マンション管理士|村上智史の「士魂商才」 

無関心な居住者が多いマンション管理組合に潜む様々な「リスク」を解消し、豊かなマンションライフを実現するための「見直し術」をマンション管理士:村上智史(株式会社マンション管理見直し本舗 代表)がご紹介します。

「老いる家 崩れる街 住宅過剰社会の末路」はオススメの良書!

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amazonでも上位にランキングされ、かなり売れている本老いる家 崩れる街 住宅過剰社会の末路(野澤千絵著)を読みました。   

 

 

すでにわが国は人口減少社会に突入し、空き家も老朽化住宅も増加し続けているにもかかわらず、都心部の高層マンションの大量供給や地方都市での新築住宅の「バラ建ち」は一向に止まる気配がなく、住宅のストックは依然として増加を続けています。

 

高度成長期に整備された公共施設やインフラが、その後約半世紀経過して総じて老朽化した結果、建替え・更新の時期を迎えており、そのための多額の資金も必要になってきます。

 

そんな中、都心部では、タワーマンションの大量供給によって学校や地下鉄の駅や駐輪場といったインフラ施設の不足が顕在化しつつあり、今後はそれに伴う公共投資の増加が懸念されるところです。
 

一方、地方都市を含む郊外部においては、住宅の「バラ建ち」などの影響でまちにまとまりがないままスプロール化が進んでいます。

 

このまま人口減少や高齢化が進行していくと、移動の非効率さと深刻な財源不足から、各住宅への個別の行政サービスが提供されない、あるいは追加料金を請求される地域が増えることが予想されます。

 

こうした都心部の高層マンションの大量供給や、郊外都市での住宅のバラ建ち現象の背景には、高度成長期以来の右肩上がりの成長や人口増加を前提とした各種政策の残像を引きずったまま、方向転換もままならない日本の都市計画が大きく影響していると著者は主張しています。



今後の対策としては、すでに供給過剰なら新築住宅の総量自体を規制すべきという方法が考えられるものの、不動産・住宅業界団体などからの大反対も予想されます。

 

そのため、より現実味のあるものとして、新築住宅の総量規制以外に取り組むべき対策を著者は提案しています。

 

たとえば、

・規制緩和で生み出しうる新築住宅部分だけでも総量規制を行うなど、過度な規制緩和を抑制する方向に舵を切る。

・市街化調整区域の規制緩和を可能とする区域の廃止や縮小に取り組む。

・災害リスク、インフラや公共交通・生活利便サービスの維持、公共施設の再編・統廃合、地域コミュニティ、ライフスタイルなどの多様な観点から、将来にわたって「まちのまとまり」を維持すべきエリアを丁寧に極めていく。

・まちのまとまりと設定した区域だけでも、ある程度の人口密度を維持し、広域的な各種サービスのネットワークの拠点として暮らしに必要なサービスの提供が比較的効率的に提供できるようにする。

・まちのまとまりに設定した立地に住宅を建てる方が税制・金融面のメリットがあるようなインセンティブを設ける

・災害の危険性の高い区域など、「誘導すべきでない立地」への開発規制を強化する

・まちのまとまり内にある空き家を蘇らせ、シェアオフィスや新たなコミュニティの居場所などとして利活用するためのリノベーションに取り組み、中古住宅市場に流通させるための支援や、利活用の可能性が低い空き家が円滑に解体・除却できるようにするための支援を行う。

・今後は、相続した既存の空き家を賃貸住宅として転用するケースが増えることが予想されるため、空き家住宅の中古流通の促進を支援するとともに、多様なニーズに適応するためのリノベーションを行うような「空き家の優良賃貸化」に向けた支援を充実させることも検討する。

・所有者が不明な場合、あるいは所有者に連絡がつかない場合にも円滑に対応できるよう、所有権移転の際の登記等の新たなルールの構築について検討する。

・老朽化した住宅や空き家の終末問題への対応策として、住宅の解体・除却費用を確実に捻出できる新たな仕組みを早急に構築する。

・老朽分譲マンションへの対応として、相続放棄された空き部屋の維持管理費や処分を円滑に行うための仕組み、管理組合の担い手が不在となった場合でも対応できる仕組み、巨額な解体費用を確実に捻出する仕組み、建て替えや既存建物解体後の区分所有権解消の円滑な実施の仕組みを構築する。


といった内容です。

 

都市計画法に関する専門的・役所的な用語なども多く見られるので、不動産・住宅に関する知識が全くない読者には少々読みづらい本かもしれません。

 

ただ、日本の都市計画やそれを取り巻く行政・業界そして農家などの地主それぞれの思惑が影響して、近未来に顕在化することが予想されるリスクを的確に指摘している良書だと思います。

 

特に今後人口減少が進み、税収減によって行政サービスの低下が余儀なくされることが予想されるなか、既成市街地内の「まちのまとまり」の維持・再生を基本とする「立地誘導策」の推進はとても重要な提言でしょう。

 

 関心のある方は是非ご一読をオススメします!

 

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