昨年来、マンション管理士の全国組織である「日本マンション管理士会連合会」( 日管連)では、管理組合に対して無料で「マンション管理適正化診断サービス」の提供を開始しました。
マンション管理士が直接現地に伺って、組合の運営状況、法定点検や大規模修繕の実施や計画の状況、防犯・防災対策、事故履歴などを対象に、目視・書類チェック・ヒヤリングを行い、その後診断結果の総括と今後に向けてアドバイスをレポートとして提出する、というものです。
私も、このたび 日管連傘下の東京都マンション管理士会に登録し、所定の研修受講を経てこの診断を実施できる資格を取得しました。
この診断は、管理組合にとって「特典」もあります。
それは、管理状況の診断評価をもとに、共用部分を対象とするマンション総合保険(日新火災の「マンショドクター火災保険」)の見積り提案が受けられるというものです。
「なーんだ、そんなことか」と思うなかれ。
ここで重要なことは、管理組合によっては、この診断結果に応じて損害保険料の割引きが受けられる可能性があるということです。(※見積りの提示があっても、その保険に加入する義務はありません。)
現状のマンションの築年数だけを重視する、いわば「十把ひとからげ」で保険料が決まるメガ損保と差別化を図ろうというのが、この商品の狙いです。
実際に相見積りを取ったところ、圧倒的に日新の保険料が安かったため、総会で保険会社変更が決議された事例もすでに続々と出てきています。
<参考記事>
さて、
この診断業務を初めて体験して、もうひとつ大きな効用があることを実感しました。
それは、「管理会社の日頃の仕事ぶりがよくわかる」ということです。
たとえば診断先の管理組合では、次のような問題点が浮かび上がってきました。
1)総会議事録の原本が所定の場所に保管されていない。
2)管理規約が過去改正されているようだが、改正の履歴が不明。
3)法定で義務付けられている「特殊建築物調査」が20年前の竣工以来一度も実施されていない。
4)過去3年間の保険事故実績を事前に求めていたが、保険代理店でもある管理会社からいまだ「調査中」とのことで明確な回答が得られず。
特に1)と3)については、それぞれ区分所有法、建築基準法上の義務なので「法令違反」状態にあるということです。
もっと深刻なのは、
こうした重要な事実を知識のない管理組合の役員さんは正しく認識していないため、こうした機会がなければ確実に放置されていただろう、という点です。
1年任期の輪番制で持ち回ることの多い役員人事ですが、そのために管理規約に目を通すことすらしない、管理組合として果たすべき法的義務も認知していない、というのはむしろ「標準」というのが実態なのです。
そのため、組合運営を事実上任せている管理会社の仕事ぶりがいかに「いい加減」だとしても、いとも簡単にスルーされてしまうわけです。
この診断は管理組合の経済的な負担もないうえに、こうした実態に潜む重大なリスクを気づかせてくれるものですから、ぜひ一度受診されることをお勧めします。