マンション管理組合が管理会社に管理を委託する場合、そのほとんどは「全部委託方式」になっています。
全部委託方式とは、
・管理人業務
・事務管理業務
・設備保守点検業務
・清掃業務
・植栽管理業務
等の一切を一括で管理会社に委託する契約スキームを言います。
全部委託方式は、管理組合から見れば全部ひとまとめで委託できるので、一見楽ちんで気が利いているスキームのように思えます。
しかし、実はここに大きなリスクが潜んでいます。
下記の図を見てください。
管理会社の業務を大きく3つに分けると
A:組合運営サポート業務
B:建物管理業務
C:修繕工事業務
となります。
Aの業務は、いわば管理組合の「パートナー」として理事会をサポートする仕事です。
一方、BとCの仕事は、管理組合から仕事をもらい、あらかじめ決められた金額と仕様で業務を遂行する「業者」としての仕事です。
全部委託の場合、ここで「矛盾」が生じます。
管理組合のパートナーとしての立場がありながら、業者としての業務を行わねばならないからです。
たとえば、BやCの金額が組合にとって割高だとしたら、Aは組合にその事実を伝えることが本来の仕事になるはずです。
でも、全部委託の場合には、それはまず不可能でしょう。
もう一つ例を挙げましょう。
Bの業務(たとえば清掃)の品質が良くないとします。
Aの業務としては、その事実を組合に伝え、しかるべき改善指導をしなければなりません。
また、ひどい場合には業者(自社を含む)の変更も検討しなくてはならないかもしれません。
ただ全部委託の場合、組合からクレームを付けない限り、それが実践されることは期待できないでしょう。
したがって、こうした矛盾を解消するには、利益が相反するAの業務と、BとCの業務は主体を分けるべきだということになります。
マンション管理の「常識」を覆すにはまずこの視点が大切だと考えます。
どうも有難うございました