産・廃業するリスクがある。

 

(3)は頻度自体は少ないものの、抵抗感のある方はいらっしゃるでしょう。

 

ただ、(4)のリスクが顕在化したとしても電力供給がストップして、マンション全館が停電になることはありません。

 

また、地域電力会社の送電線を経由している以上、電力の「質」自体は一切変わりません。

 

ここで素朴な疑問が生まれます。

このような高圧一括受電の特性を踏まえて、はたして全戸同意まで取り付けなくてはならないほどの重大な事案なのか?ということです。

 

区分所有法上で、もっとも厳格な決議要件が求められるのは、建替え決議です。

総組合員数及び総議決権数の各5分の4以上の賛成が必要です。

 

言い換えれば、全体の8割以上の賛成があれば建替え事業は実現できるわけです。

 

また、建替えに強固に反対する人が最大2割いたとしても、建て替えを円滑に進めるため、管理組合が反対者に対して住戸の売渡し請求ができるようになっています。

 

一方、高圧一括受電の導入についてはなぜか全組員の同意が必要です。

 

両者の重要性を比較考量した場合、どうにもバランスが悪いように感じます。

 

さらに言うと、

最高裁が判決理由として述べた「管理組合の総会決議が専有部分には影響しない」という点も、この建替え決議にはそぐわない気がします。

 

なぜなら、建替えは共用部分のみならず専有部分も当然対象になるからです。

 

というわけで、今回の判決理由についてはモヤモヤした気分になります・・。

 

 <参考記事>

 

yonaoshi-honpo.hatenablog.com 

 yonaoshi-honpo.hatenablog.com

 

yonaoshi-honpo.hatenablog.com

 

yonaoshi-honpo.hatenablog.com

  

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マンション管理は、本当に「売り手市場」に変わったのか?

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Business Jounalで、「マンション購入後の管理費&修繕積立金がぐんぐん高くなっている理由」という記事が掲載されていました。

 

biz-journal.jp

本記事の要約は以下の通りです。

■ この2年ほどで、マンションの管理業務をめぐる環境がガラリと変わった。これまでの買い手市場から売り手市場に逆転してしまった。 

 

■ 数年前までは、管理会社に支払う業務委託費が低減できる可能性が高かったため、リプレースを検討するのが管理組合の健全なあり方と考えられてきた。

 

■ マンションの売主系列の子会社が管理会社の場合、彼らは自社が十分に利益を取れる水準に最初の業務委託費を親会社に設定してもらえているからだ。

 

■ 一方、マンションの販売側にとって、管理費や修繕積立金などの月々の負担が低いほうが売りやすくなる。そこで、「ごまかし」を行うことがデベロッパー業界の悪弊になっている。

 

■ まず、管理費は管理委託費の原資になるもので一定水準より下げることができないから、修繕積立金のほうをわざと安くする。

 

■ そして、修繕積立金の足りない分は15年程の年月をかけて徐々に値上げして、最終的に当初の3倍くらいとなる長期修繕計画をつくる

 

■ そこで、管理組合には管理委託費が軽減できれば、その分を修繕積立金の会計に回して、予定されている値上げを回避できるのではないかという考えが自然に浮かんでくる。これがリプレースの主たる動機であった。

 

■ 数年前までは、複数の管理会社に声を掛ければどこも喜んでプレゼンに参加してくるのが普通だったが、今は違う

 

■  今は売り手市場になっているため、管理会社にとってよほど儲かりそうなマンションでない限り、手間もひまも費用もかかるプレゼンテーションを行ってまで、彼らは仕事を取りに来ようとはしない

 

最大の原因は人手不足にある。管理員のなり手が急減したため、「新たに物件を受託しても管理員が見つからない」のが今の状況。

 

■ 管理業務を受託中のマンションでも、業務委託費の減額を要求されたりリプレースの動きが出ているのがわかると、「契約期間終了後の延長はできない」との通告で打ち切ってしまう。

 

■ 場合によっては、前の管理会社よりも高い委託費を飲まなければいけなくなるかもしれない。そうなった場合、修繕積立金の値上げを回避するどころか、管理費の値上げに追い込まれる可能性もある。

 

■  こうした流れが変わることはないだろう。そのうち、外国人の管理員も現れそうだ。5年先、10年先は「マンションは買いたいけど管理費が高すぎる」と購入を諦める人が多くなっているだろう。

 

本記事で筆者が主張しているポイントは、以下の通り3つあります。

 

(1)管理委託費の削減によって管理費会計の剰余金を生み出し、故意に低く設定された修繕積立金の増額リスクを抑制するための常套手段が管理会社のリプレイスであった。

(2)しかし、今は人手不足によって、それが通用しないほど市場環境が激変した。管理員の確保が困難となり、人件費も増加しているため、管理会社にとって儲からない物件は敬遠される。

(3)その結果、管理会社をリプレイスすると従前に比べてコスト増になるリスクが出てきた。

 

たしかに、都心部を中心に人手不足が深刻化しているのはマンション管理市場も同様です。

 

そのため、管理員や清掃スタッフの確保に苦慮したり、もしくは人件費が上昇する傾向にあることは間違いありません。

 

ただ、だからと言って、管理委託費がリプレイス前に比べて上昇するというのは、少々「言い過ぎ」の感があります。

 

管理会社に支払う業務委託費は、以下の項目で構成されています。

① 管理員業務費

② 清掃業務費(日常・定期)

③ 設備保守点検費

 <エレベーター、消防設備、機械式駐車場、遠隔監視など>

④ 事務管理費

 

上記の費目のうち、

①ならびに②の日常清掃は、昨今の人件費の上昇で削減余地がなくなっていますが、それ以外の費目についてはかなり割高な状況にあるマンションもまだ多いはずです。

 

つまり、業務委託費全体で見れば、市場原理を導入して適正化することによってコストダウンを実現することは十分可能なのです。

 

要するに、もともと設定されている管理委託費の水準が高すぎるのです。

 

これは、実際に現場のコンサルティングにおいて、管理コストの適正化を実現しているプロの一人としてはっきりと断言できます。

 

百聞は一見にしかず!

まずは管理コストの適正化にトライしましょう!!

 

<参考記事>

 

yonaoshi-honpo.hatenablog.com

 yonaoshi-honpo.hatenablog.com

 

yonaoshi-honpo.hatenablog.com

 

 

yonaoshi-honpo.hatenablog.com

  

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