5月28日付の読売新聞オンラインに、「マンションの大規模修繕費用、「均等方式」で積み立て安定…管理組合の値上げ決議が不要に」という記事が掲載されていました。
本記事の要約は以下の通りです。
■ 分譲マンションの多くは段階的に修繕積立金が値上がりしていく「段階増額積み立て方式」を採用しているが、将来にわたり同額を払い続ける「均等積み立て方式」に切り替える管理組合が出始めている。
■ 「均等方式」の場合、値上げのたびに管理組合の総会で議決を取らずに済み、積み立てが安定するといったメリットがある。
■ 多くのマンションは「段階方式」を取り入れているのは、売り出し時に低額の方が不動産会社が打ち出しやすいからだ。
■ 2015年に竣工した横浜の大規模マンション(497戸)では、当初の修繕積立金は月7,000円(専有面積70平方メートルの場合)で、段階増額積み立て方式を採用していた。
■ この管理組合の理事会は、将来の負担が大きくなるのを避けるため、30年間だった長期修繕計画を50年間に見直すタイミングで、均等方式に切り替える方針を決めた。
■ 均等方式にしたところ、積立金は当初の2倍以上になるため、マンション内で説明会を10回以上開き、見直しの必要性を説明する広報紙を各戸に配布した。その結果、総会では9割以上が賛成し、無事均等方式に移行することができた。
■ 組合理事によれば、その要因として、所有者の永住志向が強く将来の管理を考えてくれる人が多かったことが追い風になったこと、また高齢になって負担が増えるのは避けたいと思う人が多かったからだと言う。
■ 居住者が高齢化するほど修繕積立金の支払い能力が下がり、値上げが難しくなる傾向が見られる。国土交通省も「均等積み立て方式が望ましい」と考えており、新規物件の中には当初から均等方式を取り入れるケースも出始めている。
今年21年目を迎える顧問先のマンション(90戸)では、これまで段階的に修繕積立金を増額してきましたが、管理委託費や電気料金などのコスト削減を経て、長期修繕計画の更新に併せて増額改定の準備を進めているところです。
このマンションの場合、
国交省の修繕積立金ガイドラインにもとづいて、均等積立方式で必要な徴収額を試算したところ、専有面積(㎡)あたり月額269円となります。
ところが、竣工当時の徴収額は、同40円でした。
その後、8年目以降:80円 →18年目以降:200円と値上げしてきました。
その結果、下の図に示されるように21年間にわたって積立不足が累積しました。
その額は、単純計算でおよそ3億円にも及びます。
このマンションでは、一連のコスト削減努力の結果、年間6百万円以上の剰余金を管理費会計から生み出すことができるようになりました。
しかしながら、この成果を加味しても、これまでの積立不足分に加えて今後30年で見込まれる修繕費用を賄っていくには、現状の徴収額(200円)を70%増額(335円)する必要があることがわかりました。
さすがに70%の増額は厳しい、という意見が当然組合内で出てきます。
しかし、これまでの段階増額方式を続けた場合、最終的には420円まで引き上げていく必要があるという試算結果も同時に示されました。
その場合、修繕積立金だけで戸あたり毎月3万円前後の負担になってしまいます。
そのため、なるべく早い段階で均等積立方式に近づけることが望ましいという考え方から、現状比50%アップ(300円)の増額改定にて今期総会に上程することを目標に進めていくことになりました。
もともと竣工当初から269円の徴収が必要だったことを考えれば、「コスト削減の成果を活用しながら、300円への改定でソフトランディングできそうだ」と言えるのではないでしょうか。
今回冒頭の記事で紹介された大規模マンションはまだ築4年目のため、積立て不足の累積額が少なく、(倍増とはいえ)増額幅を最少レベルに抑えることができました。
それが、総会で圧倒的多数で承認された最大の要因だと思います。
しかし、一般的には無関心な管理組合が多いため、2回目の大規模修繕が近づく築20年目前後に資金不足に気づいて慌て始める・・のが実情です。
分譲マンション新築時に設定される修繕積立金の平均は、
専有面積(㎡)あたり月額90円台とされています。
一方、均等積立方式で必要な金額は月額200円以上。
(機械式駐車場が附設されている場合には別途加算が必要)
これでは足りるはずがないのは自明の理です。
将来資金不足で悩みたくないなら、
築10年目までに少なくとも200円台にまで引き上げておくことをお勧めします。
<参考記事>