マンション管理士|村上智史の「士魂商才」 

無関心な居住者が多いマンション管理組合に潜む様々な「リスク」を解消し、豊かなマンションライフを実現するための「見直し術」をマンション管理士:村上智史(株式会社マンション管理見直し本舗 代表)がご紹介します。

国のマンション管理計画制度に先行して始まる、東京都の「管理状況届出制度」とは?

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3月10日付けの住宅新報WEBに、「マンション関連2法改正案が国会へ 適正管理に恩恵、促進図る」と題した記事が掲載されていました。

 

www.jutaku-s.com

本記事の要約は以下の通りです。

■ 政府は2月28日、「マンションの管理の適正化の推進に関する法律及びマンションの建替え等の円滑化に関する法律の一部を改正する法律案」を閣議決定し、同日に国会へ提出した。

■ 国による「管理基本方針」をはじめ、管理組合による「管理計画」の認定制度、団地における敷地分割制度などの創設が柱。成立すれば公布から2年後に全面施行される

■ 管理では、国がマンション管理についての基本的な方針を策定。現行の「マンション管理適正化指針」は、国の基本方針に組み込まれる形となる。

施策の主体は、基本的にはマンションの割合や数の多い都区部と市単位を想定し、町村については県が役割を担う見込み。各自治体は国の基本方針を踏まえ、区域内の「マンション管理適正化推進計画」を作成できる。ただし、 マンションの状況は自治体によって差があるため、くまでも任意の計画となる。

■ 自治体は、「積立金が不足」「総会が適法に開かれていない」などの状況を把握しながら、「管理組合に対して助言や指導、勧告を行える。ただし、罰則規定はない

■ また、個々のマンションの「管理計画」制度も創設する。所定の基準に適合していれば行政の認定を受けられるため、管理状況の可視化と市場での優位性につながり、住民による適正管理のモチベーション向上が期待される。計画認定のインセンティブとして、国交省は税制による優遇も検討しているようだ。

■ 管理組合と管理業者の負担軽減を図るため、管理受託契約における重要事項説明書と契約時の書面についてはデジタル交付を認め、重説自体もIT活用が可能となる見込み。

■ 同一内容での契約更新時の重説については、組合側が説明不要と表明すれば、書面の交付のみで可とする。

■ マンション再生についても、新たな施策を盛り込んだ。現行の敷地売却制度を拡充し、対象の追加に加えて敷地分割も行いやすくする。

■ 具体的には、「防火性についての建築基準法等不適合」と「外壁の剝落等による周辺危害のおそれ」を「特定要除却認定」として新たに追加する。またバリアフリー性能が確保されていない建物や、給排水管などの著しい劣化なども「要除却認定」として加えた。

■ 現在は民法の原則により全員の賛成が必要となるため、敷地分割は極めて困難な状況にある。そのため、「特定要除却認定」の団地型マンション等の再生へ向け、所有者等の5分の4以上の同意により敷地を分割・売却できるようにする。

本記事によれば、

管理計画の認定制度は2022年から正式にスタートする予定です。

 

具体的な仕組みとしては、

国が定めた「基本方針」(現状の国交省が定めたマンション管理適正化方針を踏襲するにすぎない)にもとづき、各自治体が区域内の管理適正化推進のための計画を作成します。

 

そのため、自治体の裁量によって濃淡が出るというか、指導の厳しさもかなり差が生じることになることが予想されます。

 

本制度の運営で注目されるのは、個々の管理組合に提出を求める「管理計画」の作成の内容とその手間がどれくらいかということでしょう。

 

管理組合は委託先の管理会社に「丸投げ」したいと考えるし、頼まれる管理会社はなるべく手間をかけたくないというのが本音でしょう。(自主管理タイプの管理組合は自ら作成しなくてはならないので大変です)

 

一方、全国で最もマンションの多い東京都では、本制度に先行する形で、今年1月「東京におけるマンションの適正な管理の促進に関する条例」が制定されました。

 

www.mansion-tokyo.jp

この条例は、以下の3つの柱で構成されています。

1.都や管理組合、事業者等の責務の明確化

2.管理組合による管理状況の届出(管理状況届出制度)

3.管理状況に応じた助言・支援等の実施

 

都の「管理状況届出制度」の概要をまとめると以下のようになります。

● 要届出マンション

1983年12月31日以前に新築されたマンションのうち、人の居住の用に供する独立部分の数が6以上であるもの

上記以外でも、管理不全の兆候があると思われると判断した場合は、その限りでない。

● 届出事項

 ・管理組合の運営体制の整備

 ・管理規約の設定

 ・総会の開催

 ・管理費及び修繕積立金の額の設定

 ・修繕の計画的な実施

● 届出方法

以下の2つの方法から選択できる。
1)管理状況届出システムへの入力(推奨)
2)マンション所在の区市町村への届出書の提出
 ● 届出の更新・変更

5年ごとに届出内容の更新が必要
(届出内容に変更が生じた際に、変更の届出が必要)

● その他

届出を行ったマンションや、正当な理由なく届出がないマンションの管理組合や区分所有者等に対し、管理組合又は区分所有者等の協力を得て、当該マンションに立ち入り、書類その他の物件を調査することができる。

 

つまり、都内にある今年で築37年以上になるマンションは、ほぼすべてが届け出が義務付けられ、5年ごとに更新の届け出も必要なります。

 

ただ、届け出の内容を見る限り、普通に運営されている管理組合にとってはほとんど負担とはならないでしょう。

 

都の狙いは、本制度の施行によって管理不全のマンションをあぶり出し、是正させるための指導を実施したいということだと思います。

 

ただ、互いに似通っている国の「管理計画認定制度」と都の条例による「管理状況届出制度」が、管理組合にとって二重の負担にならないように配慮してもらいたいです。

 

<参考記事>

  

yonaoshi-honpo.hatenablog.com

 

 

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マンションの非常用照明灯は、いつどのようにLED化すべきか?

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共用部の照明灯のLED化はもはや当然のことですが、非常用照明までLED化しているマンションとなると、まだかなり少数派ではないでしょうか。

 

非常用照明とは、停電時でも一定時間の照度を確保できるように内臓バッテリーを用いた照明で、建築基準法によって設置基準が定められています。

  

建築基準法では、2014年まで非常用照明器具の光源は耐熱性及び即時点灯性を有する「白熱電球」と「蛍光灯」に限定され、LED電球は一切使用できませんでした。

 

しかし、2014年11月以降、国交大臣の認定を受けたバッテリー内蔵型LED照明に限って非常用照明器具への利用が可能になりました。

 

そして、パナソニックからLED型の非常用照明が発売されて以来、徐々に普及し始めました。

 

ただ、非常用照明のLED対応器具は、一般の照明器具と比べてかなり高額です。

 

非常用照明の場合、器具代(工事代は別途)だけで@3~4万円台が相場で、一般の照明器具に比べて3~4倍も高い水準です。

 

そのため、非常用照明は電気代の削減効果で償却するのに10年以上かかってしまうことから、共用部照明灯のLED化工事を実施する場合でも、対象から外されるのが一般的でした。

 

しかし現在では、家庭用の白熱電球はすでに全メーカーが生産を中止し、蛍光灯も2020年中には器具の生産が中止されるため、光源である管球の生産も一気に縮小することが見込まれます。

 

そのため、消防関係を含む法定の設備点検の際に非常用照明の電球やバッテリーが切れていることが分かってこれらを交換しようとしても、LED照明しか選べない時期が来るのはもはや時間の問題です。

 

その場合、当然ながら照明器具ごとの交換を迫られることになります。

実際、築20年超のマンションでは、そのような事例が徐々に出始めています。

 

非常用照明の存在意義を考えれば、緊急の際に不点灯であっては拙いため、点検時に不具合が指摘されれば早急の対応(=交換)が必要です。

 

その場合、留意すべきなのは、高い器具代だけでなく、その交換工事費の負担です。 

 

電気工事業者にヒヤリングしたところでは、1~6か所の交換につきで5~6万円かかるそうです。

 

先日も、顧問先のマンションでLED化の見積もりを取得したところ、対象となった120か所のうち何と100か所以上が「非常用兼用タイプ」の照明であることが分かりました。

 

その対象箇所を一括で施工した場合の工事費の見積もりは、およそ40万円。

 

しかし、不具合が生じた都度、今後さみだれ式で少しずつ交換したらどうなるか?

 

たとえば1回あたり5か所ずつ交換すると仮定し、合計20回に分けて施工すると、100万円以上かかることになってしまいます。

 

また、全体を一括でLED化した方が電気料金の削減効果も早く得られます。

 

以上の点から考えると、(初期費用が掛かるのが痛いところですが、)

照明器具の耐用年数(15年)をすでに超えているマンションは、非常用照明器具の一括LED化を検討されることをお勧めします。

 

なお、交換時期としては、非常用照明に内蔵されたバッテリーが切れる時期(設置後4~6年経過した頃)を目途に計画するのがベストでしょう。

 

<参考記事>

 

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「はじめてのマンション大規模修繕」で知っておきたいこと

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丸紅のマンション「グランスイート」の情報サイト「コムズ倶楽部」では、マンションのくらしに役立つコラムのコーナーが用意されています。

 

その中で、先日私がインタビュー取材を受けた「はじめての大規模修繕を考えよう」というコラム記事が昨日リリースされたので、ご紹介します。

 

www.marubeni-sumai.com

本記事の要約は以下の通りです。

 

大規模修繕を実施すべき時期は?

 ・一般的には12~13年周期と言われているが、マンションの立地条件、当初の施工状況や周辺環境などによって変わってくる。

・実際にどのタイミングで大規模修繕を行うべきかは、個々のマンションの劣化の進行度合いや立地環境などによる。

・そのため、事前に建物劣化診断を行い、その結果に応じて修繕すべき箇所の選定と適切な実施時期を検討していくことがお勧め

・なお、日頃チェックがしにくいバルコニーなどの専用使用部分に関する不具合等は住人向けのアンケートを実施して把握する。

 

工事期間や予算はどれくらいか?

・工事着工から完成までの期間は小規模マンション(50戸以下)で2~3ヶ月、それ以上の規模ならは5~8ヶ月程度かかる。

・建物劣化診断⇒修繕の対象範囲の検討⇒施工方法の検討⇒見積もりの取得⇒施工会社の選定といった一連の準備期間を含めると足掛け2年くらいのプロジェクトになる。
・大規模修繕にかかる費用については、ちまたでは「戸あたり100万円前後が目安」と言われる。

・ただ実際には、マンションの規模や、経年劣化に伴い必要となる修繕の対象範囲によって当然変わってくる。

重要なのは、建物診断を経て必要な修繕箇所を把握したうえで、同一の工事仕様と数量積算書をもとに複数の工事業者から見積もりを取得して比較検討すること。

 

長期修繕計画の内容を確認しよう!

・国土交通省の「修繕積立金に関するガイドライン」によると、専有床面積あたり200円/㎡(月額)前後が必要とされている。

・しかしながら、ほとんどの新築マンションでは、このガイドラインで示される目安額の半分以下とかなり低めに設定されているのが実態で、将来的に増額改定を強いられるリスクが高い。
・ご自身のマンションの修繕積立金が適正な水準にあるか確認すること。もし足りないと思われる場合は、なるべく早く増額改定を検討すべき。

 

工事はどこに、どのように発注するか?

・大規模修繕の発注スキームは、主に「責任施工」方式と「設計監理」方式の2つのパターンに分かれるが、どちらも一長一短がある。

・いずれの方式を選択するにしても、複数の業者から相見積もりを取得せずに進めると、本来まだ修繕の必要性の小さい範囲も対象に含められたり、競争原理が働かないために結局は「高くつく」リスクがある。
発注先の施工会社の信用力に不安を感じる場合には、国土交通大臣指定の住宅瑕疵担保責任保険法人が取り扱う「大規模修繕工事瑕疵保険」への加入を発注の条件に加えることをお勧めする。
事後に施工時の瑕疵が見つかったため、先方に補修を請求する際に、万が一その業者が資金不足や倒産などで自ら修繕できなくなった場合でも、上記保険法人に請求することによって実質無償で補修工事を実施することができる。

 

<参考記事>

 

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分譲マンションの管理状況の評価制度は、どんな仕組みになるのか?


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国交省が分譲マンションの管理状況を公的に調査し、その結果をもとに評価・認定する仕組みを構築するという構想については、先日このブログでも取り上げました。

 

 <参考記事>

yonaoshi-honpo.hatenablog.com

 本構想に関する現状の進捗状況については、マンション管理業協会(マンション管理会社の所管団体)のホームページで公開されている情報でおおむね把握することができます。

  

マンション管理業協会が業界の各団体に呼びかけによって参加した各委員、ならびに国交省や東京都から参加したオブザーバーで構成される「マンション管理適正評価研究会」が昨年発足し、下記3つの項目をテーマに検討を行っていました。

(1)管理に係る情報開示の必要性

(2)管理の質が市場価格・取引価格に反映される必要性

(3)適正な管理の基準

 

本研究会は昨年9月以降計4回開催され、その内容を取りまとめた「中間報告書」が去る1月24日に公表されるとともに、パブリック・コメントの募集を行っていました。(2月7日をもって終了しています。)


本研究会の報告書を要約すると、以下の通りになります。

■ マンション購入者の永住志向は年々高まっていることから、長期的なマンションの維持管理の重要性が高まること、及び修繕積立金の状況や居住者の高齢化等を踏まえると早急に適正な管理を促進する対策を検討する必要がある。

■ 高経年マンションストックの増加、ならびに区分所有者(居住者)の高齢化が今後予想される中、マンション再建・再生のための区分所有者の合意形成が難しくなることが想定される。

■ しかしながら、現状ではマンション購入者の意識は、立地や間取りに向きがちで、共用部分の維持管理状況に対する意識は低い

■修繕積立金については、築浅のマンションほど段階増額積立方式となっている割合が高く、さらに消費税増税の影響を受けて資金不足を懸念する管理組合が45%に達している。その結果、今後工事の延期(見送り)、あるいは工事範囲の縮小等で適正な修繕が実施できないリスクがある。

■ 現状、マンションの購入者は、物件探しの際の条件として立地や間取り、築年数のような情報を重視し、管理に関する情報は契約直前の重要事項説明の時に明らかにされるのが通例である。そのため 購入検討の早い段階から、対象物件の管理面における納得性とリセールバリューなど将来予測を検討する時間が必要である。

■  こうした要請に応えるために、マンションの管理情報をのうち基礎的な情報を「一般情報」、ペット飼育の可否や民泊の可否等人により評価が変わる情報を「客観情報」管理組合の財政状況といった管理状態の数値評価を行う「等級評価」に分類したうえで、登録・開示することが消費者保護の観点から必要である。

 

■ 現在の区分所有者にも、管理状況の評価が開示されることで管理の質が市場価格に反映されれば、リセールバリューが生まれたり、リバースモーゲージの際に、必要な資金を有利に調達できる。

 

■ また、管理状況を客観的、等級評価で示すことは、購入予定者の物件の選別に役立つだけでなく、管理組合にとっても管理面の強みや弱みが明らかになり、相対的に劣る部分について向上させようとする活動に繋がることが期待できる。

今回の中間報告書で管理組合にとって最も重要なことは、「マンションの管理状況の優劣が定量的に評価される」という点でしょう。

 

本報告書によると、等級評価される対象項目として以下の項目が挙がっています。

・管理者等の設置状況

・通常総会の開催時期と決算月

・管理規約原本の有無と現に有効な規約

・総会議事録の有無

・設備点検(法定点検を含む)業務の実施状況

・管理組合の財務諸表(管理費・修繕積立金の会計収支・純資産額)

・管理費等の滞納状況

・借入金の有無

・長期修繕計画の有無

・共用部の修繕工事の実施履歴

・建物の耐震性

・緊急対応、防災備品の備蓄、消防訓練の実施、防災対策の有無

 

これらを見る限り、日管連で実施している「マンション管理適正化診断サービス」で、A以上の評価を受けたマンションならばクリアできるでしょう

 

なお、この構想を具体的な制度として実現し、健全かつ継続的に運用可能なレベルにするためには、以下のように細部にわたって検討が必要な項目があると思います。

(1)評価主体の問題

誰が客観的に評価するのか?

マンション管理士などの専門家、もしくは自治体?

 

(2)情報の更新頻度

定期的な更新が必要なのは確かだが、何年ごとが妥当か?

 

(3)情報公開の仕組み

公的な機関によるものか、民間的な機関や媒体を通じたものか?

 

(4)インセンティブの付与

一定以上の評価を受けたマンションへの優遇措置の検討

 

(5)矯正のための制度検討

管理不全化の抑止を目的に、低評価の物件に対する外部による矯正促進策の検討

 

本件については、今後も引き続きモニタリングしていきたいと思います。

 

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マンション管理組合にも「所有と経営の分離」が待ったなし!

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2月15日付の「マネー現代」に、「ご存じですか、日本のマンションを廃墟に追い込む「共有地の悲劇」と題した記事が掲載されていました。

 

gendai.ismedia.jp

 本記事の要約は以下の通りです。

■ 日本の不動産全般の将来は暗い。不動産全般の価値がこれから上がるとは考えにくく、むしろ下がるだろう。

■ 中でもマンションに関してはさらに暗い見通しを持っている。「共有」という権利関係は調整が難しく、多くの問題を抱えているが、マンションにはそれ以上に大きな影響を与える。

■ マンションは1棟単位で成り立っていて、各部屋は「概念上独立」しているに過ぎない。つまり、マンションの本来の価値は、各部屋ではなくマンション1棟で考えるべきだ。そして、その価値を決めるのに決定的役割を果たしているのが「管理組合」だ。

■ しかし、少なくとも現状では、このシステムほどお粗末なものはない。マンションの財産価値が、このようなお粗末な組織に左右されるならば、ほとんどのマンションの価格はこれから低下の一途をたどるだろう

■ 管理組合の問題は、通常「共有地の悲劇」と呼ばれる現象と密接に関わる。ウォーレン・バフェットの言葉にあるように「レンタカーを洗って返す人間はいない」ということだ。自ら購入した車には、手洗い洗車・ワックスがけを欠かさない人は珍しくはないが、レンタカーの場合、洗車機で洗う人さえいない。それは「共有物」だからだ。

■ 同様に、村共同の牧草地は、自分だけのものではないから、将来のことなど考えずに放牧が行われ、最後は荒れ地になってしまう。それと同じことが、マンションにも起こりつつある。

■ マンションの管理組合が、まがりなりにも機能してきたことの方が不思議である。管理組合の理事長(または理事)の成り手がなかなか見つからないのも当然である。責任を負わされ、時間も取られるのに、無給であれば、ばかばかしい限りだからだ。

■ それでも、これまでなんとか理事長の成り手を見つけてくることができたのは、日本人の公徳心の高さの他に、「地域コミュニュティー」の助けが大きかった。マンションは1つのコミュニティであり、村の寄り合いや町内会のようなものがイメージされたため、それを守ろうとする人々の総意が、管理組合という仕組みをなんとか維持してきたのだ。

■ しかしながら、人口移動の激しい都市部では、このような自治組織を維持するのが困難になってきている。

■ マンションと株式会社はよく似た仕組みである。マンションでは、1棟のマンションを「区分所有」という形で各部屋ごとに別々の人々が所有するのに対して、株式会社では、1つの会社の所有権を「株式」という「区分所有権」に分割して大勢の人が所有する。

■ 初期の株式会社では、大株主が経営者になることが多かった。しかし、企業の巨大化と株式市場の発展によって「所有と経営の分離」が行われるようになると、業務に精通しない多数の一般株主が経営に直接関与することはほぼ不可能になる。そこで、「専門の経営者」を雇ってその経営者を株主総会などで管理していく形が一般化する。

■ 分譲マンションも「管理と所有」の分離の段階に来ているのではないか?密な地域社会はすでに崩れ、人の移動が頻繁に起こる。しかも、マンションは投資対象にもなり、所有者と居住者が違うことがごく普通になってきたうえに、外国人によるマンションの所有や居住も増えてきた。文化も風習も価値観も違う人々を片手間(基本的に無給)の素人の理事長がまとめていくのは困難である。

■ 現在のマンション管理組合は「時代遅れ」で制度疲労を起こしており、早急に抜本的改革を行わないと、日本中のマンションがスラムになる恐れがある。

■ 神戸市の「タワーマンションの認証制度」のように、何らかの対策をとろうとする姿勢は評価できるが、一地方自治体の手に負える問題でもない。届け出や認証などの管理を強化すればするほど、ボランティアの理事長の成り手はますます減る。

■ 理事長の報酬を含む「本当の管理コスト」を明示するように法律で強制し、「先払い」させることが重要である。価値観が多様な所有者に後から、追加支払いを納得させるのはかなり難しい。また、将来のためにマンションの解体費用も「先払い」させるべきである。

■ この先払いした金は、信頼できる機関に供託するようにするべきだが、この「信頼できる機関」を見つけるのがもっとも困難かもしれない

 

 本記事の筆者(大原浩氏)のプロフィールを確認したところ、外国為替を含む金融業界の専門家であり、マンションについて特に精通されているわけではなさそうです。

 

ただ、以下のような管理組合が抱える本質的な問題への指摘と提言は、まさに至言というべきで深く同意します。

*****************

①そもそも「性善説に立ったあまりに脆弱な組織」に運営を委ねている

②都市化の進行に伴う地域コミュニティーの崩壊に直面する中、役員のなり手不足が深刻化し、理事会の健全な運営ができなくなるマンションが増えるのは確実

③株式会社のように、「所有と経営の分離」を図るべき

*****************

 

当社が管理組合さんからの問い合わせを受けた際に、必ず説明しているテーマがあります。

 

それは、「管理組合が抱える4つのリスク」です。

(その詳細は、下記サイトを参照ください。)

 

note.com

この中で、3つ目のリスクとして挙げているのが、

「ずぶの素人」が運営する脆弱な体制 に関するくだりです。

 

管理組合の役員さんの仕事って、町内会や学校のPTAと同じく「貧乏くじ」だと思われてますよね?

 

でも、考えてみてください。

 

管理組合を巡ってかなり大きな単位のおカネが動いています。管理費と修繕積立金、駐車場使用料をあわせて毎月3万円払っていれば年間36万円。

 

100戸のマンションなら年間収益は4千万円近くにものぼります。修繕積立金にいたっては、10年も貯まれば軽く「億」を越える金額になります。

 

このマンションを巡る多額のおカネをどうやって運用するのかを、各区分所有者は理事長をはじめ管理組合の役員たちに委ねています。

 

こうしてみると、管理組合とは「資産管理会社」であり、その理事会は「経営幹部・取締役会」と置き換えることができます。

 

でも、管理組合を会社組織と比較した場合、明らかに異なる点があります。

 

それは、組織の経営を担うのが、プロフェッショナルかそうでないか です。

 

 

多くの上場会社では、所有と経営が分離しており、経営幹部や会社の役員は株主から選任されるのではなく、そこで長年勤務した従業員などから選抜された「その道のプロ」です。

 

一方、管理組合は「所有も経営も同じ区分所有者」です。

 

つまり専門知識のない「素人」が理事会を運営するため、その双肩に将来(=マンション1棟の資産価値の増減)を託しているのです。

 

にもかかわらず、多くのマンションでは輪番制を採用し、理事会役員は毎年のように交代で運用するのが慣例になっているのが実情です。(その結果、管理会社に理事会の運営自体も丸投げしてしまっている管理組合が少なくない・・・)

 

つまり、「多額のおカネの使い道を管理して専門的な知識が求められる」のに、「町内会やPTAと同じような半強制ボランティア方式の人事で運用している」のが管理組合運営の最大のリスクだと言えます。

 

ただ、筆者も最後に述べているように、所有と経営を図る上で区分所有者が託すことのできる「信頼できる機関」が現状不在です。

 

それは、管理会社か、マンション管理士か、各自治体か、それとも別の以外の誰かか?  

その「担い手をつくる」こそが、最大のテーマかもしれません。

 

<参考記事>

  

yonaoshi-honpo.hatenablog.com

 

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マンション管理会社の不正行為がなくならないのは、原因の分析が上っ面だから

 

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2月12日のニュース配信サイト「Net IB News」で、「従業員が管理組合財産を着服~東京都のマンション管理会社に監督処分」と題した記事が掲載されていました。

 

www.data-max.co.jp

本記事の要約は以下の通りです。

■ 国交省の関東地方整備局は2月6日、東急不動産グループのマンション管理会社:コミュニティワン(株)に対し、監督処分を行った。同社は2015年と2018年にも同様の理由で監督処分を受けており、今回で3回目の処分となる。

 

■  同社が管理受託している複数の管理組合で、同社の従業員と再委託先の従業員が、管理組合財産(修繕積立金など)を不正に着服していたことが判明した。

 

■  また、マンション管理適正化法施行規則において「区分所有者などから徴収した修繕積立金等を収納口座に預入した後、管理事務に要した費用を控除した残額を翌月末日までに保管口座に移し換える」と定められているが、同社はこの移し換える作業を行っていなかった。

 

■ 同社は取材に対し、「(今回の不正行為は)管理組合の決算書を確認した際、実際の予算より多く計上されていたため社内調査を行ったところ、同社従業員と再委託先の従業員が、備品購入時に日用品などの私物を合わせて購入していたことが判明した」と説明した。

 

不正に加担した従業員は11名、着服金額はおよそ370万円にものぼる。着服分については組合に全額弁済され、対象の社員は社内規定にもとづく処分が下されている。

 

不正の背景について同社は、「これまで他社からのリプレイスやM&Aなどにより管理物件を増やしてきたが、その際、元の管理会社の方法を踏襲して管理していた。結果として管理組合ごとに異なる管理方法が混在し、それぞれの管理体制の把握ができていなかったことが今回の事態を招いた」と説明している

 

■ 今後については、「これまでバラバラだった管理方法の統一化を図り、支店ごとに行われていた管理業務も本社で一括化する。監査法人に委託して会計処理マニュアルを作成し、それに沿って適正な会計処理を行っていく」としている。

 

なお、本処分に関する国交省の発表は下記サイトを参照ください。

https://www.ktr.mlit.go.jp/ktr_content/content/000767933.pdf

 

管理会社の社員による組合財産の着服事件については、本ブログでも頻繁に取り上げ改善のための提言もしているので、もはやそれを繰り返す意欲も残念ながら湧いてきません。

 

ただ、本記事で気になったのは、記者からの取材に対する会社側のコメントです。

 

重要な点を以下の再度要約します。

***************************

<原因の分析>

他社からのリプレイスなどで受託した物件について、前の管理会社のやり方を踏襲した結果、社内で異なる管理方法が混在し、それぞれの管理体制の把握ができなかったことが今回の事態を招いた。

<改善のための施策>

管理方法の統一化を図り、支店ごとに行われている管理業務も本社で一括化する。管理業務については、監査法人を新たに設置したうえで会計処理マニュアルを作成し、それに沿って適正な会計処理を行っていく。

***************************

要するに、

個別の物件によって異なる管理体制について把握できていなかったことが、着服事件の原因と考えているわけです。

 

そのため、予防策として「管理方法の統一」や「会計処理マニュアルの変更」を行うとしています。

 

率直に言って、私には違和感しかありません・・・。

こんな勘違いも甚だしい分析にもとづく改善策で問題が解決するわけがありません。

 

そもそも本記事にも登場する「マンション管理適正化法」では、管理会社が月次会計報告書を作成のうえ、翌月末までに組合の理事長に送付することが義務付けられています。

 

重要なのは、その報告書をもとに、社内の誰がどのように不正やミスがないかをチェックしているのか?(ハッキリ言えば、していないのではないか?)です。

 

先日も、顧問先マンションの理事会で、月次報告書に不可解な現象が生じているので、フロント担当者に以下のような質問しましたが、彼は即答できませんでした。

 

・月極め駐車場の契約台数が変動していないにもかかわらず、その使用料収入が毎月激しく変動するのはなぜか?

・毎月自動引き落としになっているはずの防犯カメラの保守料金が前月計上されていないのはなぜか?

 

 なぜ私の質問に答えられないかというと、管理会社の社内で、会計処理業務は(フロント担当とは)異なる部署の社員が行っており、会計報告について相互でチェックしていないからです。

 

加えて言うと、

フロント担当者の上席であるマネジャーによる管理・監督もほとんど行われている痕跡がありません。

 

そのため日常的に発生するフロント担当の業務ミスや遅延・失念等も、クライアントである組合からクレームを受けない限り、一向に気づかないままという有様です。

 

つまり、根本的な原因は、社内の分業体制とそれに起因する管理監督ならびにコミュニケーションの不足にあると考えています。

 

もう一つ重要な原因は、基本的な会計知識の欠如です。

具体的に言えば、複式簿記のしくみを理解していないということです。

 

管理組合の会計は、原則として「発生主義」にもとづいて処理します。

これを言い換えると、「現金主義ではない」ということです。

 

この「発生主義」と「現金主義」の違い、分かりますか?

 

たとえば、毎月区分所有者が納める管理費は、組合にとっては収入です。

月次報告や決算書でも管理費は予算に対して毎月100%計上されているはずです。

 

ただ、それは預金口座にも100%あるということでは必ずしもありません。

発生主義の場合、請求した(された)金額ベースで収入(支出)を計上するからです。

 

しかし、実際には、管理費の滞納や口座への入金失念も時々発生します。

では、そのような場合は報告書のどこで確認するのか?

 

その答えは損益計算書ではなく、「貸借対照表」にあります。

 

貸借対照表の左側、「資産の部」には預金残高などが記載されています。

預金残高の下に「未収金」の項目があります。

 

管理費等に滞納が生じた場合は、この未収金に計上されます。

言い換えると、未収金がなゼロなら管理費等の滞納もないわけです。

 

こうした基本的な知識すらない人が処理すると、

月次収支報告の中に発生主義と現金主義が混在することになり、上記のような私の質問が出てくることになります。

 

発生主義を理解していない最もティピカルな例は、

マンション保険料」の計上方法に現れます。

 

保険契約は長期一括割引の優遇を受けるため、5年分の保険料を前払いするのが一般的です。

 

その際、今年の保険料と来年以降4年分の保険料をそれぞれ異なる科目で以下の通り仕訳しなくてはなりません。

・今年の保険料   ⇒ そのまま今期の費用(保険料)として計上

・来年以降の保険料 ⇒ 未経過分の保険料は「前払金」として資産の部に計上

 

管理組合の決算書を数多くチェックしてきましたが、未経過分を含めて当期の費用で全額計上しているマンションを時々見かけます。

 

しかし、管理組合側にも会計に明るい人が滅多にいないので、見事にスルーです。

 

こうした処理をすると、毎年の決算収支が実態以上に変動しているように見えるので、本当の分析ができにくくなります。

 

この程度のことは、「日商簿記3級」レベルの知識さえあれば十分対処できるのですが、残念ながら現実にはその水準に満たない人たちが数多く管理組合の会計処理に携わっていることが問題なのです。

 

こうした体たらくな業務実態を知ってか知らずか、「前の管理会社の方法を踏襲したから」とか「経理処理マニュアルを改正する」とか筋違いな分析と対応をしている限り、またこのような残念な事件が再発することでしょう。

 

<参考記事>

 yonaoshi-honpo.hatenablog.com

 

yonaoshi-honpo.hatenablog.com

  

yonaoshi-honpo.hatenablog.com

 

yonaoshi-honpo.hatenablog.com

 

yonaoshi-honpo.hatenablog.com

 

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国交省の「マンションの管理状況の認定制度」に期待すること

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2月8日付けの日経新聞に、「マンション認定制度を創設 国交省、優遇措置も検討」と題した記事が掲載されていました。

 

www.nikkei.com

本記事の要約は以下の通りです。

 

■ 国土交通省は修繕費用の積み立てや管理組合の活動を計画通り実施する物件の認定制度を2022年までに創設する。認定物件には税制上の優遇措置などを検討する。

 

■ 適切に管理している物件を認定する「管理計画認定制度」を今の通常国会に提出予定のマンション管理適正化法の改正案に盛り込む。

 

■老朽化したマンションをそのまま放置しないようにする狙いがある。20年後には築40年を超えるマンションが現在の4.5倍の約370万戸に膨らむ見通しだ。

 

■ 国の調査では管理組合の3割超で修繕積立金が不足している。 具体的には地方自治体が修繕のための資金計画や実際の積み立て状況のほか、総会の定期的な開催や議事録の保管といった管理組合の運営状況などを評価する。自治体は改善の必要がある管理組合に対して助言や指導をするほか、必要に応じて専門家も派遣する。

 

■ 改正法案は22年までに完全施行するまでに優遇策の具体的な内容を詰める。業界団体からは修繕積立金や管理費の負担を軽減するための税優遇や、共用部分のリフォームに使う融資の金利優遇などを求めるがある。

 

■ 現状は部屋を購入する際に修繕積立金の不足や管理組合の活動状況まで説明されないことが少なくない。本認定制度の創設はマンションの管理状況も含めた物件選びに影響してくる。優遇措置などで優良物件が選ばれる流れが強まれば、不動産会社や管理会社の対応を促すことになる。

 

 分譲マンションの管理状況を公的に調査のうえ、評価・認定する仕組みを構築しようということのようです。

 

わが国の高齢化・人口減少傾向が急速に進行する中、今後新築マンションの供給が減少し、既存マンションの老朽化物件の割合が上昇していくのは確実です。

 

老朽化が進行するにつれ、修繕積立金の不足、役員のなり手不足が深刻化し、適切な修繕がなされないことに伴って資産価値が低下するだけでなく、酷い場合には管理不全状況に直面するマンションも今後増えていくだろうと予測されます。

 

総論としてはこの構想に反対する理由はありません。

ぜひ進めてもらいたいと思います。

 

マンション管理組合が抱える最大のリスクは、おカネの問題です。

具体的には、修繕積立金の「簿外債務」問題です。

 

本記事では、「管理組合の3割が修繕積立金が足らない」とされていますが、かなり過小に見込まれていると思います。実態はそんなレベルでは済まないはずです。

 

なぜなら、新築マンションのほとんどは、

修繕積立金が国のガイドラインの半分以下の水準で設定されているからです。

 

マンションの長期修繕計画には将来の修繕見込額を賄うための資金収支表も備えていますが、当初の修繕積立金では到底足らなくなるので、5年ごとに「倍々ゲーム」で増額改定するか、いよいよ足らなくなった場合には戸あたり数十万円単位で一時金を徴収するという計画が組み込まれているのが実情です。

 

しかし、その資金計画には何ら「担保」がありません。

将来の区分所有者が新築当初に比べて3〜4倍の経済的負担になることを事前に了承しているわけではないからです。

 

ましてや高経年マンションの場合、住人も高齢者が多数を占めているのが普通です。

 

マンションの購入時に比べて所得が減少したり、年金生活に入ることで可処分所得が下がる中、毎月の維持費が上昇することをすんなり受け入れられるとは思えません。

 

もし本記事の認定制度がスタートした場合、このような修繕積立金の実態をふまえてどのように評価するのでしょう?

 

段階的増額プランではなく、均等積立方式で運営するよう管理組合に促すことが理想的ですが、その場合はほとんどのマンションが「落第」してしまうので、きっとそこまで厳しい評価はできないでしょう。

 

段階的増額プランでも一時金徴収方式でも、「資金を賄える形式」さえ整っていればOKにするのではないかと予想します。

 

したがって、財政状況を含めて優れたマンションを積極的に評価するという制度を期待するのは難しいと思うのです。

 

むしろ、本制度には「問題児のマンションを見つけて矯正する」という役割を期待したいです。

 

具体的には、通常総会すら適法に開催されず、決算書の所在も不明な管理不全状態のマンションをあぶり出し、これらに改善を促し、公的な支援を含めて正常化させる仕組みができれば「御の字」ではないかと思います。

 

ただ、こうした正常化を促す過程で障害になるのが、

管理規約の制約に絡む「トートロジー」です。

 

管理不全に陥ったマンションを救済するための施策を実行したくても、管理規約にもとづいて総会決議がなされないと何もできないというのが実情です。

 

たとえば、たとえ法的には可能な外部の管理者の導入をしたくても、現行規約の改正が必要になれば区分所有者の4分の3以上の賛成を集めなくてはなりません。

 

そもそも規約の改正が実現できるくらい民度の高い管理組合なら、管理不全には陥ることはないわけで、全く矛盾しています。

 

つまり、現行法の枠組みでは組合の内部機関が正常に機能していないマンションを外部の力だけで立て直すことが現行法では不可能なのです

 

建て替えにしろ、建物解体後の敷地売却にしろ、現行法の枠組みでは、区分所有者のほとんどが関与しない限り老朽化マンションは「出口」が見つけられず立ち往生に陥ってしまいます。

 

私権の制限を含めて政策的に何らかのメスを入れない限り、根本的な問題解決にはならないでしょう。

<参考記事>

 

yonaoshi-honpo.hatenablog.com 

 

yonaoshi-honpo.hatenablog.com

  

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