1月12日付けでダイヤモンド・オンラインに、「工事費高騰でピンチ!マンション大規模修繕の深刻」という記事が掲載されています。
この記事の前半部分を要約すると、以下のような感じになります。
◆12年に1度行われることの多いマンションの大規模修繕で、その資金が大幅に不足し、窮地に陥っている管理組合が続出している。
◆ 2013年に比べると工事費の相場は3割くらい上昇したと言われる。
◆ 大規模修繕工事の相場は戸当たり100万円だったので、130万円に値上がり。
◆ 来年には消費税の増税も予定されているので、さらにコストアップする見込み。
◆ 管理組合は駆け込み発注をすべきか、厳しい決断を迫られるだろう・・・
たしかに、巷間では復興やオリンピック特需などで人材不足が深刻化しており、工事費が急騰しているという話は耳にします。
しかし、だからと言って大規模修繕の駆け込み発注をするというのはいかがなものでしょう? 私はお勧めしません。
まず、大規模修繕の周期として一般的とされる「12年」が妥当か、といえばかなり疑わしい。
もっとも、かつては「10年」毎に設定されている長期修繕計画も珍しくありませんでした。30年間で3回もやるわけですから凄い頻度です。
先日もある工事会社の社長さんと話していて、
「分譲マンションの大規模修繕って、長計上は12年周期が標準なんですよ。」
と言ったところ、
「えっ、そんなに早いんですか?15年前後が普通だと思いますけど・・」
という反応でした。
現在の建築基準法では、平成20年の法改正に伴って竣工後(もしくは外壁改修後)10年経過後の外壁全面打診が義務付けられました。
したがって、そこで外壁タイルの浮きなどの不具合が多数見つかれば、早急な補修が必要なケースは出てくるかもしれません。
しかし、業界内の感覚では、大規模修繕周期の目安は15年前後なのです。
それを示すわかりやすい事例があります。
UR都市公団のホームページに、「共用部分の計画的修繕について」というページがあります。
「UR都市機構では住宅の耐用の延伸を図るため必要な修繕について、修繕周期などの基準を定めて計画的に修繕を行っています。」と記載され、このうち例えば外壁部分の修繕については以下のような補修方針を定めています。
外壁塗装 | 概ね18年以上経過したもので、モルタル等の浮き、亀裂等の著しい外壁、共用部分(階下、階段等)を修繕のうえ、棟単位で全面塗装 |
なんと、外壁塗装の周期は18年目に設定されているではありませんか!
全国に約76万戸もの賃貸住宅を保有するUR都市公団が定めている方針と比較して、分譲マンションの長計修繕計画がいかに「保守的」なレベルに設定されているか、分かるでしょう。
しかも、都市公団の賃貸住宅の場合、外壁は吹き付け塗装の仕上げになっているものが多く、今や磁器タイル貼りが標準になっている分譲マンションに比べると、風雨や紫外線などによる劣化は進行しやすいと思われます。
にもかかわらず、外壁の塗装補修の周期を原則として18年と考えているのです。
では、なぜ分譲マンションは12年なのか?
簡単に言えば、その方が得する(儲かる)ところがあるからということです。
もう一つ指摘しておきたいのは、戸あたりの工事費の相場として示されている100万円は、長期修繕計画で対象となっている修繕工事をすべて実施した場合の金額です。
問題は、大規模修繕の際に長期修繕計画で補修対象として挙がっているものを全て実施しなくてはならないのか?、ということです。
部位ごとの劣化状況は各マンションの立地・環境条件・当初の施工品質などによって大きく異なるのが実態です。
たとえ計画上は築後12年目に予定していても、まだ補修の必要がない部位もあるでしょう。特に、屋上防水などは多少浮きや膨れがあっても機能上は問題がありませんし、部分補修で延命することも十分可能です。
高所作業のため足場(仮設)の設置が必要な工事は集約化するのが得策なのは事実ですが、それ以外の工事は補修が必要になるまで先送りしても特にデメリットはありません。
そこから考えると、「戸当たり100万円」という工事費の相場観だけが一人歩きしてしまうのも決して良くないことがわかるでしょう。
つまり、ライフサイクルコストの面から大規模修繕を考える場合、単に工事価格の動向に注目すればよいものではなく、「補修すべき工事の範囲」と「適切な実施時期」も見定めることも大切だということです。
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