管理組合が抱えるリスクとして、顕在化しやすいのが滞納管理費の問題です。
国交省のマンション総合調査(平成25年度)によれば、築年数に比例して滞納者の発生率も上昇する傾向がはっきりと見て取れます。
特に築30年以上のマンションにおいては、5割以上の管理組合で3ヶ月以上の滞納者が、3割以上のマンションで6ヶ月以上の長期滞納者がいる、と回答しています。(グラフ参照)
そもそも、マンション管理組合には「滞納が発生するとこじらせやすい環境」があると思います。
これには、以下の3つの要因による影響が考えられます。
1)滞納者へのプレッシャーが弱い
一般的に、管理費等の出納管理を委託された管理会社が積極的に回収することが少ないと思います。
理事会のチェックが甘い場合、3ヶ月以上の滞納があっても電話や直接訪問もせずに放置されているケースも見られます。
2)督促のアクションが後手に回りがち
標準的な管理委託契約では、6ヶ月以上の滞納者への督促対応は管理会社の業務範囲外となっています。
つまり、滞納回収の主体は管理組合に委ねられるわけですが、同じ居住者同士の立場として訴訟手続きをとったり、違約金を請求することに逡巡するケースが少なくありません。
3)強制回収の実行力が弱い
管理費のような債権には、民法上の「先取特権」が認められており、滞納が生じた際にはいきなり住戸の競売を申し立てて弁済を受けることも理屈上は可能です。
しかしながら、先取特権の対象は区分所有権と住戸に備え付けた動産と限られるうえに、「先取特権は抵当権に劣後する」という特性上、多額のローンが残っているために競売で回収する金額では融資を完済できない場合には、競売の請求自体が無効となってしまいます。
また、少額訴訟等でいわゆる債務名義を取得すれば、他の保有財産に対しても差押え(強制執行)することは可能なのですが、滞納者の保有資産がその住戸以外にどれだあけあるのか分からなければ実効性を上げるのは難しくなります。
そこで注目すべきは、現在国交省が進めている標準管理規約の改正案です。
滞納管理費の回収を管理組合理事長の重要な職務と位置づける一方、区分所有者の責務として、管理組合による財産調査に応じる義務を新たに標準規約に明記することを予定しています。
また、財産調査を行う際には、滞納者本人の同意を改めて取り付ける必要はないことも併せて規定するとのことです。
国際的には、滞納管理等に関する先取特権が抵当権に優先させる法改正も行われており、わが国もさらなる見直しを検討する余地はありますが、今回の標準規約における財産調査権の明記は一歩前進だといえるでしょう。
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