マンション管理士|村上智史の「士魂商才」 

無関心な居住者が多いマンション管理組合に潜む様々な「リスク」を解消し、豊かなマンションライフを実現するための「見直し術」をマンション管理士:村上智史(株式会社マンション管理見直し本舗 代表)がご紹介します。

大手マンション管理会社を対象とした「顧客ロイヤリティ調査」に新奇性はあるか?

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NTTコム オンライン・マーケティング・ソリューション(NTTコム オンライン)が、マンション管理業界を対象に、顧客ロイヤルティを測る指標であるNPS(R)ベンチマーク調査を実施し、その結果を3月12日にリリースしました。

 

www.nttcoms.com

 NPS(R)(Net Promoter Score(R))とは、「友人や同僚に薦めたいか?」という質問への回答から算出される、顧客ロイヤルティを図る指標です。

 

欧米では公開企業の3割強がNPS(R)を活用しているとされ、日本においても顧客満足度にかわる新しい指標として、NPS(R)を活用する企業が増えてきているそうです。

 

調査結果の概要は以下の通りです。

■ 調査対象:以下の大手マンション管理会社

住友不動産建物サービス、大京アステージ、大和ライフネクスト、

東急コミュニティー、日本ハウズイング、野村不動産パートナーズ、

長谷工コミュニティ、三井不動産レジデンシャルサービス、三菱地所コミュニティ


■ 調査対象者 :上記管理会社が管理するマンションに居住する区分所有者

■ 調査方法  :非公開型インターネットアンケート

■ 調査期間  :2019年12月

■ 有効回答者数:2千名強

■ 回答者の属性:【性別】男性:48.8%、女性:51.2%

■ 回答者の年代:

20代以下:4.8%、30代:10.4%、40代:19.9%、50代:21.4%、60代以上:43.5%

 ■ 結果分析

(1)NPSのトップスコアは、「三井不動産レジデンシャルサービス」
 管理会社9社のうち、1位は三井不動産レジデンシャルサービスとなった。

 

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(2)管理会社への不満項目は、「コストの高さ」と「長期修繕計画」
 17項目にのぼる要因別に満足度と重要度を分析したところ、重要度が高いにも関わらず満足度が伸びなかった(重要度と満足度のギャップが最も大きかった)項目のトップ3は以下の通り。

  1位「管理会社へ支払う費用が適正

  2位「策定する長期修繕計画が適正」

  3位「誠実な対応・意欲」

 

(3)満足度の高い項目は、「管理人業務」

満足度が総じて高かったのは、最も接触する頻度の高い管理人の仕事ぶりであった。

  1位 「管理人や清掃スタッフの共用部分の清掃の丁寧さ」

  2位「管理人の応対のよさ・親しみ やすさ」

  3位「管理人の緊急時や困ったときの対応の迅速さ」
 
(4)推奨者は費用面での許容度が高い傾向

推奨者は「ブランドイメージの良さ」を重視する傾向があり、費用に対する不満は小さい傾向が見られた。

 

(5)批判者は信頼性や提案力に不満の傾向

批判者にとって不満の要因となる主な項目は、「サービスの信頼性」「管理会社からの提案」の2つ。

 

(6)管理会社リプレイスに至る主な理由は、「コスト」と「提案力」

リプレイスの経験者は全体の2割弱で、主な変更理由は以下の通り。

 1位:「管理会社に支払う費用が高い」(31.3%)

 2位:「管理組合への提案やアドバイスが不十分」(17.8%)

 

 本調査の結果自体は、率直に言えば、「おおむね予想通り」でした。

 

以前本ブログでも記事にしているように、他社が実施した顧客満足度の調査でも、以下の通りほぼ同様の傾向が見て取れるからです。

 

① 「管理人」の評価は総じて高いが、「管理会社」への評価は低め

②「コスト」面については、おしなべて低評価

 

<参考記事>

yonaoshi-honpo.hatenablog.com

 

 要するに、

管理人はそこそこ働いてくれているけれど、フロント担当者や管理会社への満足度はおしなべて低く、コスト・パフォーマンスには不満がある、という点は同じでした。

 

ただ、今回のNPSの調査結果は、顧客の不満要因がどこにあるのかをもう少し具体的に探った点では若干の意義があったかもしれません。

 

管理委託費や修繕費用が割高なのが不満項目のトップですが、これに続く要因として以下の2つが挙がっています。

 

■ 管理会社が策定する長期修繕計画と修繕積立金が適正(ではない)

これは、入居当初の修繕積立金が人為的に低く設定されているために、経年的に増額を強いられることについての不満が根強くあると思われます。

 

特に、大手管理会社の場合、マンション売主であるデベロッパーの系列会社である場合がほとんどのため、この問題を認識しながらも自ら是正しにくい立場にあるからでしょう。

長期修繕計画は5年程度のサイクルで更新することが望ましいとされていますが、大手でもオプション業務扱いにして10年以上更新されずに放置しているケースも少なくありません。

 

■ 管理会社の誠実な対応と意欲(が見られない)

これは主にフロント担当者に対する以下のような不満が影響していると想定されます。

・理事会や総会の議事録の作成が遅い、出来が悪い。

・理事会等で依頼した事項へのレスポンス・対応が遅い、あるいは放置されている。

・法定点検時の指摘事項に対して修繕などの提案がなされない。

 

先日も築40年超のマンションで管理適正化診断を実施しましたが、管理会社の仕事ぶりは以下のように惨憺たる状況でした。

****************

・大規模修繕工事の完了報告書や保証書がどこにも見当たらない。

・1年前の法定点検での要改善事項(誘導灯バッテリーの交換、自動火災報知器受信機の不良および一部断線)がまったく手当されず。

・建築設備定期検査が毎年必要にもかかわらず、未実施のまま放置。

・10か月以上の長期滞納者について特段の回収措置がなされないまま。

・長期修繕計画は10年前に作成したままで風化。しかも給排水管の交換が未実施にもかかわらず、計画に概算費用すら計上されていない。

****************

 もはや管理委託費の水準がどうとかという以前のレベルで、即他社へのリプレイスを提案するつもりです。(怒)

 


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