マンション管理士|村上智史の「士魂商才」 

無関心な居住者が多いマンション管理組合に潜む様々な「リスク」を解消し、豊かなマンションライフを実現するための「見直し術」をマンション管理士:村上智史(株式会社マンション管理見直し本舗 代表)がご紹介します。

あなたのマンションの損害保険は「適正」ですか?

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都内のあるマンションでのコンサルティングの一環で、共用部の損害保険の診断も行ったところ、珍しいケースに遭遇したのでご紹介します。

 

このマンションは全体約400戸の大規模物件で、建物全体の評価額は約75億円。

そのうち、保険対象となる共用部分の評価が45億円です。

 

一方、現在の保険金額は12億円でした。

  

保険金の設定額が12億円ということは、

その共用部分の評価額に対して3割未満の付保率となってしまいます。

 

それが直ちに「間違い」と言うわけではありませんが、

損保業界の「常識」からすると、実は「過少」な水準なのです。

 

損保業界における一般的な保険金の設定の考え方は、以下の図で示されます。

 

マンション共用部の損害保険額の設定の考え方

 

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まず、万が一マンションが火災等の事故で損壊してしまった場合、その再建に一体いくらかかるのかを知るために、マンションの「再調達価額」を算定します。

 

上図の例では、マンション全体の再調達価額は100億円。

このうち専有部分が4割、共用部分が残りの6割を占めると考えます。

 

したがって、保険の対象となる共用部分の再調達価額は60億円です。

 

実際の保険金額設定に際しては、

この再調達価額に上・下3割の範囲内で付保率を調整します。

 

一般的には「再調達価額の7掛け」で設定することが多いため、

保険金の設定額は42億円となります。

 

冒頭のマンションについてもこの方法で試算すると、

保険金の設定額は、およそ32億円(≒75× 0.6 × 0.7 )となります。

 

ところが、

実際は12億円の設定なので、その半分にも満たないわけです。

 

ただ、この問題の本質は、保険金の多寡よりも「誰がこの保険金が設定したのか?」ということです。

 

多くの例に漏れず、

こちらのマンションも管理会社が保険代理店を兼ねていました

 

そしてこの保険金設定の経緯を管理会社に確認したところ、

マンションの場合、全焼・全損のリスクがほぼないため、当社では再調達価額の15%〜20%を目安に設定している」との回答でした。

 

こうした管理会社の考え方について、管理組合側も十分に理解したうえで承認したのなら、自己責任の範疇ですから外部の人間がとやかく干渉する問題ではないでしょう。

 

しかし、管理組合に説明したところ、やはりその点のご理解は不十分でした。

 

さらに驚いたことに、その後相見積もりを取得したところ、

他社の保険会社に切り替えることで、保険料の負担を増やすことなく保険金額を適正な水準(32億円)に変更できることもわかりました。

 

「素人理事」が圧倒的多数を占めるマンション管理組合にとって、

セカンドオピニオンを取ることは、とても大切なことだと思います。

 

<参考記事>

 

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現地見学会の風景で分かる「ダメな管理会社」の特徴

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目下、都内の大規模マンションで管理会社のリプレイスの検討をサポートしています。

  

弊社はコンサルタントとして、

・現状の管理仕様ならびに委託費用の査定診断と見直し提案

・新管理会社の募集要項書の作成・送付

・秘密保持誓約書の事前提出を条件とする見積りの依頼

・管理組合関係資料一式の送付

・現地見学会のスケジュール調整とのアテンド

・質疑応答の対応など・・を行います。

 

今週は、各社来訪の日程・時間を分けつつ共用部の現地見学会を催しました。

 

5名程度のグループもあれば、

10名くらいで徒党を組んでやってくる会社もいます。

 

各社の対応を見ていると、

「さすがプロとしてしっかりしている」と感心するところもあれば、

「これは協力業者に丸投げだな」と思う残念な場面もあります。

 

私が考える「プロとしてダメそうな管理会社」の特徴を紹介しましょう。

 

【その1】 協力業者を多数帯同してくる会社

よくあるのが、自分たちの協力業者を大勢引き連れて見学に来るケースです。

 

植栽管理だと、植えられた樹木の種類等も物件によってさまざまなので、それによってメンテ方法や見積金額が大きく変動する傾向があります。

 

しかし、それ以外はよほど特殊な設備等がない限り、設備の設置状況と作業仕様・範囲さえ把握できれば管理会社自身で見積もれないことはないはずです。

 

たとえば清掃なら、

作業場所・範囲とそこに投入する人員さえわかれば、誰が計算してもさほど誤差は出ないと思います。

 

中には、雑排水管洗浄業者まで連れてきてうえに「作業車両をどこに駐車させたらよいか」など、まだ発注も決まってないのに細かな事項を質問してくる会社もあって、内心呆れています。

 

【その2】 事前に配布資料を読んでいない会社

現地見学している間に、

「この箇所の清掃は年に何回ですか?」「この集会室は清掃するのですか?」

などと質問してくる会社もあります。

 

現行の管理委託契約書をこちらから事前に送付済みにもかかわらず、です。

 

委託契約書には通常「管理仕様」も記載されており、共用部の清掃や設備の保守点検等について作業範囲や内容を明記しているのが一般的です。

 

そのため、

その時点で彼らが資料を事前に読み込んでないことが露見するわけです。

 

そのうえ、「現業業者の作業報告書も追加で送ってほしい」などと要求してきます。

自分でろくに読まずに協力業者に「丸投げ」して見積もらせるのが関の山でしょう。

 

こういう管理会社を見ていると、

一体彼らの強みとは何なのか?と考えざるをません。

 

マンション管理専門の「商社と見た方が分かりやすいかもしれません。

 

 <参考記事>

 

 

yonaoshi-honpo.hatenablog.com  

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「マンション修繕工事の資金難 」問題の本質は、業界の悪しき慣習にあり!

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5月27日付の「日経マネー研究所」のサイトに、 「マンション修繕に思わぬ誤算 工事費高騰で資金難 」という記事が掲載されていました。

 

style.nikkei.com

 記事の要約は以下の通りです。

・・・・

■ マンションの大規模修繕工事。ここ数年は工事費の相場高騰などから、住民が月々払う修繕積立金だけでは費用を賄えないケースが増えてきた。住宅金融支援機構の融資額が目立って増加しており、やむなく借金して修繕するケースも増えているという。

 

■ 建設業界で深刻な人手不足が続いていることを背景に、修繕工事費の相場は13年春に比べて20~30%高くなっている。そのため、修繕工事を五輪後の20年以降へ延期する例も多いが、逆に工事の集中が将来予想されることもあり、五輪後すぐ価格が沈静化するかは不透明な状況。

 

■  修繕計画が狂う原因は他にもある。その一つが近年のクルマ離れに伴う駐車場利用料収入の減少傾向だ。特に機械式の駐車場は維持・更新費用がかさむため、利用料収入で賄えなければ、修繕積立金を取り崩して穴埋めすることになる。

 

■ もともとマンションの修繕積立金は、新築分譲時に高めの金額を示すと購入検討者から敬遠されかねないため、不動産会社が当初の金額を低めに設定している。

 

■ 国交省は「修繕積立金ガイドライン」を11年に策定しており、1平方メートル当たり月178~218円を必要額の目安としている。しかし、新築マンションの修繕積立金の平均を1平方メートル月約95円で、国の指針を大きく下回っている

 

■ 管理組合側に立った対策としては、まずは修繕計画と工事費の相場を照合するなどして、修繕積立金が不足するおそれがどれだけあるのか早期に検証したい。

 

■ 積立金が足りない場合、どう金額を引き上げるかが重要になる。段階的に増額するほうが住人は納得しやすいが、一度に大きく引き上げて固定金額方式に変更する組合もある。

 

■ 屋上や外壁などを対象とする大規模な修繕は一般に約12年ごとに計画される。その周期を長期化することによって工事費の総額を抑えようと考える管理組合もある。より耐久性の高い材料や塗料を使えば、18年くらいの周期でも雨漏りなどを防げるとされる。総工事費の15~20%とされる仮設足場の費用を削る効果も享受できる。

 

■ 修繕計画の見直しは、管理組合の場で時間をかけて話し合う必要がある。管理組合では一般に理事全員が毎年交代する。最近は理事の任期を2年に延ばし、毎年の改選は半数ずつとする方式に改める例も出てきた。

・・・・・ 

 

確かに、修繕工事費の相場は5年前と比べると3割程度上昇しているという実感があります。

 

この背景には、

東日本大震災後の復興ニーズ、東京オリンピックへの準備など需要サイドの事情も確かにありますが、深刻な人手不足に直面しているという供給側の問題もあると思います。

 

大規模修繕実施のスケジュールをオリンピック後に延期するという選択は、もはやマンション管理組合の「常套手段」となっています。

 

しかし、人手不足の問題は構造的な問題でもあり、そのうえ五輪後に工事発注が集中すれば、期待するほど工事費の相場は下がらない可能性も十分にあるでしょう。

 

ただ、工事相場の問題よりも構造的な問題として根深いのは

新築当初マンションの修繕積立金が故意に低く設定されていることです。

 

これこそ、古くて新しいマンション業界の悪しき慣習だと考えます。

 

<参考記事>

 

yonaoshi-honpo.hatenablog.com

  

yonaoshi-honpo.hatenablog.com

 

今から20数年前までは、新築時の修繕積立金はなんと管理費の1割程度の水準でした。

3LDKの部屋でも、月額1,500円程度です。

 

それはさすがに酷すぎるということで、

その後管理費の半分程度の水準まで引き上げられたのです。

 

それでも、いまだ国が示す目安の半分程度にとどまっています。

 

つまり、マンションの修繕積立金は、新築時から管理費と同水準の金額に設定しなくては将来足らなくなる可能性が高い、ということです。

 

でもマスコミ各社はその点についてはあまり鋭く突っ込みません。

冒頭の記事のように「オブラートに包んだ評論家的なコメント」しか見られません。

なぜでしょうか?

 

それは、広告を中心に不動産業界には大スポンサーとしてお世話になっているという事情があるからだと思います。

 

 

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珍事!?管理会社から管理組合に解約を申入れた理由とは?

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都内の大規模マンションで、新たな管理会社を選定するサポートをさせていただくことになりました。

 

つまり、リプレイスということです。

 

ただし、本件については事情が少々「特殊」です。

 

なぜなら、管理会社から契約更新を辞退するとの申し出があったからです。

 

解約の理由を確認したところ、

その申入文書には「社内事情により管理業務の継続が難しくなったため」としか記載されていません。

 

また、管理組合とのトラブルが発生していたという事情も見当たらず・・。

 

この管理会社とは、今から10年ほど前に当初の管理会社からのリプレイスで受託して以来の関係でした。

 

にもかかわらず、契約書の条文で認められているとはいえ、たったの3ヶ月前の予告申し入れとは、なかなか冷淡な対応ではありませんか。

(その後、管理組合の申し入れにより3ヶ月の期間延長で合意済み)

 

管理組合さんによれば、

問答無用の解約予告で、継続の可否について交渉の余地がなかった」とのことです。

 

ちなみに、

この管理会社、その名を聞けば誰でもが知っている大手デベロッパーの系列企業です。

  

この管理会社は一体なぜ解約を申し入れたのでしょうか?

私なりにその理由を考えてみました。

 

【想定される理由 その1】 管理会社としての収益が「期待値」を下回った

 

こちらのマンションの管理委託契約を精査したところ、管理委託費は「ほぼ適正」な水準でした。

 

言い換えると、、独立系の管理会社ならばこの売上高で許容できても、親会社から数多くの受注が見込める大手デベ系列の管理会社にとっては魅力的ではなかったかもしれません。

 

そのうえ、このマンションでは修繕委員会もしっかり組織されており、工事の発注もすべからく相見積もりを取得するという慣例があるため、大規模修繕工事などについても思うように稼げなかったものと思われます。

 

【想定される理由 その2】 人手不足のため受託物件を選別せざるを得なかった

 

昨今の管理業界の人手不足は深刻で、管理員や清掃員のスタッフを確保すること自体が容易ではないという情勢です。

 

一方で、都心部ではまだタワーマンションをはじめ大規模物件が供給され続けています。

 

人材確保に苦心する状況のもと、親会社からの新たな受託要請に応えるために、「外様物件」でかつ、あまり稼げないマンションから手を引かざるを得なかったという側面も考えられます。

 

私が見る限りでは、管理組合としては非常にしっかり運営されており、財務的にもこれまで優れた運営をされてきたと言えると思いますが、昨今の労務環境や相手先の社内事情から今回それが裏目に出てしまったのかもしれません。

 

<参考記事>

 

yonaoshi-honpo.hatenablog.com

  

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マンション管理組合から搾取するアコギな業者を発見!

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昨年から私が顧問をしている管理組合の理事会での話です。

 

管理会社のフロント担当者からの報告事項として、電子ブレーカー設置業者からの削減結果報告と再契約の依頼について説明がありました。

 

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要約すると、こういう内容です。

・・・

■ 管理組合と締結した契約が、来春で10年の満了を迎える。

■ 電子ブレーカーの設置後満10年で「メーカーの交換推奨時期」を迎えるため、更新料として25万円(税別)がかかる。

■ 再契約するか、あるいは解約するか、契約満了の3か月前までに通知してほしい。

■ 解約した場合は、以降電気料金の削減効果がなくなるうえ、電子ブレーカーの撤去費用として5万円かかる。

・・・・

 

このマンションでは、電子ブレーカー設置によって年間15万円の電気料金の削減効果がありますが、何とその2割(=3万円)を「システム利用料」と称して約10年間この業者に支払っていたことがわかりました

 

こんなアコギなビジネスを展開している業者がいまだに存在しているとは・・・

驚きを禁じえませんでした。

 

電子ブレーカーは、もともと買い取ってもメンテ不要な代物です。

 

にもかかわらず、これをわざわざ事実上「リース契約」のような形式で販売し、フルメンテナンス(修理・点検は無償)が付帯されている「テイ」でやっているわけです。

 

電子ブレーカーは1台30万円程度なので、年間15万円も電気料金が下がるなら買い取りでもたった2年で元が取れます。

 

しかも、故障したり壊れるリスクはほとんどなく、10年のメーカー保証が付くのが一般的です。

 

つまり、この業者と再契約するよりも購入する方が5万円高くつくものの、年間3万円の「上納金」がなくなるため、コストアップ分も2年以内に回収できるというわけです。

 

にもかかわらず、電気料金の2割も搾取される契約を10年近くも続けていたとは・・

他人事ながらも、腹立たしい!

 

理事会役員に上記の話をしたところ、この業者とは解約して、電子ブレーカーを改めて購入することで検討することになったのは言うでもありません。

 

ところで、

悪徳とも言えるこんな業者を組合に紹介したのは、誰なんですかね?

 

<参考記事>

 

yonaoshi-honpo.hatenablog.com  

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マンション大規模修繕工事が「アプリ」で見積もれる!?

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昨日、Googleアラートでひっかかった記事の中から、注目すべきニュースを見つけました。

 

株式会社太陽」という施工会社が、「大規模修繕工事の見積シュミレーター」を開発したとのこと。

 

www.renewal-taiyo.co.jp

しかも驚いたことに、

Webサイトだけでなく、スマホ用のアプリもリリースしています。

 

このニュースに比べると、先日このブログでも紹介した、国交省の大規模修繕工事に関する「相場」調査の話などまったく足元にも及びません・・。

 

 <参考記事>

yonaoshi-honpo.hatenablog.com

  

このシュミレーターの最大の特徴は3つあります。

 

1) マンションの住戸数のほかに、階数、階段の数を入力するだけ。

2) 外壁補修、防水工事、鉄部塗装などの工事範囲をユーザー側で選択できる。

3) 入力後、瞬時に見積金額の結果が表示される。

 

ためしに入力してみたら、

思った以上に金額がお高い印象はあるものの、一応それらしい金額が出てきました。

 

知り合いの工事業者さんにも早速紹介して、アプリの「精度」を検証してもらいますので、その結果を後日報告したいと思います。

 

当社も、5年前のサイト開設以来、「管理委託費シミュレーション」を用意していますが、アプリ版をリリースしたら問い合わせが増えるのかしら・・・?

 

   

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国交省が公表したマンション大規模修繕工事の「相場」は参考になるか?

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5/12付けの朝日新聞に、「マンション修繕、割高契約に注意 国交省「相場」を公表」という記事が掲載されていました。

 

www.asahi.com

本記事の要約は、以下の通りです。

■ マンションの大規模修繕工事の際、悪質な設計コンサルタントなどが介在することによって施工業者との間でリベートが横行し、結果的に管理組合が割高な代金で契約させられるなどトラブルが相次いでいることから、国土交通省は各地の工事を調査し、その結果を初めて公表した。

■ 調査対象は過去3年間に施工された944事例で、1戸あたり「75万~100万円」が31%で最も多く、「100万~125万円」が25%、「50万~75万円」が14%。

■ 大規模な修繕は1回目が築13~16年前後で行われ、1戸あたりの平均は100万円。2回目は築26~33年前後で同97万9千円、3回目以降は築37~45年前後で同80万9千円だった。工事は外壁関係、防水関係が多く、2回目は給水設備が増えるという。

■ また、同省は昨年5~7月、修繕工事の内容や費用などに関し、工事の実績が多いとみられる建築事務所や設計コンサルタントにアンケートを実施し、回答の得られた134社の944事例を分析した。

■ 修繕工事はそれぞれの状況が異なり、相場が分かりにくいほか、マンションの管理組合と施工会社の間を取り持つコンサルの一部で、工事費を不適切につり上げるケースもあるという。

■ 調査結果は同省のホームページで公開。マンションの規模ごとに概況を掲載し、「管理組合は同規模のマンションのデータと比較すると有効」としている。

 

 <国交省のサイトページ>

www.mlit.go.jp

■ 事前に検討した方がいいポイントとして、1)過剰な工事項目・仕様などがないか2)戸あたり、床面積あたりの工事金額が割高ではないか――などを挙げている。

■  大規模修繕工事では、事前に聞き出した積立金の額に合わせて見積もるなど、適正さが疑われるケースが多い。問題は設計コンサルだけではなく、マンションの管理会社でも知り合いの工事業者を使って高く見積もるケースがある。

■そもそもコンサルや管理会社に任せきりになっている管理組合が多い実態も問題。その工事が適正か管理組合や住民が自ら監視していける手法を身につけるのが大切。

 

大規模修繕工事の実態としては、設計事務所の起用すらしないで、設計から施工までを一括して「管理会社にお任せ」で実施している管理組合がもっとも多いのではないかと思います。

 

なので、行政側がこうした実態調査を公表し、無関心層の多いマンション管理組合に対して注意喚起することはとても良いことだと率直に思います。

 

ただし、この統計データについては留意すべき点もあります。

 

その一つは、外壁補修や屋上防水など各部位の工事の「パッケージ化」が暗黙の前提になっているということです。

 

一口に「大規模修繕」と言っても、その中には多種類の工事が含まれています。

 ■ 外壁補修工事(タイル面補修、塗装など)

 ■ 防水工事(屋上、ルーフバルコニー、廊下・階段、サッシ周りなど)

 ■ 長尺シートの貼替え

 ■ 鉄部塗装工事

 ■ 仮設(足場)工事・・・など

 

今回公表されたデータにある「戸当たり平均100万円」の相場は、これらを「一式工事」として発注することを前提条件にしています

 

マンションの長期修繕計画に計上されている概算金額も、一般的にはその前提と同様です。

<私の実体験ですが、何の前提条件も設けずに管理会社に見積もりを依頼したら、ほぼ長計の概算費用に近い金額を提示してきました。その後他社を含めて相見積もりを取ると伝えたら、すぐに2割も金額を下げてきたのでその豹変ぶりに驚きました。>

 

ただ、当たり前の話ですが、マンションの築年数や立地条件、あるいは新築時の施工の良し悪しなどによってその建物の劣化具合は明らかに異なります

 

たとえば、築12〜13年目の時点なら、屋上部の防水を全面更新する必要がないケースも少なくありません。

 

逆に、新築時の施工に手抜き等があったために、外壁面の補修に想定以上の費用がかかるといった不幸なケースもあります。

 

つまり、言いたいのは、

大規模修繕を実施する前に各部位ごとの劣化状況を調査・診断し、工事対象範囲を決定したうえで相見積もりを取得することがもっとも大切、ということです。

 

そして、その際に重要なのは、施工業者や管理会社と利害関係のない立場のコンサル業者等に依頼することです。

 

 

<参考記事>

 

yonaoshi-honpo.hatenablog.com 

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