10月20日付の日経新聞に、「マンション管理費・積立金、10年で3割上昇 東京23区」と題した記事が掲載されていました。
<参考記事>
本記事の要約は以下の通りです。
■東京カンテイ(東京・品川)によると、2022年の中古マンション管理費・修繕積立金の水準を発表した。なお、専有面積30平方メートル以上の分譲マンションを対象に調査し、リゾートマンションやケアマンションは除外した。
■ 管理費・修繕積立金の平均合計額は、築10年の物件が東京23区で70平方メートル当たり月2万9782円。12年当時に比べ29%高い。
■首都圏の築10年物件は2万7746円だった。12年に比べて30%増えた。近畿圏は同28%高い2万332円、中部圏は同36%高い2万2025円だった。
■マンションの修繕積立金はデベロッパーなどが販売時に試算する。将来の正確な見積もりは難しいため、実態とかけ離れることも多い。深刻な人手不足で人件費が膨らみ、管理費が上昇。資材高による工事費の上昇が修繕積立金を押し上げた。
■18年度の国土交通省のマンション総合調査によると、35%のマンションで積立額が長期修繕計画を下回る。放置すると十分な修繕が行えず、水漏れなどで老朽化が早まる。
■そのため、多くのマンションで修繕工事の延期や、積立金の値上げといった対策がとられている。
■東京カンテイは「現状の修繕積立金の設定額は甘い。資金が不足して修繕できない例が出てくるだろう。積立金の上昇は避けられない」と話す。
■新築マンションでも管理費・修繕積立金が膨らんでいる。22年の東京23区の合計額は前年比5%増の3万829円だった。
■シアタールームの設置やコンシェルジュの配置など、新築マンションでは設備の充実が進み、管理費が膨らんでいる。修繕積立金も中古同様に工事費用の高騰で上昇傾向にある。
■首都圏は同8%高の2万7494円だった。23区を含む東京都全体が同5%高の2万9977円、神奈川県が10%高の2万4968円、埼玉県が10%高い2万4204円、千葉県が3%高の2万2045円だった。
下記のグラフは、東京カンテイが公表している首都圏の新築マンション(専有面積:70㎡換算)における管理費と修繕積立金の推移ですが、2013年当時、管理費と修繕積立金の合計は、月額22,369円でした。
これに比べて2022年では月額27,494円なので、22%上昇していることになります。
2022年の水準を専有面積(㎡)当たりの月額単価に換算すると、
・管理費 :@279円
・修繕積立金:@113円
となります。
およそ10年前(2012年)、不動産経済研究所が首都圏の新築マンション管理費の平均額を専有面積(㎡)当たりの月額単価で公表しています。
当時の金額は@216円。
10年間で管理費は29%上昇している計算になります。
つまり、この10年間で管理費の平均相場は3割上がったということです。
管理費の相場が上昇している要因は、人件費の増加が影響しているのは確かでしょうが、近年超高層タワーマンションの供給が都心部を中心に増えていることも要因の一つと思われます。
タワーマンションの場合、ホテルライクな仕様を「売り」にしていますから、管理員が毎日勤務するのはもちろんとして、これに日常清掃員、コンシェルジュや夜間の警備員の配置が加わるとともに、超高速で昇降するエレベーター群やタワー式駐車場、スポーツジム、宿泊施設などの豪華な共用設備などの維持管理コストがのしかかってきます。
その一方で、修繕積立金の水準にはさほど大きな変化が見られません。
首都圏の新築マンションの場合、10年前の@97円に対して、直近の水準は@113円ですから、10年間で17%のアップと管理費の上昇率の半分強に過ぎません。
しかも、国交省のガイドライン(下図参照)によると、機械式駐車場の修繕コストを除いて均等積立方式を想定した場合、@250円〜300円程度が必要とされているにもかかわらず、その半分にも満たない水準で設定されています。
【2021年版 修繕積立金ガイドライン】
特に、地上20階以上の超高層タワーマンションの場合、上記の通り豪華な共用設備があるうえ、大規模修繕工事も足場を組めず、工期も大幅に長くなるため高額になることを考えると、@400円から500円程度は徴収しないとおそらく将来資金が不足するのではないかと思われます。
なぜ管理費と修繕積立金の上昇幅がこれだけ違うのか?
管理費の水準の多寡は管理会社の収益(管理委託費)に直結しますが、修繕積立金はそうではないからです。
国のガイドラインからすれば、新築当初から修繕積立金を管理費と同じ水準に設定すべきにもかかわらずそれをしないのは、
修繕積立金の上昇 → 購入者の可処分所得の低下 → マンション販売価格の低下 につながるからです。
これこそが、昔から変わらないマンション業界の悪弊なのです。
<参考記事>