マンション管理士|村上智史の「士魂商才」 

無関心な居住者が多いマンション管理組合に潜む様々な「リスク」を解消し、豊かなマンションライフを実現するための「見直し術」をマンション管理士:村上智史(株式会社マンション管理見直し本舗 代表)がご紹介します。

マンションの機械式駐車場の撤去平面化に立ちはだかる「附置義務条例」の壁

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都内にある顧問先のマンションでは、来月臨時総会を開催し、機械式駐車場の設備更新と平面化工事を実施するための議案を審議する予定です。

 

このマンションでは、現在全22区画(平置き1区画を含む)の駐車場に対して、月極めの契約数は9台と稼働率は4割強にとどまっています

 

マンション内の居住者に利用ニーズを探るためのアンケートも実施しましたが、機械式ならではのサイズ等の制約条件や使い勝手などの問題もあり、今後も稼働率の回復は見込みづらい状況です。

 

一方、築20年を超えて設備の老朽化が進行しており、今後部品交換などの修繕費が嵩むことが予想されます。そのため、駐車設備の撤去・平面化の検討を開始したのが2年前のことです。

 

ただ、このマンションの敷地は間口が狭く奥行きが長い形状のため、設備を全て撤去すると必要な駐車区画数を確保できないことがわかりました。

 

そのため、16台の立駐ユニットを8台の新ユニットに交換するとともに、5台分の立駐ユニットを2台分の新平置き区画に改装し、合計11台(現平置き1区画を含む)の駐車場に改装する方針としました。

 

しかしながら、これを実行するには別の「大きな課題」があることがわかりました。

それは、「駐車場附置義務条例」です。

 

当マンションの場合、東京都の駐車場附置義務条例(当マンションの場合:20台以上)の制約のもとで建設されたことから、その基準を下回る台数に減らす場合は、以下のとおり都から「条例の緩和措置」を承認してもらうための条件と手続きに従う必要があるのです

 

■ 新築時の基準台数未満に削減する場合は、事前申請のうえ附置義務緩和の認定を受けること。具体的には、行政との事前協議(1ヶ月程度)を行なったうえで、組合総会の特別決議を得た後に、正式に行政に認定申請を行うこと。

■ 東京都の場合、附置義務緩和の台数制限として、過去3年の最大利用実績数を下回らないこと等が定められていること。

■ 上記条例に違反し、設備の撤去・平面化を実施したことを後に行政が認知し、原状復旧等の措置命令に対して組合が従わなかった場合、50万円以下の罰金を課せられること。

 

上記(2)の制約条件から、本プロジェクトについて行政に申請するには少なくともまだ1年以上現状の稼働台数が増えないことを確認する必要がありました。

 

そして、今年の秋になってようやく行政に事前協議を行える条件が整ったため、さまざまな書面を作成したり、必要な資料を取り纏めたうえで行政に提出し、先日無事、その協議が終了しました。

 

そのため、来月の組合総会(特別決議のため全体の4分の3以上の賛成が必要)で承認が得られれば、いよいよ工事を施工できることになります。

 

 

駐車場設備の撤去・平面化を普通に実行するだけでも組合にとってはかなりヘビーなプロジェクトですが、今回のように附置義務条例の制約のもとで行政から承認を得るために煩雑な事務作業も加わり、大変な業務負荷が加わることになりました。

 

これを乗り越えたのは、本プロジェクトに2年以上熱心に取り組んだ理事長をはじめ役員の皆さんの努力の賜物だと思います。

 

あとは、無事総会で決議されることを祈るばかりです。

 

<参考記事>

yonaoshi-honpo.hatenablog.com

 

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