コンサルタントとして管理組合の総会に陪席していると、実に様々な光景を目にします。
ただ、多くの組合で共通している特徴があります。それは、理事側も組合員側にも総会進行に必要な基本的なリテラシーがまるで身に付いていない、ということです。
そのために総会の進行が混乱して審議に多大な時間がかかり、議場全体が殺伐とした雰囲気に陥ってしまうことがあります。
このような事態にならないように、理事だけでなく一般組合員の方にも少なくとも覚えておいて欲しいポイントとして4つご紹介します。
#1 総会開催前の定足数の確認
管理組合の総会を有効に成立させるには、まず区分所有者(※正確には議決権数。1戸につき1つの場合が多い。)全体の半数以上の「出席」が必要です。
ただし、この「出席」には、議場への出席だけでなく委任状や議決権行使書も含むことに注意してください。
また、議決を得るための要件は、(普通決議事項の場合)「出席組合員」による過半数の賛成であり、母数は組合員数全体ではないことにも留意してください。(※管理規約の改正などの特別決議事項は、組合員全体の4分の3以上の承認が必要。)
したがって、極端な場合、理事会役員だけが出席し、その他はすべて委任状の提出でも総会は有効となります。
#2 総会開催前の議事録署名人の指名
総会の議事録は、法律の定めにより必ず作成しなければなりません。ただ、書式は自由ですし、質疑応答をすべて書き留めなくてはならないわけではありません。どのような審議がなされたのか概要を記載すれば足ります。
その際、議事録の内容につき、議長(通常は理事長)が自分の他に証人として2名議事録の署名人を指名する必要があります。
なお、署名人は特に役員である必要はありません。議場に出席した組合員(区分所有者)であることが要件です。
#3 議事進行は議長が行う
よく見かけるのは、総会の進行自体を事実上管理会社の担当者に委ねてしまうケースです。議案の説明の中で、決算に関する報告や専門的な事項の詳細説明については、管理会社に説明をサポートしてもらうのは良いですが、議長としての仕事を丸投げしてしまうのはNGです。
また、賛否が分かれる議案を審議する際に、議場に出席した組合員が反対意見を述べるだけでなく、長々と自分の主張を展開し、あげく周囲を扇動して議案そのものを潰しに掛かろうとするケースも見られます。
理事長自身が総会の進行を初めて経験する場合には、それを制しながらうまく捌くことができないのが普通です。反対者はそれに乗じて総会の進行を混乱させて採決もできず、議案の取り扱いがうやむやになってしまうこともあります。
出席者の質問や要求を無視するのはもちろんNGですが、時間には制限があること、議事進行の方法はあくまで議長権限で進められること、反対意見に対して議長が感情的に応酬する格好で口論に発展しないよう注意しなくてはなりません。
お互いの主張が譲れない状勢であると判断に至ったら「反対のご意見として承りました。議事録にも記録させていただきます。」のような冷静な対応で、あとは採決を取るという対応が正解です。
#4 「緊急動議」はご法度
組合員の中には、自分が反対する議案が決議されないよう議長に対して「議案の中の×××の部分は反対している者が多いから今回の採決から外せ。」などと要求することもあります。
あるいは、自分が希望する別の選択肢を議案に加えたうえで賛否を集計するよう主張するケースも見られます。
しかし、このような議案書の内容から外れるような緊急動議を求める行為はNGです。
なぜなら、委任状や議決権行使書を提出している組合員は、事前に議案書の内容にもとづき意思決定しているからです。議場でたとえ一部の出席者が議案自体の修正や追加を要求したとしても、これに応じてはなりません。あくまでその議案に対して賛否を取るという軸を崩さないように進行させることが正しいのです。
なお、もし議案の内容に大きな誤りや欠陥がある場合には、あえて採決を取らずに審議保留とし、一旦廃案にすべきです。
総会の議案すべてについて組合員全員の利害が一致するとは限りません。しかし最終的には多数決という方法で組合の進むべき道を決めざるを得ない場合もあります。
なるべく平穏かつ円滑に管理組合を運営する知恵として、このようなリテラシーを身に付けておくことが大切です。
どうも有難うございました!
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