4月10日 付けの日経新聞に、「老いるマンション 修繕に備え計画点検、積立金上げも」と題した記事が掲載されていました。
本記事の要約は以下の通りです。
■ マンション管理士会によると、都内の管理組合から「修繕費が予想以上に膨らんで積立金が足りない」という相談が増えていると言う。
■ 特に「築年数が30年超で大規模修繕が3回目以上」のマンションで目立つ。国交省の調査で、積立金が計画に比べ「不足している」と回答した割合は3割強あった。
■ 分譲マンションの大規模修繕工事は12年ほどの周期で実施する例が多い。2回目の大規模修繕までは計画通りに実施することが多いが、次の3回目以降が問題。築30年を超えると、計画で想定した以上の工事が必要になりやすいからだ。
■ 劣化が早く進んだエレベーターや給排水管を交換したり、利用者が減って維持管理費のかさむ機械式駐車場を撤去したりする例は少なくない。
■ ここ数年で資材費や人件費など修繕工事のコストが上昇し、高止まりしていることも大きい。50戸規模のマンションで1~2回目の修繕費が5000万~7000万円だった場合、3回目は費用が全体で倍に増えるケースもあるという。
■ コスト上昇の影響を受けやすいのは高齢者だが、老朽化したマンションほど居住者の年齢は高い傾向にある。
■ 19年末時点で築30年以上のマンションは全国で約213万戸ある。10年後に1.8倍の384万戸、20年後は2.7倍の570万戸とマンションの老朽化は一段と進む見通しだ。
■ また、修繕積立金を含む管理費等の滞納額も、古いマンションほど増える傾向がある。滞納者の中には転居や死亡などで所在不明・連絡先不通になっていたり、役員のなり手不足で管理組合が十分に機能していなかったりすると、積立金の不足につながりかねない。
■ 大規模修繕の費用に備えるには、まず建物の定期的な点検と修繕計画の見直しが重要になる。想定に比べて劣化が進んでいない箇所があれば、その部分の大規模修繕は見送り、不具合が見つかれば早めに対応することで全体の費用を抑えることができる。
■ 修繕期間を延ばす工法を選ぶことも一案になる。東急コミュニティーは、修繕周期を最長18年に延ばすため防水性や耐久性の高い塗装などを施すという。■ それでも積立金が不足するなら(1)積立金の引き上げ(2)区分所有者から一時金の徴収(3)管理組合による不足額の借り入れが主な対応策となる。
■ 管理組合向けの融資としては、住宅金融支援機構が提供する「マンション共用部分リフォーム融資」がある。利用件数は年300~400ほどで、10年前の約2倍の水準と
いう。
■ 住宅金融支援機構は、さらに居住者向けとして今年4月、自宅を担保にする「リバースモーゲージ」型の融資を始めた。居住者が自分の所有区分を担保に将来の積立金をまとめて借り、管理組合に納める仕組み。ただし、これを利用するには管理組合の規約改正などが必要。
現在私がコンサルティングしている都内にある築24年目のマンション(36戸)では、昨年管理費も修繕積立金も増額改定されたことがきっかけで理事長さんから相談を受けました。
<増額改定されたマンションの事例>
管理費 :戸あたり平均月額 13,600円 ⇒ 15,400円(+1,800円/月 13%増)
修繕積立金:戸あたり平均月額 13,000円 ⇒ 18,000円(+5,000円/月 38%増)
年間に換算すると1戸当たりで8万円強の負担増ですから、すでに年金生活を送っている居住者には、かなり大きいインパクトがあります。
そこで、相談を受けた当社が「管理コスト適正化診断」を実施したところ、管理会社に支払っている管理委託費がかなり割高であることが分かりました。
このマンションの場合、現在の管理仕様(管理員の勤務時間、清掃や設備点検の頻度)を変えなくても、2割以上のコスト削減余地があると査定しました。
これを実現すれば、ざっと年間2百万円程度の剰余金になり、戸あたりに換算すると5.5万円にもなります。
ということは、昨年負担が増えた分の7割くらいはすぐに取り戻せるわけです。
さらに、このマンションでは、現在の管理仕様にも見直し余地があります。
たとえば、管理員の勤務時間が現在週6日で、週当たり勤務時間の合計が28時間になっています。
しかしながら、ファミリータイプで30戸前後のマンションの場合だと、
管理員の勤務体系は週4~5日、1日あたりの勤務時間も3~4時間が一般的です。
ゴミの回収日については出勤が必要としても、この規模のマンションなら、
週5日・1日4時間程度(週勤20時間)で十分品質を維持できると思われます。
そうなれば、月間で30時間以上節減できるので、年換算で70万円程度のコストダウンも期待できます。
もし、上記の通り管理員の勤務時間を縮減できれば、合わせて年間270万円のコストダウンになります。
それはすなわち、戸あたり換算で7.5万円の剰余金を創出できることを意味しますから、昨年の負担増(8万円強)をほぼ帳消しにすることも可能です。
ただ、日経新聞を含めて大手マスメディアは、読者にこの種のアドバイスをすることはないでしょう。
その理由、分かりますか?
販売不動産の広告の提供によってメディアの収益に多大な貢献をしているデベロッパ(=管理会社の親会社)各社の不利益につながることは言いづらいからです。
つまり、本記事を読んで申し上げたいことは、
修繕積立金を値上げするとか、資金不足分の融資を受けるといった対策を考える前に現状の管理コストを適正化することが先決だ!ということです。
<参考記事>