マンション管理士|村上智史の「士魂商才」 

無関心な居住者が多いマンション管理組合に潜む様々な「リスク」を解消し、豊かなマンションライフを実現するための「見直し術」をマンション管理士:村上智史(株式会社マンション管理見直し本舗 代表)がご紹介します。

所有者不明・相続放棄のマンションを処分しやすくする法改正!?

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3月10日 付の朝日新聞に、「所有者不明のマンション「空き部屋」売りやすく 法務省が新制度検討」と題した記事が掲載されていました。

 

<参考記事>

digital.asahi.com

本記事の要約は以下の通りです。

==========

◾️ 分譲マンションで、独居老人が亡くなった後の相続人が分からないなどの理由で、所有者が不明のまま放置される「空き部屋」が問題になっている。

◾️ 国交省の調査(2018年度)によると、所有者の所在が不明だったり連絡がとれなかったりする部屋が「ある」と回答した管理組合の割合は、築40年を超えるマンションの場合は約14%にのぼり、そうした部屋が全体の2割を超えるところも5%あった。

◾️ こうした部屋の管理・売却を進めやすくするため、法制審議会(法務大臣の諮問機関)は2月、新制度を設けることを区分所有法の改正要綱に盛り込み、答申した。

◾️  現行法では、相続放棄等の理由で相続人のいない住戸が発生した場合、管理費等の滞納を回収するため、管理組合が「債権者」として裁判所に「相続財産清算人」(旧・相続財産管理人)の選任の申し立てを行い、清算人の主導によって住戸が売却されて新たな区分所有者が決定した後、管理費等の滞納分を回収することができる。

◾️  ただ、亡くなった人の負債を含む全財産を調べたうえですべて処分する仕組みのため、他の債権者との関係などによっては処分までに時間がかかり、管理組合が支払う報酬の負担も大きいという問題がある。

◾️  そのため、今回の法改正では、当該区分所有者の財産のうちマンションの住戸だけを清算できる「所有者不明専有部分管理人」制度の創設をめざす。

◾️  その他の遺産等は清算の対象外になるため、相続財産清算人制度を使うよりも短期間で済み、管理組合の経済的負担も軽減されることが期待される

◾️ 所有者がわからない土地や建物をめぐっては、2023年度の改正民法で、個々の土地や建物に限った財産管理制度が措置されているが、「所有者不明専有部分管理人」制度は、その「マンション版」ともいえる。

==========

管理組合にとって悩ましいのは、区分所有者の所在不明、あるいは相続放棄となった住戸が発生した場合に、これを放置していると滞納管理費等の回収が進まないため、組合の財政問題に発展していくリスクが高まることです。

 

上の記事でも紹介されているように、管理組合として現行法で対応する場合は、所有者不明の住戸の場合は「不在者財産管理制度」、相続放棄された住戸の場合には「相続財産管理制度」をそれぞれ活用してその住戸の処分を申請するしかありません。

 

ただし、そのためには、家庭裁判所への申立てが必要で、100万円程度の「予納金」も納付しなければならないとされています。

 

今回の法改正によって、マンション住戸のみを対象とする清算制度ができれば、処分までの時間も短縮化され、清算人への報酬を含む経済的負担も軽くなることが期待できるわけで、それ自体は朗報と言えるでしょう。

 

とは言え、管理組合としては、こうした問題が深刻化しないよう日頃から必要な対策をとっておくべきです。

 

具体的には、なるべく早期に問題の発生を察知することが重要です。

管理会社の協力を得ながら、区分所有者の連絡先の届出や変更された情報の随時アップデートを行うほか、管理費等の滞納状況のモニタリングを毎月行うようにしましょう。

 

自治体による「マンション管理計画認定制度」の基準には、「組合員・居住者の名簿を備え、年1回以上はその内容を確認する」ことが盛り込まれていますが、上記のリスクに対応したものと思われます。

 

<参考記事>

yonaoshi-honpo.hatenablog.com

yonaoshi-honpo.hatenablog.com

yonaoshi-honpo.hatenablog.com

yonaoshi-honpo.hatenablog.com

         f:id:youdonknowwhatyoulove:20180907095250g:plain

 

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マンション修繕積立金に「下限額」を設ける国交省の「本気度」はいかに!?

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2月22日付けのNHKニュースで「マンション修繕積立金の目安 毎月の徴収額に下限 国交省素案」と題した記事が掲載されていました。

 

www3.nhk.or.jp

その記事の要約は以下の通りです。

=====

▪️ 国土交通省の調査では、修繕積立金が不足しているマンションの割合が2018年度までの5年間でおよそ2倍に増えている。

▪️ その要因として、マンション開発業者が、新築時に販売しやすいよう、当初の徴収額を低く抑えるケースが多いためと指摘されている。

▪️ こうしたことを受けて、国土交通省による積立金の徴収額の目安に関する素案が明らかになった。

▪️  毎月の徴収額に「下限」を設け、当初から計画的な積み立てを求めるもので、この素案が、近く開かれる国土交通省の有識者会議で示される予定。

▪️ 具体的には、長期修繕計画にもとづいて必要となる積立金の総額を月額ベースに換算した「基準額」を定め、新築時でもその基準額の少なくとも6割以上を徴収するよう求めるとのこと。

▪️ 一方で、その後、築年数が経過するに従って、徴収額を引き上げる場合も基準額の1.1倍以内に収め、必要な資金を計画的に積み立てるよう求める方針。

▪️マンションの修繕費をめぐっては、資材価格の高騰で当初の想定より膨らむケースも増えていますが、国土交通省は、そうした場合も当初から計画的に積み立てれば対応しやすくなるとしている。

=====

この記事については、昨年10月にこのブログで紹介した記事のアップデート版と言えます。

<参考記事>

yonaoshi-honpo.hatenablog.com

上記ブログで取り上げた日経新聞の記事の要約は、以下のとおりです。

=======

■ 現在、多くのマンションで修繕のための積立金の増額幅が大きすぎて住民合意ができないトラブルが相次いでいる。

■ 国交省によると、長期修繕計画の当初から最終年までの増額幅は平均3.6倍。10倍を超える事例もあるという。

■ 国交省が2018年度に実施したマンション総合調査では、長期修繕計画に対して積立金が不足するマンションは34.8%にのぼり、前回調査(13年度)に比べて割合が倍増している。

■ また、老朽マンションほど修繕積立金などの滞納割合が高い。1969年以前に竣工したマンションのうち42.9%で滞納があった。計画通り集金できなければ、修繕工事の遅延などが相次ぐ恐れがある。

■ 国土交通省はマンションの修繕積立金を巡り、積み立て途中での過度な引き上げにつながらないよう目安を設け、管理組合に計画的な積み立てを促す

管理組合が長期修繕計画をつくる際に参考にする国交省の指針を改め、マンションの規模ごとに積立額の基準を示すガイドラインなどにも負担金の目安を盛り込む方針。

■ こうした問題を受け、国交省は積立金の引き上げ幅の目安を示す必要があると判断。上げ幅について管理組合の決議が成立した範囲などを調査し、妥当な水準を探る。

■ 国交省は有識者による作業部会を設置し、2024年夏までに対策をまとめる方針

=======

売主であるデベロッパーの裁量によって、マンションの新築時に修繕積立金が過度に低い水準で設定されているため、長期にわたって修繕積立金が増額改定されずに放置された場合、築20年前後には将来的に資金不足の見通しが明らかになるため、当初の3〜5倍も増額しなくてはならない事態に陥るのが一般的です。

 

そのため、途中で過度な引き上げ幅にならないよう、新築時から修繕積立金の設定額を一定以上に設定するよう指針(ガイドライン)を設けるとのことです。

 

<参考:国交省「今後のマンション政策のあり方に関する検討会資料」より抜粋>

 

 

 

 

その具体的な目安として、長期修繕計画(30年)で必要な修繕資金を毎月ベースに換算して求められる修繕積立金(つまり、均等積立方式にもとづく金額)の60%相当額にする、ということです。

 

仮に、あるマンションの長期修繕計画で必要とされる今後30年間の修繕資金を月ベースに割戻し、かつ専有面積で割った金額が@350円/㎡だったとします。

 

この@350円/㎡が「基準額」となります。

 

本記事によると、今回策定中の「ガイドライン」の方針としては、新築時から上記基準額の6割相当である@210円/㎡以上で修繕積立金を設定するよう求める、ということです。

 

ただ、長期修繕計画は5〜10年スパンで更新すべきとされていますが、法的な義務ではなく、計画の作成にも費用がかかるため、長年放置されている管理組合も少なくありません。

 

また、昨今のインフレ傾向から考えると、必要な修繕資金も右肩上がりに増えていくことが予想されます。

 

にもかかわらず、新築時の修繕積立金を「基準額の6割以上を下限とする」のは甘すぎると言わざるを得ません。

 

しかも、これはガイドラインであって法的な拘束力はありません

 

そもそも、新築時の修繕積立金の設定を低く設定することによってメリットがあるのは、売上を最大化したい開発業者か、あるいは早い時期にマンションの転売を目論んでいる投資家くらいです。

 

結局、国交省はデベロッパー業界に忖度しているだけなのではないかと思ってしまいます。

 

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初めて弊社セミナーに参加される方

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エレベーター、消防、機械式駐車場など各種共用設備の保守点検費用は管理組合側には相場観がないため、メスが入りにくいテーマです。

■ ポイント3:遠隔監視&緊急対応費用(ホームセキュリティを含む)
設備保守点検と同様に相場観が掴みづらい項目ですが、そのため割高になりがちです。

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【講 師】 村上 智史(弊社代表取締役)

 

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【お申込み方法】

弊社サイトの「問い合わせページ」より、お申し込みください。

 

お問い合わせ内容は「その他」を選択のうえ、コメント欄に「セミナー参加希望」とご記載ください。(お名前、マンション名、メールアドレス、電話番号等を必ずご記載ください。)

 

 

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施工現場の写真付き!電気防食工法によるマンション給水管の延命対策工事

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昨年の11月と12月に、築20年超の顧問先マンション2件(都内76戸、神奈川県31戸)で電気防食工法によるマンション給水管の延命対策工事を実施しましたので、ご紹介します。

 

既存マンションに設置されている共用給水管の多くは、配管の内面に錆止めのコーティングが施された「硬質塩化ビニルライニング鋼管」を使用しています。

 

そのため、配管のほとんどの部分は耐食性に優れ、その耐用年数もかなり長いと考えられています。

 

ただ、配管の繋ぎ目となる継ぎ手部分にどうしても隙間が生じるため鉄が酸化し始め、その後徐々に錆(腐食)が進行し『赤水』や『漏水』を引き起こすリスクがあります。

 

そのため、マンションの長期修繕計画では、一般的に30年から40年の間で共用部の配管全体の更新が必要となると見込んでおり、概算費用(戸当たり30万円程度)を計上しています。

 

このような給水管の経年劣化に対する一般的な修繕方法としては、「更新(取替え)」と「更生」の2種類の方法があります。

 

配管自体の更新を行えば、その後長期間にわたって修繕が不要になるというメリットがあります。

 

ただし、上記の通り高額な費用がかかるうえ、躯体内に隠蔽されている配管を露出させるケースが多く、その結果、マンションの美観が損なわれるというデメリットがあります。

 

一方、更生工事は、既設配管内に発生した錆コブ等を研磨・洗浄したうえで特殊な樹脂を流し、内部をコーティングする方法(ライニング工法)です。

 

工期が短くコストも抑えられるのがメリットですが、やはり継ぎ手部分から再び腐食が始まることは避けられず、保証(延命)期間も10〜15年程度が一般的です。

 

また、配管内を削ることによって管の厚みが薄くなるため、更生工事の再実施は難しく、将来的に更新(取り替え)工事は避けられません。

 

今回実施した「電気防食工法」は、更新でも更生でもない、第三の方法となります。

 

電気防食工法とは、金属が腐食する原理を逆手に取って、鉄に反対方向の微弱な電流を流し続けることで、酸素と反応しない不活性領域(=酸化しない状態)を形成することで錆の発生を防止する方法です。

<下図参照 (図1)「腐食電流」の発生 (図2)「防食電流」の発生>

 

 

なお、この工法は、船底や橋脚の維持にも活用されている技術で、すでに100年以上の実績があります。また、第三者専門機関(一般財団法人建築保全センター)から「保全技術審査証明」も取得しています。

 

巷間では、他に「磁気処理工法」、「カルシウム防錆工法」といった延命対策も宣伝されていますが、信頼できる第三者の専門機関による審査証明を得た延命対策は他にありません。

 

具体的な施工作業の内容は以下の通りです。

①全戸を対象に「断水」平日2日間 日中の9時−17時
②配管を切断し、電極ユニット(アノード)と制御ユニットを設置。(下図参照)
③上記②と併せて配線の敷設工事を実施
④通水と通電の確認を行い、正常に作動しているかを確認

■ 設置工事費

 戸当たり6万円から10万円程度
(建物の階数や配管の系統によって変動します)

■ 導入効果の保証

 施工後の検査終了後10年間、製品及び効果保証が付帯します。

①製品保証
正常な使用状態において故障した場合は、部品代、修理工料とも無料で修理。

②効果保証
・ 給水管内部からの腐食などに起因する漏水の場合、原状復帰対応を実施。
・ 水道法の規定に基づき「鉄及びその化合物の水質基準値0.3mg/ 以下」を満たせない場合、給水管洗浄工事を含む基準値内確保のための対応を実施

 

昨年の12月に実施した、築28年の神奈川県のマンションでの施工現場の状況を以下ご紹介します。

 

【電極ユニット(アノード)設置前(上)と設置後(下)の給水管】

 

 

【制御ユニット設置後の状況】

赤色ランプの点灯で通電を確認できます。

 

 

ちなみに、パイプスペース内の配管を一部撤去した部分を撮影した下の画像(上側)には、水垢が付着していることが確認されましたが、塩ビでコーティングされており、発錆はありませんでした。

 

 

一方、防食加工した継手のねじ込み部分の画像(下側)には、発錆があることを確認できました。

 

この継手周りの腐食が進行すると、やがて錆コブに成長し、水流が悪化したり、赤水が発生します。そして、最終的には配管全体の交換が必要になってしまいます。

 

しかしながら、今回の電気防食工事によって、配管内でこれ以上の発錆が進行しなければ、給水管の交換を回避できる可能性もあると思われます。

 

ちなみに、この機器の設置に伴うランニングコストが以下の通り見込んでいます。

(ファミリー型タイプ50戸のマンションの場合)

■ 電気代の増加
電気防食装置1箇所につき年間50円程度。

10ヶ所でも年間500円とわずかな負担です。

■機器のメンテナンス費用
・制御ユニット   :約90万円(耐用年数30年)
・パッキン     :約50万円(耐用年数15年)
・リミッタ     :約 9万円(耐用年数20年)
・電極ユニット(アノード):耐用年数が長い(60年)ため、対象から除外。

 

なお、電気防食工法の詳細については、下の記事も併せて参考にしてください。

 

<参考記事>

aplug.ykkap.co.jp

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マンション法(区分所有法)が約20年ぶりの大幅改正へ!注目ポイントは?

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1月16日付の毎日新聞に、「マンション建て替えに必要な賛成、「4分の3」に緩和へ 法改正要綱案」と題した記事が掲載されました。

 

mainichi.jp

本記事の要約は以下の通りです。

■国土交通省の推計では2022年末現在、全国の築40年超のマンション数は約126万戸に上る。20年後には445万戸に増えると見込まれ、マンションと所有者の「二つの老い」への対応が急務となっている。

■ 老朽マンションの再生促進策を議論してきた法制審議会(法相の諮問機関)の部会は16日、区分所有法の改正要綱案を取りまとめた。

■ 2月に予定されている総会を経て法相に答申され、政府は1月26日召集の通常国会に改正案を提出する方針。

震性や火災への安全性不足、周辺に危害や衛生上の害を与える恐れ、バリアフリーへの不適合があるなどの条件に該当する場合は、建替えに必要な所有者の賛成決議の割合を「5分の4」から「4分の3」に緩和する。

■ 現行法は、死亡や相続で連絡がつかず、決議に参加しない所有者を「反対」と扱っているが、所有者不明によって合意形成が進まなくなるとの懸念が指摘されていた。

■ そのため、住人らの請求によって、裁判所の判断で所在不明所有者を決議の分母から除外できる仕組みを創設する

■ 建物の骨組みを維持しながら全体をリノベーションする工事や建物の取り壊しについても、現行の「全所有者の同意」という要件を緩和し、新たな建て替え要件にそろえるとした。

■ 1995年の阪神大震災をきっかけに制定され、大規模災害で被害を受けた場合に適用される「被災マンション法」も見直す。

■ 現行は、被災した建物の建て替えや取り壊し、敷地の売却には所有者の5分の4の賛成が必要だが、迅速な復興を妨げるとの指摘が挙がっていたため、所在不明所有者を決議の分母から除外する仕組みを採用し、多数決割合も「3分の2」に引き下げる。

■ 被災して建物の価値が2分の1を超えて失われたマンションは、政府が災害を認定してから1年以内に賛成決議をしないと被災マンション法が適用されなかったが、これを3年以内に延ばし、再延長もできるようにする。

 

<出典> 毎日新聞「老朽・被災マンションの再生に向けた要綱案のポイント」

 

新聞などの大手マスコミは、今回の区分所有法改正の目玉として、上の記事のように老朽マンションの建て替え要件の緩和措置を中心に取り上げています。

 

ただ、通常の管理組合の運営に際して注目すべき改正点として、

集会決議の円滑化対策もあるので、以下ご紹介します。

 

まずは、総会決議の要件となる区分所有者の母数に関する見直しです。

総会に出席せず議決権行使も委任状も提出しない区分所有者は、特別決議(管理規約の変更、共用部分の変更および復旧の決議)や建替え決議においては「反対者」と同様に扱われます。

 

そのため、議決に参加しない区分所有者が多いほど、議案が承認されにくくなり、その結果、マンションの円滑な管理が阻害されるおそれがあります。

 

こうした観点から、今回の法改正に伴って、所在等不明者を含めて総会議案に対して一切意思を示さない区分所有者をあらかじめ除外し、みなし出席区分所有者」(委任状あるいは議決権行使書の提出者を含む)の多数決による決議ができるようにします

 

また、多数決割合の緩和措置についても、以下のとおり導入されます。

①共用部分の変更

原則としては、多数決の要件は「4分の3以上」を維持します。

(したがって、上の挿入図は厳密には正しくありません。)

 

ただし、共用部に瑕疵が生じている場合や、高齢者や障害者の移動や利用に支障がある場合については、多数決要件を「3分の2以上」に引き下げます。

 

また、各マンションの管理規約において別段の定めをすれば、区分所有者及び議決権の各過半数以上に緩和することが可能になります。

 

②共用部分の復旧

地震・火災・爆発などにより共用部が損害を受けた場合に、その部分を元の状態に戻すための復旧を実施する場合には、多数決割合の要件を「総会に出席した区分所有者の3分の2以上」に引き下げることになりました。

 

おまけで、もう一つ押さえておきたいのが、

給・排水管の全面更新など「専有部分の使用等を伴う共用部分の管理」に関する改正です。

 

共用部分の変更に伴い必要となる専有部分の保存行為、あるいはその性質を変えない範囲においての利用もしくは改良を目的とする場合は、共用部の変更と同様の多数決要件にて総会決議が可能になります。

(ただし、専有部分の利用状況は支払った対価等の事情を考慮のうえ、区分所有者間の利害の衡平を図る必要があります)

 

<参考記事>

 

yonaoshi-honpo.hatenablog.com

 

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国が「第三者管理者方式のマンション」向けにガイドラインを策定中!

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昨年12月23日付の朝日新聞に、『「割高」修繕費に国が対策指針 理事会なしマンション管理に「監事」』と題した記事が掲載されていました。

 

<参考記事>

digital.asahi.com

本記事の要約は以下のとおりです。

■ 分譲マンションでは通常、管理組合が区分所有者の中から選任した役員で構成される理事会が運営を担う。

■ ただ、組合活動の煩わしさに加えて、住民の高齢化などで役員のなり手が少ないことから、理事会(筆者注:区分所有法上の「管理者」を含む)の役割を管理業者に委ねる「第三者管理方式」が増えている

■ マンション管理業協会の今春の調査では、第三者管理を「受託している」「今後の受託を検討」とした業者は167社で、3年前に比べて約3割増えている

■ 第三者管理方式のマンションについて、国土交通省は、管理業者の運営状況をチェックする「監事」を設けるよう管理指針を見直す。

■ 第三者管理では、住民の目が管理業者に行き届かなくなりがち。また、その立場を利用して管理業者が修繕工事を同じグループの会社に割高な金額で発注する例もある。

■ そのため、管理組合に不正や不当なもうけがないかをチェックする監事を設置し、税理士やマンション管理士などの専門家から選ぶよう求める。

■また、 大規模修繕を手がける施工会社は、監事と住民でつくる「修繕委員会」が選び、管理業者は関与しないようにする。小規模な工事でも業者が関連会社と取引する場合は、住民の決議を得るようにする。

管理者の任期は原則1年とし、管理組合の総会で再任するかどうかを決めるようにする。また、組合口座の通帳などは管理業者だけに管理させないようにする案も出ている。
■ 国交省が「外部専門家の活用ガイドライン」の改訂案を12月26日の有識者会議で示しており、来春にも運用を始める見込み。

 

区分所有法では、管理組合の代表者として「管理者」が設置することを想定しています。(設置自体は義務ではありません)

管理者の資格要件は特になく、区分所有者以外の外部からも選任が可能です。

 

ただ、管理組合自治主義の考えにもとづき、国の「標準管理規約」では、管理者(理事長)を区分所有者の中から選任するとともに、理事会による組合運営を想定しています

 

しかしながら、管理組合の運営には一定の専門知識が求められること、また昨今の高齢化等に伴う役員の成り手不足の深刻化を背景に、マンション管理会社(管理業者)が「管理者」を兼ねる運営方式のマンションが増えているのです。

 

このスキームを「第三者管理方式」と呼びます。

 

【国交省「今後のマンション政策のあり方に関する検討会とりまとめ」資料より】


このスキームの場合、上図のとおり、管理業者(マンション管理会社)が管理者を兼ねることによって、管理組合内に理事会(理事長)を設置する必要がなくなります

 

そのため、管理組合の立場からすると、

区分所有者が理事会役員の就任義務から解放されるというメリットがあります。

 

一方、「管理会社が管理者を兼ねる第三者管理者方式」の場合は、理事会のチェックやモニタリング機能が働かなくなるため、性悪説で考えると「管理会社によるお手盛り運営」に陥る大きなリスクが潜んでいます

 

その最大のリスクとは、管理組合との利益相反の問題です。

 

上の記事でも紹介されていますが、大規模修繕工事において発注側(管理者)と受注側(施工業者)が実質的に同一グループとなる場合に不適切な発注が行われることによって、以下のとおり区分所有者が不利益を蒙るリスクが生じると考えられます。

(1)管理者が工事内容や工事金額について施工会社の意向に従って発注を行うことで管理組合の財産が毀損されるおそれ
(2)施工会社の選定プロセスにおいて発注予定などの情報を自社グループに共有することで公正な選任プロセスを害するおそれ
(3)設計コンサルタントが起用されたとしても、管理者の意向を尊重せざるを得ないため、中立的に施工会社を監督するという役割を果たすことができないおそれ

 

マンションの管理者には「管理組合の代表者」として広範囲な権限が与えられており、以下のような重要な議案を総会に上程することができ、原則として総会で出席者の過半数の賛成さえがあれば実行できてしまいます。

・管理費や修繕積立金、専用使用料の改定

・長期修繕計画の更新

・大規模修繕・設備更新を含む諸々の工事の発注

・管理規約の改定(特別決議事項:4分の3以上の賛成が必要)

・使用細則の改定

・今期決算報告と来期予算案

・管理委託契約の締結・更新

 

極端に言えば、

管理会社が自己の利益拡大を図るために管理委託費を増額したり、さほど必要性のない修繕工事を実施する。

その結果、管理組合の財政状況が逼迫したら、管理費や修繕積立金の増額改定を提案する・・といった「お手盛り経営」になる陥る可能性がないとは言えません。

 

こうした事情から、国はマンション管理組合が大きな不利益を蒙ることがないよう以下の論点でガイドラインの策定を進めているので、その概要を記しておきます。

 

1.第三者管理者方式を導入するプロセスについて
組合内での十分な検討や管理会社からの十分な説明がないまま、第三者管理者方式が導入されるおそれがあるため、管理業者から区分所有者に対して積極的に以下の内容を情報提供するよう定める。
 【管理業者から区分所有者に情報提供すべき事項(案)】
 ・管理者の権限の範囲
 ・通帳・印鑑の保管のあり方
 ・管理業者が管理者の地位を離れる場合のプロセス
 ・日常の管理での利益相反取引等におけるプロセスや情報開示のあり方
 ・大規模修繕工事等におけるプロセスや情報開示のあり方
 ・監事の設置と監査のあり方
 
2.管理組合運営のあり方(管理者権限の範囲等)について
(1)管理者業務委託契約書締結の要件
 管理委託契約とは別に、管理者業務委託契約書を別途締結する。
 緊急時の対応、管理者としての業務報告、契約途中の解約、契約更新等の条件を明記する。
(2)管理規約の変更に関する留意事項
管理者の指定については、個社名を記載するのではなく、総会の決議によって選任・解任できるものとする 。
・管理者の任期は原則1年程度とし、毎年開催する総会において管理者の選任(継続・不再任等)の決議を行う。
・総会決議事項として以下の項目を追加。
 管理者業務委託契約の締結、 監事業務委託契約の締結、業務監査基準の制定・変更
 
3.管理組合の財産の分別管理について
・管理業者が管理者として選任されている場合は印鑑等を保管しないこととすべきか。その場合、印鑑等の保管先を「監事」とするか。
・管理組合として恣意的な引き出しを防止する措置を講じることを前提に、管理業者が管理者として印鑑等を保管することを選択できる余地を残すか
・透明性を担保するため、管理者向けの月次会計報告書を区分所有者にも送付する。
 
4.管理業者が管理者の地位を辞する場合のプロセスについて
・辞任もしくは解任によって管理業者が管理者の地位を離れる場合、新たに管理者に選任される者や新たに委任する管理業者への管理に関する情報の引き継ぎ等について現管理業者には協力してもらうことが必要。
・管理業者が辞任又は不再任の場合、退任の効力発生日(退任決定から3か月程度)までは引き続き管理者の地位にとどまることとする。
・解任の場合、総会の決議後速やかにその効力が発生するが、新管理者が選任されるまでの期間について監事が管理者業務を担うものとする。
・新たな規約や新管理者の選任に際して、監事を中心に臨時総会の調整(退任決定日から1か月以内を目途とした総会招集)を行う 。
・解約時における円滑な業務引継のため、 努力義務等として後任の管理者の選定の支 援、後任者への円滑な業務引継義務、 管理組合から提供を受けた書類の返却義務等について定めておくことが望ましい 。
 
5.利益相反取引等のプロセスと情報開示のあり方
発注額が一定額 未満の場合には管理者ができる旨の規約を定める等の場合でも、管理者が利益相反取引等を行うことがあり得ることを明確に説明すべき。
・「契約金額が規約で定める額未満かつ管理業者と同一グループでない会社」である場合を除いて、個別に承認決議を必要とする。
・決算案の承認に際し、毎期の決算書において契約内容、 相手方、契約金額等を注記する。また、監事の会計監査を経たうえで通常総会において承認を得る。
・大規模修繕工事の進め方(案)
①(管理者ではなく)区分所有者から構成される修繕委員会を主体として進める 。
②修繕委員会の構成員に監事も含める。
 
6.監事の設置と監査のあり方
区分所有者以外の第三者が管理者に就く場合において、監事の選任を必須とする
・監事については、(管理者による指名ではなく)総会決議により選任する。
・監事の担い手として、外部専門家(マンション管理士等)の選任を必須とする 。

 

利益相反リスクをどこまで低減できるかについては、

組合財産の管理方法、監事の権限と資格要件、管理規約の条文規定、大規模修繕工事等の実施方法をどこまでルール化できるかにかかっているように思います。

 

<参考記事>

yonaoshi-honpo.hatenablog.com

yonaoshi-honpo.hatenablog.com

 

yonaoshi-honpo.hatenablog.com

yonaoshi-honpo.hatenablog.com

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【終了しました】マンション管理セミナー開催のお知らせ<1月20日(土)>

今月開催予定のセミナーのご案内です。

 

5名様までに参加人数を絞ってセミナーの開催と個別相談会を開催します。

先着順でお申し込みを受け付けますので、お早目にごお申し込みください。

 

【日時・会場】

令和6年 1月  20日(土) 13:30~15:00

 

LEAGUE 地下1階 ミーティングスペース

東京都中央区銀座3-11-3

東京メトロ「東銀座」駅歩2分 「銀座」駅歩5分 

 

【参加料金】

 お一人様  2,000円(税込) 

※ ただし、下記のいずれかの条件に該当する方は「無料」とさせていただきます。

初めて弊社セミナーに参加される方

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1. 講 演

 

管理コストを3割削減するための見直し術」

これまで弊社のコンサルティングによって大幅なコスト削減を実現した事例を紹介しながら、その費用項目ごとに効果的な見直しポイントを解説します。

【内 容】

■ ポイント1:管理人の勤務体制と業務内容
最も多く見られるのが、管理員の勤務時間が過剰なケースです。また、その業務範囲も物件の特性によって違いが見られます。

■ ポイント2:設備保守点検の契約形態と実施頻度(エレベーター、機械式駐車場など)
エレベーター、消防、機械式駐車場など各種共用設備の保守点検費用は管理組合側には相場観がないため、メスが入りにくいテーマです。

■ ポイント3:遠隔監視&緊急対応費用(ホームセキュリティを含む)
設備保守点検と同様に相場観が掴みづらい項目ですが、そのため割高になりがちです。

■ ポイント4:事務管理費など管理会社の経費
管理会社によって提示金額が異なりますが、物件の規模に応じたで適正な市場価格がわかります。

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