マンション管理士|村上智史の「士魂商才」 

無関心な居住者が多いマンション管理組合に潜む様々な「リスク」を解消し、豊かなマンションライフを実現するための「見直し術」をマンション管理士:村上智史(株式会社マンション管理見直し本舗 代表)がご紹介します。

【受付中】オンラインセミナー開催(5月)のお知らせ

5月度「マンション管理セミナー」を開催いたしますので、ご案内します。

 

新型ウィルス感染防止のため、今回も「オンライン形式」で開催します。

 

ネット接続環境があれば、首都圏以外にお住いの方も気軽に受講できます。

 

先着10名様のお申し込みを受け付けております。

 

どうぞお早目にお申し込みください。

【日時・会場】

令和 3年 5月  22日(土) 13:30~15:00

 

【参加料金】

 お一人様  2,000円(税込)

※ ただし、下記のいずれかの条件に該当する方は「無料」とさせていただきます。

初めて弊社セミナーに参加される方。

弊社に個別にご相談いただける方

 

【内 容】

「管理コストを3割削減するための見直し術」

これまで弊社のコンサルティングによってコスト削減を実現した事例(管理会社のリプレイスを含む6件)を紹介しながら、その費用項目ごとに効果的な見直しポイントを解説します。

 

【内 容】

■ ポイント1:管理人の勤務体制と業務内容
最も多く見られるのが、管理員の勤務時間が過剰なケースです。また、その業務範囲も物件の特性によって違いが見られます。

 

■ ポイント2:設備保守点検の契約形態と実施頻度(エレベーター、機械式駐車場など)
エレベーター、消防、機械式駐車場など各種共用設備の保守点検費用は管理組合側には相場観がないため、メスが入りにくいテーマです。

 

■ ポイント3:遠隔監視&緊急対応費用(ホームセキュリティを含む)
設備保守点検と同様に相場観が掴みづらい項目ですが、そのため割高になりがちです。

 

■ ポイント4:事務管理費など管理会社の経費
管理会社によって提示金額が異なりますが、物件の規模に応じたで適正な市場価格がわかります。

 

【講 師】 村上 智史(弊社代表取締役)

 

【お申込み方法】

セミナーお申込み専用ページからお申し込みください。(お名前、マンション名、メールアドレス、電話番号等をご記載ください。)

加までの流れや、オンライン会議の利用に慣れていない方向けの説明も上記ページにてご案内していますので、ご参照ください。

 

加までの流れや、オンライン会議の利用に慣れていない方向けの説明も上記ページにてご案内していますので、ご参照ください。

 

 

          f:id:youdonknowwhatyoulove:20180907095250g:plain

 

 

※ ブログ認知度向上にご協力いただければ嬉しいです (^▽^)/

  ↓       ↓

にほんブログ村 住まいブログ マンション管理へ

マンションの修繕積立金を値上げする前にやるべきことがあるでしょ?

            f:id:youdonknowwhatyoulove:20141129153548g:plain

 

4月10日 付けの日経新聞に、「老いるマンション 修繕に備え計画点検、積立金上げも」と題した記事が掲載されていました。

 

www.nikkei.com

本記事の要約は以下の通りです。

■ マンション管理士会によると、都内の管理組合から「修繕費が予想以上に膨らんで積立金が足りない」という相談が増えていると言う。

■ 特に「築年数が30年超で大規模修繕が3回目以上」のマンションで目立つ。国交省の調査で、積立金が計画に比べ「不足している」と回答した割合は3割強あった。

■ 分譲マンションの大規模修繕工事は12年ほどの周期で実施する例が多い。2回目の大規模修繕までは計画通りに実施することが多いが、次の3回目以降が問題。築30年を超えると、計画で想定した以上の工事が必要になりやすいからだ。

■ 劣化が早く進んだエレベーターや給排水管を交換したり、利用者が減って維持管理費のかさむ機械式駐車場を撤去したりする例は少なくない。

■ ここ数年で資材費や人件費など修繕工事のコストが上昇し、高止まりしていることも大きい。50戸規模のマンションで1~2回目の修繕費が5000万~7000万円だった場合、3回目は費用が全体で倍に増えるケースもあるという。

■ コスト上昇の影響を受けやすいのは高齢者だが、老朽化したマンションほど居住者の年齢は高い傾向にある。

■ 19年末時点で築30年以上のマンションは全国で約213万戸ある。10年後に1.8倍の384万戸、20年後は2.7倍の570万戸とマンションの老朽化は一段と進む見通しだ。

■ また、修繕積立金を含む管理費等の滞納額も、古いマンションほど増える傾向がある。滞納者の中には転居や死亡などで所在不明・連絡先不通になっていたり、役員のなり手不足で管理組合が十分に機能していなかったりすると、積立金の不足につながりかねない。
■ 大規模修繕の費用に備えるには、まず建物の定期的な点検と修繕計画の見直しが重要になる。想定に比べて劣化が進んでいない箇所があれば、その部分の大規模修繕は見送り、不具合が見つかれば早めに対応することで全体の費用を抑えることができる。
■ 修繕期間を延ばす工法を選ぶことも一案になる。東急コミュニティーは、修繕周期を最長18年に延ばすため防水性や耐久性の高い塗装などを施すという。

■ それでも積立金が不足するなら(1)積立金の引き上げ(2)区分所有者から一時金の徴収(3)管理組合による不足額の借り入れが主な対応策となる。

■ 管理組合向けの融資としては、住宅金融支援機構が提供する「マンション共用部分リフォーム融資」がある。利用件数は年300~400ほどで、10年前の約2倍の水準と

いう。
■ 住宅金融支援機構は、さらに居住者向けとして今年4月、自宅を担保にする「リバースモーゲージ」型の融資を始めた。居住者が自分の所有区分を担保に将来の積立金をまとめて借り、管理組合に納める仕組み。ただし、これを利用するには管理組合の規約改正などが必要。

 現在私がコンサルティングしている都内にある築24年目のマンション(36戸)では、昨年管理費も修繕積立金も増額改定されたことがきっかけで理事長さんから相談を受けました。

 

<増額改定されたマンションの事例>

管理費  :戸あたり平均月額 13,600円 ⇒ 15,400円(+1,800円/月  13%増)

修繕積立金:戸あたり平均月額 13,000円 ⇒ 18,000円(+5,000円/月   38%増)

 

年間に換算すると1戸当たりで8万円強の負担増ですから、すでに年金生活を送っている居住者には、かなり大きいインパクトがあります。

 

そこで、相談を受けた当社が「管理コスト適正化診断」を実施したところ、管理会社に支払っている管理委託費がかなり割高であることが分かりました。

 

このマンションの場合、現在の管理仕様(管理員の勤務時間、清掃や設備点検の頻度)を変えなくても、2割以上のコスト削減余地があると査定しました。

 

これを実現すれば、ざっと年間2百万円程度の剰余金になり、戸あたりに換算すると5.5万円にもなります。

 

ということは、昨年負担が増えた分の7割くらいはすぐに取り戻せるわけです。

 

さらに、このマンションでは、現在の管理仕様にも見直し余地があります。

 

たとえば、管理員の勤務時間が現在週6日で、週当たり勤務時間の合計が28時間になっています。

 

しかしながら、ファミリータイプで30戸前後のマンションの場合だと、

管理員の勤務体系は週4~5日、1日あたりの勤務時間も3~4時間が一般的です。

 

ゴミの回収日については出勤が必要としても、この規模のマンションなら、

週5日・1日4時間程度(週勤20時間)で十分品質を維持できると思われます。

 

そうなれば、月間で30時間以上節減できるので、年換算で70万円程度のコストダウンも期待できます。

 

もし、上記の通り管理員の勤務時間を縮減できれば、合わせて年間270万円のコストダウンになります。

 

それはすなわち、戸あたり換算で7.5万円の剰余金を創出できることを意味しますから、昨年の負担増(8万円強)をほぼ帳消しにすることも可能です。

 

 

ただ、日経新聞を含めて大手マスメディアは、読者にこの種のアドバイスをすることはないでしょう。

 

その理由、分かりますか?

販売不動産の広告の提供によってメディアの収益に多大な貢献をしているデベロッパ(=管理会社の親会社)各社の不利益につながることは言いづらいからです。

 

つまり、本記事を読んで申し上げたいことは、

修繕積立金を値上げするとか、資金不足分の融資を受けるといった対策を考える前に現状の管理コストを適正化することが先決だ!ということです。

 

<参考記事>

 

yonaoshi-honpo.hatenablog.com

  

yonaoshi-honpo.hatenablog.com 

 

yonaoshi-honpo.hatenablog.com

  

yonaoshi-honpo.hatenablog.com 

          f:id:youdonknowwhatyoulove:20180907095250g:plain

 

※ ブログ認知度向上にご協力いただければ嬉しいです (^▽^)/

  ↓       ↓

にほんブログ村 住まいブログ マンション管理へ 

 

 

 

 

 

25年の長期保証が付帯する屋上防水工事の現場を見学してきました!

            f:id:youdonknowwhatyoulove:20141129153548g:plain

 

昨日、3月末に着工した顧問先マンション(築25年)の屋上防水工事を見学してきました。

 

このマンションでは、10年保証が一般的とされる屋上防水工事において、今回25年の長期保証が付帯する工法を採用することになり、先日着工しました。(発注の経緯等については下の記事をご参照ください。)

 

<参考記事>

aplug.ykkap.co.jp

この工法では、ドイツ最大の総合化学メーカー「BASF」が開発した「ポリフィン3018」という素材を使用しています。

 

この「ポリフィン3018」には、既存工法(アスファルト、ウレタン、塩ビシートなど)とは異なる特性があります。

第一に、「ポリフィン3018」には500%を超す大きな弾性があり、躯体の動きに合わせて伸縮するという特長があります。

 

しかも、既存の防水工法の素材に大量に含まれている「可塑剤」を使用していません

 

可塑剤とは、もともと素材に柔軟性を与えたり、加工をしやすくする効果があるのですが、これが経年とともに防水材の硬化や収縮を引き起こします。

 

「ポリフィン3018」にはこの可塑剤が含まれていないので、経年に伴う弾性の低下が起こらず、素材の硬化やそれに伴う剥離等が生じません。

 

第二の特徴として、紫外線の影響に伴う樹脂の退色やクラックの発生、抗張力・伸びの低下など、いわゆる「光化学反応」を防止するために「紫外線吸収剤」を使用しています。

 

これらの特性から、「ポリフィン3018」自体は長期にわたってメンテナンスが不要なため、25年の保証が付くというわけです。

 

ただし、狭い、あるいは複雑な形状の場所については、既存工法によるシール材やウレタン防水を併用せざるを得ません。


そのため、「ポリフィン3018」を使用していない箇所のメンテナンス(部分補修)が工事後10年目・20年目で必須となり、それぞれ70万円程度の修繕コストを見込む必要があります。 

 

ただ、10年保証が通り相場で一般的には15年以内に全面改修が必要とされる既存工法と比べると、防水面の経年劣化を予防するトップコート(保護塗装)も不要ですし、経済的な負担はかなり軽減される点が管理組合で高く評価されました。

 

さて、見学した現場の状況を紹介しましょう。

 

(1)屋上平場の施工現場

手前の白い床面が既存の防水面で、奥側の濃いグレーの床面が「ポリフィン3018」による改修後の防水面です。

 

f:id:youdonknowwhatyoulove:20210404233704j:plain

<ドレン周り>

雨水が滞留しやすいドレン(排水口)周りも、下の画像のように現場で職人が作成しながら改修します。 

 

 

f:id:youdonknowwhatyoulove:20210404234411j:plain

<屋上立ち上がりの端部>

外壁タイルと天端部分との間のシーリング材が硬化して劣化しているため、ここから雨水等が浸水するリスクがありました。

 

(従前の天端部分の状況)

f:id:youdonknowwhatyoulove:20210404234703p:plain

 

今回の改修では、立ち上がりの笠木部分を「ポリフィン3018」のシートでくるんでいくとともに、「ポリフィン3018」が塗布された専用鋼板で固定します。

 

(施工イメージ画像)

f:id:youdonknowwhatyoulove:20210405114233p:plain

 

外壁の立ち上がり部分や排水溝の周りもすべて「ポリフィン3018」のシートや専用鋼板で改修されていることがわかります。(下の画像参照)

 

(現場の改修状況)

f:id:youdonknowwhatyoulove:20210404235320p:plain

 

全体の工期は1ヶ月程度を予定していますが、無事に完工してほしいと思います。

 

<参考記事>

 

yonaoshi-honpo.hatenablog.com

  

yonaoshi-honpo.hatenablog.com

 

          f:id:youdonknowwhatyoulove:20180907095250g:plain

 

※ ブログ認知度向上にご協力いただければ嬉しいです (^▽^)/

  ↓       ↓

にほんブログ村 住まいブログ マンション管理へ 

駐車場の空き区画の増加に悩むマンションはどんな対策を打っているのか?

           f:id:youdonknowwhatyoulove:20141129153548g:plain

 

昨今、駐車場の空き区画の増加に悩んでいる管理組合が増えています。

 

私の顧問先でも、すでに2件のマンションで平面化を実施しており、現在別のマンションでも鋭意検討中です。

 

都内にある顧問先マンションでは、機械式駐車場9台のうち7台が長らく空き区画となっていたため、足掛け4年の検討期間を経て、今年に入ってようやく設備の撤去・平面化工事を実施しました。

 

<参考記事>

aplug.ykkap.co.jp

 

yonaoshi-honpo.hatenablog.com

 

マンション内の駐車場については、「第2の管理費」として使用料金を徴収し、管理組合の重要な収益源として維持管理や修繕の費用に充てているのが一般的です。

 

そのため空き区画が増えると、まず「収入減」という問題に直面します。

 

また、マンションの場合、敷地面積の制約から立体式の駐車設備を導入するのが一般的です。

 

その場合、駐車場の稼働が低下しても、設備の保守点検費や修繕費は固定費として負担し続けなくてはなりません。

 

そこで、多くの管理組合では「収益の改善」と「コスト節約」の2種類の対策を検討し始めます。

 

すぐに思いつくのが「駐車場の外部貸し」ですが、実際にはそう容易ではありません。

 

その理由は3つあります。

 

一つは、利用者の募集をどのように行うのか?という問題です。

 

管理組合(理事会)が自ら行うのは困難なため、営業代行会社やサブリース会社に委託するのが現実的でしょう。

 

サブリース会社に一定の収益を保証してもらう契約もありますが、市場相場に比べると半額程度になってしまうことが少なくありません。

 

二つ目は、税金の問題です。

 

マンションの居住者以外に駐車場を貸し出す場合には「収益事業」と判定され、法人化していない管理組合でも「みなし法人課税」の対象になってしまいます。


ざっくり言うと、その賃貸収益に対して3割程度の税金を納めなくてはなりません

また、その申告を税理士に委託すれば、その代行費用もかかります。

 

つまり、サブリース会社への委託や税金ならびにその申告費用の負担等を考えると、期待したほどの経済効果が得られにくいというわけです。

 

三つ目は、セキュリティの問題です。

 

居住者以外の外部の人間が敷地内に出入りすることになると、オートロックなどで守られているセキュリティに「穴」が生じるため、組合内の合意形成に時間がかかる可能性があります。

 

収益改善策で挫折すると、次に考えるのがコスト削減です。

 

駐車設備の撤去・平面化という選択は、初期コストが大きくかかるという点で「荒療治」と言えるでしょう。

 

ただ、既存設備を撤去した後は保守点検費や設備更新費の負担から解放されるというメリットがあります。

 

そういう意味では、「先憂後楽」の手法です。

 

駐車場の平面化には

・鋼製板敷込み工法

・埋め戻し工法

の2種類があります。

 

前者の場合、パレットをすべて撤去した後、ピット内に梁と柱を組み立て、その上に鋼製板を敷き込み、新たな平置き駐車場を形成するというものです。(下記画像参照)

 

f:id:youdonknowwhatyoulove:20170217170738j:plain


後者については、駐車設備を撤去した跡のスペースを砕石で埋め戻し、アスファルト舗装で表面を仕上げる方法です。


ただ、埋め戻し工法の場合、ピット自体が砕石の重さに耐え切れるかどうかという問題があります。


また、マンション敷地の地質の状況(地盤の硬さ、水位)によっては、埋戻し後に地盤沈下や地下水の逆流を引き起こす事例も一部見られます。

 

そのため、鋼製板敷込み工法の方が、工事後に不具合が生じるリスクは小さいと思われます。

 

ただ、この選択についても以下のように留意すべき点があります。

 

(1)駐車場設備の撤去・平面化は「共用部分の変更」に該当するため、総会の特別決議事項となります。その場合、全区分所有者の4分の3以上の賛成が必要です。

 

平面化を実現したマンションでは、事前に今後の駐車場の利用ニーズを確認するためにアンケートを実施したり、総会で議案を上程する前に、これまでの検討経過から平面化の具体的なプランならびに経済効果の試算に関する説明会を開催するなど丁寧な運営を行うよう努めていました。

 

(2)マンションの所在する地域が駐車場の附置義務条例の対象に含まれていないか確認が必要です。


自治体によっては、駐車場の附置義務条例が制定されている場合があります。


附置義務条例は、過去に都心部等で駐車場不足が問題となったことで制定されたもので、大規模な商業施設やマンションを新設する際には、収容できる駐車台数を一定数設けることを義務付けています。


マンションが建つエリアによっては、この条例に該当する可能性があり、機械式駐車場の撤去によって収容できる駐車台数を減らすと、条例に違反するおそれがあります。その結果、場合によっては罰金等の行政罰が課されるリスクがあります。


ただ、車離れに伴う駐車場ニーズの低減傾向も見られることから、国土交通省でも附置義務条例の見直しが図られ、特例として平面化を認める動きが各自治体で見られます。

 

東京都では、附置義務で定められた駐車台数未満に緩和するための認定基準やそのための申請手続きの要件等を定めていますので、ご確認ください。

 

<参考記事>

 

 

yonaoshi-honpo.hatenablog.com

 

 

yonaoshi-honpo.hatenablog.com

 

 

yonaoshi-honpo.hatenablog.com

 

 

yonaoshi-honpo.hatenablog.com

          f:id:youdonknowwhatyoulove:20180907095250g:plain

 

※ ブログ認知度向上にご協力いただければ嬉しいです (^▽^)/

  ↓       ↓

にほんブログ村 住まいブログ マンション管理へ 

 

マンションの修繕積立金を一括前払いで貸してくれる金融商品が登場!?

             f:id:youdonknowwhatyoulove:20141129153548g:plain

 

3月9日付けで、住宅金融支援機構が事務局を務める「マンションの価値向上に資する金融支援の実施協議会」において、今年度の取組結果と今後の方向性をとりまとた内容をリリースしました。

 

その中でめぼしいニュースとしてメディアで取り上げられたのは、

修繕積立金を一括払いする区分所有者向けリバースモーゲージ融資の開始

です。

 

www.jutaku-s.com

記事の要約は以下の通りです。

■ 高経年マンションでは、入居者の高齢化が収入の低下を引き起こし、修繕積立金の支払いが滞るケースがある。一方、高経年になれば修繕積立金の引き上げが課題となる。

■ リバースモーゲージは借入人が死亡したときに担保としていた不動産を処分し、借入金を返却する仕組みで、借入人は融資金額の利息のみを支払う。

■ たとえば、毎月の修繕積立金が2万円、20年間で480万円の場合、金利1.0%の設定で月々の支払いを4000円程度に抑えることも可能。

■ 管理組合は融資金を修繕積立金の前払い金として代理受領し、将来の滞納不安を払しょくする。

■ 「管理規約の改正など管理組合側でしっかりと準備を行ったうえで合意形成することが条件。まずは、前向きに考えている管理組合と事前の相談から始めたい」と機構は説明している。

 

 リバースモーゲージと呼ばれる金融商品の仕組みは、以下の図で表すことができます。

 

f:id:youdonknowwhatyoulove:20210317113812j:plain


自宅を担保に生活に必要な資金等の融資を受ける→ 利息分のみを返済→借り手の死亡時に担保の自宅を売却した資金で融資元本を返済 という流れです。

 

ただ、今回支援機構が検討しているのは、借り手の区分所有者に融資金を渡すのではなく、一括で管理組合に前払いするというスキームです。

 

また、この融資を利用する際しては、資金使途や管理組合の会計処理等について以下の条件も満たす必要があり、管理規約の改正等の合意形成が組合側に求められます。

 

具体的には、

(1) 当該融資金は、修繕積立金の前払金として組合が一括して代理受領る。

(2 融資金は修繕積立金のみに充当できる。

(3) 充当された修繕積立金は、共用部分リフォーム工事のために使用すること。

(4) 借入者がマンション退去などの事情で融資金を完済しても、組合からお金は返還されないこと。

 

大規模修繕を円滑に実施できるよう 高経年マンションでは修繕積立金の不足問題に直面しているものの、区分所有者の反対で増額改定の議案が通らないケースもあります。

 

今後、分譲マンションの老朽化ストックが急増する中、ますます資金不足に悩む管理組合が増えることが予想されます。

 

管理組合からすれば、苦労の末、総会決議で修繕積立金を増額改定にこぎつけても、区分所有者の経済事情を理由に滞納されてしまっては、元も子もありません。

 

その点で、この制度の場合は管理組合側は将来の修繕資金を「前受金」として一括で受け取れるので、滞納リスクが払拭され財政状況が安定するというメリットがあります。

 

一方、区分所有者についてはどうでしょう?

 

所有する住戸を担保に融資を受け、毎月金利分の返済するだけよいので、日常の経済負担は大幅に軽減されるというメリットがあります。

 

固定の年金収入に頼らざるをえない高齢者にとっては助かることでしょう。

 

ただ、下記の通り、その裏返しに留意すべき点もあります。

(1)融資金の元本返済分は、将来(相続発生時の)売却資金で充当することになるため、自身の配偶者や子らへの相続はできなくなります。

 

(2)将来何らかの都合で事情が変わって、住戸を売却して融資金を完済しても、前払いされた修繕積立金は組合から返還されないため、手取りのお金は減ってしまいます。

(もちろん、買い手との売買金額の調整によって実質的に回収することも可能でしょう)

 

 この商品がどこまで実際にニーズがあるかはまだわかりませんが、区分所有者にとって新たな選択肢が増えたことは歓迎すべきでしょう。

 

ただ、管理組合としては、このような金融商品に頼らずに済むよう

将来の修繕積立金の増額改定を回避する対策として

・管理委託費をはじめとする維持管理コストの適正化

・発注する修繕工事費の適正化

に日々取り組んで行くことが望ましいことは言うまでもありません。

 

<参考記事>

 

yonaoshi-honpo.hatenablog.com

 

 

yonaoshi-honpo.hatenablog.com

 

 

yonaoshi-honpo.hatenablog.com

 

 

      f:id:youdonknowwhatyoulove:20180907095250g:plain

 

※ ブログ認知度向上にご協力いただければ嬉しいです (^▽^)/

  ↓       ↓

にほんブログ村 住まいブログ マンション管理へ 

 

「マンション大規模修繕の標準周期は12年」はなぜジョーシキになったのか?

          f:id:youdonknowwhatyoulove:20141129153548g:plain

 

3月4日付けの朝日新聞に、「マンション大規模修繕12年→18年周期 居住者負担減」という記事が掲載されていました。

 

digital.asahi.com


本記事の要約は以下の通りです。

■  大規模修繕は12年ごとが一般的だが、最長18年ごとで済む修繕サービスが普及し始めた。安全を保ちつつ回数を減らせれば、住民が負担する月々の修繕積立金の負担を軽くすることが可能という。 

■  不動産管理会社の東急コミュニティーはこのほど、仕様や工法などを工夫することで、最長18年に1回で済む修繕サービスを発表した。

■  マンションの建替えを判断する目安は、築60年。この間に行う大規模な修繕工事を4回から3回に減らせるという。

■ 新築だけでなく既存のマンションでも対応できる。まずは首都圏で管理するマンションで始め、全国に広げていく計画だ。

■ 「最長18年」のサービスは、同業の野村不動産パートナーズが先立つ2017年に始めている。首都圏の新築分譲では、その8~9割に採用している。

■ コンサルタントによると、周期を延ばすことは技術的にはそれ以前から可能だったが、「12年」を常識とする業界の慣習が根強く、採用がなかなか進まなかった。

■  しかし、大規模修繕の工事コストが14年ごろから跳ね上がった。積み立てられた修繕の費用が十分でない例も目立ち始め、対応策として「最長18年」への注目が集まるようになった。
■ コンサルタントによると、築60年までの複数の大規模修繕の総費用は14%ほど減らせるケースが多い。総戸数100戸のマンションに当てはめると、住民の修繕積立金の負担は60年間で1戸あたり220万~250万円程度の軽減になるという。

■ ただ、修繕費用の削減はできるが、18年間ほったらかしで良いわけではなく、こまめなメンテナンスが資産価値の維持という点で重要だ。

 

冒頭の記事で話題にあがっている、「東急コミュニティー」のリリース記事を確認したところ、その要点は以下の3つでした。

■ マンション大規模改修工事の周期を12年から最大18年に延長できる新しい長期保証商品「CHOICE」を販売開始する。


大規模改修工事で用いる仕様・工法等の工夫により、防水、塗装など建物の外装に関わる工事の保証期間を従来に比べ1.5倍~2倍に延長する。

 

■ 大規模改修工事の周期延長は適用条件を満たせば既存マンションにも適用が可能。今後、総合管理している首都圏の物件を対象に提案していく。

 

ただ残念なことに、肝心の「長期保証を可能にする仕様・工法」が何なのかが具体的に記載されていないため、何の説得力もなく、現段階では論評のしようもありません。

 

ただ、私に言わせれば、「大規模修繕工事の周期が12年」というのが「常識」というのは、もっぱら管理会社による管理組合への「刷り込み」によるものです。

 

たしかに、管理会社が作成する長期修繕計画を見ると、ほとんど全部と言ってよいほど、大規模修繕を12年周期で実施する想定になっています。

 

ただ、それはあくまでシミュレーション上の話にすぎません。

 

そもそも、長期修繕計画を作成する目的とは何なのでしょうか?

 

それはすなわち、

管理組合の長期的な資金需要を把握したうえで、毎月徴収すべき必要な修繕積立金を算出することにあります。

 

12年周期なら、30年間で大規模修繕を2回実施する計算になります。

 

つまり、マンションの立地条件や周辺環境、あるいは最初の施工の巧拙(手抜きの有無を含む)などによっても適切な周期は変わってきますが、大規模修繕は概ね12〜15年周期で行うものと考えておけばよいでしょう。

 

ちなみに・・・、

昔は10年周期で大規模修繕を実施する想定で長計が作られていました。

 そうなると30年間で3回も多額の支出を迫られることになります。

 

これでは、ただでさえ低目に設定されている修繕積立金をどんどん値上げしないといけなくなるので、さすがに現実的な周期に補正されたものと思います。

 

さて、大規模修繕に関する管理組合に対する「刷り込み」は、もう一つあります。

 

それは、「すべての工事を一度に実施するのが合理的」という考え方です。

 

たしかに、足場(仮設)を必要とするような外壁補修、縦管などの塗装、バルコニーの防水工事については一括で実施するのがコスト効率が良いです。

 

ただ、廊下や階段の長尺シートの貼替え、屋上防水の改修工事については原則として足場は必要ないため、上記の工事と分離しても問題ありません。

 

つまり、重要なことは、事前に劣化診断を実施して各所における修繕の必要性をレベル別に分類し、大規模修繕の実施時期や対象範囲を適切に判断することなのです。

 

私の顧問先のマンション(築26年目)では、先月臨時総会が開催され、屋上防水の改修工事の実施が決議されました。

 

このマンションでは、第2回目の大規模修繕を検討すべく、昨年建物劣化診断を実施しました。

 

現在シート防水が施されている屋上部では、滞留水の跡、保護塗料の剥離、防水層の膨れが見られるほか、ジョイント部でのシートの剥離や一部雨水浸入も見受けられます。

 

その後の組合総会では、一部漏水が発生したこともあって、屋上防水の改修工事を優先して検討してほしいとの意見が挙がったことや、屋上防水工事の場合、上記の理由から大規模修繕工事とは切り離して実施できるため、屋上防水工事を先行して実施する方針に変更となりました。

 

その後、複数の業者から相見積もりを取得のうえ比較検討した結果、10年保証が一般的とされる屋上防水工事において、25年の長期保証が付帯する工法を採用することになり、4月に着工することが決まりました

(その経緯や検討経過については、下の記事を参照ください。)

 

<参考記事>

aplug.ykkap.co.jp

 

上記の事例に見られるように、施工方法や使用する素材のイノベーションによって、これまでの常識とされていた修繕周期が一変することもあります。

 

管理組合のみなさんは、「業界のジョーシキ」に振り回されたり、騙されることのないよう注意してください。

 

<参考記事>

 

yonaoshi-honpo.hatenablog.com 


yonaoshi-honpo.hatenablog.com

 

yonaoshi-honpo.hatenablog.com

  

      f:id:youdonknowwhatyoulove:20180907095250g:plain

 

※ ブログ認知度向上にご協力いただければ嬉しいです (^▽^)/

  ↓       ↓

にほんブログ村 住まいブログ マンション管理へ 

 

小規模マンションでも「合わせ技」で電気料金を26%削減できる!

         f:id:youdonknowwhatyoulove:20141129153548g:plain

 

私の顧問先に、10戸未満の小規模マンション(築38年)があります。

 

この管理組合では、2年前から管理委託費やマンション保険の適正化に取り組んだ結果、管理費会計に年間100万円近い剰余金が生じるまでに財政状況が改善し、当面の間は、修繕積立金の増額改定の必要がなくなりました。

 

一方、電気料金については、年間30万円に届かないレベル(27万円)のため、新電力に切り替えても1割程度(=3万円弱)くらいの削減効果しか出ないだろうな・・と思っていました。

 

ところが、です。

 

今回、あらためて検討した結果、想像以上に大きなコスト削減が可能なことが分かったのです。

 

以下で、その種明かしをしましょう。

 

(1)電子ブレーカーの導入

このブログでもすでに何回もご案内していますが、低圧受電のマンションに電子ブレーカーを設置する方法です。

 

f:id:youdonknowwhatyoulove:20160729182531j:plain

 

<電子ブレーカーのしくみ並びに電気料金を削減できる理由については、下記記事をご参照ください。>

 

yonaoshi-honpo.hatenablog.com

 このマンションでは、エレベーター(1基)と給水ポンプしか動力系の電気設備がないものの、電気料金(基本料金)を年間5万円下げられることが分かりました。

 

電子ブレーカーの導入費用は30万円ほどなので、その費用の回収に6年かかる計算になります。

 

メーカーの製品保証が10年あるため、組合が損するリスクこそないものの、この程度だとインパクトとして正直微妙なレベルです。

 

(2)新電力への切り替え

そこで、(1)に加えて受電先の変更も検討してみました。

 

このマンションの場合、すでに現在管理会社と同じ企業グループの新電力会社と契約しています。

 

ところが、今回見積もりを取得した結果、他の新電力に再度変更することでさらに年間2万円強の削減ができることがわかりました。

 

(1)と(2)の効果を合算すると、年間7万円強の削減効果となります。

 

受電先を変更するのに初期費用は掛からないため、上記の「合わせ技」によって電子ブレーカーの導入費用(30万円強)を4.5年で回収することができわけです。

 

理事会でこの電子ブレーカーと新電力の「合わせ技」プランをご紹介したところ、全会一致で承認が得られました。

 

なお、昨今新電力についてはLNG(液化天然ガス)の高騰や寒波の影響で仕入れコストが上昇し、経営が苦しくなっているとの情報も耳にしています。

 

ただ、今回ご紹介した新電力会社に確認したところ、この会社では自ら発電所を所有しているため、原価上昇の影響ををそれほど受けずに済んでおり、新規の営業にも積極的なスタンスを維持できているとのことでした。

 

まだ見直したことのない管理組合さんはぜひ一度ご検討ください。

<参考記事>

 

yonaoshi-honpo.hatenablog.com

 

yonaoshi-honpo.hatenablog.com

 

yonaoshi-honpo.hatenablog.com

 

 

yonaoshi-honpo.hatenablog.com

  

      f:id:youdonknowwhatyoulove:20180907095250g:plain

 

※ ブログ認知度向上にご協力いただければ嬉しいです (^▽^)/

  ↓       ↓

にほんブログ村 住まいブログ マンション管理へ