管理組合が抱える最大の問題の1つである「隠れメタボ」問題を解決するための「一丁目一番地」は、言うまでもなく管理委託契約の見直しです。
それでは、委託契約のどの部分にメスを入れたらよいのでしょうか?
特に品質の良し悪しと直接結びつかないという意味で「ゼイ肉」となりやすい部分
を3つを挙げておきましょう。
【1】管理会社と現業業者間の下請けスキーム
これはある大規模マンションでの実例ですが、元請の管理会社から現業業者までの委託状況を精査してみたところ、設備管理について4階建てになっていることが分かりました。
つまり、
<元請>A管理会社 ⇒<下請け>B管理会社 ⇒<孫請け>大手BM会社 ⇒ <ひ孫請け>現業業者 という構造です。
この場合、真ん中の2つの階層は、「中間マージンの温床」になっているわけです。
全部委託方式の管理委託契約の場合、事実上請負契約となっているため、再委託先(下請け)を明示する義務がありません。そのため、管理組合はこのような契約スキームに気づきにくいのです。
この種の問題は、工事の受発注の構造とよく似ています。
工事の場合も、<元請け>ゼネコン ⇒<下請け>準ゼネコン⇒<孫請け>・・のような3階建て以上になっていることが珍しくありません。
こうした下請けの階層をなるべくフラット化することで、確実にコストは適正化に向かいます。
【2】メーカー系列の設備保守業者の委託費
これはエレベータの業界事情が分かりやすいでしょう。
エレベータは大手メーカー数社を中心とする寡占状態にありますが、製品を納品した後の保守管理は、メーカー各社の系列会社が受託するのが一般的です。
分譲会社(デベロッパー)から系列管理会社への引継ぎと全く同じで、典型的な「親から子への禅譲型のビジネスモデル」と言えるでしょう。
メーカー各社としては、納品までの営業で価格競争を強いられる見返りに、その後の保守管理業務で長期間にわたってガッチリ稼ぐことができるわけです。その点は、プリンターとインクのビジネスモデルとも似ています。
しかも、その後メーカー系同士で保守管理の業務を奪い合うこともないため競争原理が働かず、管理組合は高い機会費用を支払い続けることになっています。
ところが、近頃は非メーカー系の専門保守業者が伸びており、急速に受注を増やしている会社もあります。
その中でも大手の業者の場合だと、メーカーの純正部品も即入手でき、24時間遠隔監視できるインフラも完備され、保守体制もまったく遜色がないにもかかわらず、メーカー系に比べて4割以上安くなります。<注意>設備機種や設置後の経過年数によっては不可能な場合があります。
エレベータは全体の委託費に占める比重も大きいので、委託先業者の変更で大きな成果を得やすいと言えます。
【3】管理会社の事務管理費
管理組合の日常の運営をサポートするために、フロント担当者などの自社スタッフが理事会・総会の運営や出納・会計を担っていますが、これを総称して事務管理業務と言います。
【2】と同様、親会社から禅譲される形で受託できるため、この業務の金額もたいていの場合「言い値」で決まっており、社内の標準単価(数千円)に住戸数を掛けて計算していると思われます。
実際には管理組合によって、役員の数、理事会の開催頻度なども異なるため、経費のかかり方は千差万別なはずです。
無関心な住人が多く、不活発でサイレントな管理組合ほど、管理会社にとっては手間が省けると同時に大きな利益の源泉となるわけです。
現実の管理会社の面倒見の良さや、フロントスタッフの数や対応レベルなどを再評価したうえでコストを見直す必要があるでしょう。
以上の3点がコスト適正化のうえでもっとも優先的に見直すべきテーマです。
管理を見直してコスト削減を実現しても、品質も下げてしまっては資産価値の低下につながりかねません。いかにゼイ肉部分だけをそぎ落としてスリム化するかが大切なのです。
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