マンション管理士|村上智史の「士魂商才」 

無関心な居住者が多いマンション管理組合に潜む様々な「リスク」を解消し、豊かなマンションライフを実現するための「見直し術」をマンション管理士:村上智史(株式会社マンション管理見直し本舗 代表)がご紹介します。

国交省が公表したマンション大規模修繕工事の「相場」は参考になるか?

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5/12付けの朝日新聞に、「マンション修繕、割高契約に注意 国交省「相場」を公表」という記事が掲載されていました。

 

www.asahi.com

本記事の要約は、以下の通りです。

■ マンションの大規模修繕工事の際、悪質な設計コンサルタントなどが介在することによって施工業者との間でリベートが横行し、結果的に管理組合が割高な代金で契約させられるなどトラブルが相次いでいることから、国土交通省は各地の工事を調査し、その結果を初めて公表した。

■ 調査対象は過去3年間に施工された944事例で、1戸あたり「75万~100万円」が31%で最も多く、「100万~125万円」が25%、「50万~75万円」が14%。

■ 大規模な修繕は1回目が築13~16年前後で行われ、1戸あたりの平均は100万円。2回目は築26~33年前後で同97万9千円、3回目以降は築37~45年前後で同80万9千円だった。工事は外壁関係、防水関係が多く、2回目は給水設備が増えるという。

■ また、同省は昨年5~7月、修繕工事の内容や費用などに関し、工事の実績が多いとみられる建築事務所や設計コンサルタントにアンケートを実施し、回答の得られた134社の944事例を分析した。

■ 修繕工事はそれぞれの状況が異なり、相場が分かりにくいほか、マンションの管理組合と施工会社の間を取り持つコンサルの一部で、工事費を不適切につり上げるケースもあるという。

■ 調査結果は同省のホームページで公開。マンションの規模ごとに概況を掲載し、「管理組合は同規模のマンションのデータと比較すると有効」としている。

 

 <国交省のサイトページ>

www.mlit.go.jp

■ 事前に検討した方がいいポイントとして、1)過剰な工事項目・仕様などがないか2)戸あたり、床面積あたりの工事金額が割高ではないか――などを挙げている。

■  大規模修繕工事では、事前に聞き出した積立金の額に合わせて見積もるなど、適正さが疑われるケースが多い。問題は設計コンサルだけではなく、マンションの管理会社でも知り合いの工事業者を使って高く見積もるケースがある。

■そもそもコンサルや管理会社に任せきりになっている管理組合が多い実態も問題。その工事が適正か管理組合や住民が自ら監視していける手法を身につけるのが大切。

 

大規模修繕工事の実態としては、設計事務所の起用すらしないで、設計から施工までを一括して「管理会社にお任せ」で実施している管理組合がもっとも多いのではないかと思います。

 

なので、行政側がこうした実態調査を公表し、無関心層の多いマンション管理組合に対して注意喚起することはとても良いことだと率直に思います。

 

ただし、この統計データについては留意すべき点もあります。

 

その一つは、外壁補修や屋上防水など各部位の工事の「パッケージ化」が暗黙の前提になっているということです。

 

一口に「大規模修繕」と言っても、その中には多種類の工事が含まれています。

 ■ 外壁補修工事(タイル面補修、塗装など)

 ■ 防水工事(屋上、ルーフバルコニー、廊下・階段、サッシ周りなど)

 ■ 長尺シートの貼替え

 ■ 鉄部塗装工事

 ■ 仮設(足場)工事・・・など

 

今回公表されたデータにある「戸当たり平均100万円」の相場は、これらを「一式工事」として発注することを前提条件にしています

 

マンションの長期修繕計画に計上されている概算金額も、一般的にはその前提と同様です。

<私の実体験ですが、何の前提条件も設けずに管理会社に見積もりを依頼したら、ほぼ長計の概算費用に近い金額を提示してきました。その後他社を含めて相見積もりを取ると伝えたら、すぐに2割も金額を下げてきたのでその豹変ぶりに驚きました。>

 

ただ、当たり前の話ですが、マンションの築年数や立地条件、あるいは新築時の施工の良し悪しなどによってその建物の劣化具合は明らかに異なります

 

たとえば、築12〜13年目の時点なら、屋上部の防水を全面更新する必要がないケースも少なくありません。

 

逆に、新築時の施工に手抜き等があったために、外壁面の補修に想定以上の費用がかかるといった不幸なケースもあります。

 

つまり、言いたいのは、

大規模修繕を実施する前に各部位ごとの劣化状況を調査・診断し、工事対象範囲を決定したうえで相見積もりを取得することがもっとも大切、ということです。

 

そして、その際に重要なのは、施工業者や管理会社と利害関係のない立場のコンサル業者等に依頼することです。

 

 

<参考記事>

 

yonaoshi-honpo.hatenablog.com 

yonaoshi-honpo.hatenablog.com

 

 

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