ダイヤモンドオンラインに、「マンション管理組合は管理会社の「委託費便乗値上げ」に対抗できるか」という記事が掲載されていました。
本記事の要約は、以下の通りです。
■ 昨秋最低賃金が引き上げられたことに伴い、マンションの管理員や清掃員の人件費も上昇しつつある。
■ 最低賃金が引き上げられると、当然彼らの実際の雇用主は経済的に打撃を受ける。その打撃はそのまま元請けの管理会社にも及ぶ。
■ 元請け管理会社は自社の利益を守ろうとするので、そのしわ寄せは下請け会社や孫請け会社、ひ孫請け会社のどこかに来る。当然、下位の会社にとっては確実な減収につながるため、いつかは立ち行かなくなる。
■ そこで、管理会社は管理組合に対して委託費の値上げを依頼することになるが、ここで問題が生じている。それは「便乗値上げ」と「管理委託契約の解除」だ。
■ 実際には「管理委託費全体の2割値上げ」などの「便乗値上げ」の交渉をしてくる管理会社が多い。
■そして、値上げを認めてもらえない場合は、契約解除を条件に値上げを迫る管理会社が目立つ。その背景として、利益率の低い管理組合を切り捨てにかかっている管理会社が増えてきたことがある。
■ これには、いくつかの要因が考えられる。
(1)管理委託費が格安である(これまでに値下げしている場合)
(2)大規模修繕工事の受注の見込みがなく、利益が見込めない顧客
(3)管理会社のフロント担当者の人手不足
(4)経営トップの目標設定の変化(例:「受託戸数tの増大」→「利益の最大化」)
■ この「管理委託費の便乗値上げ」の流れは、「とある大手管理会社」が大きくかじ取りしたことをきっかけに生まれたもので、多くの管理会社が「右へならえ」で同じ行動に出つつある。もはや“値上げと契約解除のバブル”と言える。
■ 一方、管理会社からいきなり管理委託契約を解除され、冷静さを欠いた管理組合から、都合のいい条件で新たな管理契約の受託を結ぼうと、虎視眈々と狙っている管理会社も現れている。
■ もし管理会社からの「管理委託費の便乗値上げ」に直面したなら、ぜひ以下の点を意識していただきたい。
(1)最低賃金上昇分の人件費の値上げは承諾してもいいが、便乗値上げについては簡単に承諾しない
(2)契約解除という切り札を出されても動揺しない
(3)大規模修繕工事を管理会社に任せない
(4)意識の高い管理組合になるための仕組みづくりを加速させる■ 管理会社を変更することに抵抗や不安を感じてしまう管理組合もあるが、納得のいかない要求をしてくるような管理会社なら、もう付き合うには値しない管理会社だと考えて、冷静に判断していただきたい。
まず、管理員や清掃員の人件費が上昇しているのは事実です。
ただ、最低賃金の引上げが理由というよりも、
単純に「人手不足による需給ひっ迫」が原因だと私は見ています。
特に、都心部のマンションの方が求人に苦労しているようです。
居住地から離れた立地条件になると、往復の通勤時間が増えて「時給にカウントされない拘束時間」が長くなります。
そのうえ、早朝の都心への通勤ラッシュに巻き込まれると大変な苦痛も伴うため、求職者が見つかりにくいというわけです。
本記事の「とある大手管理会社」とは、
おそらく旧財閥系不動産会社「S」の直系子会社のことでしょう。
全国で約300物件のマンション管理組合に解約を申し入れたそうです。
その理由は、おおむね本記事の通りだと思います。
要するに、経営トップの交代に伴って、
重視するポイントが売上高から利益率に変わったのです。
そして、人手不足が深刻化する中、限られた経営資源を利益率の高い「優良物件」に集中させるために、リプレイスで受注したようなあまり儲からない物件に見切りをつけるというドライな戦略を進めているのです。
それも、通常なら更新の通知を行う「契約満了の3ヶ月前」になって初めて理事会に申し入れるという「冷淡ぶり」です。
実際に同社からの解約通知を受けた管理組合の役員さんも、
「20年近く付き合ってきて、これまで特にトラブルもなかったのに、なぜいきなり問答無用の解約通知という仕打ちに合わねばならないのか」と憤慨されていました。
この旧財閥系の場合は、親会社の大手デベロッパーが都心部に大量の大規模タワーマンションを分譲しているので、低利益物件の大量解約という大胆不敵な行動ができるのでしょう。
しかしながら、どんな会社でもできる「芸当」ではありません。
多くの管理会社は、新築物件の供給が減少傾向の中、たとえ小規模物件でも受託先を増やしたいと思っています。
また、多少人件費が上昇しているのは事実ですが、竣工当初に決められた管理委託費に潜んでいる大きなマージンを食い潰すほどではもちろんありません。
今なお、ほとんどのマンションの管理委託費が割高であるのは間違いありません。
もし管理会社から人件費の上昇を理由に委託費値上げの要請を受けたときには、
「それならこれを機に、管理委託費全体をフラットに見直しましょう」と開き直って条件交渉を始めることをお勧めします。
<参考記事>
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