マンション管理士|村上智史の「士魂商才」 

無関心な居住者が多いマンション管理組合に潜む様々な「リスク」を解消し、豊かなマンションライフを実現するための「見直し術」をマンション管理士:村上智史(株式会社マンション管理見直し本舗 代表)がご紹介します。

12月19日放送 NHK「クローズアップ現代」をご覧にならなかった方へ

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12/19のNHKの「クローズアップ現代」で「老いるマンション維持費の高騰にどう備えるか」が放映されました。

 


放映内容を要約すると、内容としては概ね以下のようになります。

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・2012年に比べてこの10年間で分譲マンションの管理費・修繕積立金の合計額は3割上昇している。

・長期修繕計画の更新に伴い、修繕積立金を大幅に増額改定しているマンションも少なくなく、経済的負担に耐えきれず手放す人もいる。

・そんな中、大規模修繕工事の費用を工事会社から不正に請求されたマンションもある。

・タイルの貼り替え枚数が不自然に多いことから疑問を感じた管理組合が工事会社に説明を求めたところ、水増しによる不正行為を認めた。

・業者が水増し報告をしたタイルの数がおよそ14,000枚。危うく500万円近くを過大に支払うところだった。住民は専門の知識に乏しいため、不正な工事に気づかないままでいる可能性がある。

・また、大規模修繕工事に関わる複数の企業が事前に工事金額を裏で示し合わせる談合行為もある。さらに、工事会社に支払われた工事費の一部は、キックバックとして設計事務所などのコンサルタントに渡される。こうした行為は、工事ごとに受注する会社を変えながら繰り返され、管理組合から必要以上のお金を吸い上げている。

・予防対策としては、コンサルタントとか業者任せにせず、管理組合が「独自に見積もり」を取得することが重要である。

・管理組合自身も積極的に関与することによって、業者にもプレッシャーにもなり、安易に不正ができなくなる。

・管理組合は「家計簿」をしっかり管理し、収入と支出を洗い出して将来的な大きな支出に備える習慣を身につけることが重要。

・具体的には長期修繕計画を作成し、収入と支出を把握し、将来の大規模修繕に備える。また、これを定期的に見直していくということが非常に重要。

・また、理事長や理事が毎年全員入れ代わったり、長期修繕計画を定期的に見直していないということがないか、注意て欲しい。

・手間のかかる管理には関わりたくない人が多いのも現実で、そうしたマンションで、今導入が始まっているのが「第三者管理」という仕組み。外部の専門家などに運営の判断や決定を任せるものだが、その仕組みにも課題がある。

・「第三者管理」について、国はガイドライン作りを進めている。中でも課題があるとされているのが、管理者にマンション管理士などの外部専門家でなく、管理会社が就任するケース。

・管理会社が管理者を兼ねる第三者管理方式においては、利益相反の問題がある。なぜなら、発注者たる管理者と受注者たる管理会社が同一の会社になるため、自分が自分に工事などを発注するということができてしまうからだ。

・第三者管理方式の場合の組合運営について、いま国が作っているのは「ガイドライン」にすぎない。もしこれを守らないような業者が出てきてしまったら、その次の段階としては強制力を持った法律というのが必要になる。

・一方、マンションの管理状況を自治体が評価する「管理計画認定制度」を活用して住民の関心や意識を変えようとする動きも見られる。

・この認定制度は、修繕工事や積立金の計画などが適正かどうかを自治体がチェックするもので、認定されると、共用部分の固定資産税が最大で半額免除され、借り入れ金利が優遇されるなど(ただし、各種条件付き)住民にもメリットがある。

 

番組の内容としては概ね納得できるものでしたが、専門家から見るとちょっと視聴者の誤解を招きやすい箇所も散見されました。

 

たとえば、マンションの管理費等が10年前に比べて3割上昇したというデータは、このブログでも紹介しましたが、あくまで新築マンションが対象であり、既存マンションは含まれていません。

<参考記事>

yonaoshi-honpo.hatenablog.com

 

また、マンション管理計画認定制度の説明の中で、「共用部分の固定資産税が最大で半額免除」という優遇措置は、適用される条件が非常に厳しいうえに、第2回目以降の大規模修繕工事が竣工した翌年1回だけの恩恵にすぎません。(下の記事参照)

<参考記事>

aplug.ykkap.co.jp 

一方、大規模修繕工事の際のリスク(施工業者の不正行為、談合やキックバック)や、第三者管理方式における管理会社との利益相反リスクについては、まったくその通りだと思います。

 

管理組合がしっかり家計簿をつけて中長期的に財務運営をしましょうというアドバイスも異論はありません。

 

「こんなマンションは要注意!」として下記のチェックシートが紹介されましたが、ほとんどの管理組合は半分以上の項目が該当するのではないでしょうか。

 

しかしながら、こうした素人の区分所有者によるマンション管理組合の自治主義にもとづく仕組みを世の中に定着させたのは、他の誰でもない国ではないのでしょうか。

 

管理組合を適正に運営をするのに専門知識が必要なのは、マンション管理士や管理業務主任者といった国家資格が存在していることからも明らかです。

 

しかしながら、多くの区分所有者は、長期修繕計画、管理委託契約書はもちろんのこと、管理規約や使用細則すらも十分に理解していないと思われます。

 

よく分かっていない事柄に積極的に参加しようと思う人が少ないのは当然です。

 

だから、組合役員は輪番制で交代することになるし、管理会社に丸投げになるのです。

 

つまり、人口高齢化や老朽化マンションの増加に伴い、今の「管理組合自治主義」は、もはや制度疲労を起こしておりいる、利益相反リスクの低減化を前提に「第三者管理方式」にシフトしていかざるを得ないだろうと思います。

 

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