マンション管理士|村上智史の「士魂商才」 

無関心な居住者が多いマンション管理組合に潜む様々な「リスク」を解消し、豊かなマンションライフを実現するための「見直し術」をマンション管理士:村上智史(株式会社マンション管理見直し本舗 代表)がご紹介します。

いい加減な会計処理を続けようとするマンション管理会社の「詭弁」に呆れる

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顧問先マンションでは、管理会社による月次会計報告において運営の実態を反映しない処理が行われていることが判明しました。

 

具体的には以下のような状況です。

■ 年度の初月に、毎月計上されるべき費用(水光熱費など)がゼロになっている。

■ 毎月定額の費用項目にもかかわらず、月別の費用計上の金額がまちまち。

■ 駐車場や自転車置場等の専用使用料が、実際の稼働状況と符合しない。

 

その原因は、管理会社が月次の会計処理を「現金主義」にもとづいて行っていることにあります。

 

たとえば、共用部の水光熱費等については組合名義の銀行口座からの自動振替えで精算していますが、会計報告の期限(翌月末まで)には引き落とされないため「ゼロ」で計上しています。<下記資料抜粋>

 

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収入科目の「専用使用料」も、施設の使用を開始するタイミングでは口座振替処理が間に合わないため、遅れて入金されることがあります。

 

そのため、実際の入金を確認した段階で収入として計上すると、実態とはそぐわない収支状況になるわけです。

 

また、3ヶ月毎に精算する費用項目があった場合も、本来はそれが該当する3つの月に分割して計上すべきなのに、精算した月に一括で計上しているというケースも見られました。

 

これらの齟齬については、年度決算を締める段階で修正作業を行うため、通常総会での会計報告までには解消されます。

 

しかしながら、月次ベースでは上記の理由から実態と異なる金額が多数計上されることから、年間予算に対する実績の進捗を正しく把握することが困難になってしまうという問題が発生します。

 

そのため、このマンションの理事会ではこうした事態を憂慮し、管理会社の責任者宛てに以下のような改善を求める書面を送りました。

(1)今後は収入・支出とも「発生主義」にもとづいて毎月適切に計上すること。

(2)実際の入出金状況を把握するため、貸借対照表の資産科目(未収金・前払金)あるいは負債科目(未払金、前受金)にて計上すること

 

こうした組合側の要望に対し、その後管理会社の回答書が届きました。

その内容は以下の通りです。

■ 各支出項目については「発生主義」にもとづく処理を行うよう努める。

■ 収入科目のうち駐車場の使用料については、使用者から申し込みがあった時点で計上処理を行うと、実際の口座振替処理が開始するまでの間、当該使用料が「未収金」として計上する。

■ そのため、その使用者に送付する口座振替のお知らせ文書にも「未収分」と記載されるため、使用者からクレームとなりトラブルに発展する恐れがあるので現状のままの運用とさせてほしい。

 

何という詭弁でしょう!?

もしそういう懸念があるなら、使用者に誤解されないよう、管理会社があらかじめ丁寧に説明すれば済む話です。

 

もちろん、そんな抗弁には到底承服できないので、理事会は管理会社に検討し直すよう要請しました。

 

私が考えるに、「発生主義」にもとづく会計処理に対して管理会社が消極的なのは、単に「毎月の手間が増える」のを嫌っているからにすぎません。

 

その本音を言う代わりに、苦し紛れの言い訳を持ち出してくるとは驚きました。

 

今回ご紹介した事例以外にも、管理会社による会計処理に関するよくあるミスとしては、以下のようなものがあります。

 

すでに今期実施した修繕工事なのに、未精算という理由で未計上のまま放置する。

(→ 来期の予算に含めて計上するしかない)

 

マンション保険料(5年分)を一括前払いした際に、当該年度の費用として全額計上してしまう。

(→ 来期以降の4年分は「前払金」(資産)として計上するのが正解)

 

いろんなマンションでこうした事象に時々遭遇するにつけ、管理会社の多くは会計処理の原則や、複式簿記の基本的な処理すら理解していないように思えてならないのです。

 

<参考記事>

   

yonaoshi-honpo.hatenablog.com

 

yonaoshi-honpo.hatenablog.com

 

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国がマンション組合総会のオンライン開催を容認へ!その条件と注意点とは?

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4月30日付けの日本経済新聞に、「マンション総会もオンライン 出席率向上、勤務先からも 国も後押し」と題した記事が掲載されていました。

 

www.nikkei.com

本記事の要約は以下の通りです。

■ 管理組合の総会や理事会をオンラインで開く動きが広がっている。コロナ対策などの観点から国もこうした試みを認める方針を示して後押ししている。

■ 4月初旬、横浜市の某マンションの一室で定例の理事会が開かれた。目を引くのは室内スクリーンに映った画面。この日、出席した11人の理事らのうち、3人はウェブ会議「Zoom」を使い、画面越しにマンションの自室などから参加した。

■ このマンションでは、2020年はコロナ禍で理事会の出席率が下がったが、Zoomでの参加を認めたところ、出席率は向上したとのこと。

■ コロナ下で管理組合が特に苦慮したのが総会や理事会だ。2020年の総会は最低限の人が出席し、ほかの人には議決権行使書を出してもらった組合が多かったようだ。

総会の出席者が少ないと後から不満が出る懸念もあるうえ、重要議題が先送りされやすく、後々管理や修繕に問題が生じかねない。

■ 2021年4月、国土交通省はマンション管理規約の標準モデルの改正案を公表し、今夏にも改正される見込み新たに「WEB会議システム」という文言を加え、これを使う場合の招集や議決についてのルールや注意点も記載した。

■ 以前から区分所有法ではオンライン開催を禁じてはいないが、今回の改正案はIT(情報技術)を活用した総会などの実施は可能と明確化した。

■ 投資目的などで実際には住んでいない所有者らも含め、総会や理事会への出席を容易にするなど利点が多いため、オンライン化を目指す組合は飛躍的に増えるのではないかと予想する向きもある。

■理事会より規模が大きい総会では、区分所有者に納得してもらう工夫が必要だ。所有者の間でITに関する知識に差異がある可能性もある。総会は現実の会場とオンラインの併用のほうが理解は得やすいだろう。

■ ITに詳しくない人をフォローするのに加え、どうしてもなじめない人にはリアルな参加の道を残す配慮も必要だ。

■ 同じマンション内の会議でも少人数のみが参加し、日常的な案件も含む業務などを決める理事会に比べて、総会は参加者も多く、重要事項を決める場なのでルールは厳格だ。

オンライン総会は「即時性、双方向性」などの条件を満たせば通常総会と同じ扱いとする一方、「オンライン参加者が議決権行使はできず、傍聴だけなら出席者に含めない」とする。総会の開催要件(議決権総数の半数以上が出席が必要)との兼ね合いもあるので、注意が必要だ。

 

私の顧問先マンションでも、コロナ禍で会場として利用している自治会館や地域の集会所が閉鎖されたことをきっかけに、「Zoom」を利用した理事会のリモート開催が徐々に増え、今やほとんどの組合が頻繁に利用している状況です。

 

その要因としては、以下のとおり大きく2つあると思います。

・スマホやPCの普及によって、ほとんどの人がいまやWi-Fiの契約をするなど、ネット接続環境が整いつつあること。

・「Zoom」のコストパフォーマンスが高い上、使い勝手もよいこと。(有償でも月2千円と負担が軽く、めったに画面がフリーズしないので快適。資料も画面共有機能を使えるので、ペーパーレス化にも資する)

 

そのため、その後顧問先のマンションでは、管理規約に理事会のリモート開催を公式に容認する改正案を総会に議案上程し、特に反対意見もなく承認・可決しています。

 

一方、今夏の施行が予定される国交省による標準管理規約の改正については、これまで集会による開催を前提としていた組合総会についても、即時性・双方向性を有する「WEB会議システム」の活用を通じたオンライン開催を正式に承認するという点が最大の目玉になっています。

 

本記事にも紹介されているように、少数の顔見知りの役員間(せいぜい10数人程度)で開催する理事会と違って、区分所有者全員が参加対象になる総会(数百人に及ぶケースもある)の場合にはいくつか留意すべき点として大きく以下の3つが挙げられます。

 

(1)高齢者など、ネット接続ができない方やオンライン会議に不慣れな区分所有者への配慮をどうするか?

 

(2)区分所有者、あるいは代理人(委任状の提出による)の本人なりすましのリスクを回避するための確認をどうするのか?

 

(3)オンライン総会開催中の通信障害等が発生した場合の対応をどうするか?

 

(1)については、パソコンやネット接続ツール等の必要機器を所有していなかったり、持っていても機器の操作ができないといった区分所有者が1人でもいる場合は、少なくとも「リアル総会」(=これまでの集会による総会)との併用で「オンライン総会」を開催する必要があるでしょう。(下図参照)

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一方、(2)については、本人確認方法として、「リアル総会」では会場の受付で部屋番号と氏名を申告してもらったり、区分所有者の住所に送付された「招集通知」を提示してもらうのが一般的です。

 

そのため、「オンライン総会」でも「リアル総会」と同様の取扱いを取る方法が考えられめ、WEBの画面を通じて適切な本人確認の方法(招集通知や身分証明書の提示など)を選択し、実施することが望ましいでしょう。

 

最後の(3)については、通信障害等の発生段階及び規模にもよりますが、通信障害等によってオンライン出席者が審議又は決議に参加不可となった場合には、決議の効力自体に疑義が生じる可能性があるので、そのような場合には改めて総会を開催する必要があります。

 

遠隔地に居住していたり、多忙などの事情で総会に参加しにくい区分所有者の参加率を向上させるという効果が期待できることからオンライン開催を認める管理組合は今後増えることは間違いないでしょう。

 

ただ、現実的には「オンライン+リアル併用型の開催」が主流になっていくと思います。

 

最後に、もう一つ注意すべき点があります。

改正標準管理規約が施行されても、あなたのマンションの管理規約が自動的にアップデートされるわけではなく、改正後の標準規約をどこまで取り入れるかは各組合の意思決定に委ねられています。

 

また、規約の変更は区分所有法上、総会の「特別決議事項」に該当するため、区分所有者(の組合員数および議決権総数)全体の4分の3以上の賛成が必要です。

 

まずは、組合の執行機関である理事会で検討し、総会に改正案の議案を上程する手続きが求められることをご承知おきください。

 

改正標準管理規約の詳細については、下記記事をご参照ください。

 

aplug.ykkap.co.jp

<参考記事>

 

yonaoshi-honpo.hatenablog.com

 

yonaoshi-honpo.hatenablog.com

  

yonaoshi-honpo.hatenablog.com

 

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マンション管理会社からの「管理委託費の値上げ要求」は本当に避けられないのか?

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4月29日付の「ダイヤモンド・オンライン」で、「管理委託契約を「人質」に取るマンション管理会社の値上げ要求と戦う方法は?」と題した記事が掲載されていました。

 

diamond.jp

本記事の要約は以下の通りです。

■ 最低賃金引き上げの流れを受け、管理会社が管理委託費の値上げを要求するケースが増えている。

■ 近年の東京都における最低賃金について推移を見てみると、2015年:907円から 2020年:1013円に上昇している。

■ 2019年の記事の時点では、デベロッパー系の管理会社が管理委託費の値上げを要求するケースが多く見られた。しかし、最近では独立系の管理会社も値上げを申し入れるケースが増えているうえ、以前にも増して強気の値上げ要求が目につき、契約解除を通告してくる管理会社も少なくない。

■ 管理会社が契約解除を求めてくるケースでは、大きく次の二つのパターンがある。

一つ目は、管理会社が「どうしても契約を解除させてほしい」という場合で、その管理組合が管理会社から見て“大きなお荷物”になっているケースが多い。

■ その背景には、管理組合からの過剰な要求、「モンスタークレーマー」がいるなどから管理会社の手に余る状況になっていることがある。

■ 二つ目は、今のままでは採算上かなり厳しいため、ぜひ委託費の値上げをお願いしたい、というケースだ。

■ マンション管理業務は労働集約型のため人件費率が非常に高いうえ、管理員や清掃員の賃金は最低賃金、あるいはそれに少しばかりのプラスアルファ程度の設定となっている場合が多いことから、最低賃金の引き上げは利益率低下の大きな要因になっている。

■ その結果、委託費を値上げがないと立ち行かないと判断した場合は、契約解除も視野に入れつつ強気の姿勢で臨んでくる。

■ 一方、「管理会社から値上げの相談などは一言もない」というところは、管理会社にとってもうけの多いマンションである可能性が高く、管理会社の“食い物”にされているマンションと言えるだろう。

■管理委託費の値上げ要求は、管理会社にとっても「賭け」の要素が含まれる行為だ。値上げを要求すれば、管理組合側が必ず相見積もりを取る行動に出ることは分かりきっている。

■ただ、管理会社が「お荷物のマンション」とみなしている場合は、管理組合から他社の安い見積書を突きつけられても、「どうぞリプレイスしてください」と言うだけのこと。

■ 純粋に採算の改善を目的とする場合は、より安い管理会社を見つけてきた管理組合から返り討ちに遭う危険性がある。

■ 一方で、管理会社が値上げの根拠を明確に示しつつ、管理品質の向上やマンションの価値を上げる提案を行い、管理組合側を納得させられれば、値上げに応じてもらうことができる。

■ 管理組合も、値上げ要求をただ突っぱねるのではなく、提案内容によってはマンションのバリューアップにつながることかどうかをしっかり見極め、適切に対応すべきだろう。

■ 管理会社は管理委託費だけで利益を得ているわけではない。大規模修繕工事をはじめとするマンションの修繕工事も、管理会社の大きな収入源となっている。

■ 独立系管理会社の「日本ハウズイング」を例に見ると、売上全体の44.1%は管理業務によるものだが、修繕工事もほぼ同じ割合(42.3%)を占めている。

■ こうしたビジネスモデルの場合、管理委託費ではさほど利益が上がらなくても、大規模修繕工事や小修繕工事が受注できるかどうかが大きなポイントになってくる。

■ 管理会社は営利企業であるため、もうけがなければ当然離れていってしまう。そのため、管理組合も「管理会社にもある程度もうけさせる」という考えを持っていることが大切である。

■ あくまでも管理委託費は適正な金額で契約しつつ、たとえば大規模修繕工事は他社との相見積もりにするが、小修繕工事は管理会社に発注するなど、バランス感覚を持った付き合い方をしていくべきだ。

■  マンション管理業界では、近年フロント担当者不足に加え、管理員の採用にも苦労するようになり、現在では完全な「売り手市場」といえる。そのため、多くの管理会社が「量より質」を目指し、利益重視の方針を取るようになっている。

■ 管理組合も、これからは自分たちが負担すべきところはしっかりと対応しつつ、管理会社の言いなりになることのないように、主体性をもって正しく対処することが求められる。

■ とは言え、1年や2年の任期で理事会を運営する現状のシステムでは、管理組合や理事会を良い組織に育てることは至難の業だ。素人集団の理事会が、百戦錬磨の管理会社に対抗するのは非常に難しい。

■ 本来、管理組合は「将来目指すべきマンション」のビジョンを持って、継続的に運用できる仕組みを作るべきである。その仕組み作りや支援を外部に求め、専門家を活用することも選択肢の一つとして考えるといい。

 

要約してもかなり長文になりましたが、さらに圧縮して「エッセンス」を抽出すると、以下のようにまとめられます。

 

1)マンション管理業界は労働集約性が非常に高いが、特に管理員や清掃員などの人件費は「最低賃金」をベースに決まるため、近年の最低賃金の上昇傾向に伴い、従来に比べて管理会社の利益率が低下している。

 

2)そのため、管理会社が「量より質」に経営方針を転換し、利益重視の観点から管理組合に対して委託費の値上げを要求するケースが増加している。また、採算に合わないマンションに対しては契約解除も辞さない強気姿勢を見せるようになった。

 

3)今後は、管理組合もこうした社会情勢を正しく認識した上で、自分たちが負担すべきところはしっかりと対応しつつも、管理会社の言いなりになることのないように、主体性をもって正しく対処することが求められる。

 

4)管理会社は管理委託費だけでなく、マンションで発生する修繕工事の請負業務も、大きな収入源となっているため、管理組合も「管理会社にもある程度もうけさせる」という考えを持っていることが大切である。

 

4)具体的には、管理委託費は適正な金額で契約しつつ、たとえば大規模修繕工事は他社との相見積もりにするが、小修繕工事は管理会社に発注するなど、バランス感覚を持った付き合い方をしていくべきだ。

 

5)1年や2年の任期で素人の区分所有者が交代で理事会を運営する現状のシステムでは、百戦錬磨の管理会社に対抗したり、将来ビジョンを持ちつつ継続的に適正な運営する仕組みを作るは至難の業だ。こうした適正な組合運営の支援については、外部の専門家を活用することも選択肢の一つである。

 

上記1)〜5)までの内容について特に異論はありません。

最近の傾向として、管理員や清掃員の人手不足を背景にコストが上昇しているのは事実で、以前のような時給単価では採用できないのが実情でしょう。

 

そのため、「一度決まった管理委託費は変わらない」という、これまでの「常識」が通用しなくなっているのです。

 

管理委託費以外にも、マンション保険料や消費税といった経費も近年確実に上昇しているため、管理組合が何ら対策を取らないと、一般会計(管理費会計)の収支も将来赤字に陥る可能性が高いことを肝に銘じる必要があるでしょう。

 

そのため、管理組合として打つべき「一丁目一番地」の対策とは、管理委託費や修繕費といった主要経費について適正な水準がいかほどか、また現状の負担について見直し余地がないかを正しく認識することです。

 

現在コンサルティングしている都内にある築24年目のマンション(36戸)では、昨年管理費と修繕積立金の両方が増額改定されたことがきっかけで理事長さんから相談を受けました。

 

その後、当社で「管理コスト適正化診断プログラム」を実施したところ、以下のことが判明しました。

 

yonaoshi-honpo.co.jp

 

管理員の業務費については、昨今の時給単価の上昇で削減余地はないものの、その他の設備保守点検費の多くや、事務管理費などはかなり割高な水準である。

 

そのため、現在の管理仕様のままでも現状比で2割以上のコスト削減余地がある。(年間180万円程度の経済効果)

 

管理員の勤務時間や設備保守点検の頻度がやや過剰に設定されているため、現在の管理仕様にも見直し余地があり、これらを反映すれば現状比で3割以上の削減余地がある。(年間270万円程度の経済効果)

 

 

こうした見直しは、私たちのような専門家を活用しなくては知り得ない知見です。

 

管理会社と比べると、管理組合は圧倒的に「情報弱者」であることを認識すべきだと思います。

 

<参考記事>

  

yonaoshi-honpo.hatenablog.com

  

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【理事長のギモン】マンション管理会社の「緊急対応業務費」って、いくらが妥当なの?

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先日、「Yahoo! 知恵袋」でマンション管理組合の理事から以下の質問が掲載されていました。

 

【お尋ねの内容】

私は都内のある分譲マンションの管理組合の理事をやっています。

管理費の委託業務費の中に「緊急対応業務費」というものがあって24時間緊急の事態に対して色々と対処してくれるシステムです。

管理会社に支払っている金額が年間100万近いのですが非常に高いと思っています。

相場がよく分からないのでマンション管理に精通している方のご意見を聞きたいです。

 

 残念ながら、このマンションの規模(住戸数)すら不明のため「年間100万円」という費用の水準が割高かどうかの判断はつきかねます。

 

ただ、都内の顧問先マンション(28戸)の理事会でも、この「緊急対応業務」に関する見直しを行い、次回の総会で管理会社のコールセンター業務を解約する方針を決議しました。

 

一口に「緊急対応業務」と言っても、管理会社によってその名称や業務範囲が統一されているわけではありません。

 

当該業務としては以下の項目が含まれると思いますが、各社独自の委託契約ではそのて明細や内訳を記載していたり、しなかったりとまちまちなのが実態です。

 

1) 共用部の設備監視業務

エレベーター、給排水設備、機械式駐車場などの各種設備の異常信号を管理室の中央監視盤を経由して、遠隔で受信し、現場に25分以内に駆けつけて1次対応を行います。

ほとんどの場合、セコムやALSOKなどの警備会社に再委託しています。

 

2) 専有住戸内のホームセキュリティ業務

専有住戸内の火災、ガス漏れ、非常通報、防犯(窓や玄関にセンサーがある)を住戸内のインターホン等を経由して遠隔で受信し、現場に25分以内に駆けつけて1次対応を行います。

こちらもほとんどの場合、セコムやALSOKなどの警備会社に再委託しています。

 

3)コールセンター業務

マンション居住者からの各種問い合わせについて受付対応します。

24時間常時対応する場合と、営業時間の制限がある場合があります。

 

マンションによっては 1)しかない場合もあれば、1)〜3)の全てが揃っているケースもあります。(ご自分のマンションの管理委託契約書でご確認ください。)

 

顧問先のマンションは、1)〜3)の全てが揃っているケースです。

 

この管理組合では、もともと管理会社に本業務をすべて委託していましたが、(当社が顧問になる前に)コスト削減のため1)と2)を直接警備会社に委託する方式に変更しました。

そのため、3)のコールセンター業務だけ管理会社に委託する形で残りました。

 

この費用は年間12万円ですが、警備会社への委託費の負担を合わせると、依然として割高な水準であることがわかりました。

 

しかも、このコールセンター業務について、このマンションでの受付状況を確認したところ、直近の2年間でたった6件しかないことが分かりました。

 

1件あたりの受付費用が、なんと4万円もかかっていることになります。

 

問い合わせの内容も、以下の通りいずれも緊急出動を要するレベルのものではなく、日中の営業時間内にフロント担当者に連絡すれば済むことがほとんどです。

 

<問い合わせ内容>

・オートドアの不具合      ・玄関鍵の紛失

・パーテーションボードの破損  ・勝手口扉の不具合

・漏水事故対応         ・宅配ロッカーのカードキー紛失

また、本業務を解約しても、緊急の場合には住戸内のインターホン(緊急通報ボタン)を通じて警備会社に一次対応を依頼することができます。

 

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そのため、コールセンターの費用負担と問い合わせ実績を開示したうえで居住者アンケートを実施したところほぼ全員が「解約でよい」と回答したため、理事会もその方針で進めることになりました。

 

なお、緊急対応業務費の妥当性を検証するには、上に示した業務の範囲に加えて細かな仕様(把握するセキュリティ信号の数など)を把握する必要があります。

 

ただ、これまでコンサルティングした事例でも大きく削減したケースも多いので、一度は見直してみることをお勧めします。

 

【参考記事】

 

yonaoshi-honpo.hatenablog.com

  

yonaoshi-honpo.hatenablog.com 

 

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【受付中】オンラインセミナー開催(5月)のお知らせ

5月度「マンション管理セミナー」を開催いたしますので、ご案内します。

 

新型ウィルス感染防止のため、今回も「オンライン形式」で開催します。

 

ネット接続環境があれば、首都圏以外にお住いの方も気軽に受講できます。

 

先着10名様のお申し込みを受け付けております。

 

どうぞお早目にお申し込みください。

【日時・会場】

令和 3年 5月  22日(土) 13:30~15:00

 

【参加料金】

 お一人様  2,000円(税込)

※ ただし、下記のいずれかの条件に該当する方は「無料」とさせていただきます。

初めて弊社セミナーに参加される方。

弊社に個別にご相談いただける方

 

【内 容】

「管理コストを3割削減するための見直し術」

これまで弊社のコンサルティングによってコスト削減を実現した事例(管理会社のリプレイスを含む6件)を紹介しながら、その費用項目ごとに効果的な見直しポイントを解説します。

 

【内 容】

■ ポイント1:管理人の勤務体制と業務内容
最も多く見られるのが、管理員の勤務時間が過剰なケースです。また、その業務範囲も物件の特性によって違いが見られます。

 

■ ポイント2:設備保守点検の契約形態と実施頻度(エレベーター、機械式駐車場など)
エレベーター、消防、機械式駐車場など各種共用設備の保守点検費用は管理組合側には相場観がないため、メスが入りにくいテーマです。

 

■ ポイント3:遠隔監視&緊急対応費用(ホームセキュリティを含む)
設備保守点検と同様に相場観が掴みづらい項目ですが、そのため割高になりがちです。

 

■ ポイント4:事務管理費など管理会社の経費
管理会社によって提示金額が異なりますが、物件の規模に応じたで適正な市場価格がわかります。

 

【講 師】 村上 智史(弊社代表取締役)

 

【お申込み方法】

セミナーお申込み専用ページからお申し込みください。(お名前、マンション名、メールアドレス、電話番号等をご記載ください。)

加までの流れや、オンライン会議の利用に慣れていない方向けの説明も上記ページにてご案内していますので、ご参照ください。

 

加までの流れや、オンライン会議の利用に慣れていない方向けの説明も上記ページにてご案内していますので、ご参照ください。

 

 

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マンションの修繕積立金を値上げする前にやるべきことがあるでしょ?

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4月10日 付けの日経新聞に、「老いるマンション 修繕に備え計画点検、積立金上げも」と題した記事が掲載されていました。

 

www.nikkei.com

本記事の要約は以下の通りです。

■ マンション管理士会によると、都内の管理組合から「修繕費が予想以上に膨らんで積立金が足りない」という相談が増えていると言う。

■ 特に「築年数が30年超で大規模修繕が3回目以上」のマンションで目立つ。国交省の調査で、積立金が計画に比べ「不足している」と回答した割合は3割強あった。

■ 分譲マンションの大規模修繕工事は12年ほどの周期で実施する例が多い。2回目の大規模修繕までは計画通りに実施することが多いが、次の3回目以降が問題。築30年を超えると、計画で想定した以上の工事が必要になりやすいからだ。

■ 劣化が早く進んだエレベーターや給排水管を交換したり、利用者が減って維持管理費のかさむ機械式駐車場を撤去したりする例は少なくない。

■ ここ数年で資材費や人件費など修繕工事のコストが上昇し、高止まりしていることも大きい。50戸規模のマンションで1~2回目の修繕費が5000万~7000万円だった場合、3回目は費用が全体で倍に増えるケースもあるという。

■ コスト上昇の影響を受けやすいのは高齢者だが、老朽化したマンションほど居住者の年齢は高い傾向にある。

■ 19年末時点で築30年以上のマンションは全国で約213万戸ある。10年後に1.8倍の384万戸、20年後は2.7倍の570万戸とマンションの老朽化は一段と進む見通しだ。

■ また、修繕積立金を含む管理費等の滞納額も、古いマンションほど増える傾向がある。滞納者の中には転居や死亡などで所在不明・連絡先不通になっていたり、役員のなり手不足で管理組合が十分に機能していなかったりすると、積立金の不足につながりかねない。
■ 大規模修繕の費用に備えるには、まず建物の定期的な点検と修繕計画の見直しが重要になる。想定に比べて劣化が進んでいない箇所があれば、その部分の大規模修繕は見送り、不具合が見つかれば早めに対応することで全体の費用を抑えることができる。
■ 修繕期間を延ばす工法を選ぶことも一案になる。東急コミュニティーは、修繕周期を最長18年に延ばすため防水性や耐久性の高い塗装などを施すという。

■ それでも積立金が不足するなら(1)積立金の引き上げ(2)区分所有者から一時金の徴収(3)管理組合による不足額の借り入れが主な対応策となる。

■ 管理組合向けの融資としては、住宅金融支援機構が提供する「マンション共用部分リフォーム融資」がある。利用件数は年300~400ほどで、10年前の約2倍の水準と

いう。
■ 住宅金融支援機構は、さらに居住者向けとして今年4月、自宅を担保にする「リバースモーゲージ」型の融資を始めた。居住者が自分の所有区分を担保に将来の積立金をまとめて借り、管理組合に納める仕組み。ただし、これを利用するには管理組合の規約改正などが必要。

 現在私がコンサルティングしている都内にある築24年目のマンション(36戸)では、昨年管理費も修繕積立金も増額改定されたことがきっかけで理事長さんから相談を受けました。

 

<増額改定されたマンションの事例>

管理費  :戸あたり平均月額 13,600円 ⇒ 15,400円(+1,800円/月  13%増)

修繕積立金:戸あたり平均月額 13,000円 ⇒ 18,000円(+5,000円/月   38%増)

 

年間に換算すると1戸当たりで8万円強の負担増ですから、すでに年金生活を送っている居住者には、かなり大きいインパクトがあります。

 

そこで、相談を受けた当社が「管理コスト適正化診断」を実施したところ、管理会社に支払っている管理委託費がかなり割高であることが分かりました。

 

このマンションの場合、現在の管理仕様(管理員の勤務時間、清掃や設備点検の頻度)を変えなくても、2割以上のコスト削減余地があると査定しました。

 

これを実現すれば、ざっと年間2百万円程度の剰余金になり、戸あたりに換算すると5.5万円にもなります。

 

ということは、昨年負担が増えた分の7割くらいはすぐに取り戻せるわけです。

 

さらに、このマンションでは、現在の管理仕様にも見直し余地があります。

 

たとえば、管理員の勤務時間が現在週6日で、週当たり勤務時間の合計が28時間になっています。

 

しかしながら、ファミリータイプで30戸前後のマンションの場合だと、

管理員の勤務体系は週4~5日、1日あたりの勤務時間も3~4時間が一般的です。

 

ゴミの回収日については出勤が必要としても、この規模のマンションなら、

週5日・1日4時間程度(週勤20時間)で十分品質を維持できると思われます。

 

そうなれば、月間で30時間以上節減できるので、年換算で70万円程度のコストダウンも期待できます。

 

もし、上記の通り管理員の勤務時間を縮減できれば、合わせて年間270万円のコストダウンになります。

 

それはすなわち、戸あたり換算で7.5万円の剰余金を創出できることを意味しますから、昨年の負担増(8万円強)をほぼ帳消しにすることも可能です。

 

 

ただ、日経新聞を含めて大手マスメディアは、読者にこの種のアドバイスをすることはないでしょう。

 

その理由、分かりますか?

販売不動産の広告の提供によってメディアの収益に多大な貢献をしているデベロッパ(=管理会社の親会社)各社の不利益につながることは言いづらいからです。

 

つまり、本記事を読んで申し上げたいことは、

修繕積立金を値上げするとか、資金不足分の融資を受けるといった対策を考える前に現状の管理コストを適正化することが先決だ!ということです。

 

<参考記事>

 

yonaoshi-honpo.hatenablog.com

  

yonaoshi-honpo.hatenablog.com 

 

yonaoshi-honpo.hatenablog.com

  

yonaoshi-honpo.hatenablog.com 

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25年の長期保証が付帯する屋上防水工事の現場を見学してきました!

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昨日、3月末に着工した顧問先マンション(築25年)の屋上防水工事を見学してきました。

 

このマンションでは、10年保証が一般的とされる屋上防水工事において、今回25年の長期保証が付帯する工法を採用することになり、先日着工しました。(発注の経緯等については下の記事をご参照ください。)

 

<参考記事>

aplug.ykkap.co.jp

この工法では、ドイツ最大の総合化学メーカー「BASF」が開発した「ポリフィン3018」という素材を使用しています。

 

この「ポリフィン3018」には、既存工法(アスファルト、ウレタン、塩ビシートなど)とは異なる特性があります。

第一に、「ポリフィン3018」には500%を超す大きな弾性があり、躯体の動きに合わせて伸縮するという特長があります。

 

しかも、既存の防水工法の素材に大量に含まれている「可塑剤」を使用していません

 

可塑剤とは、もともと素材に柔軟性を与えたり、加工をしやすくする効果があるのですが、これが経年とともに防水材の硬化や収縮を引き起こします。

 

「ポリフィン3018」にはこの可塑剤が含まれていないので、経年に伴う弾性の低下が起こらず、素材の硬化やそれに伴う剥離等が生じません。

 

第二の特徴として、紫外線の影響に伴う樹脂の退色やクラックの発生、抗張力・伸びの低下など、いわゆる「光化学反応」を防止するために「紫外線吸収剤」を使用しています。

 

これらの特性から、「ポリフィン3018」自体は長期にわたってメンテナンスが不要なため、25年の保証が付くというわけです。

 

ただし、狭い、あるいは複雑な形状の場所については、既存工法によるシール材やウレタン防水を併用せざるを得ません。


そのため、「ポリフィン3018」を使用していない箇所のメンテナンス(部分補修)が工事後10年目・20年目で必須となり、それぞれ70万円程度の修繕コストを見込む必要があります。 

 

ただ、10年保証が通り相場で一般的には15年以内に全面改修が必要とされる既存工法と比べると、防水面の経年劣化を予防するトップコート(保護塗装)も不要ですし、経済的な負担はかなり軽減される点が管理組合で高く評価されました。

 

さて、見学した現場の状況を紹介しましょう。

 

(1)屋上平場の施工現場

手前の白い床面が既存の防水面で、奥側の濃いグレーの床面が「ポリフィン3018」による改修後の防水面です。

 

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<ドレン周り>

雨水が滞留しやすいドレン(排水口)周りも、下の画像のように現場で職人が作成しながら改修します。 

 

 

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<屋上立ち上がりの端部>

外壁タイルと天端部分との間のシーリング材が硬化して劣化しているため、ここから雨水等が浸水するリスクがありました。

 

(従前の天端部分の状況)

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今回の改修では、立ち上がりの笠木部分を「ポリフィン3018」のシートでくるんでいくとともに、「ポリフィン3018」が塗布された専用鋼板で固定します。

 

(施工イメージ画像)

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外壁の立ち上がり部分や排水溝の周りもすべて「ポリフィン3018」のシートや専用鋼板で改修されていることがわかります。(下の画像参照)

 

(現場の改修状況)

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全体の工期は1ヶ月程度を予定していますが、無事に完工してほしいと思います。

 

<参考記事>

 

yonaoshi-honpo.hatenablog.com

  

yonaoshi-honpo.hatenablog.com

 

          f:id:youdonknowwhatyoulove:20180907095250g:plain

 

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