マンション管理士|村上智史の「士魂商才」 

無関心な居住者が多いマンション管理組合に潜む様々な「リスク」を解消し、豊かなマンションライフを実現するための「見直し術」をマンション管理士:村上智史(株式会社マンション管理見直し本舗 代表)がご紹介します。

マンション管理会社の満足度調査は、ランキングを眺めても実態は分からない!

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ダイヤモンドオンラインで、「マンション管理会社「満足度」ランキング、住民に選ばれる意外な条件」といい記事が掲載されていました。

 

 

diamond.jp 

本記事の要約は以下の通りです。

■ スタイルアクトは、物件情報サイト「住まいサーフィン」の25万人の会員を中心に、2009年以降毎年「管理会社の満足度調査」を実施している。今年10月中旬に2019年版を発表した。(有効回答数は2266)

 

■ 各回答者がどのマンションに住んでいるかを特定した上での調査のため、マンション管理の良し悪しについて入居者の声を聞くことができる。

 

■  入居者満足度で管理会社をランキング(サンプル数20件以上が必要条件)にすると、全体総合満足度1位は、野村不動産パートナーズ(71.9ポイント)となり、11年連続のトップ。僅差の2位で三井不動産レジデンシャルサービス(71.5ポイント)、3位に東京建物アメニティサポート(67.4ポイント)が入った。

 

■ 1位の野村は、管理会社に対する業務遂行・フロント提案が高く評価されており、理事経験者の評価も高い。それに対して2位の三井は、ふだん現地にいる管理人に対する個別評価などが高い。

 

■ 東京建物は、多くの評価が3位以内に入るバランスの良さから全体でも3位に食い込んだ。なお、中堅以下(管理戸数10万戸未満)のグループでは1位だった。

 

■ 満足度の影響要因を分析すると、管理会社に対する評価やイメージが上位を占め、実際の管理員や点検の実態などはあまり影響していない傾向が見られる。

 

■ 管理委託先に対するイメージとは期待値のようなもので、この期待値が高くないとそもそもハイスコアが出ないことが想定される。つまり、入居者満足度の方程式は、期待値 ×  納得度 となる

 

■ 実際、このランキングを決しているポイントは、入居者に対して管理会社が前向きかどうかという企業姿勢を反映しているように思われる。

 

■ 以前、管理業務は「事なかれ主義」の姿勢が強かった。しかし、今は入居者に積極的にアプローチし、コールセンターを設けたり、アウトレットへのバスツアーを企画していたりするケースもある。期待値を上げ、納得度にもコミットする姿勢が上位の会社ほど見られる。

 

■ このように、サービスを受ける前の顧客に影響を与える会社のイメージは非常に大きい。それも大手は、物件新築時から自社系列の管理会社に管理を引き継ぎ、グループ全体でブランドイメージを共有している。大手に対する安心感がこうした結果に表れている。

 

■   一方、中堅以下でも取り組みが優れている会社はあり、入居者の納得度を上げることによって高い評価を付けることができる。業者がこの評価を上げる最も効果的な方法は、真摯でスピーディな対応をすることだったりする。

 

■ 管理組合の理事経験者は、管理会社のフロント担当者を重視し、そこで大きく管理のパフォーマンスが変わってくることを理解している。理事は管理会社の人と接する機会が多く、そうでない人は管理人以外の管理関係者と通常会うことはない。入居者で結成される管理組合の理事たちは、管理会社に相談を持ちかけながら

提案を受ける。その対応に良し悪しが出るので、理事の方が正確に管理状態を理解していると考えられる。

 

■ 今回の調査サンプルは理事経験者だけでも、約半数を数える。彼らが選ぶ管理会社の順位は、1位:三井、2位:野村、3位:東京建物となった。昨年の3位は住友だったが、足もとでは管理業務の解約を進めており、5位に後退している。

 

■ これは管理戸数の多さに関係なく、フロントの質が高いことを示しており、どんな管理会社でも目指すことができる目標にしやすい重点事項である。管理戸数は短期的に増やせないので、小回りが利く良質な管理会社の目安にはなるであろう。中堅の管理会社では、こうした担当者の教育がより一層重要になってくるし、それを見極める入居者の判断も、今後は一層厳しいものになっていくと思われる。

 

■ 住友の場合は、自社ブランド以外の不採算物件の解約を進めているようで、この背景には、管理事業が儲からなくなっている背景がある。それに拍車をかけるように人の採用も厳しくなっており、人件費の高騰もある。

 

■ 今回のアンケートでは、3年連続で、管理費を現状維持できるならAI・ロボットに任せてもよいかという質問もしているが、回を追うごとにAI・ロボットの比率が上がっている。清掃、受付、報告業務に関しては以前からニーズが高いが、今回は相談業務の割合も大きく増えている。

 

■ また、管理業務に外国人を活用したいかなどの質問については、清掃、受付業務において外国人を許容する割合が増えている。マンション管理にもAI化・グローバル化の流れが起きている。

 

 この記事について、マンション管理コンサルタントの視点から思うことを述べてみます。

(1)この調査の目的とは何か?

まず最初に感じることは、管理会社の満足度を点数化してランキングすることによって世間に何を伝えたいのかという疑問です。

 

筆者も自らも述べていますが、<満足度= 期待値 ×  納得度>という方程式が成立しており、その「期待値」は「大手が安心感もあって有利」と指摘しています。

 

中堅以下の管理会社は、その点において明らかに不利な立場にあるわけですから、親会社の大手デベロッパーの供給力の賜物で売上高が多く、経営が安定している系列会社が上位にランクされるのは至極当然の結果でしょう。

 

要するに、結果は初めから世間の大方の予想を裏切らないもので、しかも経年的な変化も特に見られず、インパクトを感じません。

 

顧客満足度を公表することによって、今後マンション管理会社間で健全な競争を促そうとするなら、他にやり方があるのではないでしょうか。

 

(2)注目すべきは、業界全体に対する低評価の実態

この調査結果をサイトで確認すると、入居者による評価項目が以下のように構成されています。

 

・管理人(言葉遣い、業務遂行、スピード、ホスピタリティ)

・管理会社(業務遂行、意欲、フロント対応、フロント提案)

・コスト(コストパフォーマンス、修繕積立金への不安の有無)

・サービス・イベント(Web、生活サービス、イベント)

・満足度(満足度、推奨度)

 

これらの項目ごとに各社のデータをチェックしてみると、以下のような実態が読み取れます。

① 「管理人」の評価は総じて高いが、「管理会社」への評価は低め

「管理人」は、各社70〜80台のポイントを獲得していますが、「管理会社」についてはトップの野村が辛うじて70台、2位以下は60台〜50台と、ほとんどの管理会社は満足できるレベルに到達していないことがわかります。

 

②「コスト」については、おしなべて低評価

「修繕積立金に対する不安なし」については、最高でも63で、総じて50台にとどまっており、どの管理会社も合格レベルに達していません。

 

これは、段階的な増額改定が一般化しているという業界の問題点を反映したものと思われます。

 

さらに、「コストパフォーマンス」に至っては、独立系大手の1社のみが50台で、その他はすべて40台と低迷しています。

 

いずれの管理会社も不合格と言っても過言ではないでしょう。

 

つまり、世間が注目しやすいランキング以外の面で本調査の結果をまとめると、 

管理人はそこそこ働いてくれているけれど、フロント担当者や管理会社への満足度はおしなべて低く、コスト・パフォーマンスに不満あり!

 と総括できると思います。

 

 <参考記事>

 

yonaoshi-honpo.hatenablog.com

  

yonaoshi-honpo.hatenablog.com

 
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