2月25日付けの東京新聞によると、
「新電力」の日本ロジテック協同組合が、電力小売り事業から撤退することを決めたとのことです。
記事の内容をまとめると、次のようになります。
◆ロジテックは2010年に電力小売り事業に参入し、電力の卸取引市場などから一括で電力を調達し、大手電力より割安で販売していた。
◆しかし、次第に採算が悪化したため資金繰りが困難となり、託送料(送電線の使用料)を東京電力に払えなくなった。
◆4月以降も電力の小売りを続けるには国の事業者登録をあらためて受ける必要があったが、今回経産省への申請を取り下げたため、事実上撤退が決まったとのこと。
◆ロジテックの取引先は、防衛省や全国の自治体、組合員企業など約1200に上る。各取引先は4月以降、契約先を大手電力か他の新電力へ変更するよう迫られることになる。
◆4月からは家庭向けを含めて電力の小売りが全面自由化される。小売り事業者間の競争が激化すると、家庭向けでも事業者の淘汰が進む可能性がある。
そもそも「新電力」のビジネスモデルとはどのようなものなのでしょうか?
「新電力」とは言っても、ロジテックが実際に発送電を行っているわけではありません。
「新電力」の多くは、電力会社などに対して発電料や託送料(送電システムの利用料金)を支払って、地域電力会社よりも安い価格で企業や自治体などの各需要家に売電することで経営しています。
したがって、
【需要家から受け取る電力小売料金】ー【発電料・託送料】ー【人件費等の会社経費】>ゼロ
となることが事業継続の条件となります。
今回の撤退は、上記の条件が満たせず採算割れを起こしたために、発電元や地域電力会社への支払いが滞り、事業継続ができなくなったというわけです。
では、なぜ採算割れが起きたのか?
他の記事を読んでみると、ロジテックの場合には、新潟県や名古屋市などの自治体から水力発電や、ゴミ焼却施設の余剰電力などを購入していたようです。
◆ 新潟県では、県営の11の水力発電所の売電先について一般競争入札を行い、8つの発電所の電気を日本ロジテック協同組合が落札した。
◆契約期間は2年間で、これまでの2倍の価格で落札された。
◆売電が始まってからまもない去年5月から支払いが遅れがちになり、合わせて6億円がまだ支払われていないとのこと。
一方、同社から電力を購入していた自治体もあります。
◆愛知県小牧市は、電気料金の削減のために、平成25年6月からロジテックから電力を購入していた。
◆中部電力から購入していた時期に比べ、年間でおよそ1000万円の削減効果があった。
こうした状況を踏まえると、地域電力会社に比べて割安な料金で売電する一方で、他社との熾烈な競争によって買電に伴う仕入れ価格が上がったため、次第に経営が苦しくなっていったものと推察されます。
一方、新電力のユーザーである需要家については、このような事態に陥った場合どのような影響があるのでしょうか。
「新電力」が事業撤退しても、電力そのものは発電業者(地域電力会社等)が代わりに供給してくれるので、通常は電気が止まるような事態にはなりません。
しかしながら、契約先をその新電力から他社に契約を切り替える必要が出てきます。その結果、従来に比べて負担する電気料金が増える可能性があります。
マンションの一括受電についても同じことが言えます。
同じ「新電力」のいわゆる一括受電サービス業者が撤退した場合も、電力供給が止まるわけではありません。なぜなら、実際に発送電を行っているのは東電などの地域電力会社だからです。
ただし、このスキームでは高圧の電力を一般家庭で使えるように低圧に変える「受変電設備」(キュービクル)をサービス業者が保有しています。この設備を誰が引き継ぐのかが重要なポイントです。
ちなみに、マンション向けに一括受電をおこなっている「エフビット」の会社サイトのQ&Aには、以下のような記載があります。
貴社が倒産、事業撤退したらどうなるのか?
1)業務提携している同業他社との相互補完契約により、機器の譲渡を含め、電力供給を円滑に提供します。
2)管理組合が希望する場合、設備を残存簿価にて優先的に譲渡いたします。
上記の1)は、同業他社に一括受電業務をそのまま引き継いてもらうということですが、2)は管理組合が自ら事業者となって一括受電を行うということを意味しています。
したがって、2)の場合には設備の購入ができるか、自ら事業者となった場合の電気料金の請求管理をどこに委託するか、などの検討を迫られることになります。
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