10月13日付けの朝日新聞に、『 マンション「管理費」の値上げ相次ぎ、平均値3割増 相談は過去最多』と題した記事が掲載されていました。
<参考記事>
本記事の要約は以下のとおりです。
◾️ 公財)マンション管理センターによると、分譲マンションの住民、管理組合、管理会社などから寄せられた相談数は2023年度、1万4253件に上り、過去最多となった。
◾️ マンション管理費の値上がりに関するトラブルや相談が増加傾向にあり、以下のような相談事例があるという。
・管理費の値上げのため臨時総会が開かれるが、通知書に具体的な値上げに関する金額の説明がない。
・管理費の値上げを理事会が検討しているが、節約を考えないで管理会社の言いなりだ
・管理費会計が赤字のため管理費の値上げを考えているが、管理費の平均額などを調査した資料はないか
・管理費の値上げを理事会決議で決めてしまった
◾️ コンサル会社の調査によると、都心の9区にある大手ディベロッパー系のマンションを調べたところ、17年から23年までの7年間で新築マンション管理費の平均値が3割、値上がりしている。
◾️ 物価高に伴い、警備や清掃など様々なメンテナンスにかかる人件費が高騰しているためだ。管理会社が清掃、警備などを業者に発注する時、手数料を上乗せするので費用が割高になり、住民らが理解を示さず、トラブルになるケースが最近多いという。
◾️ トラブルを防ぐにはどうしたらいいのか。管理会社を変える手もあるが、物価高で事情はどこも同じであることを踏まえた上で、まずが管理委託費の内訳を明らかにするよう管理会社に求めることが必要、とアドバイスする。
◾️ 管理委託費を安くしたいのであれば、自主管理という手もあるが容易ではない。マンション管理の質を保つには、相応の管理コストがかかることを認識し、管理会社とよく話し合い、互いに歩み寄るしかない。
新築マンションの管理費が、昨今が上昇傾向にあるのは事実です。
東京カンテイの調査によると、首都圏新築マンションの場合、2022年の管理費の平均額は、2013年に比べて25%強上昇しています。(下図参照)
この背景には、最低賃金の上昇や人手不足の影響で、管理員や清掃員の時給単価が上昇していることが大きいと思われます。
ただ、新築マンションの場合は、デベロッパーや管理会社の裁量で設定できるため、既存マンションに比べて管理費を上げやすい環境にあります。
一方、既存マンションの場合は、管理組合(理事会)との条件交渉や総会の決議を経ないと、管理委託費や区分所有者から徴収する管理費の改定はままならないはずです。
それでは、管理組合側に「交渉力」や代替案などを考える「知恵」があるのか?
そこがもっとも大きな問題です。
デフレ時代があまりにも長く続いたために、インフレ防衛策をまったく考えてこなかったこと、また管理委託契約の内容や管理委託費の妥当性についてまったく勉強していないのでろくに知識すらないのが一般的だと考えると、管理会社の提案に唯唯諾諾と受け入れざるを得ないのではないでしょうか。
こうした管理組合に管理会社と交渉する際のアドバイスをするなら、以下のようになります。
1)契約更新(総会)の直前に増額改定を提案された場合など、管理会社との交渉時間を確保するため、一旦現条件にて暫定契約(3ヶ月間〜6ヶ月間)を締結する。
(これは管理委託契約にも標準の条文で記載されており、確実に応じてもらえます。)
2)管理委託費が増額になる項目について、管理会社自身の経費と専門業者等への外注委託費がそれぞれどれくらい上がるのかを確認する。
(管理会社に原価の開示義務はありませんが、プレッシャーを与えることが重要です。)
3)現状の管理仕様(管理員の勤務時間、清掃や設備点検の頻度など)に過剰な部分がないか見直しつつ、コスト増を抑制する代替プランを管理会社に提案してもらう。
<参考記事>
4)管理会社の日頃の貢献度合を評価し、不満な点(工事費が高い、担当者が頼りない、報連相がない等)があればそれをネタに交渉し、一切譲歩が見られない場合はリプレイス(管理会社の変更)の検討を示唆する。
<参考記事>