先日、顧問先の神奈川県のマンション(築28年目)で臨時総会が開催され、共用給水管の延命対策として電気防食装置の導入を実施することを決議しました。
既存マンションに設置されている共用給水管の多くは、配管の内面に錆止めのコーティングが施された「硬質塩化ビニルライニング鋼管」を使用しています。
しかしながら、配管の繋ぎ目となる継ぎ手部分にどうしても隙間が生じるため鉄が酸化し始め、その後徐々に錆(腐食)が進行し『赤水』や『漏水』を引き起こすリスクがあります。
そのため、一般的なマンションの長期修繕計画では、30年から40年の間で配管の更新が必要となると見込んでおり、概算費用(戸当たり30万円程度)を計上しています。
配管の更新を行えば、その後長期間にわたって修繕が不要になりますが、工事期間が長いうえに高額な費用がかかるため、居住者に大きな負担となります。
また、躯体内に十分な配管スペースがなく、新たな配管を共用廊下等に露出せざるを得ないケースが多く、マンションの美観を損なってしまうというデメリットがあります。
一方、給水管の一般的な延命対策としては、「更生工事」という方法もあります。
更生工事では、配管内に発生した錆コブ等を研磨・洗浄したうえで特殊な樹脂を流し、内部をコーティングします(ライニング工法)。
工期が短くコストも抑えられるメリットがありますが、やはり継ぎ手部分から再び腐食が始まることは避けられず、延命できる期間も10〜15年程度が一般的です。
また、配管内を削ることで管の厚みが薄くなるため、再度の更生工事は難しく、将来的に更新(取り替え)は避けられません。
これに対して「電気防食工法」とはどういう仕組みなのか?
そもそも金属(鉄)が水と接する環境では、金属の表面が陽極部と陰極部に分かれ、両極間に電気が流れ(腐食電流)、錆(腐食)が発生します。(下図1参照)
「電気防食工法」とは、この金属が腐食する原理を逆手に取り、鉄に反対方向の微弱な電流を流し続けることで、酸素と反応しない不活性領域(=酸化しない状態)を形成することで錆の発生を防止する方法です。(下図2参照)
<すでに発生した錆を除去することはできません。今後錆を発生させない効果であることにご留意ください。>
給水管の内部は常に水で満たされており、配管内の水が電線の役割を果たしてくれるので、管内の配線工事は不要です。
ちなみに、電気防食は最近発明された技術ではなく、以前から船底や橋脚の維持にも活用され、すでに100年以上の実績があり、これを給水管にも応用したものです。
また、一般財団法人建築保全センター(以前は、国土交通省所管の財団法人)から「保全技術審査証明」も取得しています。
なお、導入コストは、配管を更新する場合の3分の1程度に収まるので、修繕積立金に不安のある管理組合には打って付けです。
電気防食装置の導入方法やランニングコスト、留意点等は、下記の執筆記事に纏めていますので、気になった方はご一読ください。
<参考記事>
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