マンション管理士|村上智史の「士魂商才」 

無関心な居住者が多いマンション管理組合に潜む様々な「リスク」を解消し、豊かなマンションライフを実現するための「見直し術」をマンション管理士:村上智史(株式会社マンション管理見直し本舗 代表)がご紹介します。

マンション管理会社の契約更新拒否は、「伝統的ビジネスモデルの終焉」の始まり

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9月12日付の朝日新聞に、「マンション「管理拒否」されないためには カギは管理会社よりも住民」と題した記事が掲載されていました。
 
<参考記事>
本記事の要約は以下の通りです。
■ 管理コストの上昇や建物の老朽化を背景に、管理組合が管理会社から管理を断られるケースが、都市部を中心に問題になっている。 今後のマンション管理はどうすればいいのか、横浜市立大学の斉藤教授にインタビューを行なった。
 
■ 管理を拒否される背景として、管理人の人手不足などでコストが高騰している管理会社側の事情もあるが、マンションの管理が困難、もしくは管理不全の状態に陥っていることもある。
 
■ 管理不全になりやすいマンションの特徴として、築年数が経ち、戸数が少なく、所有者の不在化が進んでいる等がある。このため、理事のなり手がない、総会で物事が決められないなど、管理組合が健全に機能していない。
 
■ 管理の主体はあくまで住民や区分所有者であり、管理会社はあくまでも管理のサポーターであるが、その主体が弱体化してしまうとサポートのしようがない。そのため管理会社が手を引いてしまうことになる。
 
■  具体的には管理費の滞納が増える、総会の出席者が集まらず合意が取れないなど、物事が円滑に進まず手間だけかかるため手を引くという事態もある。そのため、住民のマンション管理への関心を高めることが大切になる。
 
■ コロナ禍でステイホームの時間が増え、家で快適に過ごしたいというニーズが高まり、マンション管理への関心が高まっている。また、総会や理事会もオンラインでも参加できる体制が整ってきており、住民参加のハードルが下がってきている。
 
■ 大事なのは、住民同士の顔が見える関係を作ること。どんな住民が組合の理事をしているか知るだけでも安心感が違う。たとえば、防災の日に防災設備などをスタンプラリー方式で確認するイベントを行うなど、簡単なことからはじめて近所の人の顔を知る、マンション管理に関心をもつようになるきっかけづくりが必要。
 
■  組合自身も、住民にマンションの課題などを共有する広報活動をすることで、住民皆で管理するという意識が生まれ、今後の管理のあり方を考える契機になる。
 
■ 全部を管理会社に任せるのでなく、清掃や植栽の手入れの業務に限って自分たちで専門業者を探して契約するなど、より効率的に管理する方法を探すのも一案。自分たちで選ぶことで、自分たちで住みやすさを創っている意識も醸成される。
 
■  共用庭の植栽の管理について、自分たちで業者を選び、業者にどんなふうに管理をするかの具体的なプレゼンテーションをしてもらい、住民らで業者を選んだケースもある。
 
■ このように、いきなりすべての業務を自分たちで管理するのが難しくても、できるところから管理方法を見直すことが大切。
 
■ 行政が管理にどう関わっていくかという問題については難しい。マンションが完全に私有財かという問題です。マンションの集会所が避難所になったこともある。公共財ではないが、地域に重要な財という位置付けが必要で、いかにマンションが地域の中で機能していく仕組みを創っていくかが大事。
 
■ 管理をしっかりとするには、竣工時に管理組合を設立し、管理規約や修繕計画、修繕積立金などの管理を進める体制を整えることが大切。適正な管理ができるよう行政が政策で促したり、適切に管理している組合が市場で評価される仕組みが必要。
 
■ 昨年6月は、マンション管理適正化法が改正され、マンション管理に問題があれば管理組合や住民が助けを求める前に行政が指導や助言などができるようになった。
 
■ 加えて、管理がしっかりしたマンションを公的に認定する仕組みを採り入れ、本格的にマンションが適正に管理される体制が整いつつあり、マンション管理も転換点を迎えつつある。

 

最近の「週刊エコノミスト」にも、「負担ばかりが増す一方 契約更新を断る時代に」と題した記事が掲載されています。

(下図参照 出典週刊エコノミスト 9月28日号)

 

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本記事によれば、その背景にはマンション管理会社は人材の採用難や価格競争の激化等で苦境に立たされていることがあると分析しています。

 

つまり、最近のメインストリームとしては、

最低賃金の上昇と65歳定年制の導入に伴う人手不足

 管理員、清掃員などの高齢スタッフの労務コスト増加 

企業収益の圧迫

となっており、その結果契約更新時に管理委託費の増額要請が増えているのです。

 

しかしながら、90年代のバブル崩壊後のデベロッパー各社の経営破綻等に伴って増加した独立系管理会社との市場競争もあって、管理委託費の増額改定もままならなくなっています。

 

そのため、これまで安泰とみられていた管理会社の経営基盤が徐々に綻び始めているというわけです。

 

そこに近年追い打ちをかけているのが、管理組合の高齢化・資金不足の問題です。

 

認知症居住者、空き家の発生、相続放棄による所有者不明など、新たな悩ましい問題も増えており、通常業務として対処しきれなくなりつつあります。

 

通常業務として対処できないとなると、スタッフの増強などが必要になるため管理会社としては定額委託費の増額を要求したいのですが、老朽マンションほど資金に余裕がないケースが多いため交渉がまとまらず、最終的に契約終了となるケースも生じてしまうのです。

 

大手デバロッパーから安定的に多数の分譲物件が供給される系列の管理会社は、管理組合の無関心もあって、市場競争に巻き込まれることもないので、これまで大した努力をしなくても悠々自適な経営ができていました。

 

同業他社との市場競争、人件費などのコストアップによってその安定性が崩れつつあるのは、マンション管理業界もようやく「普通」になったという見方もできます。

 

消費者意識の変化やネット検索の普及を受けて、これまでの管理組合との圧倒的な情報格差を悪用した「高率な中間マージン」の搾取も難しくなる中、これまでのビジネスモデルが通用しなくなりつつあるのは間違いありません。

 

今後どのように安定的に利益を出していくのか、

今こそマンション管理会社は真剣に考えなければならないでしょう。

 

まずは、減少する利益に歯止めをかけるため、今後は限られた人数のスタッフでなるべく効率よく運営していく必要があります。

 

たとえば、理事会や総会のWEB化、ファームバンキングの活用、あるいは理事会方式から第三者管理方式への変更などによって、手間やコストのかかる組合運営業務をいかに効率化するか、あるいは顧客の負担を軽減しつつ安心感や満足度を高められるかについてもっと知恵を絞るべきです。

 

<参考記事>

www.nikkei.com

japan.cnet.com

 

一方、管理組合の資金不足問題については、「身から出たサビ」という側面もあります。

 

そもそも、マンション新築時に必要な金額の半分以下という異常に低い修繕積立金を設定していることが問題で、その主な責任は、管理会社の親であるデベロッパーにあります。

 

デベロッパーはなるべく高い価格でマンションを売りたいので、維持費の一つである修繕積立金をなるべく安く見せることによって購入需要を掴むことができるからです。

 

新築当初から、そのマンションの長期修繕計画の資金需要をふまえ、均等積立方式を前提とする徴収額を設定すれば、資金不足が顕在化する管理組合はきっと激減するでしょう。

 

デベロッパーも管理会社も、少子高齢化社会のもとで厳しい市場競争で生き残っていくためには、過去の成功を忘れて、ビジネスモデルを再構築すべき時期を迎えているのです。

 

<参考記事>

 

yonaoshi-honpo.hatenablog.com

 

yonaoshi-honpo.hatenablog.com

 

yonaoshi-honpo.hatenablog.com

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