2016年春に予定されている、電力小売りの完全自由化が近づいてきたせいか、一括受電に関する問い合わせや調査の依頼が増えています。
小売りが自由化すれば、現状では首都圏なら東京電力からしか買えないのに、関西電力や東京ガス、あるいは通信会社などから買うこともできます。
これによって企業間の競争原理が働き、電気料金が従来よりも安くなる可能性も出てきたというわけです。
しかし、個人宅で消費する程度の電力量では数%値下げするのが「関の山」でしょう。
では、マンション1棟分をまとめて電力を購入することで料金を大きく下げられないか?これが一括受電を考える最大の目的なのです。
しかし、この一括受電には2つの選択肢があります。
一つは、一括受電サービス業者に委託する方法。この場合は、高圧で受電して低圧に変えるトランスをサービス業者が設置するので管理組合に設備投資は発生しません。
また、設備の保守管理や各住戸の使用量検針から電気料金請求までサービス業者に委託するので管理組合に業務の負担もかかりません。
ただし、電気料金の削減による還元は、共用部の電気代の20~40%程度にとどまります。(専有部分の料金値下げで還元することも可能ですが、数%下がる程度でしょう。)
これは設備投資を行うサービス業者の取り分の方が大きいからにほかなりません。
2つ目は、管理組合自身が大口契約者となって高圧で受電する方法。その条件として、管理組合自らの負担でトランス等の設備を購入し設置しなければなりません。
その代わりに、高圧料金で約3割安く電気が買えます。それを各専有住戸に従来の電気料金で販売することで利ザヤを稼げるので、初期投資費用も回収できます。
トランスの耐用年数は25年から30年超のため、初期投資を回収した後も長い期間にわたって収益を上げることができます。また、検針から出納請求までの業務は外注することも可能です。
小売の自由化で、マンション一棟の購買力を使って地域電力会社以外の新電力などからより有利な条件を引き出せる可能性もあります。
ただ、気候変動や居住者の人数、ライフスタイル等の変化に応じて電気使用量が変動するので、期待通りの収益を稼ぐことができるかどうかの保証はありません。
また自由化の影響で、現状の電気料金の体系も変わっていく可能性もあるでしょう。
メリットだけでなく、そういったリスクや留意すべき点を考慮して検討することが大切です。
難しいのは、マンション内でそれを等しく共有したうえでコンセンサスを得ることができるか、ということです。
というのも、いずれの方法を選択するにしろ、今の受電契約を解約する同意書を全戸分集めなければなりませんから。決して容易な話ではないのです。
しかし、一括受電に対する認知度も上がり、関心が高まっているのも確か。
電力をきっかけに、マンション管理全体の見直しの機運を盛り上げたいと思います。
どうも有り難うございました!
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