今春から顧問を務めることになった、都内にある築46年目のマンションの話です。
20世帯にも届かない小規模マンションですが、「マンション管理適正化診断サービス」から着手したところ、大小様々な問題が見つかり、最低ランクの「B」評価になってしまいました。
なかでも最も深刻な問題が、組合運営上のルールを定めた「管理規約」でした。
このマンションでは、現状の運営実態との齟齬が以下の通り数多く見られました。
(1) 敷地内駐車場が一部バイク置場に用途変更されたのに、反映されていない
(2) 管理費・修繕積立金の徴収額の改定が反映されていない
(3)組合役員ならび理事会の運営に関する規定がない
(4)管理費等の滞納者に対する対応に関する規定がない
現在では、ほとんどの分譲マンションが国交省の「マンション標準管理規約」にもとづいて管理規約が作成されているため、概ね必要な条文は網羅されています。
しかしながら、この標準管理規約が最初にリリースされたのは、
1982年(昭和57年)です。
つまり、このマンションが分譲されてから8年後のことです。
そのため、マンションを分譲したデベロッパーは、当時の区分所有法の規定にもとづいてオリジナルの管理規約を作成したと思われます。
その後40年以上の長きにわたって、まったく見直されてこなかったわけです。
竣工時から受託している老舗の管理会社は、いったい何をやっていたのでしょう?
「怠慢、ここに極まれり」です。
そのため、当社からの提案にもとづき、以下の方針で管理規約を全面改訂することを臨時総会に上程しました。
■ 規約全体を国交省の「マンション管理標準規約」をベースに改訂する
<上記(3)、(4)の問題に対応>
■ 現状の当マンションの運営実態を管理規約に反映させる
<上記(1)、(2)の問題に対応>
その結果、改正後の管理規約については、以下の規定が新たに盛り込まれました。
1. 組合役員の定数ならびに任期について <現規約に規定なし>
・理事長、副理事長、監事を含む定員4名(任期1年)
2. 総会の議決に関する要件 <現規約は、区分所有法に準拠>
・成立要件
議決権総数の半数以上を有する組合員が出席
(委任状、議決権行使書の提出を出席とみなす)
・決議要件
原則として「出席組合員」の議決権の過半数で決する
(特別決議事項を除く)
3. 理事会の設置ならびに運営方法 <現規約に規定なし>
・開催要件、決議方法、決議事項等に関する規定を盛り込む。
4. 管理費滞納者への対応 <現規約に規定なし>
・期限までに納付しない場合には、その未払金額について、年利14.6%の遅延損害金ならびに違約金(弁護士費用および関連費用)を加算のうえ、滞納者に対して請求できる。
・未納の管理費等の請求について、理事会の決議にて訴訟その他法的措置を追行できる。
5. 専有部の用途制限の追加
・民泊事業のほか、シェアハウス、短期賃貸、グループホーム、暴力団事務所としての使用も禁止。
こちらは小規模なマンションのため、全体の3分の1くらいの組合員がグループLINEで繋がっており、コミュニケーションが日常的に取れる状況だったのが奏効しました。
最終的には、議決権行使書や委任状を含めて全員の意思を確認でき、特別決議の要件をクリアして決議されました。
それにしても、従前の規約に「この規約の改廃は、区分所有者全員の書面による合意によって行うことができる」と記載されていたのには驚きました。
管理組合にとって最も難事業である「建替え」でさえ、全体の8割以上の賛成で実現可能なのにもかかわらず、規約の改正ですら全員の合意ができないというのはあまりにも理不尽です。
ただ幸いにして、区分所有法では、「組合員総数ならびに議決権総数の各4分の3以上の賛成があれば規約の改廃できる」という規定があります。
しかも、当該条項は区分所有法どおりにしか運用できない「強行規定」に該当するため、管理規約でこれを変更することはできません。
したがって、従前の規約における規定は「無効」とみなすことができ、改正にこぎつけることができました。
こうして、インフラ整備の最重要テーマであった規約改正については、顧問就任後2ヶ月で解決できました。
引き続き、優先順位をつけながら、長期滞納者問題、管理会社のリプレイス、長期修繕計画の更新などの課題に取り組んでいきます。
<参考記事>
※ ブログ認知度向上にご協力いただければ嬉しいです (^▽^)/
↓ ↓