マンション管理士|村上智史の「士魂商才」 

無関心な居住者が多いマンション管理組合に潜む様々な「リスク」を解消し、豊かなマンションライフを実現するための「見直し術」をマンション管理士:村上智史(株式会社マンション管理見直し本舗 代表)がご紹介します。

「マンション管理会社 満足度調査2017」を検証してみた

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9月7日、スタイルアクト株式会社が運営するサイト「住まいサーフィン」が毎年行っている、マンション入居者への管理会社の満足度調査の結果が発表されました。

 

www.sumai-surfin.com

その要約は、以下のとおりです。

■ 回答者数 

約2,000名

 

■ 調査項目

1)管理人(言葉遣い、業務遂行力、ホスピタリィ、対応の早さ、勤務時間)

2)管理会社(業務遂行力、やる気、真面目さ、対応力、提案力)

3)コスト(修繕積立金に不安がないか、コストパフォーマンス)

4)生活サービス

5)全体満足度

6)推奨度

 

■ 調査結果

・評価トップ3社のランキング

1位:野村不動産パートナーズ (9年連続トップ)

2位:三井不動産レジデンシャルサービス

3位:住友不動産建物サービス

 

・管理人への満足度について、「対応力」「ホスピタリティ」では最上位と最下位の評価で40%の乖離が生じており、管理会社によって大きな差が現れた。

 

上位3社の「総合満足度」は70を超えていますが、いずれも「管理人」と「管理会社(フロント担当者)」の評価の良さがランキングを押し上げたようです。(例えば、最高ポイントは、管理人:80 管理会社:73

 

その一方で注目すべき点があります。

 

調査項目のうち、「コスト」に対する満足度がすべての会社で突出して低調であったということです。

 

・「修繕積立金に不安がないか」→ 最高:59 最低:41

 

新築マンションの長計修繕計画(30年)では、将来的に修繕積立金の徴収額が5年周期で大幅に増額されていく想定になっているのが一般的で、その点を指しているものと思われます。

 

・「コストパフォーマンス」  → 最高:48 最低:33

 

 上記のサイトページでは詳細に関する解説がありませんが、コスト(管理委託費)に対するパフォーマンス(業務成果、満足度)に不満があるということは、現状の委託金額が適正ではないということを意味していると思われます。

 

 

 管理組合の現状と今後の財政事情を考える上では、

やはり「割高な管理委託費」と「修繕積立金の増額リスク」の2つが普遍的な課題だと言えるでしょう。

 

 <参考記事>

yonaoshi-honpo.hatenablog.com  

 管理組合にとってたいへん重要な「コスト」の課題を解決し、その評価ポイントが少なくとも70を超えるように目指してもらいたいものです。

 

<参考記事>

yonaoshi-honpo.hatenablog.com

 

 

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民泊利用の可否を明記するために改正された標準管理規約

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8月29日付けで、国交省が標準管理規約を改正することを発表しましたね。

 

www.mlit.go.jp

改正の趣旨を要約しますと、次のようになります。

■いわゆる民泊新法(住宅宿泊事業法)が6月に国会で成立し、今後1年以内に施行される予定となったため、分譲マンション内でも合法的に民泊利用ができる状況になる。

 

■これに伴い、分譲マンションにおける民泊をめぐるトラブルを防止するために、あらかじめ管理組合において区分所有者間で十分議論したうえで、民泊利用を許容するか否かを管理規約上明確化しておくことが望ましい


■そのため、マンション管理規約のひな型である「マンション標準管理規約」を改正し、住宅宿泊事業を可能とする場合と禁止する場合の双方の規定例を示すこととした。

■主な改正内容は2点
・専有部分の用途を定める第12条を改正し、住宅宿泊事業法に基づく住宅宿泊事業を可能とする場合と禁止する場合の双方の規定を記載。

・住宅宿泊事業者(「ホスト」となる区分所有者)が同じマンション内に居住する、いわゆる家主居住型のみ可能とする場合等の規定例も記載

 

つまり、

・民泊事業が旅館業法に抵触することなく合法化されること(一定の制約条件はある)

・現状の標準規約(「専ら住宅」条項では不明瞭)の手当てが必要であること

を理由として、国(政府)が民泊利用の可否を管理規約に明記することを管理組合に正式に推奨することにしたのだと思われます。

 

ただ、管理規約の改正については、組合総会の特別決議(組合員総数・議決権総数全体の各4分の3以上の賛成が必要)を経る必要があるためハードルが高いという実情があります。

 

また、そもそも無関心層が多い事情から、今回の改正を管理組合の役員たちがタイムリーに認識できるのか、管理会社から規約改正の提案がなされるかといったプリミティブな問題も含んでいると思います。

 

<参考記事>

yonaoshi-honpo.hatenablog.com

 今回の規約改正に際して事前に実施されたパブリック・コメント(国民からの意見)も公開されていますが、そこでは下記のように私と同様の懸念を抱く意見も見られます。

 

 管理組合によっては、住宅宿泊事業法の施行に管理規約の改正が間に合わないケースが発生することが想定される。

 その場合に、法令施行後すぐに住宅宿泊事業の届出がなされてしまうと、当該マンションでは、住宅宿泊事業が行えることが既成事実となってしまう可能性がある。

 そのため、法令施行に管理規約の改正が間に合わない場合の対応や考え方について明らかにしてほしい。

 

これに対する国交省の回答として、以下のコメントが記載されています。

・管理規約の改正までには一定の期間を要することから、管理規約上に民泊を禁止するか否かが明確に規定されていなくても、管理組合の総会・理事会決議を含め、管理組合として民泊を禁止する方針が決定されていないことについて届出の際、確認する予定としております。

 

規約の改正のハードルが高いことや総会決議までにそれなりの期間を要することを考慮して、組合総会(通常の過半数決議)や理事会決議でも民泊禁止の決定があればそれを認める意向だと解釈できます。

 

しかし、今回の改正は民泊の禁止だけでなく容認する場合の両論併記型を基本にしているわけですから、例えば(少数の区分所有者で構成されることが一般的な)理事会決議だけで民泊を禁じることを容認するとなると、民泊の利用を容認して欲しい側からすると著しく公平性を欠く措置のように思えます。

 

もっとも、民泊新法施行直後の暫定的な措置としてなら、アリかなと思いますが・・。

 

なお、改正標準規約の補足コメントには、以下の規定例も記載されています。

第12条 区分所有者は、その専有部分を専ら住宅として使用 するものとし、他の用途に供してはならない。


2 区分所有者が、その専有部分を住宅宿泊事業法第3条第1 項の届出を行って営む同法第2条第3項の住宅宿泊事業に使用することを可能とするか否かについては、使用細則に定めることができるものとする。

 

ポイントは、使用細則の改正は普通決議で可能なため、規約改正に比べてハードルがかなり下がるということだろうと思います。

 

ただし、上記の条項を規約に盛り込むには、やはり現在の管理規約を改正することが必要だとすると、結局当初の難易度は変わらないのではないでしょうか。(民泊利用の可否を再度見直す際には、ハードルが下がるのは確かですが・・)

 

また、今回は民泊への対応だけが改正の対象とされましたが、昨今はシェアハウスやウィークリーマンションといった新業態が登場したために「専ら住宅条項」ではこれらの利用を排除できないリスクが高まっています。

 

できれば、国交省にはこうした部分の手当ても含んだ規定案も示してもらいたかったと思います。

 

いずれにしても、現時点で民泊利用に対する規約の改正がなされていない管理組合さんは、ぜひ理事会などで議論してみてることをお勧めします。

 

 

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総会等の過半数決議で民泊禁止に!?

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昨日の住宅新報に、「総会等の過半数で民泊禁止 国交省が与党公明に報告」という記事が掲載されていました。

 

本記事の要約は以下の通りです。

■ 国土交通省は8月24日、与党公明党の「マンション問題議員懇話会・国土交通部会合同会議」で、住宅宿泊事業法に絡むマンション標準管理規約の改定について説明を行った。

 

■住宅宿泊事業法は今年6月の国会成立から1年以内の施行されるため、遅くとも18年6月には施行となる予定。ただし、事業者の登録は(その3ヶ月前の)18年3月には始まる予定

 

■ 来年3月の事業者登録の開始までに、民泊禁止などの管理規約の細則改定が調わない場合には、総会・理事会などでの住民過半数決議により、民泊禁止を認めるという方針を国交省が説明した

 

■ 現状では民泊可能とする場合には管理組合側に規約明記が求められていないが、同省では今後規約への明記が望ましいとする通知を行う

 

 

マンション内での民泊利用については、

現在の標準規約にある「区分所有者は、その専有部分をもっぱら住宅として使用するものとし、他の用途に供してはならない」という文言だけでは民泊を禁じているのかは明らかではないとされています。

 

そのため、民泊利用を排除したい場合は現管理規約を改正してその旨を明記することが望ましいとの考えから、国交省は民泊利用の可否を盛り込んだ標準管理規約の改正を予定しており、全国の管理組合に推奨していく意向です。

 

しかしながら、規約を改正する場合には組合員全体の4分の3以上の賛成が必要なため、来年の法施行や事業者登録までに規約を改正するのは容易ではありません。

 

こうした事情を踏まえて、国交省は今回は「緊急避難的な措置」として、来春までに規約の改正が調わない場合は総会・理事会などでの過半数決議により民泊禁止を認めるという提案をしたのではないかと思われます。(総会決議と理事会決議ではかなりハードルの高さが違うのが気になりますが・・・)

 

こうした政府の配慮自体は好ましいと思いますが、上記のような民泊問題に関する議論や裁判沙汰にまで発展しているトラブルがあることも、多くの管理組合ではほとんど認識されていないのが実情ではないでしょうか。

 

管理組合の情報収集といえば、もっぱら管理会社に頼っている傾向があるので、管理会社からからタイムリーな発信や提案がない限り、規約改正等の動きにまで進捗することはとても期待できないでしょう。

 

国交省には、同省が管轄している「マンション管理業協会」を通じて、管理会社から 各管理組合に対して必要な情報の発信とアドバイスがなされるような措置を講じてもらいたいと思います。

 

また、これまでは管理規約の改正まで行うことが望ましいとしながらも、総会等の普通決議で民泊禁止を認めることとなった場合の政策的な整合性をどう取るのかについては本記事では明らかにされていません。その点については今後も要注目です。

 

<参考記事> 

yonaoshi-honpo.hatenablog.com 

 

yonaoshi-honpo.hatenablog.com 

 

yonaoshi-honpo.hatenablog.com 

 

yonaoshi-honpo.hatenablog.com

 

 

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【理事長のギモン】共用部に私物を置くのはどこまで許されるの?

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先日、顧問先の理事長さんから、共用部の使用方法(マナー)について下記のような質問を受けました。

同じ悩みを持つ管理組合も多いのではないでしょうか。

 

共用部に私物を置くことに関して、当マンションの使用細則では以下のように規定されています。

 

「第3条(共用部分の使用)
共用部分の使用にあたり、次の行為をしてはならない。
(4)共用の廊下、階段等にたとえ一時でも私物を置くこと。」

 

この場合、各戸の玄関周りや水道メーターボックスも含め、
共用部を示していると、解釈してよろしいでしょうか。

 

各階廊下に私物を置いている住戸の方に対して苦情が届きました。

 

そのため、注意喚起の文書を各戸に配布するとともに、エレベータ内にも掲示しましたが、一向に撤去されません。


もしかしたら、玄関周りやメーターボックスの上は、廊下ではないからよい、と考えているのかもしれません。

その点を改めて確認したく、ご教示ください。

  

標準的な管理規約や使用細則には必ず記載されていますが、

基本的に専有部分は(躯体部分は含まず)住戸の床・壁・天井の内側部分を指します。このほかに「玄関ドア(内側)」と「鍵穴」も専有部分に含まれます。

 

したがって、それ以外は共用部分に当たり、規約や使用細則にしたがってその利用方法につき一定の制限を受けます

 

なお、共用部分の中には、バルコニー、アルコーブ、ポーチ、メーターボックス、窓枠・窓ガラスなどの「専用使用部分」と呼ばれる箇所があります。

 

規約等を十分に読まずに、この「専用使用部分」を専有部分と混同してしまう居住者が多いこともトラブルの元になっているように思います。

 

ただ、この専用使用部分についても、通常は「当該区分所有者が専用使用できるが、建物その他構築物の築造及び物置の設置等はできない」などと定められています。

 

その理由は、主として緊急時等の避難の妨げになる(消防法違反)ほか、美観を害するなどの問題があるためです。

 

「等」の含む範囲に対する解釈については議論の余地があるところですが、たとえば一時的に傘などを置く程度なら許されても、自転車や三輪車、遊具などを玄関前や廊下に放置するのは上記の理由からNGと考えるべきでしょう。

 

なお、こうした私物の放置が規約や使用細則に反することが明らかであっても,管理組合の判断で他人の私物を勝手に処分するのはNGです。

 

管理組合が所有者から損害賠償の請求を受けたり,器物損壊罪に問われたりするおそれもありますので、くれぐれもご注意ください。

 

<参考記事>

 suumo.jp

 

suumo.jp

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【理事長のギモン】管理組合の預金口座の残高と繰越剰余金はなぜ一致しない?

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先日、年1回の定期総会を控えたマンション管理組合の理事長さんから、以下のような質問がありました。

・・・・

配布された総会議案書の収支計算書【一般管理費会計】で、
繰越剰余金残高は 1,074,499円 なのに対して、実際の預金残高は1,740,335円 あります。


この差はなぜ生じるのでしょうか。


ちなみに、修繕積立金会計では収支計算書の残高=預金残高になっています。


過去の議案説明書でも、やはり差が出ています。

 

その理由について教えていただけると幸いです。

・・・・・

一般の会社員の方でも、経理や財務の実務経験がないと「複式簿記」に関する知識をお持ちではないのが普通でしょう。

 

そのため、「会計上の繰越剰余金と預金残高(キャッシュ)の違いがわからない」という声をよく聞きます。

 

ただ企業会計と違って、マンション管理組合の財務諸表は大変シンプルなので、重要なポイントだけを押さえておけば簿記の知識がなくとも十分理解できるはずです。

 

まず、管理組合の決算書のうち「貸借対照表」をご覧いただくと、
左側(借方)には、預金口座の残高や未収金を含む「資産の部」があります。

 

一方、右側(貸方)には、未払金や前受金、そして繰越剰余金残高を含む「負債・余剰金の部」があります。

 

そして、「資産の部」の合計金額と「負債・余剰金の部」の合計は常にイコールになるようになっています。(それゆえ貸借対照表は「バランスシート」とも呼ばれています。)

 

したがって、

資産の一項目にすぎない「預金残高」と、負債・剰余金の部の一部である「繰越剰余金」の金額が常に一致するとは限らないことがわかるでしょう。

 

なぜなら、繰越剰余金残高は資産の総額から負債を差し引いた、いわば「純資産額」ですから、預金残高と繰越剰余金は一致しないことはなんら珍しくないからです。

 

それでは、キャッシュと会計残高が一致しないケースについて具体的に解説しましょう。

 

管理組合の決算については、

「資産」の部に以下の金額が計上されているケースがよくあります。

 

1)未収金

これは、決算時に区分所有者が支払う管理費や修繕積立金などに滞納(振込忘れを含む)が発生していた場合に計上される項目です。

 

もし期日までに入金があれば、預金残高に反映されていたはずのものです。

 

<管理組合決算書の例>

 

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2)前払金

この項目で、もっとも代表的なのが「マンション共用部の火災保険料」です。

 

マンション保険は5年間の契約で締結することが一般的ですが、その場合は初年度に5年分の保険料を一括払いする必要があります。

 

そのため、初年度分の保険料は費用として計上しますが、2年目以降の残り4年分は「未経過分」になるため、「前払金」として資産の部に計上されるのです。

 

一方、「負債」の部には以下の項目が計上されることがあります。

 

1)前受金

決算月以降の管理費や駐車料金、修繕積立金などの入金があった場合に、いわば預かり金として計上されるものです。

 

2)未払金

管理委託費や、修繕工事の費用が後払いになっている場合に計上されることがよくあります。

 

したがって、

主としてこの4つの項目が全くない場合に限って、預金残高と繰越剰余金残高は合致することになります。

 

言い換えると、

たとえ繰越剰余金残高が多くても、管理費滞納などの未収金も多い場合には決して安心できないことになります。

 

管理費会計の収支計算書で、予算通り「管理費」の項目が100%金額計上されていても、その中には滞納等による未収金も含んでいるため、むしろ当然のことです。

 

つまり、貸借対照表も併せて確認しないかぎり、管理組合の財政事情を正しく把握することはできないのです。

 

【 参考記事】

 

yonaoshi-honpo.hatenablog.com 

 

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「行列ができる法律相談所」でも取り上げられたマンションの滞納問題

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昨日のTV番組「行列ができる法律相談所」で、マンション管理組合の滞納問題が取り上げられていました。

 

「限界マンション」の問題が取りざたされている昨今、老朽化したマンションでは大規模修繕工事や設備の更新が必要になりますが、これらの資金需要に対して管理組合の修繕積立金残高が不足するケースも少なくありません。

 

管理組合の財政状況を改善させるには、区分所有者が毎月負担する修繕積立金を一時金の徴収や、段階的な増額徴収、借入れなどの方法を選択することを迫られます。

 

一方、老朽化マンションでは、竣工当初からの区分所有者も多く、すでに高齢のために年金生活に入っていて、毎月の徴収額が大幅に増えると日常生活が困窮するケースも出てきます。

 

こうした場合、「区分所有者が修繕積立金を滞納すると、マンションからの立ち退きをしなくてはならないか?」という相談内容でした。

<賃貸マンションの家賃を滞納しているケースと混同されているようで、「立ち退き」というのはそぐわない表現かと思いますが・・。>

 

出演弁護士は、一様に「退去の必要はない」と回答していましたが、

1)訴訟になって、財産を差し押さえられる可能性

2)区分所有法第59条による強制競売請求の可能性

についても言及していました。

 

管理組合の立場で申し上げると、2)は相当長期かつ悪質なケースが対象なうえ、競売請求が認められるにはそれなりの手続きが必要になるため容易ではありません。

 

1)については、まず「先取特権」の実行という方法があります。


管理費や修繕積立金のような特定債権については、他の一般債権より優越して債権の請求ができ、それを「先取特権」といいます。


区分所有法の第7条の規定によれば、区分所有者が負担する管理費等については、不動産および動産の上に先取特権を認めています。


管理費の滞納が生じた場合、管理組合は滞納者のマンションの建物と敷地またはマンション内に設置している家財などの動産について先取特権を根拠に裁判所に申し立てることで債務名義を取得することができ、また判決を必要としないため簡便な手法といえます。

 

ただその一方で、大きな「弱点」もあります。

 

この先取特権の優先順位が、登記された抵当権に劣るという点です。

 

たとえば、住宅ローンなどの抵当権がすでに設定され、かつ、競売落札による予定価格より多額のローン残高がある(オーバーローン)状態にあると、たとえ競売しても管理組合は滞納金を回収できないことになります。


また、先取特権の行使には滞納者が差押えを承諾するなどが条件になるため、現実的には難しいということもあります。

 

ただ、管理組合が滞納問題で留意すべき重要なポイントは、

滞納管理費等の請求権に関する消滅時効のリスクだと思います。

 

管理費等の債権は、

これまでの判例にもとづき「5年の消滅時効」が適用されるとされています。

 

一般の人は、滞納者に毎月督促し続ければその請求はずっと有効だと考えがちですが、そうではなく、催告による時効延長は6ヶ月間しかありません。

 

つまり、単に「支払ってください」という請求行為では、時効を完全に中断する効力はなく、6ヶ月以内に訴訟等の裁判上の手続を取らないと「5年の消滅時効」がスタートするということです。

 

滞納期間が5年を超えてしまった場合、債務者が消滅時効を主張すれば支払いは免除されてしまいます。

 

したがって、特に6ヶ月以上の長期滞納者を抱えている管理組合にとってまずやるべきことは、消滅時効を引き延ばすために法的措置を講じて債務名義を取得することです。

 

滞納額が60万円以下なら、簡易裁判所に「少額訴訟」を申し立てるとよいでしょう。

原則として、1回の期日で審理を終えて判決が言い渡されます。

 

それによって、消滅時効は6ヶ月から10年間へ大幅に延長されます。

 

滞納額が60万円を超えるなど少額訴訟ができない場合は、「仮執行宣言付き支払督促」という制度があります。

 

これは債権者(管理組合)の主張にもとづき、簡易裁判所の書記官が債務者に請求額を支払えと命じる書類を送付する手続きです。


これに対して、債務者(滞納者)から異議が出なければ、「債務者が債務の存在を認めた」ものとして、判決に準じる効果(債務名義)を与えるというものです。

 

これら2つの方法は、いずれも訴訟に比べて手続きも簡易なため自分でできますし、手数料も安いので状況に応じて使い分けるとよいでしょう。


ただし、

時効の進行を延長することができても、上記の通り担保債権の存在や、差押えのために財産調査が必要になる等の事情で、すぐに滞納金を回収できるわけではありません

 

より確実に行うためには、まず滞納者に支払方法などの希望等を聞いて、裁判所から滞納者が支払いやすい方法などを考えた上での判決を得て、なるべく滞納者に自主的に支払いをさせることが有効でしょう。

 

そう考えていくと、

管理費等の債務問題を悪化させないためには「初期滞納のうちに回収する習慣づけ」が大切だということになります。

 

やはり管理組合の健全な運営には、管理会社との連携を通じて管理組合の執行機関である理事会が有効に機能することが条件といえます。

 

<参考記事>

 

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国交省は、民泊トラブル解消のために本腰を入れるか?

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先日、大阪のマンション管理組合での民泊差し止め訴訟に関する記事を取り上げたばかりですが、8月4日付けの朝日新聞でこの問題に関する国交省の動向を伝える記事が掲載されていました。

 

digital.asahi.com

この記事によると、

■ 国土交通省は、騒音などを心配する住民に一定の配慮をするため、管理規約で禁止したマンションについては民泊を認めないような仕組みを導入する意向。

■ 民泊は、現状では旅館業法の許可が必要にもかかわらずその多くが無許可で、違法なヤミ民泊とみられ、取り締まりが追いつかない。

■ 一方、今年6月に国会で成立した住宅宿泊事業法(民泊新法)が来春に施行される見通しで、今後は自治体に届け出れば民泊用に部屋を提供できるようになる。

■ 国交省はマンション内のトラブルを防ぐため、この届出の際にマンションの管理規約も提示させ、管理規約に「民泊の禁止」が明示されていれば、自治体への届け出を認めない方針。

■ 国交省はまた、全国の分譲マンションの8割以上がひな型として利用する「標準管理規約」を改正する予定で、民泊新法の施行までに管理規約で民泊の可否を明示するよう促す

 

民泊新法の施行に伴い、自治体への事前の届出が部屋のオーナーに義務付けられるため、その届出の際にマンションの管理規約を提出させ、民泊が禁止されていれば届け出は無効として扱うことで、マンション内のトラブルを解消したいというのが国交省の意向のようです。

 

ただ、管理組合に来春の法施行までに管理規約を改正して、民泊利用の可否を明示させるというのは容易なことではありません。

 

その理由は、2つあります。

■民泊を禁止するか、容認するかについて合意形成するのに時間がかかる。

■民泊の可否を選択して規約を改正する場合、全体の4分の3以上の賛成が必要。

 

無関心層が多く、役員のなり手が少ない管理組合がほとんどの中、迅速に改正手続きを実行できるとは到底思えません。

 

国が本気でトラブル未然防止の実効性を上げるつもりなら、こうした管理組合の現状を踏まえた慎重な措置を講じることを検討すべきだと思います。

 

たとえば、

■民泊の利用禁止について使用細則等に明記していれば、届出を認めない。

 

規約の改正では総会決議上のハードルが高いので、「使用細則」に禁止規定を盛り込むことも有効とすれば、かなり難易度が下がると思います。

 

あるいは、さらにシビアな案として

■「民泊が可能」と管理規約に明記していない限り、届出を認めない。

 

標準的な規約の場合、「区分所有者は、その専有部分をもっぱら住宅として使用するものとし、他の用途に供してはならない。」という文言が記載されています。

これまで、この「もっぱら住宅条項」をもって民泊を禁止し得るかという点について議論があり、この文言だけでは禁じられているのか許容されているのかが必ずしも明らかではないというのが現状の解釈とされています。

 

ただ、逆に言えば、こうしたマンションは「民泊利用の可否について判断していない状況」なのは確かです。

 

こうしたマンションに関しては、保守的な観点からトラブルを未然に防止するために民泊の利用を留保させるよう部屋の所有者を規制する措置を取るべきだと考えます。

 

<参考記事>

 

yonaoshi-honpo.hatenablog.com

 

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