マンション管理士|村上智史の「士魂商才」 

無関心な居住者が多いマンション管理組合に潜む様々な「リスク」を解消し、豊かなマンションライフを実現するための「見直し術」をマンション管理士:村上智史(株式会社マンション管理見直し本舗 代表)がご紹介します。

築19年目で初めて修繕積立金が増額改定されたマンション

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昨年から当社が顧問を務めている都内のマンション(76戸)の話です。

 

昨日通常総会が開催され、

築19年目で修繕積立金がはじめて増額改定されることになりました。

 

この管理組合では、以前から将来の資金不足を避けるため、修繕積立金の増額を組合員に提案していましたが、反対者が少なくなかったため実施しづらい状況が続いていました。

 

そのため、今期の理事会ではこうした反対の声を抑えるためにも、昨夏に当社と顧問契約を締結し、管理コスト適正化に注力することになったのです。

 

その後、当社からの提案とアドバイスのもと、管理委託費、マンション保険、電気料金の主要3費目を見直した結果、以下の通り年間300万円強の経済効果を実現することができました。

1)  管理委託費(年間 ▲261万円 従前比29%ダウン)

管理会社との減額交渉、一部委託先の変更、管理人勤務時間の縮減による効果

2)マンション保険(年間 ▲15万円 従前比18%ダウン)

マンション管理適正化診断サービスの好結果(A判定)にもとづき、従前の契約を中途解約のうえマンションドクター火災保険にて5年契約を締結。

3) 電気料金(年間 ▲30万円 従前比15%ダウン

電子ブレーカーの導入と新電力への契約先変更による効果

 

上記に加えて、適正化前から期待できた収支剰余金を含めて年間350万円を修繕積立金に振り替えることができる見通しとなったのです。

 

このマンションの修繕積立金は、現時点では専有面積(㎡)あたり月額@91円。

 

しかしながら、現在の積立金残高をもとに、長期修繕計画上で求められる修繕資金を均等積立方式で賄うには現状比で@223円の増額が必要な状況でした。

 

つまり、現状の3倍以上の月額@314円への増額が必要というわけです。

 

一方、管理コスト適正化によって振り替えられる剰余金(年間350万円)を専有面積(㎡)あたりに月額に換算すると@60円になります。

 

この効果を加味すると、必要となる修繕積立金の徴収額は@254円となります。

 

そのため、一気に@254円まで引き上げる「均等積立プラン」と、「今後5年ごとに段階的に増額していくプラン」のどちらを選択するかについて住民アンケートを実施しました。

 

その結果僅差でしたが、多数決で段階的増額プランを選択することになったのです

 

段階的増額プランの場合、まず今年度@180円に倍増させ、その後5年ごとに@40円ずつ引き上げるため、最終的には@300円まで負担が増える予定です。

 

ちなみに、国のガイドラインにしたがって必要な修繕積立金を求めると、

月額@281円でした。

 

つまり、現状の徴収額は本来必要な金額の3分の1にも満たない水準でした。

 

そのため、マンション全体で考えると、竣工からの18年間で約2億円も資金不足が蓄積していたことがわかります。(下図参照)

 

 

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もし管理コストの適正化をしていなければ、段階的増額プランの場合、現状の4倍に相当する@360円までの増額が必要だったことを考えると、今回の資金計画の見直しはうまくソフトランデイングできたと言えると思います。

 

<参考記事>

 

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ついに「マンションは管理を買え」の格言を実践できる時代が来るか?

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「FRIDAYデジタル」に執筆した記事が本日公開されましたので、ご案内いたします。 

 

 

friday.kodansha.co.jp

 

記事の内容は以下の通りです。

「マンションは管理を買え」と言われていますが、マンションの居住者は、管理組合の運営には相変わらず無関心なため実践できていません。

ただ、管理会社に管理を「丸投げ」したままだと、様々なリスクに直面するのは必至です。中でも深刻なのが、管理組合の抱える財政リスクに関する問題です。

新築分譲時の「修繕積立金」の設定金額が低すぎるため、経年的に倍々ゲームのように増額改定を余儀なくされることになります。

一方、管理費についても決して安心できません。その背景には、消費増税のほかに、マンション特有の事情として駐車場の空き区画増加に伴う収入減、築年数増とともに高騰するマンション保険料という2つのリスク要因があります。

こうした問題について、直接的な利害関係にない管理会社が解決してくれるものと期待しないほうがよいでしょう。管理組合自身が自主的に見直そうとする意識改革が不可欠です。

そんな中、マンション保険の高騰をきっかけに、管理状況の良好なマンションについては築年数にかかわらず保険料を割り引く商品(マンションドクター火災保険)が登場しました。

 

損害保険会社が日管連(日本マンション管理士連合会)と提携し、第三者の専門家のマンション管理士が管理組合の運営状況や修繕の実施状況を客観的・定量的に評価し、その結果が保険料に反映される仕組みです。発売開始後4年あまりで、契約累計実績が7千件を超える「ヒット商品」となっています。

 

また、2022年をめどに、国による「マンション管理計画認定制度」がスタートする予定です。またこれに先駆けて、今年4月から東京都が高経年マンションを対象に「管理状況届出制度」を始めます。

 

このような制度措置によって今後どのような効果が期待できるのか? いよいよ「マンションは管理を買え」という格言が現実のものになる時代が到来するのか? 

こうした観点から独自の見解を述べています。

 

 <参考記事>

 

yonaoshi-honpo.hatenablog.com

 

 

yonaoshi-honpo.hatenablog.com

 

 

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緊急事態宣言の発令でマンション管理組合はどう対応すればいいの?

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ついに昨日、東京都をはじめ主に首都圏を対象とする7都府県で、新型コロナウイルス感染拡大防止のため緊急事態宣言の発令がなされましたね。

 

当初は、緊急事態宣言の発令イコール、欧米諸国のようないわゆるロックダウン(都市封鎖)になる、と捉える向きが多かったようです。

 

しかし、現在の日本の法律ではロックダウンを実行することは不可能らしく、実質的にはこれまでの外出等の自粛要請とあまり変わらないという報道がなされています。

 

しかしながら、マンション管理の現場では、緊急事態宣言のアナウンス効果の影響で混乱が生じていて、管理会社によっても対応がまちまちの状況です。

 

最もスタンダードな事例として、保守的な姿勢の某大手管理会社から昨日送付された書面の内容は以下の通りです。

 

当社も行政発表による指示・要請に基づいて対応を行うため、管理業務にも大きな影響が生じてまいります。

 

お住まいの皆様にはご不便をお掛けいたしますが、ご理解賜りますようお願い申し上げます。

 

《主な影響》

1.お客様センター・設備緊急センター

・センタースタッフの一斉感染を防止するため、分散して勤務する等の対応を行います。通常より大幅にお電話が繋がりにくくなる可能性がございます。

・緊急対応業務の出動についても、発令の状況により大幅にお時間を要する場合がございます。

 

2.点検業務

・お住まいの皆様への感染拡大防止とスタッフの安全確保を考慮し、作業を中止する場合がございます

 

3.管理員業務及び清掃業務

・お住まいの皆様への感染拡大防止とスタッフの安全確保を考慮し、管理員及び清掃員の勤務を中止する場合がございます。(ゴミ出し対応は実施いたします。)

 

4.総会・理事会延期または中止のお願い

・マンション内での感染拡大防止のため、総会や理事会の延期や、当社が参加できない場合がございます

 

5.その他

・管理組合の各種支払いの遅延、共用施設の利用申込み・解約等の受付中止、会計決算提出時期の変更等の影響が生じる場合がございます。

 

管理組合もしくは居住者にとって最も関心が大きいのは、

日々の管理員によるゴミ出しや日常清掃が行われるのか?ということでしょう。

 

これについては、ウィルスの罹患に関係していない限り、管理員の出勤を継続するところがほとんどと思われますが、一部の管理会社では宣言に伴って中止することを伝えているところもあるようです。

 

ただ、さすがに朝のゴミ出し作業は、それを止めると住民からクレームが発生すると予想されるため実施すると思われます。

 

一方で、それほど当面の日常生活に影響が大きくないもの、定期清掃、設備点検や修繕工事については、延期や中断をするところが多いようです。

 

理事会については、喫緊の課題がない場合は当面延期を選択している組合が多いですね。

 

そもそも会場とされやすい都内の公民館などは、先月の東京都の自粛要請に伴って予約済みのものも含めてキャンセルとなった事例が多く発生しています。

 

一方、4月から5月にかけて総会開催を予定している組合では、総会議案書の準備や次期役員候補の選任などを進める必要があるため、メールや最近普及し始めたWeb会議システムを活用しようという動きが出ています。

 

ちなみに、定期総会については、前年度の会計報告を集会で行うことが区分所有法で義務付けられているため、委任状や議決権行使の提出による意思表示も可能とはいえ、やはり物理的な開催は必要です。

 

また管理規約でも、「決算から3ヶ月以内の開催」を定めているのが一般的ですから、たとえば1月決算の管理組合なら例年4月中に開催していることでしょう。

 

とはいえ、

総会の開催自体が、「不要不急の用事」に該当するわけではないでしょうが、多くの人が密閉空間に密集することも十分考えられるため、さすがに緊急事態宣言の期間内で強行開催することには住民間でも賛否が分かれるかもしれません。

 

そういった混乱が生じかねないことをあらかじめ想定したのか、

区分所有法を管轄する法務省(民事局)から先日、以下のような通達が出ており、前回の開催から1年以内に開催する必要は特にないことを強調しています。

 

新型コロナウイルス感染症の影響により,管理者が選任された管理組合又は管理組合法人において,前年の開催から1年以内に建物の区分所有等に関する法律(以下「区分所有法」といいます。)上の集会の開催をすることができなくなった場合について,以下のとおりお知らせします。
 
 区分所有法においては,管理者又は理事が,少なくとも毎年1回集会を招集しなければならないとされ,集会において毎年1回一定の時期にその事務に関する報告をしなければならないとされていますが(区分所有法第34条第2項,第43条,第47条第12項,第66条),前年の開催から1年以内に必ず集会の招集をし,集会においてその事務に関する報告をすることが求められているわけではありません。
 
 したがって,今般の新型コロナウイルス感染症に関連し,前年の集会の開催から1年以内に区分所有法上の集会の開催をすることができない状況が生じた場合には,その状況が解消された後,本年中に集会を招集し,集会において必要な報告をすれば足りるものと考えられます。

 

www.moj.go.jp

また、公益財団法人マンション管理センターからも「新型コロナウィルス感染拡大における通常総会開催に関するQ&A」が示されており、理事会役員にとっては大変参考になると思いますので、その要点を以下ご紹介しておきます。
 
■ 総会を開催する場合の留意事項は?
①組合員に対し、総会会場に来場することなく、議決権行使書又は委任状(理事長等を指定する)により、議決権を行使してもらうことを、通知又は個別連絡により勧める。
②組合員には、体調を考えた上で、総会への出欠を慎重に判断してもらい、欠席する場合には、議決権行使書により、議題に対する賛否を表明してもらうようお願いする。
③出席者がある場合には、マスク着用、室内換気、短時間の運営等に努める。
 
■ 通常総会の開催を管理規約に定めた期間から延期してもよいか?
・災害発生の場合等には、やむを得ず期間内に総会を開催できないこともあり得ることであり、総会を開催するリスクや組合員の安全等も勘案して、期間内の開催が可能か否かが検討されるべきである。
 
■ 通常総会の開催を延期することを理事会で決定してよいか?
・緊急時の対応として、やむを得ず期間を超えて総会を延期せざるを得ないと判断する場合には、執行機関である理事会で通常総会の開催を延期することを決議する方法が考えられる。
・ただその際、組合員には、緊急時の、組合員の安全・安心のためにやむを得ない対応であることを理解してもらう必要がある。
 
■ 通常総会を延期する場合にはどのような手続きが必要か?
・一例として、通常総会の延期と併せて、その間の管理組合の運営は次のように行うことを決議する。
①総会開催までの期間について現役員が職務を行うこと
②総会で次期収支予算が決定するまでは今期収支予算に従い予算執行すること
③管理会社との委託契約の更新を予定している場合には、従前契約と同一条件での暫定契約を締結すること
 
なお、理事長は、通常総会の開催を延期すること等に関する組合員から問合せ、異議等については真摯に対応することとする。
 
<参考記事>

yonaoshi-honpo.hatenablog.com 

 

yonaoshi-honpo.hatenablog.com

 

 

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「マンション管理セミナー」開催延期(4/18 → 5/16)のお知らせ

4月18日(土)に開催を予定していたセミナーは、コロナウィルス感染予防のため延期させていただきます。

 

次回の開催につきまして以下のとおり予定することとしましたので、ご案内申し上げます。

  

先着5名様のお申し込みを受け付けております。どうぞお早目にご応募ください。

 

【日時・会場】

令和 2年 5月 16日(土) 

13:30~15:00

 

LEAGUE 地下1階 ミーティングスペース

東京都中央区銀座3-11-3

東京メトロ「東銀座」駅歩2分 「銀座」駅歩5分 

 

 

 

【参加料金】

 お一人様  2,000円(税込) 

※ ただし、下記のいずれかの条件に該当する方は「無料」とさせていただきます。

初めて弊社セミナーに参加される方

弊社に個別にご相談いただける方

 

 セミナー後の個別相談をお申込みの方には、もれなく弊社代表の著書「マンション管理見直しの極意」を進呈いたします!

 

【内 容】

1. 講 演 

管理コストを3割削減するための見直し術

これまで弊社のコンサルティングによって大幅なコスト削減を実現した事例を紹介しながら、その費用項目ごとに効果的な見直しポイントを解説します。

【内 容】

ポイント1】 管理人の勤務体制と業務内容


最も多く見られるのが、管理員の勤務時間が過剰なケースです。また、その業務範囲も物件の特性によって違いが見られます。

ポイント2】 各種共用設備保守点検の契約


エレベーター、消防、機械式駐車場など各種共用設備の保守点検費用は管理組合側には相場観がないため、メスが入りにくいテーマです。

ポイント3】 遠隔監視&緊急対応費用

 

設備保守点検と同様に相場観が掴みづらい項目ですが、そのため割高になりがちです。

ポイント4】 事務管理費などの管理会社経費

 

管理会社によって提示金額が異なりますが、物件の規模に応じたで適正な市場価格がわかります。

【講 師】 村上 智史(弊社代表取締役)

 

 

2. 個別相談会(※希望者のみ)

貴マンションの管理委託費を簡易診断させていただきます。(無料)その他、管理会社の変更や大規模修繕、高圧一括受電、省エネ対策などのご相談も随時承ります。

 

【お申込み方法】

弊社サイトの問合せページから「セミナー参加希望」と記載のうえ、お申し込みください。 

  

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築13年目のマンションでエレベーター保守契約が「フルメンテナンス仕様」になったワケ

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昨秋から管理コスト適正化に取り組んでいたマンションで、昨日総会が開催され、管理委託費の減額が無事承認されました。

 

昨日は、季節外れの降雪の中、ウィルス感染防止対策として会場の窓や扉が大きく開放された状態での開催となったため、まさに凍えそうでした・・・(寒)。

 

さて、こちらのマンション(築13年目)については、昨年末から2回にわたって管理会社との委託条件の交渉を行ったところ、当初の削減目標(=事前の査定額)を超える成果を挙げる見通しが立ちました。

 

しかし、その交渉過程で予想もしていなかった提案が管理会社からありました。

 

なんと、エレベーターの保守点検について現状のPOG契約からフルメンテナンス(FM)契約に切り替えることも可能だというのです。

 

その具体的な提案条件を図に表すと、以下のようになります。

 

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上の表のとおり、POG契約の場合、経年劣化に伴う「部品の修理・交換」にかかる費用の負担は委託費の中に含まれていません。

 

一方、FM契約の場合は、「部品の修理・交換」にかかる費用も保守会社の負担となります。その分、当然ながら委託費はPOGより高く設定されます。

 

つまり、FM契約の場合、築30年前後で必要になる設備リニューアルまでの修繕費については、「事前積立分」として毎月の保守委託費に含んだ格好になっているわけです。

 

しかし、通常では既築マンションのエレベータで当初からPOG仕様で契約している場合、途中でFM契約に変更することはできません。

 

その理由は、保守会社の将来の修繕コストの負担リスクにあります。

 

独立系保守会社でも、FM仕様とPOG仕様の金額差(=修繕費の事前積立分)として毎月1万円程度(税別)は設けています。

 

そのため、設備リニューアルまでの30年間ではその積立て分がトータルで360万円が積み上がることになります。

 

もし仮に、築10年目でPOGからFM仕様に切り替えを認めると、事前積立てがその3分の2(240万円)に減ってしまいます。

 

それでは、今回なぜこのような提案が実現したのでしょうか?

 

事情を確認したところ、独立系保守会社による大手マンション管理会社への営業政策の一環として、同社受託物件に対して極めて例外的に提案したものであることがわかりました。

 

管理組合にとっては、メーカー系から独立系への委託先変更によってPOG契約での委託金額を大きく削減することも可能でした。(現状比46%ダウン)

 

一方、現状とほぼ同等のコスト負担ながら、将来の修繕費用の負担が免除されるFM契約への切り替えも選択肢として増えたわけです。

 

その結果、この管理組合では、今後修繕費の負担がないFM契約に仕様変更する方針を選択されました。

 

その背景には、修繕積立金会計の剰余金不足という事情がありました。

 

昨年、こちらのマンションでは初めての大規模修繕を実施したところ、外壁タイルの不具合が当初の想定をはるかに超える割合で発生していたたため、工事予算が大幅に増えたために剰余金が大きく減少してしまったのです。

 

今回の総会では修繕積立金の増額改定(現状比60%増)も議案に上程され、無事承認されましたが、今後の修繕費負担のリスクを抑制するためにエレベーター保守もFM仕様への変更を決断されました。

 

ここで、管理組合にとって現状のままPOGでコスト削減を享受するのと、FM契約に切り替えて将来の修繕支出を免れるのとどちらが得なのか、検証してみましょう。

 

(1)リニューアルまでのエレベーター修繕費の総額

概算では、およそ400万円と推測されます。

<年額12万円(FMとPOGの通常差額)×30年×1.1(消費税分)=396万円

 

一方、このマンションにおいて竣工以来実施した修繕工事は、

合計24万円(各種バッテリーの交換)でした。

 

したがって、

今後リニューアルまでに必要な修繕費用は、差引き372万円・・(A

と想定されます。

(2)FM契約を選択した場合

POGの委託費との差額分(年額+17.6万円)が将来の修繕に備えた積立分に該当しますが、その金額の合計は、リニューアルまでの今後17年間の総額で

329万円(税込ベース)・・(B

<年額17.6万円(POG契約との差額)×17年×1.1(消費税分)>

 

(3)POG契約を選択した場合

今回の契約変更に伴うエレベーターの保守委託費(POG契約のまま)の減額効果で得られる剰余金の増加は、

337万円(税込ベース)・・(C

<年額18万円(現契約との差額)×17年×1.1(消費税分)>

 

つまり、上記前提条件で両者を比較した場合、

・FM契約を選択した場合 :43万円の得 <(A)ー(B)>

・POG契約を選択した場合:35万円の得 <(A)ー(C)>

 

上記の前提条件をもとに比較すると、FM契約を選択する方が若干お得ではありますが、そんなに大きく変わらない結果となりました。

 

ただ、消費税の増税、あるいは大きなインフレが将来発生するリスクを考えると、事前に支出が確定しているFM契約を選択した方が無難と言えるでしょう。

 

いずれにしても、管理委託契約の見直しで財政状況の大きな改善が実現したことには変わりなく、事前の期待通りのベネフィットを管理組合に提供できてよかったと安堵しています。

 

<参考記事>

 

yonaoshi-honpo.hatenablog.com

 

 

yonaoshi-honpo.hatenablog.com

 

 

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マンション管理適正化診断で最低の「B」評価になったワケ

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先日、コンサル先の管理組合で「マンション管理適正化診断サービス」を実施しました。

 

yonaoshi-honpo.co.jp

 

残念ながら、その結果は・・・

「17点」で、最低ランクの「B」評価となってしまいました。

 

築40年を超える高経年のマンションなので、最高の「S」評価を獲得するのは極めて難しいのですが、普通にやるべきことをやっていれば余裕で「A」評価は獲れるはずです。

 

今回の診断では、いくつかの大きな問題点が浮かび上がってきました。

(1)管理費の長期滞納者がいるのに放置!

診断時点で、すでに10ヶ月以上の滞納者が1名いますが、まったく回収のめどが立っていませんでした。

 

滞納者への支払い意思の確認や内容証明便の送付はもちろん、少額訴訟等の法的措置にも着手していませんでした。

 

(2)長期修繕計画に重大な欠陥あり!

長期修繕計画は10年前に作成されたまま、その後更新がなされていませんでした。

 

また、このマンションで25年間で必要とされる修繕資金を

(専有面積あたりの)月額平均単価に換算すると、@124円/㎡ でした。

 

これは、国交省のガイドライン(同 @165円/㎡以上)と比べても少なすぎます。

 

資料を精査してみると、

その理由は、設備にかかる修繕費の計上漏れによるものであることがわかりました。

 

特に、給排水管の更新については竣工以来未実施のうえ、計画にも実施予定時期や概算予算が一切計上されていませんでした。

 

照明や消防などのその他の設備についても、計画期間中ほとんど費用の計上がされていませんでした。

 

(3)法定点検時の指摘事項に対して修繕等の対応がない!

 昨年実施した消防設備点検ならびに特定建築物定期調査では、以下のような指摘事項が各報告書に記載されていますが、その後も修繕等の対応が一切なされていないことがわかりました。 

・避難器具未設置

・非常用バッテリー不良

・自動火災報知器受信機の不良および一部断線

 

ちなみに、

このマンションでは「建築設備定期検査」の実施義務もあるのですが、これまで一度も実施すらされていませんでした。

 

(4)大規模修繕の完了報告書・保証書がない!

 約10年前には実施された模様ですが、当時の工事完了報告書が見当たらず、正確な実施時期や工事内容、保証条件を確認することができませんでした。

 

 ここまでの酷い状況を見て、

皆さんは「このマンションは自主管理なのではないか?」と思われた方もいらっしゃるでしょう。

 

いえいえ、実は「全部委託」なのです!

ビックリでしょう!

 

しかも、診断の際に、管理会社の担当者に問い合わせをしたのですが

メールではほとんど返信がなく、電話かショートメールのみ。

 

大規模修繕工事の完了報告書を閲覧したいと申し出たところ、

「報告書は保管していない」ということで、

工事前の見積書・仕様書が送られてきました・・・(泣)

これが一体何の役に立つというのでしょうか??

 

結局診断項目をすべて確認し終えるのに、

2週間以上もかかってしまいました。

 

こんな状態では、管理委託費がたとえ適正な水準であっても

管理会社に委託している意味自体がまったくありません。

 

ただ、とても幸いなことに、これまで必要な修繕を実施していなかったせいか、

このマンションの剰余金残高は潤沢であることがわかりました。

 

この管理会社の場合、単純に仕事をしていなかっただけで、

どうやら「悪徳会社」ではなかったようです。

 

今後どの程度の期間をかけてまともな状態に再生できるか、

理事さんと協力しながらトライしたいと思います。

 

 <参考記事>

  

yonaoshi-honpo.hatenablog.com

  

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           f:id:youdonknowwhatyoulove:20180907095250g:plain

 

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大手マンション管理会社を対象とした「顧客ロイヤリティ調査」に新奇性はあるか?

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NTTコム オンライン・マーケティング・ソリューション(NTTコム オンライン)が、マンション管理業界を対象に、顧客ロイヤルティを測る指標であるNPS(R)ベンチマーク調査を実施し、その結果を3月12日にリリースしました。

 

www.nttcoms.com

 NPS(R)(Net Promoter Score(R))とは、「友人や同僚に薦めたいか?」という質問への回答から算出される、顧客ロイヤルティを図る指標です。

 

欧米では公開企業の3割強がNPS(R)を活用しているとされ、日本においても顧客満足度にかわる新しい指標として、NPS(R)を活用する企業が増えてきているそうです。

 

調査結果の概要は以下の通りです。

■ 調査対象:以下の大手マンション管理会社

住友不動産建物サービス、大京アステージ、大和ライフネクスト、

東急コミュニティー、日本ハウズイング、野村不動産パートナーズ、

長谷工コミュニティ、三井不動産レジデンシャルサービス、三菱地所コミュニティ


■ 調査対象者 :上記管理会社が管理するマンションに居住する区分所有者

■ 調査方法  :非公開型インターネットアンケート

■ 調査期間  :2019年12月

■ 有効回答者数:2千名強

■ 回答者の属性:【性別】男性:48.8%、女性:51.2%

■ 回答者の年代:

20代以下:4.8%、30代:10.4%、40代:19.9%、50代:21.4%、60代以上:43.5%

 ■ 結果分析

(1)NPSのトップスコアは、「三井不動産レジデンシャルサービス」
 管理会社9社のうち、1位は三井不動産レジデンシャルサービスとなった。

 

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(2)管理会社への不満項目は、「コストの高さ」と「長期修繕計画」
 17項目にのぼる要因別に満足度と重要度を分析したところ、重要度が高いにも関わらず満足度が伸びなかった(重要度と満足度のギャップが最も大きかった)項目のトップ3は以下の通り。

  1位「管理会社へ支払う費用が適正

  2位「策定する長期修繕計画が適正」

  3位「誠実な対応・意欲」

 

(3)満足度の高い項目は、「管理人業務」

満足度が総じて高かったのは、最も接触する頻度の高い管理人の仕事ぶりであった。

  1位 「管理人や清掃スタッフの共用部分の清掃の丁寧さ」

  2位「管理人の応対のよさ・親しみ やすさ」

  3位「管理人の緊急時や困ったときの対応の迅速さ」
 
(4)推奨者は費用面での許容度が高い傾向

推奨者は「ブランドイメージの良さ」を重視する傾向があり、費用に対する不満は小さい傾向が見られた。

 

(5)批判者は信頼性や提案力に不満の傾向

批判者にとって不満の要因となる主な項目は、「サービスの信頼性」「管理会社からの提案」の2つ。

 

(6)管理会社リプレイスに至る主な理由は、「コスト」と「提案力」

リプレイスの経験者は全体の2割弱で、主な変更理由は以下の通り。

 1位:「管理会社に支払う費用が高い」(31.3%)

 2位:「管理組合への提案やアドバイスが不十分」(17.8%)

 

 本調査の結果自体は、率直に言えば、「おおむね予想通り」でした。

 

以前本ブログでも記事にしているように、他社が実施した顧客満足度の調査でも、以下の通りほぼ同様の傾向が見て取れるからです。

 

① 「管理人」の評価は総じて高いが、「管理会社」への評価は低め

②「コスト」面については、おしなべて低評価

 

<参考記事>

yonaoshi-honpo.hatenablog.com

 

 要するに、

管理人はそこそこ働いてくれているけれど、フロント担当者や管理会社への満足度はおしなべて低く、コスト・パフォーマンスには不満がある、という点は同じでした。

 

ただ、今回のNPSの調査結果は、顧客の不満要因がどこにあるのかをもう少し具体的に探った点では若干の意義があったかもしれません。

 

管理委託費や修繕費用が割高なのが不満項目のトップですが、これに続く要因として以下の2つが挙がっています。

 

■ 管理会社が策定する長期修繕計画と修繕積立金が適正(ではない)

これは、入居当初の修繕積立金が人為的に低く設定されているために、経年的に増額を強いられることについての不満が根強くあると思われます。

 

特に、大手管理会社の場合、マンション売主であるデベロッパーの系列会社である場合がほとんどのため、この問題を認識しながらも自ら是正しにくい立場にあるからでしょう。

長期修繕計画は5年程度のサイクルで更新することが望ましいとされていますが、大手でもオプション業務扱いにして10年以上更新されずに放置しているケースも少なくありません。

 

■ 管理会社の誠実な対応と意欲(が見られない)

これは主にフロント担当者に対する以下のような不満が影響していると想定されます。

・理事会や総会の議事録の作成が遅い、出来が悪い。

・理事会等で依頼した事項へのレスポンス・対応が遅い、あるいは放置されている。

・法定点検時の指摘事項に対して修繕などの提案がなされない。

 

先日も築40年超のマンションで管理適正化診断を実施しましたが、管理会社の仕事ぶりは以下のように惨憺たる状況でした。

****************

・大規模修繕工事の完了報告書や保証書がどこにも見当たらない。

・1年前の法定点検での要改善事項(誘導灯バッテリーの交換、自動火災報知器受信機の不良および一部断線)がまったく手当されず。

・建築設備定期検査が毎年必要にもかかわらず、未実施のまま放置。

・10か月以上の長期滞納者について特段の回収措置がなされないまま。

・長期修繕計画は10年前に作成したままで風化。しかも給排水管の交換が未実施にもかかわらず、計画に概算費用すら計上されていない。

****************

 もはや管理委託費の水準がどうとかという以前のレベルで、即他社へのリプレイスを提案するつもりです。(怒)

 


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