顧問先の管理組合でも、共用部の電力料金を節減するために東京電力から新電力に変更するケースが相次いで発生しています。
この際に議論になるのが、こうしたスイッチングの際にも総会決議が必要かということです。
まず、管理規約の内容を確認してみましょう。
共用部の電力供給について契約先を変更するのは、下記の(9)項に該当することになります。
・・・・・
(管理組合の業務)
管理組合は、次の各号に掲げる業務を行う。
(1) 管理組合が管理する敷地及び共用部分等(以下本条及び第49条において「組合管理部分」という。)の保安、保全、保守、清掃、消毒及びごみ処理
(2) 組合管理部分の修繕
(3) 長期修繕計画の作成又は変更に関する業務
・・・・・<略>・・・・・・・
(9)敷地及び共用部分等の変更及び運営
一方、総会決議事項の内容を確認すると、「電力会社の変更」という項目は記載されていません。
・・・・・
(総会の議決事項)
次の各号に掲げる事項については、総会の決議を経なければならない。
(1) 収支決算及び事業報告
(2) 収支予算及び事業計画
(3) 管理費等及び使用料の額並びに賦課徴収方法
・・・・<略>・・・・・・
(15)その他管理組合の業務に関する重要事項
・・・・・・・
強いて本件を当てはめようすると、15項の「その他管理組合業務に関する重要事項」しかありません。
一方、本件が理事会決議事項に該当するか、規約で確認してみます。
・・・・・・
(理事会の議決事項)
理事会は、この規約に別に定めるもののほか、次の各号に掲げる事項を決議する。
(1) 収支決算案、事業報告案、収支予算案及び事業計画案
(2) 規約及び使用細則等の制定、変更又は廃止に関する案
(3) 長期修繕計画の作成又は変更に関する案
(4) その他の総会提出議案
(5) 略
(6) 略
(7) 総会から付託された事項
・・・・・
以上から、
電力会社の変更が総会決議事項の「その他重要事項」に該当するかどうかは不明であるものの、 理事会で決議できる事項が総会に上程する議案、ならびに総会で付託された事項のみだとすると、本件も総会決議事項とみなすのが無難でしょう。
そのため、私の場合は「本件は総会で決議されるほうが望ましい」と助言しています。
なお、各マンション管理会社が所属する業界団体である「一般社団法人マンション管理業協会」にも確認してみたところ、以下の2つの理由から本件については管理組合に対して総会決議を勧めるよう会員各社に通達しているとのことです。
・管理組合の事業計画ならびに予算収支の変更に該当する事項であること
・管理組合が主体となる契約行為に該当すること
ちなみに、ネットで検索したところ、共用部分に関する電力会社の変更は区分所有法上の「管理行為」に該当するため総会決議が必要とする見解がありました。
<平賀功一氏(住宅コンサルタント)の投稿記事>
https://realestate.yahoo.co.jp/magazine/khiraga/20151225-00000001
一方、新電力への切り替え自体が電気供給というライフラインに影響を及ぼすようなリスクもなく、単なる購入先の変更にすぎないことから理事会決議でも問題ないとする意見もあります。
<廣田信子氏(マンション管理士)のブログ>
https://ameblo.jp/nobuko-hirota/entry-12363288950.html
各マンションの管理規約は、国交省の標準管理規約に準拠したものであるがゆえに、「区分所有法」の原則を忠実に反映しており、理事会の権限範囲は極力狭く設定されているのが一般的です。また、理事会が設置されていない管理組合も少なくありません。
そのため、管理組合の意思決定は原則として総会決議によるべきとするという考え方に則っているのです。
ただ、区分所有法において「集会(総会)決議」と定めている事項でも「管理規約で別途定めるのも可」とする事項もあり、その範囲内であれば理事会決議に変更できる事項が少なからずあります。
電力の小売り自由化のように規約作成当時は想定していなかった環境の変化に対して管理組合が機動的に対応できるよう、総会決議事項と理事会決議事項の内容を一体で見直すのもよいと思います。
<参考記事>
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