5月18日付の朝日新聞の「けいざい+」で、マンションの老朽化と住民の高齢化という「ダブルの高齢化」問題を取り上げた記事が掲載されていたので、紹介します。
本記事を要約すると、以下のようになります。
■ 東京・八王子にある大規模マンション団地(築35年、9棟計約300戸)は、最寄り駅から徒歩20分の場所にあり、住民全体で60歳以上の割合が約半分を占める。
■ この団地は、エレベーターが設置されていないうえに「自主管理」方式のために管理費が安い(月額3,000円)点に魅力がある。
■ しかし、その管理費を今春1千円値上げすることになった。理由は、住民の高齢化に伴い、総会資料の作成や、組合の出納会計、修繕や漏水等の事故への対応などの負担に耐えかねて管理会社に委託せざるを得なくなったからだ。
■ 昨年管理会社を選んだ際には、住民の半数以上が説明会に出席するなど高い関心を示したが、年金生活者を中心に「管理費の値上げが生活をあ圧迫する」との声が寄せられた。
■ 住民アンケートでは、建て替えを望む声も半数近くあった。しかしながら、余剰容積分をデベロッパー等の外部に分譲することで建替え資金を調達するのは、この団地の立地条件から厳しいのではないかと理事長は考えている。
■ ただ、この団地は旧耐震基準の建物であるものの、診断の結果、耐震性はあることを確認できたため、国交省の補助金(工事費の1/3相当額)を受けることができ、給排水管の補強と屋上防水工事を実施することができた。
■ 残りの大規模修繕については、管理会社から「2020年のオリンピック以降でもよい」という見立ても得られたため、当面の資金繰りのめどは立ちそうだとのこと。
今後は大都市やその周辺部の団地やニュータウン街を中心に、こうした「ダブルの高齢化」がますます社会問題化していくのは確実でしょう。
昨今、老人介護の問題が頻繁にクローズアップされていますが、マンション管理組合についても「介護」対策が求められるようになるのは時間の問題です。
これまで、自主管理にもかかわらず、住民の皆さんの協力によって見事に運営されてきた築30年超の団地管理組合を診断させてもらう機会が何回かありました。
たしかに、「現時点」での運営は素晴らしく、文句のつけようのない立派な管理組合もあります。
ただ、管理組合の役員さんたちも70歳を超えてくると、「意欲はあっても、体の方がついて行けない」と仰います。
皮肉なのは、
自主管理で立派に運営されてきたマンションほど、居心地が良いために長年そこに住み続ける方の割合が多く、住民も入れ替わる機会が少ないために「ダブルの高齢化」に直面しやすい、ということです。
上の記事で取り上げられた管理組合では、
事態の深刻さを正面から受け止めて真摯に取り組む理事長さんたちのリーダーシップのお陰で、自主管理から委託方式への転換や、老朽化対策工事を実現することができました。
言い換えれば、そういう適任者を得られたのは、この組合にとって大変ラッキーだったと言えます。
オフィスビルでもマンションでも、
最後に不動産の価値を決めるのは、そこに携わる「人材」です。
一体、いつまでマンション管理の「主役」は区分所有者自身という「建前」を言い続けるつもりなのでしょうか?
たとえ辣腕を振るう優れた理事長がそのマンションにいたとしても、区分所有権は制限なくいつでも譲渡できるのですから、今の良好な運営が継続できる保証は何もありません。
世間には、マンション管理組合を町内会(自治会)と同じような存在として考える人も多いですが、それは違うと思います。
管理組合の果たすべきミッションを考えれば、町内会などよりも「アセットマネジメント会社」と言った方がより的確であり、その中心的な役割にはプロフェッショナルの人材を据えることの方がむしろ自然だと思います。
【参考記事】
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