10月20日付けの時事通信に、「修繕・清掃、過度な高額発注防止 マンション関連法を改正へ―国交省」と題した記事が掲載されていました。
<参考記事>
本記事の要約は以下のとおりです。
◾️ 国土交通省は、管理組合から理事会業務を委託された管理会社が、グループ企業などに修繕や清掃を発注する場合、組合の総会で承認を得ることを義務付ける方針を固めた。
◾️ 相場より高い値段での発注を防ぐためで、2025年の通常国会への提出を目指すマンション管理適正化法などの改正案に盛り込む予定。
◾️ 違反した会社に対する監督処分も設ける方針で、違反行為を重ねるにつれて、「指示」「業務停止命令」「管理業の登録取り消し」と処分を重くする方針
◾️ 一般的なマンションでは、組合員の中から選任された理事会で、どの業者にいくらで修繕や清掃を依頼するか検討し、発注する。
◾️ 一方、近年は理事会の業務を軽減するため、検討から発注までを管理会社に委託するケースが増えている。
◾️ 管理会社と修繕や清掃を担う会社が同じだったり同一グループだったりすると、管理会社は「所有者のため費用を抑える立場」と、「会社の利益を優先させて値段を高くした方が良い立場」で「利益相反」が起きる可能性があるため、所有者に不利益が生じることを防ぐ措置が必要と判断した。
◾️ 同省は、今年6月にマンション管理に関する指針を改訂し、発注時に組合の承認を得ることのほか、外部専門家らを「監事」として置くことや、組合口座の印鑑は監事が保管するとなどを定めたが、発注時の承認は特に重要と判断し、法律に明記して義務化する。
本記事中の「管理会社に理事会業務を委託するケース」というのは、
いわゆる「第三者管理方式」のことを指しています。
一方、上図の「一般的なケース」とは、
区分所有者から選任された理事会を中心に管理組合が運営されており、管理会社は出納会計、総会設営などの事務管理業務や、清掃、設備保守点検などの管理業務を委託されながら、理事会をサポートするものです。
利益相反のリスクについては、修繕工事の発注を例として考えた方がわかりやすいと思います。
共用部の修繕工事の受発注については、標準的な業務委託契約には含まれていません。
給水ポンプが経年劣化で壊れたので修繕する、
インターホンや防犯カメラを更新する、
屋上防水の改修工事を行うなど、
建物の共用部分や共用設備の修繕をどこにいくらで発注するかはすべてマンション管理組合の「裁量」です。
「一般的なケース」の場合、理事会で各事案について修繕方法等を検討のうえ、
専門業者等から見積もりを取得してどこに発注するかを決めていきます。
理事会で方針が決まったら、原則としてはその方針を総会議案書に設えて、承認を得られれば発注します。
(少額な工事や、事前に予算が総会で承認されたものは理事会決議で実施します)
一方、「第三者管理方式」の場合、理事会を設置しないので、
上の赤字部分のプロセスがゴッソリ無くなります。
この部分が、管理会社に「お任せ」になるからです。
そのため、(そのグループ会社を含めて)管理会社による「自己への発注」になることで利益相反リスクが顕在化することがないよう「規制」をかけるわけです。
その予防策が「法による総会決議の義務付け」ということですが、おそらく管理会社にとっては痛くも痒くもない措置でしょう。
一般的な理事会方式のマンションでも利益相反的な行為が横行しているのは、そもそも区分所有者の関心や意識、そしてチェック能力が低いからです。
それを補完する役割を誰が担うのかについて「担保」がないのが、
「理事会の権能を管理会社に与える第三者管理方式」なのです。
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