3月19日、東洋経済オンラインで「12年周期でなくてもOK 「大規模修繕」の大誤解 」と題した記事が掲載されました。
<参考記事>
本記事の要約は以下のとおりです。
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■ 国交省の調査によると、全国のマンションストックのうち築40年を超えるマンションは現在115.6万戸で、マンションストック総数の約17%を占める。同省は10年後には約2.2倍、20年後には約3.7倍へとさらに増えていくと予測している。
■ 今後、管理不全マンションが増えると想定される中、管理状況を「見える化」するため、2022年4月から「マンション管理計画認定制度」とマンション管理業協会の「マンション管理適正評価制度」がスタートした。
■ マンション管理の具体的な評価基準が定まる中、大きな意味を持つのが「大規模修繕工事」だ。経年劣化に伴う建物や設備の不具合を状況に合わせて補修するもので、周期や時期については明確に定められてはいないが、一般的には12~15年の周期で実施するとされている。
■ 「大規模修繕工事」の具体的な内容はあまり知られていないうえに、誤解されている方も少なくない。「大規模修繕工事」で勘違いしがちな点、誤解を受けやすいポイントに絞ってお伝えしていく。
(1) 適切な時期に必要な内容で見積もりを取得することが重要
工事費用に「早割、早得」という考え方はない。施工が必要な時期に必要な内容で見積もりを取ることが、結果的に費用を抑えるという点に留意しておきたい。必要以上に急いで施工会社を決め、契約を取る必要もない。
(2) 施工会社の規模よりも現場代理人の能力を重視すべし
大手の施工会社に工事を依頼するメリットは、安心と補償が得られる点だろう。ただ、大手の施工会社に依頼した場合でも、まず下請けに業務委託を行う。さらに孫請けとして、各々の会社の専門業者(例えば外壁補修はA社、塗装はB社……)に業務が振り分けられるのが一般的だ。
したがって、会社の知名度よりも、現場代理人の能力にこだわることをお勧めする。
特に現場代理人の人となりを見ることが重要で、実際に会って話を聞いて、コミュニケーションがしっかり取れるかどうかを選考基準にすべきだ。
(3) 建物劣化診断はTPOに応じて実施すべし
大規模修繕工事の実施1、2年前に「劣化診断調査」を行うのが一般的だとされている。どこをどう補修するのかを事前に調査するのは大切な工程だが、築年数や立地条件によっては、劣化診断を調査する必要がない場合もある。
例えば、比較的築浅で、1回目の大規模修繕工事をまだ迎えていない場合、コンクリートの中性化試験もその1つだろう。一般的に中性化により内部鉄筋までの到達は60年と言われているため、築浅の段階で行う意味があるのか疑問である。
劣化診断は修繕が今必要かどうかを判断するために行うものであり、必ず行わなくてはならないわけではない。時期によっては目視でわかる場合もあり、ケースバイケースで省ける検査もある。
(4)工事の時期を繁忙期の春・秋にこだわらない
大規模修繕工事は、年明けに足場をかけ始めて、夏場暑くなる前に足場を解体する春工事、お盆明けに足場をかけて年末までに足場を外す秋工事が一般的とされてきた。そのため、この2つの期間はどうしても工事が込み合ってしまう。
その結果、春・秋の工事は人材確保が難しく、繁忙期ゆえ相応のコストも必要になる。別の時期に実施することで問題を解消できる可能性がある。
(5)「足場が必要でない工事」は大規模修繕から外してよい
建築業界に「大規模修繕工事」と呼ばれる工事内容に該当するものはない。外壁タイルの補修などのために足場をかけてまとめて工事をするから「大規模修繕工事」と後付けで名付けられたに過ぎない。
言い換えれば、足場をかけなくても直せる箇所は、特に大規模修繕工事に盛り込まなくてもよく、違うタイミングで直すことを検討できる。 それによって、修繕周期を長期化し、修繕積立金の節約にもつながっていく。
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本記事の内容は、マンション大規模修繕工事に対する「管理組合の誤解あるある」として概ねその通りだと思います。
管理組合の「誤解」を深める要因になっているのが、「長期修繕計画」の存在です。
12年周期で外壁改修、鉄部塗装、屋上等の各所防水工事を一括で実施する計画が作られています。
この長期修繕計画の「刷り込み」効果によって、工事はなるべく一括で実施するのが常識であり、かつ経済的にも有利だと認識されています。
その結果、「大規模修繕」という括りの中で不要不急の工事まで含めて実施することになりがちです。
しかしながら、屋上防水改修工事や、廊下階段の長尺シート貼り替え工事などは、原則として足場を必要としない工事です。
したがって、劣化度合いが小さいと判断した場合、これを延期のうえ然るべき時期に個別に実施すればよいのです。
本記事にもあるように、管理組合がもっとも留意すべきことは、
限りある資金の中で1年あたりの修繕費を適切に抑制するようマネジメントすることです。
たとえば、標準的な耐用年数が12年の設備を15年まで持たせることができれば、 長計に比べて1年あたりの修繕費を2割安くできる計算になります。
ましてや、マンションの立地条件、周辺環境、施工品質によって、修繕すべき時期や箇所はそれぞれ異なってくるのが当然です。
長期修繕計画は、過去の実績データをふまえて平均的に必要と考えられる修繕周期ならびにメーカーの推奨する各設備の標準耐用年数をもとに、そのマンションに必要と考えられる修繕積立金を算出することが主な目的です。
したがって、ザックリした前提条件のもとで作成された長計をそのまま「鵜呑み」にするのは間違いです。
実際にいつ、どのような範囲で大規模修繕工事を実施すべきかの判断は、そのマンションの劣化状況を十分見極めたうえで個別に判断していくしかありません。
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