10月17日付けの不動産ニュース「R.E.Port」に、「改正「マンション標準管理規約」を公表/国交省」と題した記事が掲載されています。
www.re-port.net本記事の要約は以下のとおりです。
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◾️ 国土交通省は10月17日、「マンション標準管理規約」の改正を発表した。
◾️ 建物の高経年化・居住者の高齢化という「2つの老い」に伴う課題に対応するために「マンション関係法」が改正されるが、その中核となる改正区分所有法が2026年4月に施行されることを受けたもの。
◾️ 今回の改正では、マンション関係法(区分所有法)の改正に関係したものとして、総会決議における多数決要件等が見直された。
◾️ 特別決議についても総会の出席者による多数決を可能とすることや、マンション再生決議については、建て替え以外の再生手法として「更新・売却・除却」の多数決要件を規定した。
◾️ また、区分所有者の所在等が不明だった場合に、管理組合が一定の手続きを経て総会決議等から除外することが可能になった。
◾️ このほかにも総会招集時の通知事項等の見直し、国内管理人制度の活用に係る手続き、共用部分の管理に伴って必要となる専有部分の保存行為等、修繕積立金の使途、マンションに特化した財産管理制度の活用に係る手続き、共用部分等に係る損害賠償請求権等の代理行使について改正を行なっている。
◾️ さらに、区分所有者ではない外部の人間が組合役員や専門委員を装った事案の発生を受けて、役員や専門委員の就任時の本人確認の実施についてコメントを追加した。
◾️ 改正後のマンション標準管理規約等については、国土交通省のホームページで公表している。
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マンションの管理規約は法律ではなく、管理組合内の規範(ルール)を定めたものです。
ただし、当然ながら管理規約も法律の許容範囲を守る必要があります。
管理規約には下記のとおり3種類の規定があります。
(1) 強行規定(区分所有法の通りに定めないと不可)
【例】組合員の資格要件、特別決議事項の要件、総会議事録の作成など
(2) 管理規約で「別段の定め」が可能な規定
【例】共用部分の持分割合、議決権の持分割合、普通決議の要件など
(3) 任意規定
【例】理事会の設置、役員の定員や任期、管理費や修繕積立金の算定方法
つまり、各マンションの管理規約は少なくとも上記(1)の強行規定には従う必要があるため、法改正に伴って現行規約も見直さざるを得なくなるケースが生じます。
今回の国交省のマンション標準管理規約の改正点の中にも、この「強行規定」に該当するものがいくつか含まれています。
あなたのマンションの管理組合が、この強行規定をスルーして規約を改定しなかった場合、来年4月の改正法施行後は「無効」の扱いになってしまうので、注意が必要です。
以下、「強行規定に該当するため、規約の改定が必須となる項目」を列挙します。
<1> 「特別決議事項」における決議要件の変更
現行法では、規約の変更や共用部分の変更等のいわゆる「特別決議事項」は、組合員総数及び議決権総数の各4分の3以上の賛成が必要です。
一方、総会に出席せず、委任状や議決権行使書すら提出しない区分所有者は、特別決議や建替え決議においては「反対者」と同様に扱われます。
そのため、無関心な区分所有者が多いマンションでは、重要な議案であるにもかかわらず必要な賛成数を確保できず、組合の運営が停滞するケースも生じています。
そこで、区分所有者に総会への参加や組合運営への協力を促すべく、総会議案に対して一切意思を示さない区分所有者をあらかじめ賛否の集計対象から除外し、「出席した区分所有者の多数決」(ただし、委任状・議決権行使書の提出者を含む)による決議に変更されることになりました。<下図参照>

<標準規約第47条3項>
「組合員総数の過半数であって議決権総数の過半数を有する組合員の出席を要し、出席組合員及びその議決権の各4分の3以上で決する。」
<2> 総会定足数の見直し
上記の特別決議の要件に合わせて、普通決議を含む総会の定足数を議決権総数の「半数以上」から「過半数」に変更しました。
<3> 「共用部分の変更」に係る決議等の多数決要件の緩和
「共用部分の変更」について、下記の条件を満たす場合に限り、出席組合員及びその議決権の「各3分の2」以上の多数決に緩和されます。
イ )敷地及び共用部分等の設置又は保存に瑕疵があることによって他人権利又は法律上保護される利益が侵害され、又は侵害されるおそれがある場合におけるその瑕疵の除去に関して必要となるもの
ロ )高齢者、障害者等の移動又は施設の利用に係る身体の負担を軽減することにより、その移動又は施設の利用上の利便性及び安全性を向上させるために必要となるもの
<4> マンション再生等に係る決議要件の追加
これまでの建替えに加えて、新たな再生手法として更新(一棟リノベーション)・売却・取り壊し(除却)を行う場合の多数決要件を規定しました。
(原則として組合員総数及び議決権総数の各5分の4以上。ただし、客観的な要件が認められる場合は各4分の3以上に緩和措置あり。)
<5> 総会招集時の通知事項等
1)総会招集時の通知事項の追加
すべての議案に「議案の要領」(議案の内容を把握し、検討できる程度の情報を要約したもの)を示すよう変更。
2)緊急に総会を招集する際の通知予告期間
総会の招集通知の発送について、最短期間を開催日の「5日前」 から「1週間前」に変更しました。
3)共用部分の変更に係る決議及びマンション再生決議について、多数決要件が緩和される場合には通知事項とする。
<6> 共用部分等の損害賠償請求権の代理行使
共用部分(屋根、外壁、配管など)に瑕疵や損害が生じたとき、個々の区分所有者がバラバラに請求すると、法的整理が煩雑になり、請求漏れや重複請求が発生するリスクが生じます。
そのため、改正法では「管理者である理事長が一括して損害賠償請求権等の代理行使を行う」旨の原則規定を定めたため、標準規約にも当該条文を創設しました。
なお、あなたのマンションで規約の改正を決議する場合、総会の開催時期によって決議条件等が下記の通り異なるので、ご留意ください。
<2026年3月末日(改正法施行前)以前に開催する場合>
・決議要件等
① 定足数 : 議決権総数の半数以上の出席
② 決議要件 : 組合員総数及び議決権総数の各4分の3以上
・規約の改正内容の発効日
2026年4月1日以降
<改正法の施行後(2026年4月1日以降)に開催する場合>
・決議要件等
① 定足数 : 組合員総数及び議決権総数の各過半数の出席
② 決議要件 : 総会に出席した組合員及びその議決権の各4分の3以上
・規約の改正内容の発効日
総会決議が可決した場合、即時発効。
<参考記事>
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