マンション管理士|村上智史の「士魂商才」 

無関心な居住者が多いマンション管理組合に潜む様々な「リスク」を解消し、豊かなマンションライフを実現するための「見直し術」をマンション管理士:村上智史(株式会社マンション管理見直し本舗 代表)がご紹介します。

マンションの組合総会が紛糾しないための予防策 それを実践するのは「誰」か?

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6月3日付のダイヤモンド・オンラインで、「マンション管理組合が、紛糾しがちな「総会」を成功させるための合意形成術」と題する記事が掲載されていました。

 

diamond.jp

本記事の要約は以下の通りです。

■ 組合総会ですんなり通ると思っていた議案が、思わぬ反対意見の登場で否決されてしまうことも少なくない。その原因は、「合意形成」の失敗によるところが大きい。

 

■ 管理組合は、会社組織のような上下関係のない、メンバー横並びの「文鎮型組織」である。参加メンバー間での力関係の差がないがゆえに、逆に組織を円滑に運営していくのは容易でない。

 

■ しかも百人百色の人がいる管理組合という文鎮型組織を動かし、合意形成を図るためには、その手続きを踏むための独自の手法や戦略が必要なのだ。

 

■ 合意形成を図るための4つのポイントを以下紹介する。
(1) 広報活動
・総会が紛糾する原因の1つに、日常の「広報不足」がある。理事同士は問題を共有していても、区分所有者はその問題を認識できてない状態にある場合、心理的に反発を招いてしまうからだ。

・一般の区分所有者にも正しく問題を認識してもらうための広報活動として、理事会の議事録を毎回公開することはもちろんだが、A4サイズの用紙1枚でもいいので年に数回程度広報誌の発行を行うことを勧める。

・特に重要な議案がある場合には、総会の数ヵ月手前から複数回、議案やそれに関する情報を掲載する。そうすることで事前に議案を周知したという証拠にもなるし、理事会の説明責任を果たしたことにもなる。


・また、地道な広報活動が功を奏して管理組合や理事会の活動に関心を持つ区分所有者が増えるため、総会や説明会の出席率アップにもつながりやすい。
 
(2)説明会
・重要な議案や複雑な議案を上程する場合には、事前の説明会開催は必須である。

・総会の予行演習にもなるし、仮に理事会の方向性が間違っている場合には、そこで反対意見などが出てくるので、議案の作成について軌道修正を図ることもできる。
・また、説明会を行うことで、周知徹底を丁寧にしたという証拠にもなる上、区分所有者の「ガス抜き」の場になるという効果もある。
・口頭での説明だけでなく、資料やスライドを使うなど、丁寧な説明を行うことが望ましい。

 

(3)アンケート
・アンケートは区分所有者全体の意見を集約するためというよりも、「理事会で決めたことを啓蒙するための手段」として活用できる点にこそメリットがある。
・アンケートを集計して、その意見によって物事を決めるというのであれば、理事会や専門委員会は不要になるからだ。
「区分所有者の民意を反映した」という証拠にもなるため有益だ。

 

(4)専門委員会・プロジェクトチーム
・例えば大規模修繕工事や管理規約の改正などは大きなテーマだが、任期の短い理事にとっては負担の大きなテーマであり、どうしても楽な方法や簡単に決定できる方法を選択しがちだ。

・反対意見が出ることが予想される事案、議案検討に時間を要する事案、あるいは専門的な知識が必要な事案などの場合は、それに特化した専門委員会やプロジェクトチームを設置するとよい。

・専門委員会やプロジェクトチームを作っても間違った方向に進む可能性はあるが、その場合は理事会がそれを牽制する働きをするので、やはり重要なテーマについてはそれを継続的に検討する機関を設けるべきだ。

・委員やチームのメンバーには、モチベーションアップのために「あめ」を用意してほしい。たとえば、1回あたり1000~2000円程度でいいので会議費として予算をとって、会議の際には弁当や飲み物を出す。ユニークな事例としては、理事になる輪番をスキップできるという「あめ」を付与しているマンションもある。
 
■  理事会がこうした手法をとるために大きな助けとなるのが「仲間作り」だ。「こんなマンションを目指しましょう」という合言葉を作って思いを共有し、1人ひとりが自分自身の課題としてとらえ、アイデアを出し合って協力し合う組織を目指してほしい。

 

■  そういう理事会の姿勢が、やがてはマンション全体のコミュニティー意識を高め、資産価値の向上にもつながってくる。

 

記事の内容は、いちいちご尤もであります。

 

管理組合役員向けの「テキスト」という意味では、申し分のない内容だと思います。

 

現状では、こうした教科書的なものすら世の中に存在しないので、管理組合の役員さんや一般の区分所有者にとって貴重なのは確かでしょう。

 

ただ、教科書の内容を理解できても、その内容を実践できるかどうかは別問題です。

 

たとえば、

輪番制の理事会では重要テーマや専門性の高いテーマは扱いきれないので、専門委員会を設置しようというのは紛れもない「正論」です。

 

ですが・・

専門委員の募集をしても立候補が皆無、というのが管理組合の抱える「現実」です。

 

それは、専門知識、情報共有、コミュニケーション・・云々以前の問題として、

管理組合の仕事を「わが事」と認識していないことが根っこにあるからです。

 

たいていの区分所有者は、管理会社が組合業務を適切に代行してくれるものと思いこんでいます。

 

それには、管理会社がマンション分譲主の系列会社であることも多分に影響しているでしょう。

 

それゆえ、組合の運営実務を管理会社に「丸投げ」してしまいがちなのです。

 

その結果、多くのマンションでは以下のような現象が生じています。

・組合役員の就任依頼が来ても、多忙を理由に拒否

・理事会や総会の議事録作成は、管理会社にお任せ

・管理費滞納や設備の不具合にも管理会社が適切に対応してくれるものと盲信

・修繕積立金が将来不足しそうでも増額プランに反対

・駐車場の空きが増えても無関心

 

こうした管理組合の「実態」を放置せずに、本記事に掲げるような適正な組合運営を行っていくには、まずこうした実態に対して危機感を持つリーダー的な存在が必要です。

 

こうしたリーダーが生まれる素地・環境づくりをどうやって作るのかが重要であり、もっとも厄介な問題なのだと思います。

 

また、専門知識のないリーダーをサポートする役割としてマンション管理士などのアドバイザーの存在も同時に不可欠になってくる、というのが私の考えです。

 

 

<参考記事>

yonaoshi-honpo.hatenablog.com

 

yonaoshi-honpo.hatenablog.com

 

yonaoshi-honpo.hatenablog.com

 

 

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