いわゆる改正マンション建替え円滑化法(マンションの建替えの円滑化等に関する法律の一部を改正する法律)が、12月24日ついに施行されました。
この法改正のポイントを整理したうえで、その意義と今後の課題について考えてみます。
法改正のポイントは2つ
(1)区分所有者8割以上の賛成で敷地の一括売却が可能に
これまでも建替え自体は区分所有者全体の8割の賛成があれば可能でしたが、建物と敷地を一括で売却するには、原則全員の合意が必要でした。
しかし、今後は区分所有者の8割以上の賛成で可能となり、土地や建物をまとめてデベロッパーなどに売却できることになります。
ただし、これには条件があります。建物の耐震診断を受け、耐震性能を図る数値が一定以下で危険なため取壊しが必要でと特定行政庁から認定されなければなりません。
(2)建替え後の容積率に関する緩和優遇措置
耐震性不足の認定を受け、建替えにより新築されるマンションで、一定の敷地面積を有し、市街地環境の整備・改善に資するものについては、特定行政庁の許可により容積率制限が緩和されます。
容積緩和の対象となる敷地の面積の下限については、下記のとおりです。
・低層住宅系用途地域 ≧1000㎡
・近隣商業地域及び商業地域 ≧300㎡
・その他の用途地域 ≧500㎡
法改正の意義と課題
(1)管理組合にとって新たな選択肢が増えた
これまでは既存建物を改修して延命するか、新たに建替えるしか選択肢がありませんでしたが、敷地を一括売却して管理組合を清算することが可能になったわけですから、その意義は大きいと言えます。
建替えになれば、一部屋当たり1千万円単位の多額な資金が必要となります。修繕費用の調達にも窮する老朽化マンションが少なくない中、合意形成するのは至難の業でしょう。
また、長い年月を経れば周辺の環境も大きく変わる可能性が高いため、必ずしも住宅としての建替えがベストな選択とは言えないケースもあるでしょう。
その意味では、その地域に適した再開発を促す効果も期待できるかもしれません。
ただ、改正後も建替え決議と同様、区分所有者全体の8割の賛成を取り纏めないと実現できないわけですから、特に外部所有者の多い老朽化マンションの管理組合にとって依然として高いハードルです。
老朽化が進んだマンションにとっては、長期修繕計画の見直しと併せて、いかにそのエンディングを設定するかが大きなテーマになるでしょうし、誰がその役割を担っていくのかが大変重要になってきます。
(2)容積率緩和は「言うは易く、行うは難し」
建替えに際して通常最も大きな障害になるのが、資金の調達です。
これを側面支援しようとい方策が「容積率の緩和」で、増えた容積率相当の建物部分を分譲することでその収益を建替資金に充当できるのが狙いと言えます。
しかし、一部の駅前あるいは都心商業エリアを除くと現実的にはそう単純に緩和メリットを享受できないのではないかと思われます。
と言うのも、建物を建てるには容積率の他にも建築基準法等による高さ制限、道路車線、日影規制などが細かく定められており、これらもクリアしなければならないのが一つ。
二つ目には、たとえそれをクリアしたとしても、実際に建替える際に近隣居住者などから高層化反対などのクレームを受ける可能性があります。
わが国の場合、たとえ法規制をクリアしていても、近隣の同意が取れない場合には、許認可が下りないのが行政上の慣例となっているので、地域によっては計画通りに運ばないリスクも十分ありえます。
というわけで、その実効性についてはまだまだ課題や疑問の多い法改正と言えますが、不動産業界の動向を含め、今後の動きに注目していきたいと思います。
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