マンション管理士|村上智史の「士魂商才」 

無関心な居住者が多いマンション管理組合に潜む様々な「リスク」を解消し、豊かなマンションライフを実現するための「見直し術」をマンション管理士:村上智史(株式会社マンション管理見直し本舗 代表)がご紹介します。

マンション修繕積立金を均等積立方式に変更するのは容易じゃない!

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5月28日付の読売新聞オンラインに、「マンションの大規模修繕費用、「均等方式」で積み立て安定…管理組合の値上げ決議が不要に」という記事が掲載されていました。

 

www.yomiuri.co.jp

本記事の要約は以下の通りです。 

■ 分譲マンションの多くは段階的に修繕積立金が値上がりしていく「段階増額積み立て方式」を採用しているが、将来にわたり同額を払い続ける「均等積み立て方式」に切り替える管理組合が出始めている。

 

■ 「均等方式」の場合、値上げのたびに管理組合の総会で議決を取らずに済み、積み立てが安定するといったメリットがある。

 

■  多くのマンションは「段階方式」を取り入れているのは、売り出し時に低額の方が不動産会社が打ち出しやすいからだ。

 

■  2015年に竣工した横浜の大規模マンション(497戸)では、当初の修繕積立金は月7,000円(専有面積70平方メートルの場合)で、段階増額積み立て方式を採用していた。

 

■ この管理組合の理事会は、将来の負担が大きくなるのを避けるため、30年間だった長期修繕計画を50年間に見直すタイミングで、均等方式に切り替える方針を決めた。

 

■ 均等方式にしたところ、積立金は当初の2倍以上になるため、マンション内で説明会を10回以上開き、見直しの必要性を説明する広報紙を各戸に配布した。その結果、総会では9割以上が賛成し、無事均等方式に移行することができた。

 

■ 組合理事によれば、その要因として、所有者の永住志向が強く将来の管理を考えてくれる人が多かったことが追い風になったこと、また高齢になって負担が増えるのは避けたいと思う人が多かったからだと言う。

 

■ 居住者が高齢化するほど修繕積立金の支払い能力が下がり、値上げが難しくなる傾向が見られる。国土交通省も「均等積み立て方式が望ましい」と考えており、新規物件の中には当初から均等方式を取り入れるケースも出始めている。

 

 今年21年目を迎える顧問先のマンション(90戸)では、これまで段階的に修繕積立金を増額してきましたが、管理委託費や電気料金などのコスト削減を経て、長期修繕計画の更新に併せて増額改定の準備を進めているところです。

 

このマンションの場合、

国交省の修繕積立金ガイドラインにもとづいて、均等積立方式で必要な徴収額を試算したところ、専有面積(㎡)あたり月額269円となります。

 

ところが、竣工当時の徴収額は、同40円でした。

 

その後、8年目以降:80円 →18年目以降:200円と値上げしてきました。

 

その結果、下の図に示されるように21年間にわたって積立不足が累積しました。

 

その額は、単純計算でおよそ3億円にも及びます。

 

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 このマンションでは、一連のコスト削減努力の結果、年間6百万円以上の剰余金を管理費会計から生み出すことができるようになりました。

 

しかしながら、この成果を加味しても、これまでの積立不足分に加えて今後30年で見込まれる修繕費用を賄っていくには、現状の徴収額(200円)を70%増額(335円)する必要があることがわかりました。

 

さすがに70%の増額は厳しい、という意見が当然組合内で出てきます。

 

しかし、これまでの段階増額方式を続けた場合、最終的には420円まで引き上げていく必要があるという試算結果も同時に示されました。

 

その場合、修繕積立金だけで戸あたり毎月3万円前後の負担になってしまいます。

 

そのため、なるべく早い段階で均等積立方式に近づけることが望ましいという考え方から、現状比50%アップ(300円)の増額改定にて今期総会に上程することを目標に進めていくことになりました。

 

もともと竣工当初から269円の徴収が必要だったことを考えれば、「コスト削減の成果を活用しながら、300円への改定でソフトランディングできそうだ」と言えるのではないでしょうか。

 

今回冒頭の記事で紹介された大規模マンションはまだ築4年目のため、積立て不足の累積額が少なく、(倍増とはいえ)増額幅を最少レベルに抑えることができました。

 

それが、総会で圧倒的多数で承認された最大の要因だと思います。

 

しかし、一般的には無関心な管理組合が多いため、2回目の大規模修繕が近づく築20年目前後に資金不足に気づいて慌て始める・・のが実情です。

 

分譲マンション新築時に設定される修繕積立金の平均は、

専有面積(㎡)あたり月額90円台とされています。

 

一方、均等積立方式で必要な金額は月額200円以上。

(機械式駐車場が附設されている場合には別途加算が必要)

 

これでは足りるはずがないのは自明の理です。

 

将来資金不足で悩みたくないなら、

築10年目までに少なくとも200円台にまで引き上げておくことをお勧めします。

 

<参考記事>

 

yonaoshi-honpo.hatenablog.com

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そろそろ黄色信号!?マンション管理費滞納の原因でわかる不況の兆し

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都内にある顧問先のマンションでは、最近管理費の滞納がジワジワ増えています。

 

ただ、問題なのはその件数や金額ではなく、「原因」にあります。

 

まだ築浅のワンルームマンション(47戸)ですが、4月末時点の滞納状況につき管理会社から以下のような報告がありました。

 

■ A 組合員(滞納期間6ヶ月): 現在、破産手続き中。

■ B 組合員(滞納期間3ヶ月): 現在、住戸の売却手続き中

■ C 組合員(滞納期間2ヶ月): 現在、住戸の売却手続き中

■ D 組合員(滞納期間2ヶ月): 電話不通のため督促状を送付

<このほかに、1ヶ月分の滞納が2名あり>

 

全住戸の1割を超える滞納者がいるだけでなく、うち3名については明らかに資金繰りが苦しくなったためにマンションを手放さざるを得なくなったようです。

 

異次元の金融緩和政策でマンション市場も活況となり、新築の販売価格も90年代のバブル期と同程度まで膨れ上がっていますが、ここに来てさすがに契約率も好不況の判断基準である7割を切り、不況の兆しが現れつつあります。

 

ついに既存マンションにも、その「兆し」が現れ始めているのです。

 

私自身は鮮明に記憶していますが、

バブル経済の後始末はなかなか厄介なものです。

 

たとえば、投資用マンションの場合、必要資金のほとんどをローンで調達して購入していると思われます。

 

その後、資金繰りの都合でやむなく売却となった場合、その収入でローンを完済できる間はまだいいのです。

 

こうした事案が増えると、中古マンション市場が次第にだぶつき、不況とともに流通価格が下がり始めます。

 

その結果、フルローンで組んでいる物件については売却代金でローンを完済しきれないケースが発生します。(いわゆる「債務超過」の状態)

 

こうなると、今度は銀行などの金融機関の対応がとても厳しくなります。

 

(金利も徐々に上がるでしょうが、)自らの経営を守るためになるべく不良債権を抱えたくないので、そのうち「貸し渋り」や「貸し剝がし」といった行動に出るようになります。

 

このような「バランスシート不況」という副作用を惹き起こすことが、もっとも怖いのです。

 

バブル不況の再来にならないことを祈るばかりですが、各人が過去の経験を冷静に振り返って学びつつ、身の丈に合った対応をしていくしかありません。

 

<参考記事>

 

yonaoshi-honpo.hatenablog.com

  

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自治体がマンション管理組合の運営を監視する時代が来る!?

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5月13日付の日経新聞に、「マンション管理組合、自治体が監視 神戸市が認証制度」という記事が掲載されていました。

 

www.nikkei.com

本記事の要約は以下の通りです。

■ 神戸市は、超高層のマンション管理組合に対する認証制度を2020年度にも導入する方向で検討を始めた。既存の約70棟ならびに新築のタワーマンション(高さ60メートル以上)への導入を想定し、自治体が審査する全国初の試みとなる。

 

■ タワマンは、高層建築のため修繕費がかさむ。大勢の所有者や居住者の合意形成にも時間を要し、将来にわたる維持管理の難しさが指摘される。積立金不足などで管理不全となれば安全面や景観などで地域に悪影響を及ぼしかねない。

 

■ 具体的には、専門家らでつくる審査組織が、書類の確認や面談を通じ管理規約の内容や修繕積立金の残高を把握するなどの仕組みを検討しながら、積立金が足りなくなった場合の対策の有無も確認するという。

 

■ 管理が適切と認めた「優良マンション」はホームページなどで公表する。数年ごとに管理状況を確認し、不十分とみなせば認証の取り消しも検討する。今夏にも不動産関係の事業者などから意見聴取を始めるとのこと。

 

■ 一方、東京都は、適正なマンション管理を促す条例を3月に施行し、20年4月から83年以前に建設された物件を対象に、管理費や修繕積立金などの報告を義務付ける。都内のマンションの4分の1程度が該当するという。

 

■ 都は届け出がない場合に督促・指導し、建物への立ち入りを含めた調査も実施する方針。


■ 都市計画の専門家は、「積立金問題は管理組合が自主的に工夫してきたのが実態」と指摘し、「自治体が対策に乗り出すことは持続可能な都市運営に役立つ」と評価する。

 

 ついに、自治体がマンション管理組合の運営をモニタリングする時代が到来しました。

 

特に神戸市の試みについては、対象をタワマンに絞って導入すること、具体的な審査イメージも提示されていることから、一定の効果が期待できそうです。

 

重要なことは、管理組合の運営実態を公表することです。

 

既存マンションの運営実態の良し悪しが流通市場で具体的な資産価値として反映されるようになれば、区分所有者全体の意識も一気に変わる可能性が出てきます。

 

またタワマンの審査で一定の成果が生まれれば、その他のマンションにも対象を広げることになるでしょう。

 

その意味で、神戸市の「優良マンション」認定制度の試みについては管理組合の運営によい意味での緊張感を生み出す可能性も秘めており、ぜひ実現してもらいたいと思います。

 

一方、神戸市と比べて東京都の試みは、「仏作って魂入れず」の感があります。

 

単に管理費と修繕積立金の実態を届け出を義務付けるだけでは、深刻な財政問題の解決に繋がるようには思えません。

 

わが国のマンションストック:約640万戸の半分が首都圏にあることを考えると、東京都こそが現実的かつ有効な施策でリードする役割を担ってほしいと切に願います。

 

 <参考記事>

 

 

yonaoshi-honpo.hatenablog.com

  

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無料診断でわかる!管理会社のズサンな仕事ぶり

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管理会社の業務状況に疑問を感じた管理組合の理事さんから、当社宛にメールで相談を受けました。

 

その役員さんが日常懸念を感じている管理会社に対する懸念や不満の内容は、概ね以下の通りでした。

■ 修繕工事の発注先選定のため相見積もりの取得を管理会社に依頼しているが、いつも特定の業者1社からの提示しかない。


■  昨年の組合総会で上記業者によるポンプ交換工事の予算が計上されているが、見積書などの資料がない。

 

■ 管理会社担当者に対して理事から質問や相見積もりを依頼してもスルーされる。

 

そこで、管理会社が日常業務をどのように行っているか状況を把握するため、「マンション管理適正化診断サービス」(無料)を受診されることをお勧めし、理事長さんからも了承が得られたため実施することになりました。

 

yonaoshi-honpo.co.jp

 

その後、理事さんの立会いのもと、マンションの管理室で診断を実施したものの、まず重要資料の保管状態がかなり酷いために診断そのものが実施できないことがわかりました。

 

このマンションでは、約10年前に今の管理会社に変更された経緯があるのですが、管理室内にある資料のほとんどが以前の大手管理会社の時代のものでした。

 

少なくとも以下に掲げる重要資料が管理室には保管されていません。

過去5年以内に開催した総会議案書と議事録

・各種設備点検報告書(消防設備、建築設備定期検査など法定点検を含む)

・大規模修繕工事の完了報告書ならびに保証書

・管理委託契約書

・長期修繕計画書(更新後のもの)

 

そのため、理事長さんを通じて管理会社に資料を送付するよう要請してもらったところ、管理会社の担当者から理事長さん宛に驚くべき内容のメールが送られてきました。

 

先日の依頼のあった書類についてですが、理事会決定として承認されていません。

管理会社として勝手に提出することは出来ません。

マンションの大切な資料を見ず知らずのひとにマンションの情報を提供することは管理委託契約に反しますのでご理解下さい、まず次回の理事会で決議承認して下さい。

 

甚だしい問題のすり替えに呆れてしまいますね。

 

管理受託会社として、顧客の重要資料の保管・整理を行わずに長年放置していたことを全く「棚上げ」にしたばかりでなく、自身が知らぬ間に組合が適正化診断を依頼したことをあたかも契約違反であるかのように主張して理事長を牽制しています。

 

国交省の「標準管理規約」には以下のような定め(抜粋)があります。 

第49条 (議事録の作成、保管等) 

4  理事長は、所定の掲示場所に、議事録の保管場所を掲示しなければならない。

 

第64条 (帳票類の作成、保管)

理事長は、会計帳簿、什器備品台帳、組合員名簿及びその他の帳票類を作成して保管し、組合員又は利害関係人の理由を付した書面による請求があったときは、これらを閲覧させなければならない。

 

このマンションでは 「総会議事録は管理事務室に保管している」旨を掲示しているにもかかわらず保管されていませんし、会計帳簿等も直近ものはまったく見当たりませんでした。

 

このような状況を招いた原因として、

まず管理組合自身が管理会社の業務を主体的にモニタリングしていなかったことは確かです。

 

しかし、事務管理を含めて全部委託されている管理会社にも、規約に反する状態を放置している責任を真摯に感じてもらわねばなりません。

 

まして、現状に関する反省や謝罪もなく、組合が外部の専門家に診断を依頼したことに「逆ギレ」するのは言語道断です。

 

このマンションの将来は、今から管理組合自身がリスクに目覚めていかに行動し、組合全体の意識を改革できるかにかかっています。

 

<参考記事>

 

yonaoshi-honpo.hatenablog.com

 

 

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6月度 マンション管理セミナー開催のお知らせ

6月度 マンション管理セミナー」を開催いたしますので、下記の通りご案内いたします。

  

先着10名様のお申し込みを受け付けております。どうぞお早目にご応募ください。

【日時・会場】

令和元年  6月 15日(土) 

13:30~15:00

 

LEAGUE 地下1階 ミーティングスペース

東京都中央区銀座3-11-3

東京メトロ「東銀座」駅歩2分 「銀座」駅歩5分 

 

 

 

【参加料金】

 お一人様  2,000円(税込) 

※ ただし、下記のいずれかの条件に該当する方は「無料」とさせていただきます。

初めて弊社セミナーに参加される方

弊社に個別にご相談いただける方

 

 セミナー後の個別相談をお申込みの方には、もれなく弊社代表の著書「マンション管理見直しの極意」を進呈いたします!

 

【内 容】

1. 講 演 

管理コストを3割削減するための見直し術

これまで弊社のコンサルティングによって大幅なコスト削減を実現した事例を紹介しながら、その費用項目ごとに効果的な見直しポイントを解説します。

【内 容】

ポイント1】 管理人の勤務体制と業務内容


最も多く見られるのが、管理員の勤務時間が過剰なケースです。また、その業務範囲も物件の特性によって違いが見られます。

ポイント2】 各種共用設備保守点検の契約


エレベーター、消防、機械式駐車場など各種共用設備の保守点検費用は管理組合側には相場観がないため、メスが入りにくいテーマです。

ポイント3】 遠隔監視&緊急対応費用

 

設備保守点検と同様に相場観が掴みづらい項目ですが、そのため割高になりがちです。

ポイント4】 事務管理費などの管理会社経費

 

管理会社によって提示金額が異なりますが、物件の規模に応じたで適正な市場価格がわかります。

【講 師】 村上 智史(弊社代表取締役)

 

2. 個別相談会(※希望者のみ)

貴マンションの管理委託費を簡易診断させていただきます。(無料)その他、管理会社の変更や大規模修繕、高圧一括受電、省エネ対策などのご相談も随時承ります。

 

【お申込み方法】

弊社サイトの問合せページから「セミナー参加希望」と明記のうえ、お申し込みください。 

  

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マンションの建替え・解体、いずれも「至難の業」のワケ

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5月10日付の朝日新聞に、「マンション解体、いばら道」という記事が掲載されていました。

digital.asahi.com

本記事を要約すると、以下のとおりです。

■ 新潟県湯沢町で、区分所有者全員合意にもとづき、老朽化したリゾートマンションが解体の後更地で売却され、管理組合が解散した。

■ 解体されたのは、築44年・30戸のマンションで、苗場のリゾートマンションの草分け的な存在だった。

■ しかし、バブル崩壊後に利用者が激減。その後、管理費や修繕積立金の滞納も相次ぎ、修繕もままならなくなった。

■ 廃虚になるのを避けようと、2014年に区分所有者の一人が動き、他の区分所有者を登記簿で調べ、アンケートを実施して意向を聞いた。

■ アンケート結果を集計した結果、マンションの利用希望者は皆無だったことから、解体の方針が決まり、建物を閉鎖した。

■ ただし、マンションを解体して更地を売却するには、所有者全員の合意が必要にもかかわらず、区分所有者のうち4名の連絡先が不明のため、探して合意を取り付ける必要があった。
■ 管理会社の部長は、周辺の「聞き込み」から始め、不明の所有者を突き止めた。解体に反対した所有者には、「このまま放置して何か事故が起きたら、責任を問われかねない」などと説得し、解体の合意が得られた。
■ その後17年の組合総会で全員合意による解体を決議。修繕積立金残高を使って解体し、昨年6月に更地となった。
■ 滞納管理費の一部を回収できたこともあり、追加負担なしで処分できたが、動き出してから5年がかかった。
■ 今回のケースで売却が実現した背景には、修繕積立金が使われずにたまっていたため、それを解体の資金を確保できたことがある。それでも5年の歳月と、関係者の膨大な手間を要した。マンションの「終活」がいかに困難かを示した事例である。

■ 国土交通省の統計では、分譲マンションの総戸数は17年末時点で約644万戸ある。20年後には、築40年超の老朽物件が約350万戸に増えると見込まれる。

■ 建替えには見切りをつけてマンションを解体しようとしても、そこには「所有者の合意」という高いハードルが待ち受ける。修繕積立金が十分にプールされていなければ、修繕も解体もできないまま、廃虚となって放置されるリスクが高まる。

■ 一部の専門家からは、「少子化が進む日本では今後、マンション解体を前提にすべきで、更地売却の場合でも『5分の4』の合意を原則とし、解体費用の積み立てを義務化すべき」との意見もある。

 

 マンションの建替えを決議するには、区分所有法で「総会決議で全所有者の5分の4以上の賛成が必要」とされています。

 

それでは、

建物解体⇒敷地売却には、なぜ所有者「全員」の賛成が必要か、ご存知ですか?

 

敷地売却は、区分所有法ではなく民法の条文にもとづくからです。

 

分譲マンション全体は、各区分所有者による「共有物」ですね。

 

民法では、共有物を処分する際には共有者全員の合意が必要です。

 

しかし、分譲マンションの管理・運営において常に全員合意を条件とするのはあまりにも非現実的です。

 

そのため、「民法の特別法」として区分所有法を定め、原則として過半数の合意で足りるようにしたわけです。

 

ただし、管理規約の改正や共用部の大きな変更などの重要案件は「特別決議事項」として全体の4分の3以上、そして建替えについては全体の5分の4以上の賛成を要すると別途定めました。

 

しかし、マンションを解体したら、おのずと区分所有権も消滅し、敷地の共有持分だけになってしまいます。

 

そのため敷地売却に際しては、民法の原則どおり「共有者全員の合意」が求められる、というわけです。

 

しかし、冒頭の新聞記事にも紹介されているように、老朽化マンションの建替え事例は極めてレアケースとなっています。

 

その最大の理由は、やはり建替え資金の問題です。

 

建替えを実現するには、既存建物の解体費、居住者の移転費用、仮移転中の家賃、新築建物の建設費を工面する必要があります。

 

幸運にも、もし既存建物に余剰容積があった場合には、「空中権」をデベロッパーに売却することで建替え資金をねん出するという「マジック」も活用できますが、通常は各人が1千万円単位の費用を負担しなくてはなりません。

 

当然ながら、区分所有者によって経済状況が異なるため、全体の8割の合意を取り付けるのは容易ではありません。

 

とは言え、老朽化した建物に永久に住み続けられるわけではありません。

 

資金的な問題で建替えが困難となれば、(建物解体費は何とか捻出したうえで)敷地の売却で組合を解散するプランも選択肢に入れたいところです。

 

ところが、敷地売却は、上記のとおり民法の定めで「全員の合意」が求められるため、さらにハードルが上がってしまいます。

 

その解決策として、さすがに耐震性が足りないマンションや、大規模に被災したマンションを対象とする「マンション敷地売却制度」(2014年)が施行され、全体の5分の4以上の合意があれば解体・売却できるようにはなりましたが、これでは「焼け石に水」です。

 

老朽化マンションの将来は完全に「袋小路」にはまり込んでしまっていると言えます。

 

今後少子高齢化が進む中、近い将来マンションでも所有者不明や相続放棄などの住戸が出現することは間違いないでしょう。

 

しかしながら、わが国では不動産登記も義務化されていないため、連絡が取れなくなった場合に本当の所有者を捜索するのはとても厄介な仕事です。

 

・管理組合の設立は法的義務だが、設立しなくとも罰則なし。

・区分所有者の管理は、登記制度が義務化されていないため非常に心許ない。

・管理者の選任、管理規約や長期修繕計画の作成は、管理組合にお任せ。

・計画的に修繕が実施されているかどうかも、管理組合にお任せ。

 

こうしたある意味「放置プレイ」の環境のもとにありながら、建替えや敷地売却を実現するハードルだけやけに高いのは、あまりにも性善説に偏っていて、著しく制度的なバランスを欠いているように思うのです。

 

<参考記事>

     

yonaoshi-honpo.hatenablog.com yonaoshi-honpo.hatenablog.com 

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5年ぶりの「マンション総合調査」結果でギモンに思ったこと

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去る4月26日に、国交省より「平成30年度マンション総合調査」の結果が公表されていましたので、その内容についてご紹介します。 

 

 (1)アンケートデータの収集方法と対象

 

■ データ収集の手法:アンケート調査
■ 対象地域     : 全国
■ 調査実施期間   : 平成30年11月~12月
■ 収集データ数   : 4,200 管理組合  8,400 区分所有者

 

(2)サマリー


1)世帯主の年齢 
・「60 歳代」が 27.0%と最も多く、次いで「50 歳代」が 24.3%、「70 歳代」が 19.3%、「40 歳代」が 18.9%。

・30 歳代以下は減少する一方で、70 歳代以上は増加しており、着実に高齢化が進行している

 

2)賃貸住戸・空室戸数

・築年数の増加とともに賃貸住戸・空室数も増加

 

3)所在不明・連絡先不通の戸数割合(新規調査項目)
・昨今注目されている「所有者不明問題」に対応すべく創設?

「 20%超」( 2.2%)

 

4)永住意識
「永住するつもりである」: 62.8%

・永住志向の割合が着実に上昇している。


5)管理規約の改正状況
・改正したことがある: 88.5%

 

 

6)戸当たり管理費・修繕積立金
・戸当たりの管理費の平均 :月額 15,956 円(駐車場使用料等の充当額含む)
・駐車場使用料等からの充当額を除いた場合:月額10,862 円


・戸当たり修繕積立金の平均:月額12,268 円(駐車場使用料等の充当額を含む)
・駐車場使用料等からの充当額を除いた場合:月額 11,243 円

 

7) 管理事務の実施状況
「管理事務の全てをマンション管理業者に委託」: 74.1%
「分譲時に分譲業者が提示したマンション管理業者である」: 73.1%

 

8) マンション管理業者のサービスとして希望するもの(新規調査項目)
「専有住戸内で発生した水回り、鍵、電気などトラブルへの緊急対応」: 66.9%


9) 管理状況全般の満足度
「非常に満足」(24.9%)「やや満足」(37.9%)の合計で6割超

 <満足の理由> 

「マンション管理業者が良い」( 68.8%)、「管理員が良い」( 52.4%)

「管理組合役員が熱心」 ( 34.8%)

 

 <不満の理由>

「一部の居住者の協力が得られにくい」( 48.5%)

「マンション管理業者が良くない」(28.7%)

「管理組合役員が不慣れ」( 26.3%)

 

10) 現在の修繕積立金の積立方式(新規調査項目)
・均等積立方式( 41.4%)段階増額積立方式( 43.4%)

11) 修繕積立金の積立状況(新規調査項目)
現在の積立額が計画 に比べて不足:34.8%
不足がある割合が20%超のマンション:15.5%

 

12) 総会への出席状況
直近の通常総会への出席割合:82.1% (委任状及び議決権行使書提出者を含む)
実際の出席割合の平均   : 32.9% 

 

13) 役員報酬の支払い状況
「報酬は支払ってない」: 73.3% 「役員全員に報酬を支払う」: 23.1%
各役員一律の場合の報酬額平均:約 3,900 円/月。
一律でない場合の理事長の報酬平均額:約 9,500 円/月

 

14) 理事会の開催状況
「月に1回程度」:36.5%、次いで「2ヶ月に1回程度」が 25.4%。

15) 組合員名簿等の作成及び閲覧状況
「組合員名簿及び居住者名簿がある」: 77.3%

「いずれもない」: 6.6%

16) 大規模災害への対応状況
「定期的に防災訓練を実施」: 44.1%

 

17) 専門家の活用状況
「専門家を活用したことがある」: 41.8%
「建築士」(15.6%)「弁護士」( 15.2%)「マンション管理士」(13.0%)

 

18) 外部役員を選任する意向・理由(新規調査項目)
「外部役員の選任を検討又は必要となれば検討したい」28.3%

<理由>

「区分所有者の高齢化」( 37.6%)「役員のなり手不足」( 36.5%)

 

19) トラブルの発生状況
「居住者間の行為、マナー」( 55.9%):生活音、違法駐車

「建物の不具合」( 31.1%):水漏れ、雨漏り

「管理費等の滞納」( 23.9%):「3ヶ月以上の滞納住戸あり」 24.8%

 

20) 管理に関して取り組むべき課題
「防災対策」 33.6%、「長期修繕計画の作成又は見直し」 32.0%

「修繕積立金の積立金額の見直し」 28.9%

 

21)管理組合運営における将来への不安
「区分所有者の高齢化」( 53.1%)「居住者の高齢化」( 44.3%)

 

まず、アンケートのデータとしての有効性を確認しておきたいと思います。

 

現在の全国分譲マンションのストックは約644万戸(2017年末時点)です。

 

マンション管理業協会によると、登録会員である管理会社の受託戸数(約590万戸)は棟数ベースで約11万棟におよぶとのことですから、ストック総数に換算すると約12万棟になると推定できます。(下記サイトページ参照)

 

www.kanrikyo.or.jp

総数約12万棟に対して調査によって収集できた管理組合数は4,200ですから、団地管理組合の存在を考慮しても、せいぜい4〜5%程度の収集率にすぎないことになります。

 

そして、これはあくまで推定に過ぎませんが、

アンケートに回答している管理組合は役員の意識が高く、その結果優れた組合運営をしている可能性が高いと思われるということです。

 

その一端が伺えるのが、上記10)11)の修繕積立金に関する回答結果です。

 

「均等積立方式にもとづいて徴収」していると回答した割合が、なんと4割を超えています。

 

これまで多くの管理組合をコンサルティングしてきた実感からすると、ちょっと考えられないほどです。

 

実態としては、せいぜい全体の1割程度、どれだけ多くても2割未満でしょう。

 

さらに、「現在の積立額が長期修繕計画に比べて不足している」と回答した割合がたった3割強にすぎない点にも大きな違和感があります。(下記記事参照)

 

www.nikkei.com

つまり、本調査の結果は、マンション管理組合の上位数%を対象としたもので、これを管理組合全体の実態を反映していると考えるとミスリードしかねないということです。

 

とはいえ、

ご自身の管理組合を運営するための「指針」として参考するために活用されるならば問題はありませんし、むしろ有益です。

 

管理組合の抱える悩みや課題については、おおむね実態を反映していると思われるからです。

 

ただ、統計データのボリュームの有意性や回答者の偏りに関するリスクについては、十分ご留意ください。

 

<参考記事>

 

yonaoshi-honpo.hatenablog.com

 

yonaoshi-honpo.hatenablog.com  

yonaoshi-honpo.hatenablog.com 

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