マンション管理会社が「マンション管理適正化法」に則って業務を行っているかを確認するため、国土交通省が昨年全国一斉に事務所等に立入り調査を実施した結果が7月15日に報告されています。
<調査結果の概要>
◆国土交通省が、全国のマンション管理業者から135社を任意に抽出し、平成27年10月から約3ヶ月の間に、各社事務所への立入検査を実施した。
◆管理業務主任者の設置、重要事項の説明等、契約の成立時の書面の交付、財産の分別管理及び管理事務の報告の5つの重要項目を中心に調査を行ったところ、うち51社に対して是正指導を行った。(※指導発生率:37.8%)
◆重要調査項目別の違反者数は以下のとおり。<複数違反の業者あり>
①管理業務主任者の設置(第56条関係) : 2社
②重要事項の説明等(第72条関係) :39社
③契約の成立時の書面の交付(第73条関係):27社
④財産の分別管理(第76条関係) :20社
⑤管理事務の報告(第77条関係) :22社
◆違反業者に対しては違反状態の是正をするように指導を行ったが、関係団体に対しても、法令遵守の徹底を図るため研修活動等を通じて管理業全般の適正化に向けた会員指導等を行うよう要請を行う。
マンション管理会社に対しては、平成13年に「マンション管理適正化法」が施行され、これを遵守することが求められるようになりました。
その理由は、法の目的として明文化こそされてはいませんが、法施行前のマンション管理が適正でなかったからです。
顧客である管理組合側に無関心層が占め、そのためその業務を管理会社に丸投げするケースが多いのをよいことに、管理会社が野放図な運営管理を行うだけでなく、管理費等の出納業務の際に社員が組合財産の横領・着服を行うなど、管理組合に重大な損害をもたらすような事案が発生したことが背景にあったのです。
たとえば管理会社は、その事務所ごとに成年者で専任の管理業務主任者(国家資格)を30組合ごとに少なくとも1名以上配置しなければなりません。
また、現在管理組合との管理委託契約について「自動更新」は認められていません。たとえ契約条件が現状維持であっても、更新前に管理業務主任者が重要事項の説明を行い、そのうえで組合総会で決議することが義務付けられています。
「管理組合財産の分別管理」については、預金名義を(管理会社でなく)管理組合とするとともに、(管理会社がこれを着服できないように)通帳と印鑑を分離して保管しなければなりません。
今回の調査結果では、抜打ちで調査した135社のうち約4割にあたる業者で重要項目の違反が見つかったということです。
法が施行されてすでに15年が経過しているにもかかわらず、異常に高い違反率と言わざるを得ません。
最近、新たにコンサルを受注した先の管理組合でも、管理委託契約の重要事項説明が実施されていない事実が判明しました。(ちなみに、委託先は誰もが知る大手の管理会社です。)
それでは、こうした法令違反がいつまでもなくならない理由は何でしょうか?
一つは、顧客である管理組合が「適正化法」による規制内容を十分認識していないからです。そのため、管理会社に対するチェック機能が働かず、問題が放置されやすいことが原因だと思います。
管理会社への指導だけでなく、管理組合への啓蒙も必要不可欠でしょう。
二つ目は、法令違反に対するペナルティが事実上機能していないことです。
行政処分としては、指示処分 → 業務停止 → 登録取消 の3段階がありますが、かなり悪質な業者でもなぜか登録取消には至っていません。
<過去記事>
ちなみに、「指示処分」は反省文の提出にすぎないうえ、「業務停止」は受託中物件は対象外になるため、ほとんどダメージを受けることはありません。
こうした「緩い」官民の関係を前提とする現在の法制度を根本的に見直さない限り、違反の根絶は到底実現しないでしょう。
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